真面目に合同で章 (スプリング&ソフィア編) 4 対峙する罪 道を切り開く拳
ガイアスの世界
転職後の能力
ある戦闘職から全く別系統の戦闘職に転職すると能力が低下したり使えなくなる技が出てきたりする。
それは転職場で受ける加護の種類が変わることに影響している。
転職場の加護には何種類かあり、戦闘職の特性にあった加護が施されるのだが、転職場にとって加護に関しての情報は重大機密のため、人々にはあまり知られていない。
その為加護を施す術者も自分が加護を施せる術者である事は知人は愚か親や家族にも言えないようになっている。
真面目に合同で章 (スプリング&ソフィア編) 4 対峙する罪 道を切り開く拳
剣魔法の力渦巻く世界、ガイアス
「いや~申し訳ありません、お怪我はありませんか?」
呑気な声を上げながら突然現れた男は、ソフィアに迫った獣人の鋭い爪を腕ごと引き裂いた。
《……グゥアアアアアア!》
一瞬の出来事に獣人も自分が男に何をされたのか分からずにいた。少し遅れて自分の腕が失われている事をその目で確認した獣人は、痛みを思い出したかのように痛みの咆哮をあげる。
「……」
「……いやはや、本当に申し訳ない」
何が起こったのか理解できない、そんな表情のソフィアに再度詫びる男は、そう言うとゆっくりとソフィアに振り返った。
「ッ!」
一体何がそんなに楽しいのか、ソフィアに謝っている男の表情は笑っていた。つま先から頭の先に走る悪寒。男の表情は笑顔にも関わらず嫌悪や悪寒を沸き立たせるような印象をソフィアに与える。
「どうしましたか剣士のお嬢さん?」
まるで張り付けたように一切笑顔を崩さない男はそんなソフィアの内心に気付いているのかいないのか、小首を傾げながら聞いた。
「ああ、ごめんなさい……助けてくれてありがとう」
嫌悪や悪寒は感じるものの、自分やスプリングを助けてくれた事実は変わらないとソフィアは笑顔の男に礼の言葉を口にした。
「ああ、そんな、悪いのはこちらのほうなのでお詫びもお礼の言葉も必要ありません……それにまだ終わっていませんからね」
そう笑顔の男の言う通り、まだ問題は解決した訳では無い。腕を失いその痛みから咆哮を上げた獣人はまだ生きている。それに腕を失った獣人の姿にソフィア達を警戒し距離をとったもう一体の獣人、ソフィア達が背にする建物の屋根から様子を伺っている獣人二体が未だソフィア達を狙っているからだ。
「……そうだな」
自分達を遮断魔法で閉じ込めた術者の存在は気になるが、今は目の前の敵に集中しようとソフィアは、意識を失ったままのスプリングを背に再度剣を構える。
「……見た所、剣士になって日が浅い……ですがあなたからは類まれなる才能を感じます……」
「おだてても何もでないよ……」
内心褒められたことは嬉しく思うソフィア。しかし目の前の男をどうしても信用できないソフィアは素っ気なくそう返す。
「あははは、いやはや、更に気にいりました、どうかこれをお使いください、きっとお役に立つはずです」
そう言った笑顔の男はソフィアに向けて何かをほおる。
「えッ……これって……手甲?」
笑顔の男がソフィアに放った物、それは黒い色をした右腕用の手甲だった。
「ええ、うちの新商品です、こう見えて私新進気鋭の武器防具屋でして、それは我店の最新作です」
「は、はぁ?」
自分は武器防具屋だと名乗る笑顔の男。どう見てもそうは見えないソフィアは、胡散臭さを感じながらも手にした手甲を自分の右腕に装着する。
(な、何? ……凄く手に馴染む)
「おおっと……!」
手甲を手に装着したソフィアを見ながら、片腕を失った獣人の攻撃をサラリと避ける笑顔の男。
「どうですか、凄く手に馴染むでしょう……その手甲には特別な鉱石、月石が使用されているんです、どうぞお使いになってください」
そう言うと笑顔の男は攻撃に失敗しよろけた片腕の獣人をソフィアに方向へと蹴り押した。
「ッ!」
押し出される獣人に一瞬驚くソフィア。しかし次の瞬間ソフィアは手に持った刀身の細い剣を素早く前に突き出す。
「ッ!」
《ギャアアアアアアアアアアア!》
獣人の悲鳴が遮断魔法によって外と隔絶されたガウルドの町の一角に響き渡る。
「これ……凄い……」
