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真面目で章 (スプリング編)9 邂逅

 ガイアスの世界


ガウルド城


 ヒトクイの中心都市ガウルドを眼下にする町の中心に存在するガウルド城。


ヒトクイ統一前までは小さな城であったが、統一後は国の中心として大規模な改装が施され今の大きさになった。

 城の上部からは町を一望できるテラスが設置されている。そのテラスはヒトクイの王の寝室と繋がっておりそのテラスからガウルドの町を一望できるのはヒトクイの王のみである。





真面目で章 (スプリング編)9 邂逅



剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス



― 数年前 何処かの戦場 ―



 数十年前に起こった人類同士による大きな戦争以降、比較的人間は平和な日々を送っていた。だが平和と言ってもあくまでガイアスにある大陸を巻き込んだ大きな戦争では無いというだけで、紛争や内戦などはガイアス各地の国で頻発していた。

 領土侵略、部族間の摩擦、有益な土地の独占、戦争の火種は何処にでもある。それは人の性、人の業とも呼ばれるものなのだと思う。人間は平和を望むと口にしながらも内に秘めた本能が争いを望んでしまうのだろう。

 そんな秘めた本能に掻き立てられるように当時まだ傭兵になったばかりの俺は、何処かの紛争地域にいた。

 自分が加担した軍勢がなぜ相手の軍勢と争っているのかその理由すらも分からない、いや知る必要も無いと思っていた俺は兎に角毎日のように血しぶきと悲鳴が響き渡る戦場にいたのだ。

 その目的は己の力を高める為。俺を雇った国や軍勢がどういう思惑で戦争や紛争、内戦をやっているかなんてことは全く興味が無く、ただ己の力を磨く為という信念を剣に籠め振い続けていた。



「確かに剣士って職業は戦場の花ってやつだと俺も思うが、それでも俺はこの拳で戦い抜くぜスプリング!」


 前線から少し外れた場所にある補給拠点の一角でそう叫んだ男、ヘルマーはそう言いながら己の拳を何とも気分が悪くなる曇った戦場の空に掲げた。

 ヘルマーは当時の俺より二歳年上で傭兵としては先輩であった。戦場では珍しい己の拳を武器として使う戦闘職、拳闘士に並々ならぬ情熱を持っていた。

 傭兵になった理由も剣聖を目指す俺と似ていて自分の力を高める為らしく戦場ならどこでも構わないという男だった。

 当然そんなヘルマーも今自分が加担している軍勢が何を目的として敵と争っているかなんてことは知らず知る必要も無いと思っていたようだ。


「はぁ……何度も同じことを叫ぶな」


 今いる戦場とは違う別の戦場で出会って以来、ヘルマーは同じ志を持つ俺を気にいったのか戦場を共にする中になった。

 そんなヘルマーは毎日のように拳闘士の良さを俺に語ってくる。すでに数十回、似たような文言を聞いていた俺は呆れてため息をつくのが日課になっていた。


「まあまあ、そう言いなさんな、拳は良いぞ、武器が無くても戦えるからな」


 拳闘士は武器が無くても戦える。殺傷能力を高める為に拳闘士専用の手甲ガントレットを装備したりするが、極論から言えば確かに拳闘士という職業に武器は必要ない。

 だが俺は剣士だ。剣を扱ってなんぼの剣士に拳で戦うことを勧めてくるヘルマーの神経が分からない。毎度同じようなことを俺に吹き込みあわよくば拳闘士仲間を増やそうとしているヘルマーは、いつか役に立つ日が来る、覚えておいて損は無いと無理矢理、自分が日課としている拳闘士の型の練習を俺に教えてくるのがささやかな休憩時間の日常になっていた。


