兎に角真面目で章 15 ガイアス初の契約
ガイアスの世界
テイチとウルディネに共有する感覚。
精霊と契約を交わした者は、魔法使いが使う意思伝達魔法のように互いが別の場所にいても会話ができるようになる。
勿論精霊の技量、召喚士の技量、互いの相性によってその距離、感度は変わってくるようだ。凄い者になると、互いの見ている光景もわかるようになるという。
兎に角真面目で章 15 ガイアス初の契約
闇の力渦巻く世界、ガイアス
― フルード大陸 サイデリー王国 氷の宮殿 客間 ―
日の光が閉ざされた客間の片隅でテイチは膝を抱えていた。
「……ウルディネ……」
一緒にいることが当たり前になっていた神精霊ウルディネと離れ離れになり不安になっていたテイチ。それに追い打ちをかけるようにしてテイチの心には悪い予感というものが渦巻いていた。その悪い予感をいち早く消し去ろうとテイチはもう一度、今度は心の中でウルディネの名を心の中で呼んだ。人間と精霊との契約、テイチとウルディネの間で交された特別な絆を手繰り寄せるようにテイチはウルディネに語り掛ける。
しかしテイチが感じたのは分厚い壁に自分の声を阻まれたような感覚。テイチの声はウルディネに届くことは無かった。
「っ!」
それが何を意味するのか。テイチが感じていた悪い予感は、この時、事実へと変わって行く。
(お願い……ウルディネ!)
それでもその事実は真実では無いというように祈るテイチはウルディネを心の中で呼び続ける。その時テイチはウルディネとは全く違う何かが自分の体を通っていくのを感じた。
すると突然テイチのいる客間に風が吹いた。
「?」
テイチは客間の窓をみる。しかし窓は開いていない。だが確かにテイチはその肌で風を感じていた。それだけでは無い。テイチが窓のある方向に視線を向けている間に物音が客間に響く。その物音に視線を向けるテイチ。するとそこには、テイチが居る客間は二階に位置するはずなのにも関わらずその床から突然湧き出すようにして土が出現し盛り上がっていった。
「!」
驚くテイチを無視するかのように盛り上がった土がモコモコと動き出し中からひょっこりと顔を出す立派な髭を蓄えたおじさん。しかしそのおじさんはどうみてもテイチよりも小さく、普通の人間や獣人には見えない。肌の色は茶色くそれはまるで小人のような姿をしていた。
「呼んだかね?」
その小人は土の中から体を出すとテイチを見つめ人語を口にした。
「呼んだ!」
テイチは突然背後からした声に体をびくつかせ、自分の後ろに振り返る。するとそこには半透明な羽を生やした妖精のような少年が立っていた。
「……」
小人と妖精を前に声が出ないテイチ。しかしテイチの表情に恐怖の色は無く純粋に小人と妖精に驚いているようであった。それを証明するように姿を現した小人も妖精もテイチに敵意は無いようで、下手をすれば愛くるしくさえ見える。
「……それで誰がわし達を呼び出したのか?」
誰かを探すようにして周囲を見渡す小人。
「この子以外に誰もいないよ」
小人と同じように周囲を見渡しながら妖精は小人の言葉に意見をした。
「少女よ、本当にお前以外にこの場に人はおらんのか?」
「え……うん」
驚きの余韻を残しつつ自分以外人が誰も居ない事を確認するとテイチは、突然現れた摩訶不思議な珍客の質問に答えた。
「ということは少女よ、お前がわし達を呼び出したことになるが……」
「呼び出した? 私知らないよ……あなた達なんて呼び出していない」
小人の呼び出したという言葉に引っかかりつつも自分はそんな事をした覚えはないと頭を横に振った。
「呼んでいないの? おっかしいな、絶対呼ばれたんだけどな……」
「うむ、強い思いを感じたのだが……」
小人と精霊は腕を組んでテイチを見ながらうんうんと唸る。
「私は……ウルディネを呼んでいただけ……」
「ウルディネ?」
聞き覚えのない名前に首を傾げる小人。
「ああ! ノームット、ウルディネって新しい水の神精霊の名前だよ!」
思いだしたように妖精はノームットと呼ばれた小人にウルディネの事を説明した。
「何! 水の神精霊だと!」
妖精の言葉に驚くノームットはテイチに視線を戻した。
「少女よ、お前水の神精霊とはどういう関係だ」
ひょこひょことヒヨコのように歩きテイチに近づくノームットはテイチとウルディネの関係を聞いた。
