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最後で章 30 抑え込む盾 伝えぬ言葉

 ガイアスの世界


 剣聖の二つ名


 剣聖の二つ名、これは剣聖の中だけにあるローカルルールのようなもので、剣聖では無い者達には殆ど知られていない。別に隠している訳ではないのだが、何となく口外しないようになっている。

 剣聖の二つ名はその者がどんな剣聖であるのかを分かりやすく伝える為のものでもあり剣聖同士が対峙した場合、二つ名を言い合う事で互いがどんな剣聖なのかを理解するという役割をもっていたりもする。これは巨大な力を持つ剣聖同士が余計な戦いをしない為とも言われているが定かでは無い。

 剣聖の二つ名を考え授けるのはその師匠である剣聖でる。従いネーミングセンスの無い師匠を持つ弟子は大変苦労するとかしないとか。

 まあそもそも剣聖事体の数が少ない為あまり意味の無いものである。



 

最後で章 30 抑え込む盾 伝えぬ言葉



 『絶対悪』を抑え込み魔王の『闇』が渦巻く世界、ガイアス



 「……グゥ……ガァあゥ……」


 まるで全ての終わりが集約されたような漆黒。それはガイアスという世界に生きる感情を持った全ての生物から放たれる負の感情が集まり生まれた集合体の塊であった。

 それは本来、感情ある生物達が負の感情によって怒りや憎しみ、悲しみという感情を抑え和らげる為に生まれた存在、ガイアスという世界を永久的に存在させ続ける為のシステム

 だが永久など存在しない。それはガイアスのシステムも同様で、負の感情を吸い上げ続けるのにも限界はやってくる。止めどなく生まれてくる負の感情を吸い上げるうちに、限界を迎えたガイアスのシステムは蓄積されつづけた負の感情を吐き出すように、まるで今まで吸い上げた負の感情をガイアスへと振りまくのだ。

 ガイアス中から吸い上げられ一度一つにまとめられた負の感情は災いという形で、ある時は感染力の高い病に、またある時は天地を揺るがすほどの大災害に、またある時は感情を持った生物同士による争いになってガイアスを襲う。その災いの一つとして、魔王という存在をガイアスのシステムが産み落とした。

 意思を持った悪意。それは確固たる意思をもってガイアス全てに災いをもたらす。限界を迎えたガイアスのシステムは負の感情が凝縮された種を撒き散らす。その種はガイアス中の感情を持つ生物の心に沈み込むと発芽の時を今か今かと待つ。しかしそこから発芽する種はごく僅かで大抵の種は感情を持った生物の中で消滅していく。しかしその種と同調、あるいは選ばれた生物の中で発芽した種は根を張りその苗床である存在を侵食し成長していく。そして種が発芽し黒い蕾をつけ花を咲かせる頃には、その同調してしまった生物を魔王と呼ばれる存在に変えしまうのだった。

 魔王の持つ『闇』の力はガイアスの歴史の中にある通り絶大でりガイアス中に生きる生物を死滅させるだけの力を秘めていた。その力を使い魔王はガイアスを消滅させようと行動を起こす。同じ『闇』の力を持つ存在と共に。

 だが『闇』がある所には必ず『光』がある。魔王が持つ『闇』とは真逆な性質を持つ『聖』の力を内包する生物達は、魔王に剣を向ける。

『闇』と『聖』の争い。その戦いの中で生まれる一際は大きな『聖』を内包する存在。それはまるで予定調和のように魔王という存在が現れると必ず姿を現し魔王を打ち滅ぼす。

 その度にガイアスのシステムは正常に戻りガイアスに再び平和が訪れるのである。しかしガイアスに生きる感情を持った生物の殆どは知らない。自分達が抱いた負の感情をガイアスのシステムに吸わせない為に全ての負の感情を魔王が一手に引き受けている事を。

 『聖』の者達は魔王を打ち取った存在を勇者、あるいは英雄と呼ぶ。しかしその勇者や英雄でさえガイアスのシステムによって計算されている事を殆ど知らない。

 しかしそんな負の感情の循環を繰り返す内に、ガイアスのシステムに変異が現れる。それは最初小さな傷のようであった。しかし気付けばその傷は広がり大きな亀裂となってガイアスのシステムを変質させた。変質したガイアスのシステムこそ、『絶対悪』もしく死神と呼ばれる存在であった。