「どうだ、スプリング、拳っていいだろう!」


そう言いながら屈託のない笑みを俺に向けるヘルマー。


「はぁ……間に合っているよ……俺は剣聖を目指しているんだ、拳は必要ないよ」


 無理矢理覚えさせられた拳闘士の型をやりながら俺はもう止めたいと心の中で叫んでいた。

 だが確かに戦場で自分の獲物が破損や紛失した場合、咄嗟の状況ですぐに自分の身を守り相手を倒す手段として拳を使うのは俺も理解できる。でもそういう状況に陥った場合の対処方法はすでに剣士でしっかり学んでいたから今更別の方法を知る必要は無いと俺は当時思っていた。


「剣聖か……なら、俺は拳聖になるかな」


突っぱねた俺の言葉を物ともせず更に屈託なく笑顔を向けそう告げるヘルマー。


「……拳聖ってなんだよ?」


当時まだ傭兵としても剣士としても駆け出しだった俺は、剣を使った戦闘職以外の戦闘職に疎かった。ヘルマーの話によってそこで初めて俺は拳闘士などの拳を使った戦闘職の頂点、拳聖という剣聖に並ぶ戦闘職がある事を知った。


「それじゃお互い目標に辿り付いたら、手合わせしようぜ!」


 屈託なく笑うヘルマーはそう言って構えていた右腕を俺に突きだすと挑発するように人差し指をクイクイと揺らす。俺はなら今からやるかとヘルマーの挑発にのるように笑って鞘がついたまま剣を構えるのであった。



― 生と死の狭間 ―



「……おいおい、この状況はいつまで続くんだ?」


 まさか傭兵仲間に教わった拳の使い方がここまで役立つとは思っていなかったスプリング。襲いかかる死神を己が持つ二つの拳で殴り倒しながら次の相手に視線を揺らし隣で同じく死神と戦うポーンにそう言葉を吐いた。

 死神に襲撃を受けてから現在に至るまでスプリングは無傷であった。それはスプリングの戦闘経験と傭兵時代に仲間から教わった素手で戦う術を体が覚えていたことが大きい。

 だが倒しても倒しても減らない死神の数にスプリングの精神は確実に擦り切れ始めていた。


「どんどん死神が湧いてくる……ぶん殴って倒せても限度ってもんがあるぞッ!」


 そう言いながら傭兵仲間から教わった拳を使った簡単な技で死神を吹き飛ばすスプリングは横で同じく死神と戦うポーンに叫んだ。

 スプリングとポーンの前に立つ存在、彼らが自らそう名乗った訳では無いが、どう見てもその姿はスプリングとポーンの中で死神と呼ばれる存在に酷似していた。

 死神と言えば、死を司る神。死神とは死が迫った者の前に現れ特徴の一つである大鎌でその者の魂を刈り死後の世界へと連れていくという死の象徴であった。目の前に現れたが最後、抗うことも出来ず問答無用で死へ送られると言われている。

 だがスプリングとポーンはその確実な死に抗っていた。いや圧倒しているというのが正しい。

スプリングとポーンの前に現れた死神達の戦闘力は二人が想像よりも遥かに低く何も装備していないスプリングの拳で殴り飛ばし塵にすることができる程に弱かった。

 仮にも神と名の付く存在であるはずの死神のあまりにもお粗末な戦闘力に最初、覚悟を決め飛び込んでいったスプリングが拍子抜けしてしまうほどであった。だが今のスプリングの表情に余裕は見られない。

お粗末と言ってしまえるほどの戦闘力しか持ち合わせていない死神を相手に拳でどうにかできると気付いた最初の頃は勢いがあったスプリングも、その拳で50体の死神を倒したあたりから自分達が置かれている状況に気付き勢いは焦りと疲弊に変わっていた。

 生と死の狭間に存在する数少ない物体、死後の世界へと続く扉門から次から次へと死神が湧きだすからであった。

 現在スプリング達は死後の世界へと続く扉から少し離れた位置にいる為、死神がスプリング達の下へたどり着くには僅かに時間がかかるのだが、それも時間の問題でしかない。

 僅かな判断ミスや無駄なく死神を倒すことが出来なければその僅かな時間も無くなり気付けば数十という死神の群れに囲まれることになる。これが現在、スプリング達が置かれた状況であった。


