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最後で章 28 親子

 ガイアスの世界


『鎧通し』亜種


スプリングの放った拳による『鎧通し』。これはリューにとっては全くの想定外の出来事であった。剣の技を極めたリューにとって『鎧通し』を他の武器で使用するなどという事は全く頭の中に無かったからだ。魔法使いや拳闘士を経験してきたスプリングだからこそ発想ともいえるだろう。

 効果は一緒であり、射程は短いが出の速度は早く、至近距離からの爆発的な効果が見込めるのではないだろうか。




 最後で章 28 親子



『絶対悪』を抑え込み魔王の『闇』が渦巻く世界、ガイアス



 

 あちらこちらに黒煙が立ち怒号が飛び交う戦場。そこに希望は無くただ消費されるように人の命が消えていく。まじりあう剣と剣、飛び交う弓、放たれる魔法。その全てはどれも命を狩る為の術。そしかし命が簡単に消費されていく戦場の中、ひときは生命を強く感じさせる者の姿あった。その者は当たり前のようにその場に立ち不敵に笑い自分の背にいる者達を先導していく。

 まるで戦場に愛されているように、そしてまるで戦場に嫌われているように、迫りくる剣は舞うように飛び交う弓はその者を避けるように、放たれる魔法はその全てが悲しみの音楽のように敵側からの攻撃は、全てその者を避けていった。

 戦場に愛されし者はただ戦場を歩く。ただそれだけなのに戦場の空気は全てその者のものとなっていく。

 そんな戦場に愛されし者を見惚れるように見つめる若きイライヤ一族の男。


「あんた達、強いな! 俺と一緒にこの島国の天下をとらないか?」


悠然としかし人懐っこい破顔した笑みを浮かべながら戦場に愛されし者は、血反吐を吐きいつ命を狩られるかとその時を怯えながらも剣を振るう若きイライヤ一族の男に語り掛けた。それがリューとヒトクイ先代の王、ヒラキとの出会いであった。



「……ヒラキ王!」


過去の記憶から突然現実へ引き戻されるようにしてベットから飛び起きたリュー。


「なぜこんな所にベッドが……」


周囲は広い平原。町も無ければ村も無く家の一軒もありはしない。それなのにも関わらず、リューが寝ていたベッドを含め二つ綺麗に並んでいた。となりのベッドにはリューとの戦いで精神、体力共に限界を迎え泥のように眠りにつくスプリングの姿があった。兎も角、平原に並べられたベッドはそれだけで違和感を放っていた。


『お目覚めか……主殿の父上殿よ』


拳闘士が装備するナックルの形に姿を変えていた伝説の武器ポーンは、自身の主の両腕からその主の代わりにリューに対して目覚めの挨拶を口にした。


「……うぐぅ……そうか……私は……」


思い出したかのに体内に広がる痛みに顔を歪ませながらベッドから立ち上がるリュー。


「……スプリングに敗れたのだな……」


体中に未だ響く痛みの意味を理解するリューは、自分にその痛みを植え付けた男、スプリングの寝顔を見つめ自分が敗北した事を思いだす。


「……子の成長、か……嬉しくもあるが、やはり悔しいものだな……」


父親として子の成長を見れた事は、嬉しくあったがしかしリューも一人の剣聖。戦いに敗れ悔しいという感情は人並みに感じていた。


『失礼だが、父上殿……あまり我所有者を子供扱いしてもらっては困る』


ポーンは自分の所有者であるスプリングを子供扱いされるのが嫌なのか、父親であるリューに対して子供扱いをするなと静かに口にする。


「……そうか……そうだな……スプリングはもう子供では無いのだな……伝説の武器よ詫びよう」


息子の成長を見届ける事なく黒ずくめの刃によって倒れたリューにとって、スプリングの記憶は子供の頃で止まっていた。そんなリューにとって再び会えた息子を子供扱いしてしまうのも仕方がない。だがリューは自分の考えが間違っていたとポーンに素直に頭を下げた。


「おお、目覚めたかリュー!」


立ち上がったリューに対して声をかける男の声が響く。


「……やはり……あなたでしたか……」


突然背後から声をかけてきた者の正体を悟ったリューは、全く動じずることなくゆっくりとその者に向け振り返った。リューの視線の先にはまるで剣聖が剣を作り出す時のように、玉座をどこからともなく出現させる男の姿があった。男はその玉座に腰掛けるとリューに向けてニカリと裏表のない笑顔を向ける。