「私とウルディネは……友達だよ……ウルディネは難しい言い方をしていたけど……」
「契約じゃない?」
「そう、契約って言ってた」
「な、なんと……」
目を丸くするノームット。
「すっごいね! 君まだ小さいのに精霊としかも神精霊と契約できちゃうなんて!」
ノームットとは違いテイチに対してはしゃぐ妖精。
「なるほど……そういうことか……」
目を丸くしていたノームットは頷くと立派に蓄えられた髭を触る。
「この少女……少女よ名を聞かせてくれんか?」
目を光らせたノームットはテイチに名を聞いた。
「私はテイチ……おじいちゃんと妖精さんは?」
自分の名を伝えたテイチは目の前の小人と妖精の名を聞いた。
「ぷぷぷ……おじいちゃんだって……」
妖精はテイチがノームットをおじいちゃんと言ったことが面白かったのか口に手を当てて笑いを堪えていた。
「おっほん! わしはおじいちゃんでは無い、わしの名は土の神精霊、ノームットだ」
「それで僕の名は風の神精霊、シルフェリア」
自分達の名を口にするノームットとシルフェリア。その正体は土と風を司る神精霊であった。
人の生涯でその存在に会う者は殆どおらず、伝説や逸話としてしか伝わっていない神精霊。召喚士などの間では会えれば幸運と言われるほどの存在がテイチの前に二人も姿を現していた。
「土と風の神精霊……」
そんな珍しい存在が炉の前にいるというのに今一ピンと来ていないテイチは二人を交互に見つめている。
しかし自分の目の前に現れたノームットとシルフェリアがウルディネと似た雰囲気を持っていることはテイチにも理解できているようで、先程よりも少し明るい表情になっていた。
「テイチよ、もう一度聞くがわし達はお前の呼びかけによってこの場に召喚されたのだが、その事は理解しているか?」
「え……召還? 私は……ウルディネを呼んでいただけだよ」
「うん……やはりそうか……」
立派な髭を摩りながら何やら納得したようなノームット。その反応を見ていたシルフェリアも何かに気付いたのかノームットに近づいていく。
神精霊の二人は少しテイチから離れるとお互いの顔を見合わせた。
「水の神精霊と契約を果たしたということは、我々との契約の条件をも一つはクリアしているということになる……」
「テイチが持つ力も僕ら二人を一度に召喚したことで証明されている」
ノームットとシルフェリアはじっと自分達をみつめているテイチが自分達の主となりえるのか見定めるように視線を向ける。
「うーむ、しかしわし達を使役するにはまだあまりにも幼くはないだろうか?」
「僕はいいと思うけどね、テイチには今までにない大きな可能性を感じるし、そもそも僕らを使役できる人間が珍しい…」
ノームットとシルフェリアの性格は正反対であり二つに意見が割れる。
「うむ……お前の言い分は分かるが、やはり幼すぎる……」
「いやいや、人間なんてすぐに大人になるんだ、僕らにとっては僅かな時間じゃないか……足りない知識も僕らが教えればいい、きっとテイチは凄い存在になるよ」
慎重に物事を考えるノームットと可能性という言葉を信じるシルフェリアの意見は交わることは無く平行線をたどる。
自分を無視して行われている話し合いの内容も理解できずテイチはどうしたらいいのか分からないという困惑した表情でノームットとシルフェリアを見つめていた。
そこからノームットとシルフェリアの話は長く続いた。しかし話は平行線のまま交わろうとせずこれでは永遠に決着がつかないと思われたその時であった。
突然、客間の壁にたてられていた蝋燭の火が大きく燃え上がった。
「うわっ!」
突然大きく膨らんだ蝋燭の火に腰を抜かすテイチ。
「これは!」
「あらっ!」
大きく膨らんだ蝋燭の火を見つめるノームットとシルフェリアはこの場に招待された新たな存在に驚きの声をあげた。
「我を呼んだのは誰だ!!」
膨れ上がった火は徐々に人のような形をなしていき、次の瞬間には炎のように燃える真っ赤な髪を振り乱しながら姿を現す美しい女性の姿がそこにはあった。美しい容姿とは裏腹に男勝りで好戦的な咆哮とも思える叫びを上げる蝋燭の火から姿を現した者。
「インフェリー!」
「お前もか!」
蝋燭の火から姿を現した女性に声をあげるノームットとシルフェリア。テイチ達の前に姿を現した女性の正体は、ノームットやシルフェリアと同じく火を司る神精霊、インフェリーであった。
