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最後で章 3  滅びを望んだ少年再び?

 ガイアスの世界


 ガイルズに最後に挑んだ青年。


 統率役争奪戦で最後にガイルズに挑んだ者達。その中心人物にいた者は現在ガイルズの右腕となっていた。それはガイルズが戦った者の中で一番の可能性を見出したからであった。まだ粗削りではあるが、底知れぬ潜在能力をその青年から感じていた。

 青年には記憶が無いようである日気付いたらガウルドの病院に寝ていたという。例のガウルドの戦いに巻き込まれ記憶を失ったのではと医師は言っていたが、定かでは無い。


 


 最後で章 3 滅びを望んだ少年再び?



闇の力渦巻く世界、ガイアス



「……おいおい、こりゃどういうことだ?」


ヒトクイ製大型船の船上に出てきたガイルズが目にしたのは、サイデリーとヒトクイの船が入り混じる船団数十隻を丸々覆い隠すように半球状に展開された半透明の結界であった。


「ガイルズさん、どうやらこの結界、サイデリーの王が一人で展開しているみたいです」


「ほー噂には聞いていたが、サイデリーの王というのは、とんでもない奴だな」


まだ幼さの残る青年の話を聞いたガイルズは、自分の周囲を見渡し結界が魔物の侵入を完璧に防いでいる事を確認すると船内に帰ろうと踵を返した。


「ちょ、ちょっとガイルズさん何で戻るんですか?」


「馬鹿、お前、部隊長のまとめ役なのにこんな事も分からないのか?」


「え、いや……そう言われても、僕達はこれからあの結界にへばりついた魔物達を掃討しなきゃならないでしょう?」


「だ・か・ら……その必要が無いって言っているんだ……」


「えッ?」


ガイルズの言葉にキョトンとする青年。


「たく、あんなスゲェ結界使えるなら俺ら要らねぇんじゃないのか……」


そう言いながらガイルズは展開されている結界を指さした。


「よく見とけ……今俺達が船上に出ている意味が無い事がよく分かるから」


「はぁ……」


ガイルズの指示に従い青年は半信半疑のままガイルズが指さす方向を見つめた。すると半透明であった結界が真っ赤に光り出す。


「えっ?」


次の瞬間結界は四方八方から炎を放ちへばりついていた魔物達を消し炭にしていった。


「あ……」


信じられない光景に驚愕する青年。


「あ……こりゃ……想像以上だわ……」


それはガイルズにとっても想像以上だったのか、ポカリと口をあけ驚愕していた。


「な、何なんですかアレ!」


結界に起こった現象に青年は興奮するように腕をブンブン振り回しながら目を輝かせた。


「俺が知るか!」


「ええ! 何か知っている口ぶりだったじゃないですか!」


ガイルズの答えにあからさまに不満をたれる青年。


「俺が理解していたのは結果だけだ、まさかあんな感じになるなんて想像もしてねぇよ」


正直ガイルズは衝撃を受けていた。経験上ガイルズは、戦場などで結界を使ってくる術者に出くわしたことは数えきれないほどあったし、その結界に攻撃魔法を這わせることで向かってきた相手にダメージを与えたりするのも見たことはあった。当然目の前に展開している結界もそれぐらいの芸当をやってのけることはガイルズも想像していた。ダメージを負った魔物達は攻撃不能になり、その間にこの区域を抜けるそんな想像をしていたガイルズであったが、まさか防御主体であるはずの結界から発せられた炎がへばり付いていた全ての魔物を消し炭にするなんて想像もつかなかった。そんな見たことも無い結界の説明を求められてもガイルズは口にできる知識も経験も持ち合わせていなかった。


「……とりあえず、ここはサイデリーに任せて問題無い、ユウトお前は船上に出た奴らに船の中に戻るよう指示を出せ」


「あ、はい……あの……指示を出したら、しばらくこの場所からあの結界を眺めていても良いですか?」


「あ? ……ああ好きにしろ、風邪引くなよ」


目を輝かせながら周囲の者達に指示を出すユウトをチラリと一瞥したガイルズは好き者だと苦笑いを浮かべた。


 魔物が結界に張り付き結界から発せられる炎によって消し炭にされ、また魔物が張り付き炎によって消し炭にされという状況を繰り返していた。しかし何度も繰り返されるその状況の中で、船団に張られた結界は一度たりとも消えることも綻ぶこともせず、その役目を淡々と果たしていた。