 そんな『絶対悪』死神の姿に更なる異変が起こったのは、サイデリーの王にして伝説の盾の所有者であるブリザラと対峙している時であった。ガイアスの遥か上空にいたかと思えば一瞬にしてガイアスのヒトクイへの北端へと飛ばされたスプリングとブリザラとレーニ。

 スプリングとその両親であるバラライカとリューそしてレーニが戦いを始めた頃、自分はどうしていいのか分からず死神と一緒に戦いを見つめていた矢先の事であった。

 突如として『絶対悪』死神の様子に異変が起こったのであった。


「……嫌な気配がする……」


それからしばらく『絶対悪』死神の様子を伺っていたブリザラ伝説の盾キング。みるみるうちに肥大していく『絶対悪』死神の姿に嫌な気配を感じ取るブリザラ。


『……奴から暴ているような強大な力を感じる……もしや己の力を制御出来ていないのか?』


そう話す間にも止まること無く膨れ上がり続ける負の感情を纏った『絶対悪』死神の体は、もはや死神としての形を保っていられず原型をとどめていない。そんな死神の姿にキングは、己の中に内包している力が制御出来ていないのではないかと己の所有者であるブリザラに告げた。

 

「……うん……膨れ上がった体の内側には溢れだそうとしている『闇』を感じる」


真紅に染まる目、神の目を持つブリザラは、キングの言葉に頷くと、自分の目でも確認するように膨れ上がった死神の内側で暴れまわる『闇』の力を見つめた。


「……キング、このままいけばどうなると思う?」


すでにその先に待つ答えを知っているブリザラ。だがそれでも尚あえてキングに質問をするブリザラの胸中では自分の考えが間違いであってほしいという思いがあった。


『……恐らく王が考えている通りの事になる……解き放たれた大量の『闇』がガイアス全土を覆い、その『闇』に影響され『闇』を内包する者達は凶暴化し世界を更なる混乱へと落とし入れるだろう』


しかしブリザラの思いも空しくキングはブリザラが考えている答えを理解していたように『絶対悪』死神の肥大化の先に待つ事が最悪の事態である事を告げる。

 『闇』を内包する存在は、それだけで脅威な力を持つ存在ばかりである。そんな存在達全てが凶暴化してしまったらガイアスは地獄と化してしまうのは言うまでも無い。


「……多分それだけじゃすまない……『闇』を内包していない者達の心にも『闇』が蔓延する……」


『闇』を内包する存在だけではなく、『聖』を内包する存在、人類にもその影響は出るとブリザラは厳しい表情で肥大を続ける『絶対悪』死神を見つめた。


『……』


言うなれば、ガイアスに存在する全ての生物が無条件で魔王化してしまうという状況に声が詰まるキング。


「……もう考えている暇は無い……止められるか分からないけどキング、『絶対防御パーフェクトディフェンス』を!」


ブリザラはそう口にするとキングを前につき出し構えた。


『……承知した』


抑え込みやり過ごせるかは未知数。そんな状況の中ブリザラは『絶対防御(パーフェクトディフェンス』を展開する事で、死神が解き放つ『闇』を閉じ込めるという選択をした。その選択に少し躊躇しながらもキングは了承すると、『絶対悪』死神を包み込むように『絶対防御パーフェクトディフェンス』が展開される。


『だが王よ……これからどうするのだ?』


ブリザラの判断は的確ではあったが問題が解決した訳で無い。抑え込めたとしてその先どうするのか、キングには全く明確な答えが見つけられていない。


「私にも分からない……でも……こうでもしないとこの世界の終わりは直ぐにやってくる……少しでも時間を稼がないと」


 神の目を持つブリザラにさえこれから先の事は全く見えていない。しかし何か予感めいたものがブリザラの心の中にはあった。それは僅かな希望。手に取ればすぐに手から零れ落ちてしまう水のようなか弱い希望。だがブリザラの心の中には一人の男の後ろ姿がチラついたのだ。『闇』に身を落としたはずの男の後ろ姿が。


「グゥ……グギャャャャャァ嗚呼アアアア亜!」


苦しみとも歓喜とも言えない叫びを発しながら肥大化していく『絶対悪』死神。その内側では今まで喰らってきた負の感情の持ち主達の雄叫びが我先にと外へ出ようと不気味な雄叫びをあげる。


(あああああああああああああ!)