「『我流我道の剣聖』……ヒラキ」


「いや~懐かしい二つ名を……それなら俺も言わなきゃな、『静流の剣聖』リュー=イライヤ」


互いが持つ剣聖の二つ名を口にする両者は静かに対峙する。

 

《……レーニ殿?》


 表裏の無い笑顔をリューに向けるヒラキの表情に戸惑いを抱いくポーン。それはポーン自身が知っているヒラキの表情ではなかったからだ。ポーンの知るヒラキの笑いは王らしく上品な笑みであった。しかし今ポーンが見ているヒラキの笑みは、何処までも無防備で全く性質が異なっていた。明らかに自分が知っているレーニのヒラキとは雰囲気が違う事に動揺するポーン。


「……失礼、お久しぶりです、王」


ヒラキを王と言い直したリューは玉座に腰掛けるヒラキに膝を折り、頭を下げた。


「はぁ……相変わらず真面目だな、リューは」


堅苦しいと苦笑いを浮かべるヒラキ。


《やはり……違う? ……まさか……》


 ヒラキの言動や仕草は明らかにレーニが演じていたヒラキとは違う事を確信するポーン。そんなポーンは初めてレーニと出会った夜、スプリング達と一緒にレーニから聞かされた過去の話を思いだしていた。一人の夜歩者ナイトウォーカーと王の話を。


「……本当に変わりませんね、王は」


「お前は、少し変わったな……人の親になったからか?」


レーニがヒラキの姿をしている時には絶対に見せないであろうひょうきんな顔そして軽口、それはポーンにとって違和感でしかない。しかしリューにとってはそれが普通だというように会話は続く。


「……今まであなたは何をなされていたのですか?」


笑うヒラキとは対照的に少し厳しい口調でヒラキが今まで何をしていたのか尋ねるリュー。


「何をしていたって、死んでいたんだよ」


あっさりと自分は死んでいたとリューに告げるヒラキ。しかしならば今、目の前にいる者は何者なのか。当然リューもヒラキの言葉に納得するはずも無い。


「そんなはずは無い、現に今あなたはこうして私と話している、死んだ者との会話は不可能だ」


「いやいや、だったらお前も同じだろう」


自分を棚に上げヒラキの死を認めないリュー。


「ならば今、私の前にいるあなたは何者ですか?」


「……ならこっちも質問だ、お前は何者だ? なぜ死んだはずのお前が自分の息子がやろうとしている事を否定する?」


ヒラキの表情は笑顔であったが、一瞬にして場を支配するほどに周囲はピリッとした空気に包まれていく。


《……な、何だこの者……本当に人間か?》


張りつめる空気にポーンは驚いた。今までも一人の存在がその場の空気を支配するという事は何度も見てきた事のあるポーン。得体の知れない者、人を超えた何かと何度と無く関わり合ってきたポーン。しかしヒラキのそれはポーンが見てきたものとは格が違っていた。うまく説明できないが、周囲にある全て、人に限らず物までもがヒラキを見つめているようなそんな感覚であった。そこに立つだけで存在を全ての者や物に伝えるような、兎に角ヒラキという男の実体が掴めないと思うポーン。ヒラキという存在はそれほどまでに異質を放っていた。


「……私はあの方から力をお借りして、この世界にバラライカと共に舞い戻ってきました、それは全て我息子、スプリングを間違った道から正す為」


「あの方? ……へーわざわざ、不良息子を正しい道に導くためにあの世から舞い戻ってくるとはとんだ親馬鹿だなお前達」


リューの答を鼻で笑うヒラキ。


「お言葉ですが王、今スプリングの身に起こっている事は、不良という言葉で片付けられるような問題では無い、国の……いや世界の命運がかかっているのです!」


どこかふざけたような言い方をするヒラキに対して明らかな苛立ちを見せるリューの語気は強くなる。


「いや、変わらないだろ……息子の人生だ、好きにさせてやれよ」


「あなたという人は……これは親子の話、例え王であろうと口を出さないでいただきたい!」


ヒラキの言葉に怒りが頂点に達したのか、声を荒げるリュー。


「今世界の命運が、とか言っていたのは何処の誰だよ」


声を荒げたリューに対してさっきと言っている事が違うだろうとぼやくヒラキ。

 そんな会話が飛び交う中、話の中心となっていたスプリングは、ゆっくりと目さましおもむろにリューヒラキに視線を向けた。

 

(……な、なぁポーン……一体何が起きている?)