 そんな絶対的防御の結界をサイデリー製大型船の船上から淡々と見つめるブリザラの姿があった。


『王よ、そろそろムウラガの海域を抜ける、そうすれば一旦はこの状況も終息するだろう』


女性の細腕では持つには大きすぎる大盾、伝説の盾キングは、そろそろこの状況に終わりが近い事を自分の所有者であるブリザラに告げた。


「……うん、そうみたいだね……」


平然と自分の半分はあろうかというキングを手に持ち自分を中心として張られた結界、絶対防御パーフェクトディフェンスから視線を逸らし周囲を警戒するように見渡すブリザラ。


「ところでキング、気付いていた?」


『何をだ?』


「かれこれ一時間ぐらいこうしているけど、じっと私達に視線を向けている人がいる」


『ああ、これだけの規模の結界だ、珍しくて見ている兵達もいるだろう』


 そもそもブリザラが展開している結界、絶対防御パーフェクトディフェンスは二年前のフルード沿岸の戦いを知らない者にとっては珍しい代物であり、それに加えその規模と張り付いた魔物を焼き殺すという物珍しい術を見物しようと船上に上がり見つめている者は多くいた。


「うん、そうなんだけど、その中で一人だけ私達を見つめている人がいるの」


『……』


ブリザラは肉眼ではとらえきれない距離にいるはずの者に視線を向ける。そのブリザラの視線を追うようにキングはブリザラが感じているという視線の主を探した。


『!』


視線の主を見つけた瞬間キングには衝撃が走った。


「……ねぇ……キング、私達を見つめてる人って」


『ありえない……そんな事があるはずがない……あの者は……ガウルドで小僧が倒したはずだ』


キングの言葉に表情を曇らせるブリザラ。


「うん……私も最初違うと思ったの……でも私のこの目が、それを否定する……」


『王が感じている事が本当だとすれば……間違い無く我々は脅威に晒されている事になるぞ!』


 ブリザラの真紅に染まった目から見る世界は、常人とは異なる世界であり今のブリザラには、生き物や物の形をはっきりと認識することは出来なくなっていたが、生き物や物から発せられる力が視覚的に分かるようになっていた。それは常人の目よりもはっきりと時に残酷に克明にその状況を映し出すのだ。そのブリザラの目が、自分を見つめる者が小さな島国の城下町ガウルドで起こった戦いでアキと戦い敗れた者である事を映しだしていたのだ。


「もしかして、ビショップが」


『それは有り得ない……奴は確かにあの戦いで所有者と共に滅びたはずだ』


 キングと同じく伝説と呼ばれ、アキによって倒された者が所有者であった伝説の本ビショップ。ガウルドでの戦いでビショップは所有者と共に滅びた事をキングは知っている。だからこそこの場にビショップがいる事は有り得なかった。

 ならばなぜビショップの所有者であり、アキによって倒されたはずの者がこの場に居るのか、ブリザラもキングも理解できなかった。


『どうする王よ、今からその者の下に向かい真意を確かめる事も出来るが……』


「……ううん、様子を見よう、もし何等かの思惑があるのなら、すでに動きだしていてもおかしくない、だけどあの人はジッと私を見つめるだけで何もしてこない、それにもし今私がここで動いて事が大きくなったら、この船団を無事にユウラギに送り届けることができなくなる」


『うむ……分かった……王の言う通りにしよう、だが警戒は強めておく』


「うん、お願い」


そう言うとブリザラは絶対防御パーフェクトディフェンスに向かって来る魔物、張り付く魔物が居なくなった事を確認するとゆっくりと絶対防御パーフェクトディフェンスを解いていくのであった。


 船団を襲撃しようとしていた魔物達をブリザラによる絶対防御パーフェクトディフェンスによって掃討してからしばらくして、ブリザラはヒトクイの代表者達に集まってほしいという事を伝令兵に伝えた。

 それからしばらくしてブリザラがいるサイデリー製大型船にはヒトクイの代表達が集まった。


― ムウラガ 安全域 サイデリー製大型船内 円卓の間 ―


 ブリザラが乗るサイデリー製大型船船内に集められたヒトクイの代表者達はサイデリーの盾士達によって氷の宮殿内にある円卓の間をそのまま移したような場所に通された。

 円卓の間に集まった者達は、サイデリーからは王であるブリザラと最上級盾士であるランギューニュ、ヒトクイからは王代理であるムスバムに全権を任されたヒトクイの軍を仕切っているガルワンド将軍と聖撃隊副隊長マシューそしてヒトクイ志願兵組からは統率役ガイルズと統率役補佐である青年ユウトであった。