負の感情の頂点に立っていたはずの『絶対悪』死神は、負の感情に覆い尽くされた何かに手を伸ばしながら己の内で肥大化していく負の感情に飲み込まれていくのであった。

 肥大を続ける負の感情が死神の自我を飲み込んだ瞬間、それぞれ別々の場所にいたはずのブリザラ、アキ、ソフィア、スプリングは、背筋に嫌な悪寒を感じた。特に死神の近くにいるブリザラにはその感覚は顕著に現れる。


「さ、寒い……」


 背筋に走る悪寒は、ブリザラの体温を一気に奪っていく。ブリザラはその悪寒の発生下である今や半球状に広がった『絶対防御パーフェクトディフェンス』の中一杯に広がった死神であったものをその赤い神の目で見つめる。

 視力を殆ど失ったブリザラの目ではあったが、真紅に染まる神の目は、肥大化した死神の別の姿を映し出す。


「……何て大量の負の感情……」


 先程までは何となくしか分からなかった負の感情が明白になりその絶対量を神の目ではっきりと確認したブリザラの表情には絶望の色が濃く現れ始めた。それは見つめるだけで自分の心を蝕んでいくとさえブリザラは感じる。


『……私にははっきりとは感じ取れない……だが王よ……このままでは『絶対防御パーフェクトディフェンス』でも押え切れるかどうかわからないのは確かだ……』


 負の感情をはっきりとは確認できないキング、だがその経験から絶対と名の付く防御を関するブリザラとキングが主力としている『絶対防御パーフェクトディフェンス』ですら死神であったものから湧き出る負の感情の量に耐えきれるか分からないと、自分の持ち手を強く握り占めるブリザラに伝えた。


「……」

 

それだけ大量の負の感情が今の今まで死神という存在の中に内包されていたという事実がブリザラに衝撃を与えキングに対して返す言葉も浮かんでこない。


(……どうすればいいの……私はどうすれば……私の役目は……)


思考を巡らせるブリザラ。今までも圧倒的な力を目の当たりにしてきた事はブリザラも何度もあった。しかし今ブリザラの前に対峙する負の感情の力とは他とは比べられないほどに強別格であり強大で圧倒的であった。

 数百年という時間をかけ蓄積されていったガイアス中から吸い上げられた負の感情、それはもはや神の力を授かっているとはいえ人一人、伝説の盾一つにどうこうできる代物では無い。それこそガイアスに居るのか居ないのかも分からない『神』にしか、いやその『神』にすらも対処ができるのか分からないものであった。

 そんな存在に自分はどう対処すればいいのか全く道が見えてこないブリザラの表情には諦めの色がチラつき始める。自分の心が諦めという言葉に侵食され始めている事に気付くブリザラ。だが目の前の絶望的状況にその言葉に抗う力が生まれてこない。


― ブリザラ……諦めるな ―


その時ブリザラの耳に今一番聞きたかった声が響く。絶望の色に染まっていたブリザラの表情はその声を聞いただけで花が咲いたように赤みを帯びていく。


「……アキ、さん……」


圧倒的な絶望を前に、自分の心の弱さから聞こえた幻聴だったのかも知れない。しかしそれが幻聴であろうと何であろうとブリザラはその声を聞けただけで底知れぬ何かを湧き上がらせる。


「考えるのを諦めたら駄目だ……常に思考し続け行動し続けるんだ……今この状況で何かできるのは自分達だけ」


再びキングの持ち手を強く握り直したブリザラは、以前肥大を続ける死神であったものを睨み続ける。


「あの人が……あの人達がここに来るまで持ちこたえるんだ……」


強い意思と共にブリザラは自分が想う男の背を見つめながらキングに力を送り始める。


『王!』


「まずは『絶対防御パーフェクトディフェンス』の強度を強化……次に二層目の『絶対防御パーフェクトディフェンス』の展開』


そうブリザラが口にすると肥大化を続ける死神を閉じ込めている『絶対防御パーフェクトディフェンス』の強度が目に見える形で強化されていくのが分かった。そしてそれと同時に一枚目の『絶対防御パーフェクトディフェンス』を覆うように姿を現す二枚目の『絶対防御パーフェクトディフェンス