「うむ、私がインフェリーだ!」
シルフェリアとノームットの声に腕を組みながら頷くインフェリー。その姿は、髪はおろか体の殆どの場所が赤く燃え上がっており、今にでも全てを燃やし尽くすような勢いであった。しかし不思議な事にインフェリーが纏った火は客間に燃え移ることは無く、ユラユラと燃え続けている。
「まさか三神精霊全てを同時に召喚するとは……」
茫然と突然現れたインフェリーに驚くテイチを見つめるノームット。
「……ん? なぜお前達がここにいる?」
自分の名を呼んだ者達が、同族の者達だと気付いていなかったインフェリーは自分の前に存在しているノームットとシルフェリアに首を傾げ疑問の声をあげた。
「……久しいのインフェリー、相変わらず寒い所は苦手か」
「何を言うノームット、私は寒いところなぞ……へ……へっくしゅん!」
豪快にクシャミをするインフェリー。その勢いで大きな火柱がインフェリーの体から上がる。その光景を見ていたテイチはインフェリーの体から放たれた火柱を見つめていた。だがやはりインフェリーの体から上がった火柱は他の所に燃え移ることは無く客間には焦げ一つ出来ない。
「ズズ……これは鼻炎なだけだ」
何事も無かったかのように自分のクシャミの理由を口にするインフェリー。
「精霊に鼻炎なんてあるの?」
悪戯な笑顔を浮かべインフェリーに近づくシルフェリア。
「何を言う、精霊だって色々な病気になるものだ」
「例えば?」
「た、例えばだと……うぅぅーん」
シルフェリアの質問に唸り声を上げながら悩むインフェリー。
「お前達、じゃれるのはそれぐらいにしろ、テイチが驚いて固まっているぞ」
インフェリーに助け船をだすようにノームットは固まってしまったテイチへと話を振った。
「うむ? 人か? 幼いな……」
そういいながら固まってしまったテイチに顔を近づけるインフェリー。
「ヒィ!」
突然目の前一杯にインフェリーの顔が移り思わず悲鳴を上げるテイチは尻もちをついた。尻もちをついたテイチに更に顔を近づけるインフェリー。
敵意こそ見せていないが、ノームットシルフェリアと違いインフェリーはその姿だけで威圧感を与えてしまうようでテイチは体を震わせ怯えてしまっている。
「その子がお前を召喚した者だ」
「何この子が私を召喚したのか!」
「それだけじゃないよテイチは、僕らを同時に召喚したんだ、凄いでしょ!」
「何だと同時にだと!」
インフェリーが驚くたびに自分の顔にインフェリーが纏っている炎がビシビシとあたりこのままでは燃やされてしまうのではと恐怖で涙目になるテイチ。
「……」
「……」
テイチは緊張と恐怖で何も言えず何も出来ずただインフェリーの目を見つめることしかできなかった。それはテイチにとっては永遠とも思える時間であった。
しかしその状況をみてもシルフェリアもノームットもテイチを助けようとはしない。
「その子はすでに水の神精霊と契約を交わしているようだ」
ノームットはもうテイチの顔に着いてしまうという距離に顔を近づけているインフェリーに淡々とテイチの事を説明した。
「何! この娘すでに契約者なのか!」
風圧が発生するのではという速度でノームットとシルフェリアに顔を向けるインフェリー。テイチは自分の顔が消し飛んでいないかすぐに自分の顔を触って確認する。自分の顔が消し飛んでいなかった事を手で確認したテイチはもうほぼ泣いている顔で大きくため息をはいた。
「そうだよ! びっくりだよね、並の召喚士じゃ僕達を召喚することも出来ないっていうのに」
テイチの恐怖や緊張を他所に、テイチが凄い存在である事を力説するシルフェリア。
「なるほど……こんな幼き少女が……」
そういうとインフェリーは再びテイチに顔がついてしまうほどに顔を近づけた。再び訪れる命の危険に胸が跳ね上がり顔に手を当てたまま固まるテイチ。
「……うむ、気に入った!」
インフェリーは言葉の勢いのままテイチをその腕で抱きしめた。
「いやああああああ!」
突然のインフェリーの行動に怯えを通り越し困惑するテイチは悲鳴をあげる。しかしそんな悲鳴などきにすることなくインフェリーは自分が思いつくだけの愛情表現をテイチに施していく。
「はぁ……やはりそうか……」
「あははは、テイチもう混乱して泣き叫んでいるね……」
インフェリーの姿に呆れるノームットと微笑ましくみつめるシルフェリア。