「……確かにこのままではじり貧だな……」


 しっかりと自分達が置かれた状況を理解するポーンは、精神的な疲労が見えるスプリングを横目に襲いかかる死神達をバッサバッサと二本の光輝く剣で切り伏せていく。その表情はスプリングとは対照的ではまだ余力が残っているようにも思える。だが余力を残していたとしてもその言葉に余裕はない。

 

「ポーン何か突破口はないのか?」


 自分達が置かれている状況が絶望的であることを理解しているスプリングは、戦闘知識に留まらずガイアスの知識を豊富に持っているポーンに、この状況を打開できる策は無いのかと聞いた。


「……うむ……あるとすれば死神達が出現している扉を閉める他にこの状況を抑え込める方法は無い」


死神達が現れる大本である死後の世界へと続く扉を閉じる事を提案するポーン。


「……だよな……」


ポーンが導き出す答えに同意するスプリングは頷いた。しかし導き出された答えが殆ど答えになっていない事を理解しているスプリングの表情は引きつっていた。

 スプリング達の目の前にいる死神の数は既に軽く百を超えている。百を超える死神達からの攻撃を掻い潜り死後の世界に続く扉に向かうというのは厳しいものがあった。

 しかも扉を閉めたからといって死神の出現が止まるとは限らない。それに加え死神が現れる扉の大きさは見た目到底スプリングとポーン二人で閉じることが出来るようなものでは無く辿り付いたとしても扉を閉めることが出来るかは不明であった。

 

「……無謀と思えるかも知れないが、生還する為の階段に近づけない今、我々を襲う死神達をどうにかしなければ我々に生還の道は無い」


 そう言い切ったポーンはスプリングの前に出ると襲いかかる死神達を両手に持った二本の光輝く拳で一度に切り裂いた。


「私が露払いをする、主殿は扉に辿り付くことだけ考えて走れ!」


「……く、こんなことなら動かずにあの扉の前にいればよかったなッ!」


 距離にしてみれば直線にして一キロあるかないか、死神という障害が無ければそれほど苦労せず辿り付く距離である。しかし障害である死神が立ちふさがる今、その一キロは果てしなく遠い。

 文句を垂れながら死神達が姿を現す死後の世界へと続く扉の方角に向かって走り出したスプリングはワラワラと群がる死神の集団のど真ん中へと飛び込んでいく。

 突然方向転換して自分達に向かってきたスプリング達に虚をつかれた死神達の行動は遅れる。その隙を見逃さないというように動きが鈍った死神達の間を走り抜けるスプリング。  

 虚をつかれ判断が遅れた死神達は、自分達の間を走り抜けていったスプリングを追おうとする。その瞬間、二つの眩い光の残光が死神達を襲う。

 走るスプリングから距離をとって走っていたポーンは自分に背を向けた十体程の死神を纏めて切り裂いた。


「ははッ! 奴ら驚いて動きが鈍ってたぞ!」


自分達の行動に動揺する死神達を見ながらスプリングは僅かに笑みを零す。


「喋っている暇は無い、主殿は兎に角目的の場所に走れ!」


 今みたいな虚をついた状況を作りだせるのは一度きり。ここからが本番だというように僅かに笑みを零したスプリングを怒鳴りつけるポーン。

 スプリング達の前で待ち構えている死神達は冷静に獲物がやってくるのを待っている。だがスプリング達に止まるという選択肢は無い。ただ猪のように死神の集団に突っ込んでいくことしか今のスプリング達には無い。

 スプリングが囮となり攻撃を仕掛けてくる死神達の隙を狙い正確無比なポーンの攻撃が次々と死神達を塵へ変えていく。無謀と思われた行動は思った以上の効果を発揮してスプリング達を扉へと近づかせていく。