『に、二枚目!』


見たことも無い状況に驚きの声を上げるキング。それもそのはずで本来『絶対防御パーフェクトディフェンス』は絶対的な防御、破れる事など想定はされていない。従い二枚目を同時に作り出す事など無意味でありキング自身は必要としていなかった。それは絶対の防御を誇るキングにとって想像もつかなかった『絶対防御パーフェクトディフェンス』の使い方であった。


「キング、一枚目の『絶対防御パーフェクトディフェンス』の管理をお願い!」


『あ、ああ……』


しかしそれ以上にキングが驚いたのはブリザラの『絶対防御パーフェクトディフェンスの管理能力であった。

 通常一枚で事足りる『絶対防御パーフェクトディフェンスであるが、それ故に管理するのに相当の力と精神力が要求される。ブリザラとキングの指導によってオリジナルとはいかないまでも『絶対防御パーフェクトディフェンス』を習得した盾士は気を抜けばすぐに消滅してしまう程に『絶対防御パーフェクトディフェンス』には繊細な管理が要求される。そんな管理の難しい『絶対防御パーフェクトディフェンス』を二枚も発動しその上一枚目を強化するなど人の身でそれをやってのけるブリザラに驚きを隠せなかった。

 しかしそんなキングの驚きは続く事になる。


「三枚目!」


キングが一枚目の『絶対崩御パーフェクトディフェンス』の管理を任せされた直後であった。二枚目の『絶対防御パーフェクトディフェンス』を包み込むようにして三枚目の『絶対防御パーフェクトディフェンス』が姿を現したからだ。


『な、何と!』


一枚でも無く二枚でも無く、三枚目を出現させるブリザラ。その表情に余裕は無い。しかし先程のように絶望も諦めの色も一切無い。


「キング……一枚目と二枚目の管理は出来る?」


その言葉にまさかとキングはブリザラの表情を見つめる。ブリザラの表情はやるという表情であった。その表情に思わず笑いが込み上げるキング。


『……王よ、私を何だと思っている、絶対的な防御を誇る伝説の盾キング……『絶対防御パーフェクトディフェンス』の一枚や二枚、管理してみせる!』


そう言うとブリザラの管理下に置かれていた二枚目の『絶対防御パーフェクトディフェンス』を奪うようにして管理を始めるキング。

 今まではやる必要が無かっただけで出来ない訳では無いというように『絶対防御パーフェクトディフェンスの二枚同時管理を始めるキングを横にブリザラは四枚目の『絶対防御パーフェクトディフェンスの展開を始めた。


「これで時間を稼げるはず……後は……」


その先の言葉は口に出さずブリザラは言葉を飲み目の前に展開された『絶対防御パーフェクトディフェンスを見つめるのであった。



― ユウラギと呼ばれていた大陸 中心部 ―



― …… ―


今まで若干の表情の変化を見せたものの身動き一つしなかった魔王アキの顔が、不意に海が広がる方向へと向けられた。その視線の先にあるもの、それはヒトクイであった。


「な、何これ……気持ち悪い……」


それが何かは分からないが、得体の知れない何かの気配を感じたテイチは思わず口を塞ぐ。


「テイチ!」


アキと同じ方向を見つめながらテイチを何かから守るようにして抱きかかえる水を司る神精霊ウルディネ。それはアキやテイチウルディネから離れたソフィアも感じたようであった。