《主殿、目覚めたか》


目覚めの光景にしてはあまりにもトンチンカンな光景に顔を引きつらせるスプリングは、寝ていた時の体勢のまま自分の手に纏わるポーンにこっそりと今起こっている状況を確認した。


《父上殿の前に突然初代ヒラキ王が姿を現した》


「ッ!」


ポーン同様ヒラキをレーニだと勘違いしていたスプリングはポーンの言葉があまりにも突拍子も無く思わず体がビクついてしまった。


(わ、訳が分からない、何で初代ヒラキ王がここに居るんだ? たしかレーニさんの話だと……)


≪ああ、私も最初はレーニ殿だと思った……しかしその言動や仕草、纏っている雰囲気が別人すぎる……あそこにいる者は、レーニ殿では無く間違いなく初代ヒラキ王だ》


自分の分析結果からすれば、今リューと話しているのはレーニでは無く、初代ヒラキ王であることに間違いは無いと言うポーン。


(た、確かに……全く同じ顔なのに別人にしかみえない……)


ポーンに言われヒラキやリューに気付かれないよう様子を伺うスプリング。その視線にはスプリングが見たことの無いヒラキがいた。


「……そもそもだ、もうすでに死んでいる俺達がこの世界の事をあーだこーだ言うのは違うだろ?」


自分達はもう死んでいる。そんな自分達が世界の行く末に口を出すのはお門違いだと言うヒラキ。


「そう言うのなら、なぜ王はこの場に姿を現したのですか!」


「そりゃ、お前達がこの世に舞い戻ったからだろう」


「そんな後出しじゃんけんみたいな事を」


会話の流れは常にヒラキにあった。ヒラキの言葉に翻弄されるリューは、話にならないとヒラキから視線を外す。


「悪かったよ、そんな怒るなって……」


「はぁ……」


まるでふざけ過ぎた為に怒ってしまった友人に謝罪するような口調でヒラキはリューをなだめる。


「リュー、俺も同じだ、お前が息子を外れた道から救おうとしているように、俺も外れた道を進もうとしているお前とバラライカを救いにきた」


「……私とバラライカを救う?」


ヒラキの言葉の意味が分からず困惑するリュー。


「お前は……いや、お前達はあのお方って奴がどんな奴かちゃんと理解しているのか?」


そう言うとヒラキは今までリューに向けていた視線をスプリングに向ける。しかしその視線はスプリングを見ている訳では無かった。


「……なぁ……バラライカ?」


「うっ……」


今まで一体何処にいたのか、声をかけられたバラライカは、その場に突然姿を現すようにして姿を現した。体中には無数の傷がありその表情は体力を消耗しているのか疲れが見える。それに加え何か気まずそうな表情を浮かべるバラライカはゆっくりとリューやヒラキの前に歩いてきた。


「バラライカ、無事だったか!」


バラライカの無事と再会を喜ぶリューは駆け寄るとすぐさまバラライカを抱きしめた。


「う、うん……」


「どうしたバラライカ?」


どこか歯切れの悪いバラライカに首を傾げるリュー。


「バラライカ……お前はレーニとの戦いで理解しただろう、お前達が言っていたあのお方って奴がどんな存在かを……」


全てを知っているといった口ぶりでヒラキはバラライカにそう言う。


「……バラライカ?」


自分の腕の中で悲しい表情となるバラライカに動揺するリュー。


「……リュー私達は……間違ていた……」


「お、おいバラライカ……何を言っているだ、スプリングを助ける事の何が間違っていると言うんだ」


バラライカの突然の言葉に信じられないと言った表情になるリュー。


「あのお方は言っていたじゃないか、あの夜歩者ナイトウォーカーが全ての元凶だと、ヒラキ王が殺されたのも、アキが死んだのも、私達が殺された事だって!」


リューの言葉にバラライカの表情は苦しそうに歪む。


「リュー……聞きたいんだけど、なぜあのお方って奴は、お前達を生き返らせてまでお前達の息子の道を正そうとしていたんだ?」


「……ッ!」


「なぜあのお方って奴は前達家族の揉め事に頭を突っ込んできたんだ? 別に自分に何の得も無いのに」


「……そ、それは……」


なぜ今の今までその事に何の疑問も抱かなかったのか、ヒラキの指摘によって自分の思考が霧がかっていくのがわかるリュー。しかしそれを認めたくないとリューは首を振った。


「そ、それはスプリングの力を夜歩者ナイトウォーカーが狙っているからで……」


途中で口を止めるリュー。


夜歩者ナイトウォーカーがお前達の子供の力を求めているなら、横に置いていたりせず、すぐに喰らえばいいだろう……」


夜歩者ナイトウォーカーは喰らった者、正確には血液を抜き取った者の力を得る能力が備わっている。これは夜歩者ナイトウォーカーの強さの理由の一つであった。もしスプリングの力をレーニが欲しているのだとすれば、一緒に行動などせずスプリングの血を抜き取れば話は早いとヒラキは言う。