「サラマンディーは見た目怖いけど、実は神精霊の中で一位二位を争う人間好きだからね……しかも特にテイチみたいに可愛い少女が」
「可愛いの!可愛いの! 食べてしまいたいぐらいだ!」
「いやインフェリー……その言葉は洒落になってないよ」
インフェリーの言葉を聞いたテイチは更に大声で泣き叫ぶ。先程まで微笑ましく見つめていたシルフェリアも流石にそれは笑えないと顔を引きつらせた。
しばらくそんな事が続き、テイチは心身ともに疲れ果てたのかまるで人形のようにインフェリーのスキンシップを受け入れていた。
見た目に反して乱暴な言葉遣いであり威圧感も残ったままではあるが、先程の鋭い眼光はどこへ、柔らかい笑顔を浮かべテイチを見つめるインフェリーはテイチに頬を摺り寄せる。
「インフェリーいい加減にしないか、これでは話が進まん」
「そうだよ、全く話が進まないよ」
「話? うっ……ううう……分かった」
ノームットとシルフェリアの言葉によってようやくテイチを解放するインフェリー。しかしその顔はまだ物足りないというような表情でテイチを見つめるインフェリー。
「可愛いのは分かるが、限度と節度を持て」
「そうだそうだ、あんなに純粋だったテイチがなんかスレちゃってるよ!」
テイチの焦点は定まらず虚ろな表情を浮かべていた。
「あっ! ……私とした事が……テイチよ申し訳ない……あまりにもお前が可愛いものだから……」
そういいながら再びテイチに手を伸ばそうとするインフェリー。
「だからいい加減にしろと言っているだろ!」
ノームットの声に反応するかのように突然テイチとインフェリーの間を割って土の壁が出現し二人を離した。
「ノームット何をする! これではテイチの可愛い顔が見られないではないか!」
「冷静になれと言っているこの馬鹿者が!」
すると今度は客間の天井から土の拳が現れインフェリーの頭上に落下する。
「い、痛っ! ノームット、か弱い女性の頭を殴るなんてどういうことだ!」
「お前は女性ではなく神精霊だ!」
「おやじとも言うね!」
顔面蒼白になり虚ろになっていた表情に赤みがもどり始めたテイチは、我を取り戻すと目の前でドタバタと騒がしくする神精霊達に恐怖を感じノームットが作り出した土の壁に身を隠しその様子を静かにみつめる。
「お前の所為で、話にくくなってしまったではないか」
テイチの怯える姿に気付いたノームットは困った表情でインフェリーを非難した。
「う、ううう……」
テイチの怯えた表情を目の当たりにしたインフェリーはようやく自分がやりすぎていたことに気付き、シュンと体を小さくする。それと同時に今まで四方八方に燃え盛っていた炎も小さくなった。
目の前の神精霊のやり取りを緊張や恐怖で見つめていたテイチ。しかし表面上怯えているものの不思議な事にテイチの心の中では僅かに安らぎのようなものが芽生えていた。幼いテイチにはその感情を何と表現すればいいのか分からなかった。しかしその感情がウルディネと一緒にいる時のような安らぎであった事を後に知ることになる。
自分の前に突然現れた神精霊達は、姿形、性格は違うがウルディネを感じさせるのだ。しかしそう感じてしまう時点で自分の横にウルディネがいないという事を認めてしまうことになり、テイチの心は寂しさによって締め付けられた。その瞬間テイチの表情は戸惑いや怯え困惑の色が突然消え、暗い表情になる。
「さて……互いに落ち着いた所で、話をしようテイチ」
テイチの表情が暗くなっていることに気付いているのか気付いていないのか分からないがノームットはそう言ってテイチに話を切り出した。
「テイチ、お前にはわし達が驚くほどの力があるようだ…わし達はそのお前の力に引っ張られ、この場に召喚された……しかし強い力があるからと言ってわし達を呼び出すことは容易では無い……テイチよ、一体何がお前をそこまで突き動かしたのだ?」
優しく語りかけるようにノームットはテイチに話しかけた。その状況を黙って見つめるシルフェリアとインフェリー。
「私は……」
暗くなっていた表情が突如として悲しみに包まれるテイチは弱々しく口を開いた。
「……ウルディネに会いたい……」
先程から同じ言葉を繰り返すテイチにどう言葉を返していいのか分からないノームットとシルフェリア。
「よし、分かった! では一緒にウルディネに会いに行こう!」
静寂を壊したのはインフェリーであった。その言葉に驚きの表情を浮かべるノームット。