笑顔の男の手助けはあったものの、獣人を一体倒すことに成功したソフィアは、獣人を倒したという事実そっちのけで自分の手に装着された黒い手甲に目を向け呟いた。
「……想像以上に軽いうえに、体に力が入ってくる……」
武器武具屋と名乗る胡散臭い笑顔の男からもらった手甲は、既存する他の手甲とは明らかに性能が違っていた。軽いのは言わずもがな、特質するべきは使用者に得体の知れない力を与えることであった。
「色々と企業秘密ではありますが、うちの商品は他の武器屋や防具屋ではそうそう出来ない能力付与を用いた品を扱っています」
ソフィアの驚いた姿が嬉しいのか笑顔の男は、そう自分の商品を自慢する。
「凄い……これがあれば……」
ソフィアの目の色が変わる。今まで不安や恐怖が支配していたその目に大きな自信が現れが感じ取れる。
(……この手甲があれば今の私でもスプリングを守ることができる……)
そう心の中で呟いたソフィアは、ソフィアの攻撃によって絶命した獣人の様子を見て後ずさりする獣人に視線を向ける。
《グゥゥゥゥ……グァアアアアア!》
視線を向けられた獣人は一瞬たじろいだものの、すぐに威勢よく咆哮をあげ自分に視線を向けたソフィアに飛び込んでいく。
「……遅いッ!」
迫る獣人に対しそう吠えたソフィアは、細身の剣先を獣人に向ける。
《グゥルァ!》
絶命した獣人と同じようにソフィアに迫った獣人もその鋭い爪を振り下ろす。しかし先程よりもゆっくりと明白に見えるようになった獣人の攻撃を軽々と避けたソフィアはその次いでというように獣人の腹に細身の剣を滑らすように這わせた。
「お見事ですお嬢さん」
一瞬の出来事歓声を上げ拍手する笑顔の男。
獣人の体液が飛びちる音と共にその体液がソフィアにふりかかる。真っ赤に染まる自分の体など気にしている暇もなく、屋根から飛び降りその落下を威力に変えた攻撃をしてきた獣人の一撃をバックステップで避ける。
「はぁああああ!」
地面に突き刺さった爪を抜こうとする獣人の隙を突いてソフィアは獣人の首に細身の剣を振り下ろす。
転職場で手に入れた何の変哲も無い細身の剣は、それがまるで名剣である如く鋭い切れ味で獣人の胴から首を切り離した。
《グヒァ!》
今まで猛々しい雄叫びを上げていたとは思えない声を発しながら獣人の首は地面へと転がる。首を失った胴体からは真っ赤な血液が噴水の如く噴き出し、たどたどしく一歩二歩と歩いたかと思えば切れるように地面に倒れた。
《グゥ……》
残った最後の一体は戦意を喪失したのか情けない声を上げながら屋根から屋根へと飛び移ろうと大きく飛び上がった。
「逃がしません……」
そう言うと飛び上がった獣人に手を向ける笑顔の男。照準が合うとそのまま開いていた手を握る。
《ゴゥ……グゥギャァア!》
一瞬黒い霧状の何かが獣人の体に纏わりついたかと思えば、突如獣人は吐血し力無く地面に落下する。落下した獣人は体を抱え苦しみもがくとそのままこと切れた。次の瞬間、突然獣人の体が風船のように膨らみ体内の臓物を撒き散らしながら破裂する。
「はあはぁはぁ……」
「いや~うまく扱えていましたね、お嬢さん」
先程よりも更に強い拍手をソフィアに向けながらゆっくりとした足取りで近づいてくる笑顔の男。その男の姿を視線で捉えながらソフィアはべったりと付いた獣人の血液を拭う。
「……これであなたも……立派な人殺しだ……」
「ッ!」
笑顔の男の言葉にソフィアの目は見開いた。そのまま口に手を当てソフィアは力なくてへたりこんだ。そんなソフィアの姿に、裂けているのではないかと思えるほど口を吊り上げる笑顔の男。
「うぅぅ……」
突如としてソフィアの体を襲う震え。胃から込み上げる異物感。ソフィアは込み上げる吐き気を必至で抑え込んだ。
姿形は違うとしてもガイアスで獣人という存在は人間と同じ括りである人類に分類されている。例え襲ってきたのが獣人で正当防衛であったとしても、獣人達にソフィアが行った行為は、紛れもない殺人であった。
ソフィアが手にした手甲から流れる力は、目の前の獣人が自分と同じ括りの存在であることを忘れさてしまう程に強力で、万能感さえ感じさせる程であった。
自分が犯してしまった罪をここでようやく理解したソフィアは、それに耐えきれず体が拒否反応を起こし膝から崩れ落ちる。
(スプリング達は……戦場でこんな思いをして乗り越えてきたの?)