― 時間が無い……どうやらゆっくり話している時間は無いようだ ―


そう言うとアキは右手を少し離れた場所でテイチ達を見つめる神精霊達に向けた。


― まずはお前達からだ ―


そう言った瞬間、アキの右手から何かが放たれ神精霊達を直撃する。すると忽然と神精霊達はその場から姿を消した。


「アキさん!」


アキの思わぬ行動に動揺と驚きを隠せないテイチ。


― 心配するな、神精霊達をブリザラの下へ送っただけだ ―


そういうとアキは次にまた少し離れた場所でアキによって拘束されたままのガイルズに右手を向ける。


「次はお前だ聖の獣……」


「テメェ! 俺を変な所に送り込んだら承知しねぇぞ!」


テイチやアキの声が届かない場所にいるはずのガイルズ。しかしアキ達の会話が聞こえていたのか、向けられるアキの手に対して文句をたれる。


― 心配無い……お前にとって恰好の餌の場所へ案内してやる ―


「恰好の餌だと? 俺はまずお前で腹を満たしたいんだがな!」


― 悪いな……それは出来ない……兄貴に起こられるからな ―


不意に笑みを作るアキ。その表情を近くで見ていたテイチとウルディネは驚く。


「何? 兄貴だと? あんな奴の事はしらねぇな! 俺はあいつの為に道を作る裏方になんざ絶対に回らねぇ!」


それが誰を意味するのかすぐに理解したガイルズは、以前レーニに言われた事を思いだしながら激怒する。


― ならお前が持つその聖獣の力で『絶対悪』を喰い尽くしてみせろ ―


「ぬかせ! 俺がぶっ潰してお前のその能面見たいな表情をひっくり返してやる!」


ガイルズが言い終わるのを待ちアキは右手から神精霊達を消した何かをガイルズへと放った。その瞬間ガイルズを拘束していた巨大な黒い手二本を残しガイルズの姿は忽然と消えた。


― さて次はお前だ女 ―


そう言うとアキはブリザラと瓜二つであるソフィアにその右手を向ける。ソフィアもまた他の者達同様にアキとテイチの姿を見つめていた。


「……えッ? 何?」


不意に右手を向けられたソフィアはアキの行動に首を傾げる。


『ソフィア様! あの陰気臭い根暗野郎の手から強い力を感じます』


「なに! それって私を攻撃しようとしてるの?」


全く状況のつかめないソフィアはすぐさま手甲の形であった伝説の武具ナイトを全身に纏い迎撃体勢をとる。


― それでいい ―


そう呟くアキは右手から何かを放つ。


「背筋に悪寒が走ったと思えば……全く何なのよちゃんと説明しなさ……」


そう言い残してその場から姿を消すソフィア。


「……それで次は私か……」


アキの不可解な行動に流石に気付いた元最上級盾士であり無名の剣聖であるランギューニュは、アキとテイチの前に姿を現した。


― そうだ ―


短くランギューニュの問に答えるアキ。


「だろうね……でも私は拒否する……お前のような危険な存在を一人にする訳が無い……」


全てとはいかないまでもアキが何をしようとしているのか理解しているのかランギュー二ュは、アキの行動に対して拒否を示した。


― ……拒否するのか? ―


「ああ、拒否する……そもそも君が私を送り出そうとしている場に私は相応しくない……」


― ……? ―


「私の中に流れる血の半分は『闇』を内包するもの……彼ら『聖』の力を持つ者達と肩を並べるのには相応しくない」


自分の血の半分が『闇』を内包している事を告げ、自分はその場には相応しくないと口にするランギューニュ。


「だから私は、同じ『闇』を内包するお前の動向を見守る事にする……異論は言わせない……」


ランギューニュの言葉には断固としてこの場から動かないという強い意思を感じが籠っていた。


― そうか……ならばいい…… ―


言われなくてもランギューニュの素性は知っていたアキ。ランギューニュに向けられた右手を下ろすとラアキはンギューニュから視線を外し、自分を見つめ続けるテイチとウルディネに視線を向ける。


― 最後はお前達だ……悪いが話はこれで終わりだ……詳しく聞きたければウルディネに聞け ―


アキは自分を見つめ続けるテイチから視線を外すとウルディネに向けた。


「アキ……お前はそれでいいのか?」


― もう決めた事……とやかく言われる筋合いは無い…… ―


ウルディネの言葉をピシャリと止めるアキ。


「アキさん……」


― …… ―


上目でアキを見つめるテイチの瞳は気を抜けば吸い込まれそうなほどに純粋であった。


「アキさん……また……あえますか?」


― …… ―


テイチの問に一瞬黙り込むアキは右手をテイチとウルディネに向ける。


― ああ……会えるさ…… ―


「この嘘つきがッ!」


― いつか……ここでは無いどこかで ―


テイチに対して口にしたアキの答え。それに対して吐き捨てるようにウルディネの言葉が響き渡る。次の瞬間テイチとウルディネの姿はアキの前から消えた。姿が消えた二人を確認したアキは、テイチに対して口にした答えの続きを口にするのであった。




ガイアスの世界


 肥大を続ける死神


 魔王アキによって負の感情の供給を絶たれた『絶対悪』死神は、己の中にある今まで喰らい続けた負の感情を制御できなくなり暴走を始めた。

 しかし魔王アキによって負の感情を断たれただけで負の感情を制御できなくなったというのは少々説得力が小さくそれ以外にも何かしらの原因があると推測されているが現時点では分かっていない。




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