「突然のお呼びして、申し訳ありません」


ブリザラはそう言うとヒトクイの代表達に頭を下げた。


「いえ、招集に対して問題ありません、出港でドタバタしていてゆっくりと話もできませんでしたからな、いい機会です」


ヒトクイ統一時代を生き抜き将軍にまでのぼりつめたガルワンドは将軍とは思えないほどの柔らかい表情でブリザラの言葉に何の問題も無いという答えを返した。


「まあ、状況的に話し合えるのはこのタイミング以外に無いしな」


「うわわ、な、何しているんですかガイルズさん!」


両腕を頭の後ろにやり足を円卓に乗り上げたガイルズの態度に顔面蒼白になるユウト。


「ガイルズ殿、サイデリー王の前で無礼であろう!」


ガイルズの態度に顔に青筋を立てながら怒鳴り散らすガルワンドよりも将軍らしい顔つきである聖撃隊副隊長マシュー。


「……あ? ああ、悪い悪い」


乗り上げていた足を下ろすガイルズであったがその口調には全く反省の色が伺えずその態度にマシューの額に更に太い青筋が現れた。


「ガ、ガイルズさん、皆さんの前でそんな態度をとっては駄目ですよ、それでなくても僕達は志願兵、信用されていないんですから」


周囲にはできるだけ聞こえないよう自分達の立ち位置が危ういものであることをガイルズに説明するユウト。

 志願兵や傭兵は正規の兵では無いため、己の命や利益を最優先にする者が多い。時たま独断先行し己の利益を優先する者もいるし、負け戦となった途端逃げ出す者も多い。当然命令違反や逃走した者に対しては重い罰が課せられるのだがそれでも命令違反や逃走という行為は無くならず正規の兵や国からは当然信用が無かった。

 しかしユウトの言葉にガイルズは鼻を鳴らした。


「確かにあんたらは俺達を信用していないだろう、だが今回に限ってはそんな事ちまちま考えている暇ない、なんせ世界の命運がかかっているんだ、失敗すれば皆滅びる、それに立ち向かうのにオウサマだの将軍様だのましてや聖撃隊の副隊長様なんて立場関係ないだろ?」


ガイルズは己の考えを貫くように下ろしたはずの足を上げると勢いよく円卓に置いた。


「なあ? ……そう思わないかサイデリーのオウサマ?」


メンチをきるとでもいえばいいのか、ガイルズはこの場で一番実力のあるサイデリーの王ブリザラにガンを飛ばす。殺気とも言えるガイルズの視線に瞬時に反応したのはブリザラの後方で立っていたランギューニュであった。すぐさまブリザラの下にかけよろうとするランギューニュ。しかしブリザラはランギューらュを手で制した。


「ガ、ガイルズさん!」


「……スプリングさんからはもっと適当な人だと伺っていましたが、色々と考えられているのですね、ガイルズさん」


ガイルズの威圧に全く動じないブリザラは挑発するようにガイルズにスプリングから聞いていた話を口にした。


「な!」


一発かますはずが逆にかまされたガイルズは毒気を抜かれたような表情になった。


「……あいつのお仲間かよ……たくまさかサイデリーの王とも仲がいいとはな」


そうブツブツ呟きながらガイルズは再び円卓に乗り上げていた足を下に下ろし姿勢を正した。


「非礼は詫びる、一応俺も一万の数の命を預かる身なんでな、上の奴が吹抜けていたらぶっ飛ばして乗っ取ってやろうって思っていたんだ」


ガイルズは自分の本心を包み隠さず口にする。そんなガイルズの行動に冷や冷やするユウトは生きた心地がしなかった。


「少なくとも、約三万以上の兵達を一人で守ったあんたは問題なさそうだ……」


そこで一旦言葉を切るガイルズ。


「だがだ、何であんな事をしたか、俺には理解できない……何でだ?」


 非礼を詫びると言いながら一国の王に対して口調を変えないガイルズに隣に座っていたユウトは生きた心地がせずもうやめてくれという表情でガイルズを見つめていた。しかし当然ガイルズは止めずブリザラの返答を待った。