地面に額をつけ体を震えさせるソフィア。混乱する頭の片隅で、スプリングやガイルズは戦場で多くの人を殺してきたはずだ。その二人も今自分が感じている罪悪感を抱いたのだろうかと、ソフィアは思う。自分の体に圧し掛かる罪に今にも心が押しつぶされそうになるソフィアは、そうならないよう奥歯を噛みしめギリギリの所で砕けようとする心を引き留める。
「どうしましたお嬢さん? 輝かしい勝利だというのにそんな暗い顔をして?」
最初からこんな得体の知れない男が持っていた手甲など使わなければ良かった、そう後悔するソフィアの視線は、自然と笑顔の男に向けられる。
「……ふふふ……いい具合に暗くなった瞳になりましたね……この場を用意したかいがありました」
「……ッ!」
笑顔の男の言葉に心臓が激しく脈打つソフィア。今なんと言った、自分の耳すら信用できない程に動揺するソフィアは、目を見開く。
ソフィアを遮断魔法の中に閉じ込めた術者、そして獣人を襲わせた黒幕は、今自分の目の前にいる不気味な笑みを浮かべる男であったのだ。
「いや~実にいい実験になりました、そのお礼では無いですがその手甲は差し上げます……有意義な使い方をしてください……ソフィアさん」
名前を名乗っていないのにも関わらず笑顔の男はソフィアの名を口にすると胸に手を当て一礼した。
「ま、待て! ……お前は……お前は一体何がしたいんだ……」
立ち去ろうとする笑顔の男を弱々しい声で引き留めるソフィア。
「……何がしたい? うーん……そうですね……」
ソフィアの問いに足を止めた笑顔の男は少し考えるように空を仰ぐ。
「……この世界の……消滅……ですかね……」
本気とも冗談ともつかない様子で笑みを浮かべる笑顔の男。
何を言っているのか理解できないが、今目の前にいる存在がとてつもなく危険だということだけは分かったソフィアは、ヨロヨロとした足取りで立ち上がると獣人の血が付いた細身の剣を笑顔の男に向ける。
「ふふふ……獣人を殺した程度で大きな罪悪感を抱いているあなたが……人の姿をした私を、殺すことが出来るんですか?」
まるで殺せるならどうぞといわんばかりに笑顔の男の言葉はソフィアを挑発していた。
脳裏にチラつく獣人達の死骸。笑顔を浮かべる男の言葉がソフィアの罪悪感を増幅させる。
「うぅぅ……」
再び襲って来る吐き気にソフィアの体が強張る。
「……はぁ……その様子では……まずあなたは人を殺すことに慣れなければいけません。そうでもしなければ私を殺すことなど不可能です……」
コツコツと靴を鳴らしながら笑顔の男はソフィアに近づき耳元に口を近づける。
「私の名は、笑男……あなたが人を殺すことに躊躇することなく罪悪感を抱かなくなった時……またお会いしましょう……」
そう言うと笑男は一歩下がり道化師が舞台に上がった時にするような挨拶をソフィアにすると霧のようにその姿を消した。
笑男が姿を消すと今まで静寂が広がっていたガウルドの町に人々の喧騒が戻ってきた。モノクロであった周囲にも色が戻り薄いピンクの花を咲かせる木々がその色を鮮やかに主張する。
「く、クソッ……」
ガウルドの喧騒など耳に入らないといった様子で再び地面に力無く膝を落とすソフィア。
『……音声認識完了……力が足りません、停止状態に移行します』
ソフィアの近くで謎の声が囁く。腕に装着された黒い手甲は鈍い光を放つのであった。
― 生と死の狭間 ―
「主殿! ぼやっとするな!」
天に昇る長い階段、その逆方向に見える禍々しい扉以外これと言って指し示す物が無いただ平坦が続く場所で長い黒髪を揺らしながらポーンは叫ぶ。
「うるせぇ! お前がしっかりやれ!」