「よし、後少しだ!」


 後距離にして二百メートルを切ったと言う所で、今までおぼろげであった巨大な扉の全容をその目で捉えたスプリングは更に走る速度を上げる。


「主殿、油断するなッ!」


 それは伝説の武器としての経験の蓄積から来るポーンの警告であった。ポーンが発したと同時に轟音を伴った衝撃がスプリングに迫る。


「うぉっ!」


間一髪、スプリングは頬を切るギリギリの所で轟音を伴った衝撃を躱す。

 今までただ大鎌を振うだけの死神とは全く違う攻撃が死後の世界へと続く扉の前から放たれた。


「主殿!」


 扉の前に立つ一体の死神。周囲に現れる死神と姿形は何一つ変わらない。しかしその死神は死神の特徴の一つとも呼べる大鎌を持っていない。その代わりと言わんばかりに骨の両腕をまるで拳闘士の構えのように構えている。


「ッ!」


 何かを感じたのか今まで真っ直ぐ走り続けていたスプリングは横へと飛びのいた。その瞬間、拳闘士のように構える死神は右腕を振り抜いた。するとその拳から発せられる衝撃は轟音を伴ってスプリングが今までは知っていた場所を抉る。


「……あれは……」


受け身をとりながら素早く立ち上がったスプリングはまるで門番のように立ちはだかる拳を使う死神に驚きの表情を浮かべた。


「何をしている主殿足を止めるなッ!」


 隙が出来たスプリングをそのままにしておく死神達では無いる足が止まったスプリング達に容赦なく襲いかかる死神達。しかし大鎌をスプリングに向け振り下ろした死神達はたちまち轟音を轟かせる衝撃によって霧散、塵へと帰って行く。


「……」


まるでスプリングを助けるような行動をとった拳を握る死神は、スプリングに向けてかかってこいと挑発するように右手の骨の人差し指をクイクイと揺らした。




― 数年前 何処かの戦場 ―



 魔法の爆発とそれに伴い発生する轟音と衝撃。それに加え断末魔とも言える男達の悲鳴が飛び交う戦場。


「どこだ、どこだヘルマー!」


 敵陣地にいた魔法使い達による範囲魔法が放たれ、戦場の中心は地獄絵図になっていた。範囲魔法の着弾点よりも離れた場所、威力が一番低い場所にいた俺は爆風に巻き込まれはしたが、見た目ほど傷は少なくまだ十分に戦えるだけの余力を残していた。

 だが隣にいたはずのヘルマーの姿が無い。俺は周囲を見渡しながらヘルマーの姿を探した。


「くらぇぇぇぇぇぇ俺の拳をぉぉぉぉぉぉぉ!」


聞き馴染みのある叫び声に俺は視線を叫び声のする方向へと向けた。


「……」


 一度痛いほど大きく脈打った心臓は、凄い速度で脈を打ち始める。俺の視線の先には傭兵や兵士達の手から離れた沢山の剣や斧、槍が何かに刺さっていた。多分範囲魔法の爆風に吹き飛ばされた物だということは分かるのだが、問題は何に刺さっているかであった。それは範囲魔法によって焼き焦げた地面でも無く岩でも無い。そこにあったのは黒焦げの人間だった。

 爆発の衝撃の影響なのか、黒焦げの人間の両腕は二の腕の先から無くなっていた。それにも関わらず黒焦げの人間は勇ましい声を上げながら無くなった両腕を振り回し何かと戦っているようだった。そう何かと。


「くぅ……」


 虚空に向け失った両腕を振り回す人間、そこにいたのはさっきまで横にいたはずのヘルマーであった。全身が焼けただれ黒く焦げており見た目ではそれがヘルマーであることが分からない。だがそんな体になっても尚勇ましく戦場に響かせる声が、それがヘルマーであることを証明していた。

 爆風に巻き込まれ喉も焼き切れているだろうにそれでもヘルマーは己の拳を信じ叫び続け虚空に浮かぶ敵と戦い続けていたのだ。


「ヘルマー! ……!」


 そんなヘルマーを見ていられず駆け寄った俺は、ヘルマーの体を見て言葉を失う。腹から下が無くなっていた。内臓の一部なのかもわからない物体が腹の下からダランと垂れているがその先にあるはずの両足が無いのだ。