 船団を覆い尽くすほどの結界を展開していたブリザラの行動。ガイルズにとっては全く考えられないものだった。あれだけ強力な力があるのなら、こんな目的地へ向かう道中で使わず多少犠牲が出たとしてもサイデリー、ヒトクイ、志願兵の船団にいる三万以上の戦闘職達で対処するのが普通の考えだ。しかし目の前の王ブリザラはそれをしようとしなかった。それにどんな意味があるのかガイルズは理解できなかった。


「それは……サイデリーが、いえ私の信条が守るというものだからです」


「はい?」


幾多の戦場を渡り歩いてきたガイルズにとってブリザラの言葉は余りにも理想論でしか無く幼稚であった。

 戦場は死がつきものの場所だ。数分前に笑いあっていた者が次の瞬間にはただの肉塊になっている事なんて当たり前のようにある。特に今回はただの戦場では無い。魔王が相手なのだ、そんな甘い言葉など通じる相手では無い。


「おいおい、オウサマよ……俺の見込み違いか……あんたの言っている事はただの理想論でしか無く、絶対にありえないことだ……冗談はよしてくれよ」


姿勢は正しているものの、先程よりもガイルズの視線は鋭くブリザラに向けられていた。しかしそれでもブリザラの表情は一切変化しない。


「冗談ではありません、私はこの場にいる者達を本気で守ろうと思っています」


「ハッ話にならねぇな……確かにあんたの結界は強力だ、だが絶対に人は死ぬ」


「死なせません」


ブリザラとガイルズの意見は平行線のまま交わることは無かった。


「よく分かった……あんたが凄い力を持っていることは認める……だが俺はあんたの理想論に付き合う気は無い、勝手にやらせてもらう」


「はい、私も勝手にあなた方を守らせていただきます」


ガイルズの言葉になぜか微笑で返事を返すブリザラ。ブリザラはガイルズの言葉の裏をしっかりと理解していたからだ。


「チィ……勝手にしろ」


そういうと席から立ち上がるガイルズ。


「ま、待ってくださいガイルズさん、まだ話は終わっていない所か始まってもいません!」


部屋から出ようとするガイルズを止めに入るユウト。


「ああ、それはお前が聞いとけ……それにオウサマはどうやら本当に話したい相手は俺じゃなくお前みたいだからな」


「えッ?」


キョトンと茫然とするユウトを前にガイルズは部屋を後にした。


「ガルワンド様、本当にあの者が志願兵の統率役でよろしいのですか!」


すでに額に三本の青筋が現れているマシューがガルワンドにすがるように話かけた。


「マシュー副隊長……ムスバム殿と聖撃隊隊長の決定が信じられないか?」


「え……いや……」


ムスバムやインベルラ名を口に出されてはマシューもそれ以上何も言えず押し黙った。


「あ……あの……サイデリー王……私に何かお話があるというのは本当ですか?」


一国の王であるブリザラがただの戦闘職である自分に何か話があるなど信じられないユウトは緊張した面持ちでブリザラに声をかけた。


「本当は直接お話をお伺いしようとは思っていなかったのですが、ガイルズさんは鋭いお方ですね」


「え? ……ああ、あの人ああ見えて結構仲間思いで色々と見ていると言うか……あ……すいません!」


ブリザラにあまりにも自然に話しかけられたユウトは、ガイルズ達に対して話すような口調でブリザラの言葉を返してしまい慌てて頭を下げた。


「いいんですよ、ユウトさん……ガイルズさんが言うと通り、上や下がと言っている暇はありません」


「そ、そんな……」


ガイルズの言っている事は分からなくも無い。しかしそれは志願兵の間でガイルズが統率役だからこそ許される事ではないのかとユウトは思う。例え世界の命運がかかった戦いであっても一国の王を前にして上や下が関係ないとはユウトには思えなかった。


「ユウトさん、とりあえずあなたとの話はこの場の話が終わってからでもいいですか?」


「あ、はい、それはもう全く問題ありません」


「ありがとう、それでは色々とありましたがこれからの事について話をはじめましょう」


ブリザラの言葉によって一名かけてしまったが、本来の話し合いが始まるのであった。



 ― 数十分後 ―


「それでは、そう言った流れで」


「分かりました」


「はい」


 ブリザラの言葉が終わりの合図になり、数十分に渡る魔王討伐作戦の流れの話は終わり、それぞれが席を立ち上がる。しかしその中で話の内容も半分も理解できていないユウトの姿があった。いや理解できていないというのは語弊がある。話の内容自体はユウトの頭ならば問題出来る内容であった。しかしその内容が理解できなくなるほどユウトの心は落ち着きを無くしていた。