生まれたままの姿で死神の攻撃に右往左往するスプリングは、光輝く二本の剣で死神を切り裂くポーンに文句を垂れた。
現在スプリング達は死者の扉から湧くように現れた死神建と終わらない戦いを続けていた。正確に言えば死神と戦えているのはポーンだけで、スプリングは死神の攻撃を避けるので精一杯であった。
「それでも『剣聖』を目指す男か!」
「はぁ? 一切何も持っていない今の俺が仮にも神と呼ばれている死神を素手で殴って倒せっていうのか? 冗談も程々にしろ! 無理に決まっているだろがッ!」
そう言いながら一振り二振りと息のあった死神の攻撃をギリギリで避けるスプリング。
「ああそうだッ! 主殿は戦場で出会った敵に武器を持っていないので許してくださいなどと戯言をいうのか?」
「ぐぅ……そもそも今の俺は魔法使いだ! 死神をぶん殴ったとしてもヘロヘロなパンチしか打てないんだよ!」
死神達の鋭い大鎌の攻撃を再びギリギリの所で避けながら自分の身体能力の現状に苛立ちを覚えるスプリング。
「……気付いていないようだな主殿」
「ああ何がだよ?」
両手に持つ二本の光の剣輝く剣で縦横無尽に迫りくる尻神を切り捨てていくポーンの姿に更に苛立つスプリングは殆ど喧嘩腰で言葉を吐いた。
「それだけ動いて体は疲れているか主殿?」
先程から死神の猛攻をことごとくかわし避け続けるスプリングに問うポーン。
「……」
右から左から迫る死神の大鎌を避けるスプリングは、少し困った表情で黙り込む。じっと立つスプリングの姿にこれはチャンスと思った死神の一人が大きく大鎌を振り下ろす。
「ふんッ!」
大鎌の振り下ろしに合わせるようにして上半身を深く沈め左足を前に出したスプリングは、そのまま右手の拳を死神の髑髏顔に振り抜く。すると骨が折れる音と共にスプリングの拳が顔面に入った死神はのけ反りながら吹き飛んでいく。
「……ぶん殴れた……」
その結果に驚きの表情を浮かべるスプリング。しかもスプリングが放った拳は死神にとって効果的であったのか一瞬にして灰になっていく。
「そうだそれでいい」
見事な右拳を放ったスプリングにそう声をかけるポーンは、そのまま自分に迫る死神を一刀両断した。
「……何か納得できないが、ぶん殴れるだったらぶん殴ってやる」
そう言いながら拳を鳴らすスプリングは傭兵時代、部隊の仲間の中にいた拳闘士に素手での戦い方を教えてもらったことを思いだし鳴らした両拳をそのまま顔の前に持っていく。
「さあ、かかってこい、俺を殺せるもんなら殺してみせろ死神ッ!」
今までの鬱憤を晴らすように弾けた笑みを浮かべるスプリングはそう叫びながらゾロゾロと姿を現す死神達の輪の中に飛び込んでいった。
― 小さな島国 ヒトクイ ガウルド宿屋 ―
「ついたよ……スプリング」
どうにか立ち上がる気力を取り戻したソフィアは、未だ目覚めないスプリングを担ぐとそのまま自分が泊まるガウルドの安宿へと戻っていた。
「……」
ガウルドの一角、路地裏で起こった出来事を不意に思いだすソフィアの目に涙が溜まる。その涙がこぼれ落ちないよう部屋の天井に視線を向けるソフィア。
だが天井に視線を向けても涙は溢れるように溢れてくる。溢れだす涙を止める為ソフィアは手で拭った。
「……血の臭い……」
ソフィアの体は先の戦闘で戦った獣人の血で染まっていた。
「よ、ご……汚れちやったから……洗い流さない……と」
そういいながら膝から崩れ落ちるソフィア。手で拭ったはずの涙は再び溢れ視界を歪ませる。もう感情の限界だというように流れ出る涙と共にソフィアの口から嗚咽交じりの声が漏れ始める。
「どうしよう……どうしよう……人を……人を殺しちゃったよ……」