「そ、それは……そ、そうスプリングの力が強大すぎて隙を狙っていたんだ!」


ヒラキの指摘に対してリューはスプリングの力が強く、真正面から戦うには危険だから油断させるために一緒に行動していたのだと説明するリュー。『鎧通し』が扱えるほどの実力を持つスプリングならば、夜歩者ナイトウォーカーに遅れをとるはずはないとリューは説明に付け加えた。


「だったらお前達がわざわざ出しゃばらなくても問題なく事は済んでいるんじゃないか?……」


それほどの実力があるならば、わざわざリューやバラライカの力を借りずとも一人で立ち回れるだろうとすかさず指摘するヒラキ。


「そ、それは……」


冷静になれば、おかしな事が幾つも頭に思い浮かんでくるリュー。


「……私は……私達は間違っていたのか……」


再び息子に会えるということで冷静な判断が出来なくなっていたのか、リューはようやく己の犯した過ちに気付き始めた。


「リュー……私、レーニとの戦いで彼女の心の中を見たの……」


「……心の中?」


暗い表情を浮かべるバラライカは、自分がレーニにしてしまった事を思い出したのか体を震わせていた。そんなバラライカの様子を見ていたリューは震えるバラライカの手を握る。


「……うん、まるで自分をさらけ出すようにレーニは、私に私達が知らなかった事を見せてきた……」


 それはバラライカの魔法のフルコースがレーニを直撃した直後であった。魔力を使い果たしたバラライカは自分の放った魔法の爆風に飲まれ空を舞っていた。空を浮遊する為の魔力も残っておらずバラライカはこのまま落下するのを覚悟したその時、突然バラライカの体は優しい輝きを発する光に包まれた。


(……温かい……)


まるで太陽の光を浴びフカフカになった布団にくるまれているような感覚。そんな感覚の中、バラライカの視界の中には、自分のものでは無い記憶がその者の感情と共に流れ込んでくる。そしてその優しい光がレーニのものであると気付いた。

 感情は嘘をつけない。自分の中に流れてくる他人の記憶。それは気持ちのいいものでは無い。最初は自分の中に流れ込んでくるレーニの記憶を拒絶していたバラライカ。しかししだいその記憶にはレーニ自身の感情が刻み込まれている事を知るバラライカ。流れ込んでくる記憶に合わせて喜びや怒り、悲しみや楽しみといった様々な感情が凄い速度でバラライカの心を撫でていった。


(……レーニ……)


流れ込む記憶には自分やリューの姿もあった。自分達がヒトクイの辺境の地で黒ずくめの男に殺された時、レーニの心は張り裂けるかのように深い悲しみに溢れていた。しかし己の心を封じ必至にヒトクイの王として国の人々と向き合おうとするレーニの姿がバラライカの中に流れ込んでくる。

 スプリングと初めて出会った時、大きな喜びと共に、小さく悲しみが混じっていた。それはバラライカとリューの子供に会えたという喜びと両親を守ってあげられなかったという贖罪からの悲しみを抱いていたという事もこの時バラライカは知った。

 それ以外にもレーニがどんな気持ちでヒトクイの王の座についたのか、自分の兄弟といっても過言では無い闇歩者ダークウォーカーに対して抱いていた感情、様々なものがその一瞬でバラライカの中に流れていったのである。

 感情は嘘をつけない。もしレーニが自分の私利私欲のために、ヒラキを殺しヒラキになり代わりヒトクイの王となっていたのであれば、レーニの記憶を通して自分が受けた心の痛みは何なのか、バラライカはレーニの決死の覚悟によって自分が間違っていた事に気付いたのだった。