「インフェリー自分が何を言っているのか分かっているのか!」
インフェリーが口にした言葉は一緒にウルディネを探しに行くというただそれだけの意味の言葉であった。しかし精霊からするとその言葉には深い意味を持つ。精霊達にとって一緒に行くということは即ち契約を交わし共に行動するという意味があるからだ。
「ああ、私はテイチに着いていく……こんな可愛い人の子に着いていかない理由が分からない」
理由は不純であるくせにキラリとかっこよく微笑むインフェリー。
「それにテイチを虜にしているウルディネに会ってみたいからな……」
キラリと輝いていた微笑みが黒く染まるインフェリーは拳を鳴らしていた。そこには明らかにインフェリーによる一方的な嫉妬が見えかくれしていた。
「はいはい! 僕も一緒に着いていくよテイチ!」
手をあげ自分もテイチに着いていくと宣言するシルフェリア。
「シルフェリアお前まで!」
「えーだって僕は最初からテイチに着いていくつもりだったし」
確かにシルフェリアは最初からテイチと契約を交わすことに賛成であったと思いだしたノームットは頭を抱えた。
「で? お前はどうするのだノームット」
もう答えは決まっているだろうというような表情で自分を見下ろしてくるインフェリーに深いため息をつくノームット。
「分かった……お前達二人だけでは心配だからな……テイチよわしも付いて行くぞ……」
観念したようにテイチに自分も付いて行くと宣言するノームット。
突然自分と一緒にウルディネを探してくれると言いだした神精霊達に戸惑うテイチ。
「で、でもね、ウルディネは遠い所にいるの……暗い場所」
自分でもよく分かっていない場所にウルディネはいる。いつ見つかるか分からないことをテイチは自分なりの言葉で三人の神精霊に伝える。
「なら私の力でその暗い場所を照らそう」
テイチの言葉に掌から眩しくなるほどの炎を作り出すインフェリー。
「え! うんうん、それだけじゃない、凄く黒い霧が一杯で前が見えない」
そこには自分達の邪魔をしようとする存在がいるかもしれないという警告を自分なりの言葉で三人の神精霊に伝えるテイチ。
「なら僕の出番かな、その黒い霧を吹き飛ばしてあげるよ」
そういうとシルフェリアは心地のよい風を発生させ、驚きの表情を浮かべるテイチの頬を撫でてみせた。
「へ? いやでも……そこには道もないよ」
ウルディネを探す事が困難である事を自分なりの言葉で三人の神精霊に伝えるテイチ。
「驚いた……幼い言葉であるにも関わらず、ちゃんと契約の言葉になっている……」
立派に蓄えられた髭をフワリと浮かすノームット。
「ならばワシの力でその道を作り出そう!」
そういうとノームットはテイチの足元から土を出現させテイチの体を持ち上げた。
ウルディネを捜しだすことが困難であるという事を伝えたかったテイチであったが、その全ての言葉を跳ねのけてしまった三人の神精霊。
「さあ、テイチよ、我々に契約の言葉を!」
「契約の言葉?」
テイチの知らぬまに契約の手順は進んでいた。しか何と言っていいのか分からず困惑するテイチ。
「テイチ、お前はウルディネに会いたいのだろう?」
「う、うん」
「そしたら僕達が力になってあげる……そういう時テイチは自分に力をかしてくれる人になんて言うんだい?」
ノームットの難しい問をかみ砕き分かりやすく言い換えるインフェリーとシルフェリア。
「えっと……うーんと……うん『ありがとう!』」
良く分からないがそれだけは分かったテイチは大きく叫んだ。
「いい返事だ」
ノームットはテイチの言葉に頷く。
「諸々契約の言葉を省略……みな良いか!」
「ああ」「うん」
互いに顔をあわせる神精霊の三人。
「「「契約承認!」」」
契約に必要な諸々の言葉を省略してガイアス史上初めての三神精霊の同時契約、そして四神精霊同時使役が人知れず行われる事となったのだった。
ガイアスの世界
ウルディネ以外の三神精霊
火の神精霊、インフェリー、風の神精霊、シルフェリア、土の神精霊、ノームットがテイチの前に姿を現し、契約を交わした。
ウルディネ以外の神精霊達は三人とも交流があったようで、久々の再開を喜んでいるようであった。
この三人の中で中心人物となるのが神精霊の中で一番の古株であるノームットであり、中々纏まらない神精霊達をまとめているようだ。