剣士になったとはいえ、まだ少女であるソフィアの心では人を殺したという事実を真正面から受けるには心が幼すぎた。こんな時、その少女の心を支える者でもいれば抱く罪悪感も多少は和らぐのだろうが、今ソフィアの心を支えられる者はいない。
「ぅぅぅ……」
外の喧騒とは違い、ソフィアの咽び泣く声が静まり返った部屋に響いた。
― 小さな島国ヒトクイ ガウルド 裏路地 ―
夜も更け淡いピンクの花を咲かせる木の下で騒いでいた人々も流石に居なくなった頃、一人の男が自分の存在を隠しながらガウルドの裏路地の一つへと入って行く。
そこはヒトクイが統一される前からある古い建物が並んでいる。老朽化が進み既に区画整理の計画が進んでいるこの一角は、取り壊されることが決まっている。既に住人の退去は済んでおり人の気配は無い。
そんな人気のない裏路地の一角で男は足を止めた。
「……臭うな……」
そう言いながら光の届かない地面に視線を落とす男。
「なるほど……これか……」
男が落とした視線の先、そこには無残な姿をした獣人の姿があった。
「……」
既にこと切れている獣人を調べようと膝を折る男。腹を裂かれ首も落とされている。そこら辺を探せば獣人の頭が転がっているだろうと立ち上がった男は周囲を見渡した。
「こりゃまた何とも……」
転がる首と視線が合う男。
「……ん?」
転がる獣人の首を見つめていた男は、妙な違和感を覚えた。
「こりゃ……獣人じゃ無くて人間だな……」
男がそう言うのを待っていたかのように獣人の首は形を変えていく。そこにあったのはスプリングに絡みソフィアに足を貫かれた酔っ払いのものであった。
「……あいつの仕業なのか?」
脳裏に過る少年の顔を思い出した男の表情は一瞬にして厳しいものになる。
「あのクソガキ……一体何を企んでやがる……」
男は転がる酔っ払いの顔から視線を切ると誰も居ない暗い路地裏の闇に溶けて消えていった。
ガイアスの世界
魔法使いに転職した場合の異常な能力低下。
転職をした時に全く違う系統の戦闘職を選ぶと能力が低下することがあるが、特に魔法使いなどの生命力を力に変換し放出するタイプの戦闘職は能力の低下が大きい。
原因としては、転職場が魔法使いなどの戦闘職に授ける加護に原因がある。と言ってもこれは別段魔法使いなど戦闘職を陥れる為の行為などでは無く、魔法使いなどの命を守る為の措置であると言われている。
本来、ガイアスに生きる多くの人間には魔法を使う素養が殆ど無い。エルフや一部の獣人は魔法使いになることなく魔法を放つことが出来るが、人間にはその素養が殆ど無くたかが小さな火を起こす魔法を使おうとしただけでその者の全ての生命力が吸われ暴発してしまうのだ。
しかしガイアスが混沌の渦にあった時代、人間は多くの犠牲を出しながらも魔法を扱える術を見出した。それが転職場で戦闘職に付く場合に受ける加護である。加護を受けることによって人間の可能性は広がったといえる。
しかし魔法使いなどの戦闘職に関しては、大きな犠牲が付いて回ることになった。それが異常な身体能力の低下であった。
まだはっきりとした理由は分かっていないが、魔法を扱う場合に消費する生命力を抑える為に身体能力が犠牲になっているのではというのが戦闘職達に加護を施す者達の見解である。
これは転職場の加護師だけが知る重要機密であり一般人はこれが普通なのだと不思議には思っていないようだ。
身体能力を維持したまま魔法を扱えるようにするため加護の研究は日々続けられているというが、今の所成果は見られないようだ。
例外として魔法使いにならず魔法を使える者がいるが、それは本人の人間離れした才能という他に無い。