「……リュー、私達は……間違っていた……あの方は……いえ『絶対悪』という存在は私達を利用してスプリングを殺そうとしていたのよ!」


バラライカは自分の不甲斐無さに怒りを持ちながら両目に大きな涙を溜めリューに訴えかける。


「『絶対悪』……」


「スプリングが言っていた事は全て正しかった……なのに私達はあの子の話をちゃんと聞いてやれなかった信じてあげられなかった……私は……母親失格だ……」


泣き崩れるようにへたりこむバラライカは、リューにすがりながら押し殺すように泣き声をあげる。


「……」


整理しきれないといった表情のリュー。


「そしてお前達のもう一人の息子は『絶対悪』の術中にハマり今は世界を消滅させようとする魔王になっちまった訳だ」


「そ、そんなッ!」「何だと!」


ヒラキの言葉に騒然となるリューとバラライカ。


「リュー、お前の親父さんは『絶対悪』に支配されていた……赤ん坊だったもう一人の息子を連れ去り魔王になる為の因子をとり込ませていたようだ」


「……なんてことを……」「……」


ベッドの中でヒラキの言葉を聞いていたスプリングもリューやバラライカと同じくアキの魔王化の事実に衝撃を受けていた。


≪……なるほど……純粋な赤ん坊の頃からすでに『闇』の力にとり込まれていたのか……それならば、『闇』と共存していたあのアンバランスな力もうなずける≫


ヒラキの言葉に納得するポーン。


「……父さん、母さん……」


「スプリング」「スプリング」


ベッドから起きたスプリングは、リューとバラライカに声をかけた。


「……俺は大丈夫だから……アキの下へ行ってくれないか……」


それはスプリングが考える僅かな希望であった。


「父さんと母さんがアキと話せば、あいつの魔王化が解けるかもしれない、解けなかったとしても世界を消滅させるなんて馬鹿な考えを止めるかもしれない」


それは可能性としてはあまりにも低いものであった。しかしそれよりもスプリングはアキに両親を会わせたいそう思ったのだ。


「ああ、それは俺としても賛成だ……てかお前達も会いたいだろ?」


二ヤけるヒラキはスプリングの提案に賛成だと手を上げる。


「で、ても……私達はアキに会う資格なんて……」


「違うよ母さん……資格なんて関係ない……会いたいか会いたくないかだ」


スプリングの言葉に小さく戸惑いながら頷くバラライカ。


「スプリング……」


自分の間違いに気付いたリューはスプリングにあわす顔が無いのか、視線をスプリングに向ける事が出来ない。


「……父さんと……いや、剣聖リュー=イライヤと戦えたお蔭で俺はまた強くなる事が出来た……感謝してます」


スプリングは深く頭を下げ自分が憧れていた剣聖と戦えた事に感謝した。


「スプリング……俺はお前の事を信じてやれなかった……自分のことばかりをお前に押し付けて俺は……本当にすまなかった」


目に涙を溜めながらリューはスプリングに今までの事を詫びた。


「よっしゃ、話は済んだな……どうやらこの事態に『絶対悪』も気付いたみたいだ、お前達に時間は無い、すぐにもう一人の子供の下に迎え、茶を飲みながら話す時間ぐらいは俺が稼いでやる」


そういうとリューとバラライカの体に触れるヒラキ。


「ヒラキ王?」「ヒラキ?」


「下噛むなよ……」


そういうとヒラキが触れていたリューとバラライカの姿は忽然とその場から姿を消すのであった。


「父さん! 母さん!」


忽然と姿を消したリューとバラライカに驚くスプリング。


「何心配するな、チャチャっとお前の兄弟の下に送っただけだ」


居なくなったリューとバラライカに驚くスプリングにそう言うヒラキは、スプリングに視線を向ける。


「さて……俺がここに居られるのも僅かだ、そこで新米剣聖、ちょっとこっちに来い」


そう言いながらスプリングを手招きするヒラキ。スプリングはヒラキに言われるがヒラキの下へと近づいていく。


「最強剣聖である俺からお前に贈り物がある」


「贈り物?」


「そうだ、心して受け取れよ後輩!」


そういうとヒラキはスプリングの両手を握るのであった。









ガイアスの世界


 ヒラキとは


その存在がもはや謎と言ってもいいヒラキ。スプリング達の前に姿を現したヒラキは何もかもを知っているようであった。ポーンから言わせればもはや人間でも無いようである。

 はたしてその正体は一体何なのでしょう……正直それはこの物語を書いている山田にも今の所分からない。


 ※さてさて前回は色々とご迷惑をおかけしました。おかげですっかり体調もよくなりティシュを離せない毎日を送っております。

 とりあえずもう若くないのでしっかり己の体調管理していきたいと思います。



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