 それもそのはずで一国の王から一対一で話をしたいと言われれば、それに動揺しない者など殆どいないはずだ。ユウトはブリザラやガルワンド、マシューの話を聞いている体を装いっていたが、一切会話に入ることは無く、内心ではブリザラからどんな事を聞かれるのかで頭が一杯であった。

 ユウトもまだ幼さの残る顔はしているが立派な青年である。ブリザラがまさかの愛の告白をしてくるのではないかと一瞬考えてみたりもしたが、すぐにほぼ今日初めて会ったばかりの自分に愛の告白などしてくることなどありえないと若い妄想をすぐさま打ち消して他の可能性を考える。


(……)


しかし考えつくのは無であった。どう考えてもブリザラと自分に思い当たる接点は無く、しかも他の誰にも聞かれたくないというブリザラの意思が感じられる一対一でという状況にユウトの思考は混乱した。


「それではユウトさん、私の部屋に向かいましょうか」


「は、はい……部屋ですね……ええ!」


「どうかなさいましたか?」


「い……いえ……大丈夫です」


王の部屋、どういう言うことだと更に混乱するユウト。自室ということは、プライベートな空間だ。そこに一国の王であるブリザラが自分をしかも男を招くということは……

 一度完全に捨て去ったはずの可能性が頭の中に再浮上してくるユウトの頭は混乱で爆発寸前になっていた。しかも自室に招き入れられるということは告白以上の凄いことが待っている可能性もある。若い妄想は天井しらずに膨れ上がっていく。


【王よ、近くで見てみてどうだ、何か変わった点はあるか?】


(ううん……特に何も……しいて言うなら凄い潜在能力を宿している感じはあるけど……あの時のような絶対的な力は感じない)


ユウトが若い妄想に明け暮れる中、ブリザラとキングはユウトの正体について考えていた。

 すでに死んでいるはずの者が存在しているという状況はブリザラとキングにとって脅威を与える。しかも世界を滅ぼそうとしていた人物ならばなおさらである。どこで本性をみせるのか分からない以上ブリザラとキングは警戒していた。


「さあ……入ってください」


自室についたのかブリザラは部屋の扉を開けブリザラの後をついてきたユウトを部屋へと招き入れた。


(ここが……一国の王の自室)


 部屋を見渡すユウトは余りにも素っ気ない部屋に驚いていた。部屋に飾り気は一切なく、ただ寝るだけのような部屋。寝るためのベッドも自分達が使っているものと殆ど変わりが無い。王の部屋ならばもっと煌びやかで豪華なイメージをしていると思っていたユウト。しかしはユウトは自分の考えが間違っていることに気付き見当違いな事を考えていた自分を恥じた。

 ここは船の中で、しかもこの船は旅客船では無い。この船はガイアスの命運をかけた戦いに挑もうとしている者達が乗っている船なのだ。

 どこか旅行気分が抜けていなかった気持ちを引き締めたユウトは、自分が頭の中で盛り上がっていた邪な妄想を全てかき消した。


「それでお話とは……」


自分に思い当たる節は無いが、きっと目の前の王には何かあるのだろうとユウトは、ブリザラに何を聞かれてもいいように覚悟を決めた。


「はい、それでは……」


ブリザラはユウトの前に立った。


「突然ですがユウトさん……あなたは本当にユウトさんですか?」


「……?」


どんな事を聞かれてもいいよう覚悟はていたつもりであった。だが目の前の王ブリザラはそんなユウトの覚悟を軽く超えるような難解な質問を、ユウトに突きつけるのであった。





 ガイアスの世界


 将軍ガルワンド


 ヒトクイ統一時にヒラキの下で兵として活躍していたガルワンドは、その腕を認められ将軍の地位を手に入れた。その腕は一流であったが本人は至って温厚であり、普段では怒った姿をみた者はいないと言われている。

 しかし戦場では全くの別人になる。温厚であった表情は鬼神の如き凄みを持ち全くの別人なのではと噂されるほどだ。しかしその表情に反して常に冷静だという。しかしここ十年ほどは魔物の襲撃も少なくなり将軍の仕事も減っていたという。

 そろそろ将軍の座から降りようとしていたガルワンドにとってこの戦いが将軍としての最後の仕事にしようとしている。


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