「くぅ……」


込み上げてくる様々な感情を押し込み飲み込む俺は、ゆっくりとヘルマーに使づいていく。


「ヘルマー……もういいんだ、戦いは終わった、終わったんだ!」


 いまだ兵士や傭兵たちの声が途切れることなく続く。戦いは終わってなどいない。だが俺は自分の声が聞こえているのかもわからないヘルマーに言った。


「ん? ……スプリングか? ……戦いは終わったのか……」


 叫び続けていたヘルマーは俺の声に気付いたのか普段会話する時の声色で俺にそう返事を返した。だがその声は聞き取りづらく潰れていた。


「……ああ、終わった……補給拠点に……戻ろう……」


「……そうか……終わったのか……それじゃ帰ろう拠点に……ああ、でも待ってくれ……何か凄く疲れた……少しここで……休んでから……」


「……ッ!」


それがヘルマーの最後の言葉だった。


「う、うぁあああああああああああああ!」


 さっきまで笑いあっていた仲間が次の瞬間には屍になっているなんてことは傭兵からすれば日常の光景である。仲間の突然の死を受け入れられない程心優しい奴に傭兵は向いていない。それこそその仲間の死を補給拠点で他の仲間に笑って話せるようなクズじゃ無きゃ傭兵なんて、やっていられないんだ。

 俺はクズになれなかった。でも剣聖になるという夢は捨てられなかったし、帰る田舎も無かった。だから俺は自分が信じた道で立ち止まる事が出来なかった。そんな俺が戦場で仲間を作ることを止めた。




― 生と死の狭間 ―




「……ポーン作戦変更だ」


「なっ! 主殿、まさかとは思うが……」


 今にも襲いかかりそうな死神達が周囲でゾロゾロしているというのにそんな事お構いなしにという様子で、自分を挑発する骨の拳を握りしめ構える死神に視線を向けるスプリング。


「……指名を受けたんでな……」


「主殿、馬鹿な真似は止めろ!」


 スプリングの傭兵時代の話を聞いていたポーンは拳を構えた死神へと向かおうとするブリングを止める。何処か戦場を思わせるこの場の空気感に当てられ眠っていたスプリングが持つ本来の闘争心に火をつけたのではないかと思ったからだ。

 基本温和な性格をしているスプリング。しかしそれはあくまでガイルズと旅をするようになってからの話。あらゆる面倒事、特に安い挑発に笑いながら乗っかるガイルズの影響で物事を納める側に立つようになってからは、なりを潜めていた闘争心。だが傭兵を生業としていたスプリングもガイルズに負けず劣らず戦闘馬鹿と言われる人種なのである。秘めたる闘争心は消える事無くその時を待ち静かに燃え続けている。

 ポーンの制止も聞かず拳闘士のように拳を構えた死神へと向かって行くスプリング。


「……まさかこんな所であえるとはな……」


 だがスプリングの心内に湧き上がる思いは、闘争心とは別の所にあった。かき消えるような声で呟いたスプリングは自分の前で拳を構える死神の姿が昔戦場で失った傭兵仲間と重なって見えていた。


「……ヘルマー……」


 かつての傭兵仲間の名を呟いたスプリングは、死神と同じように両腕を自分の顔の前に持っていき、戦闘態勢に入るのであった。




ガイアスの世界


拳闘士 


 己が持つ二つの拳を武器にして戦う超接近戦闘職で、素早い動きと素早い連続攻撃が得意。一撃も重く人によっては分厚い鎧も貫く威力を持っている。

 しかし自分の拳が武器とあって剣よりも攻撃範囲が狭い為、戦場などでは適さないと言われている戦闘職でもある。

 拳闘士は主に闘技場で戦う者に多い。だが戦場や冒険者に拳闘士がいないのかと言えばそういう訳でも無く、武器を必要としないという点においてダンジョンなどの補給が出来ない場所などでは重宝されることが多く、無手で戦う術を得る為に戦闘職としては二次職という形で転職する者が多くいる戦闘職である。





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