真面目に集うで章 31 目覚める少女
ガイアスの世界
ソフィアという存在
閉ざされた世界の一つからやってきたグレイルによると、ソフィアもまたガイアスとは別の閉ざされた世界の一つからやってきた、ブリザラやグレイルと同一の存在であることが分かった。
グレイルとは違い、なぜガイアスの世界にやってきたのかは不明だが、閉ざされた世界の記憶は一切無く、自分がガイアスの世界の人間だと気付いた今もその記憶はもどっていない。
グレイルやブリザラ同様に『赤き目の王』の力を持っているが、その力が現れたのはグレイルが現れた時が初めてであり、どうやら記憶を書きかえられていた事によって封じられていたようだ。
ソフィアの本名は『冬香』であり、ガイアスの言葉では発音できない名前である。
ソフィアはブリザラとの融合を拒み個でいる事を望んだ。それはガイアスの人々とのつながりを失わないため、自分の想い人に再会するためであった。
真面目に集うで章 31 目覚める少女
剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス
「人々の避難、終了しました」
ガウルドの人々全員が、ガウルド城地下にある薄暗い空間に無事避難し終えた事をヒトクイの王、ヒラキに伝えにやってきた。
「そうか、しばしの休憩ののち、今度は人々に状況を伝えてくれ」
ヒラキは伝令兵を労いつつ、次の指示を伝えると避難してきたガウルドの人々がひしめきあう大きな空間に目を向けた。不安や恐怖がその場を支配し、人々から落ち着きを無くさせていた。しかしそれでも幾多の困難を乗り越えてきたガウルドの人々はその不安や恐怖を抑え込み耐えていた。
そんな人々を見つめるヒラキの目は、確固たる意思が移り込んでいるようであった。だがその奥には言いしれない不安も見え隠れしている。それはヒラキが持つ秘密、ヒラキという存在を根底から揺るがす秘密。
「王」
人々を見つめるヒラキの背に声をあける者の声。少々驚きながらヒラキは声のした方へ振り向き、声をかけてきた者を確認する。
「ウルディネ……さん……?」
周囲に自分達以外に誰も居ない事を確認し、ヒラキの姿であった者は本来の姿へと変わって行く。
ヒラキの秘密、それは現在ヒトクイの王であるヒラキが偽物であるという事。すでにヒトクイを統一し王となったヒラキはこの世に存在しない。
その事実を知る者は伝説の武具の所有者達と、その仲間達のみであり、ヒトクイの人々やガウルドの人々はその事実を知らない。それがヒラキの目の奥にあった不安、秘密の正体であった。
本来の女性の姿となったその者の正体は夜歩者レーニ=スネック。血の繋がりがあるのか定かでは無いが闇歩者スビア=スネックの姉であった。
夜歩者とは数百年前まで人類と敵対していた『闇』の力を持った種族であり、食物連鎖で言うならば頂点の位置に立つ種族の一つであった。
夜歩者と人類の最後の戦いで人類が投入した兵器によって夜歩者達は多大な被害を受けた後、敗北することになった。その後、人類と友好的な関係を築きたいと考えていた夜歩者達は人類の社会に溶け込んでいくことになる。その一人がレーニであった。
それから色々とあってヒラキ王が命を落とした時、レーニはヒラキに成り代わりヒトクイという小さな島国の王となった。
人類よりも遥かに長命である夜歩者は成熟してからは見た目の歳を殆どとらない。それはヒラキの姿になった時も同じであり、本物のヒラキが死んでから十数年が経とうとしているのに、当時と全く変わらない姿をしている。そんなヒラキ王の姿を疑問に思う人々は少なくは無い。そんな疑問を、ヒトクイをより良い国にしていくことによって潰して来たレーニ。
だがやはりそれは不自然なのだとレーニは考えていた。人類では無い者が人類の王であっていいわけがないのだ。
レーニは決心していた。この騒動が終わりガウルドの人々か落ち着きを取り戻した時、自分はヒラキ王である事を止めると。
「どうした王?」
「えっあ、大丈夫です」
心に秘めた決意を目の前の少女に悟られないようにと首を横にふり笑顔をみせるレーニ。
「それでウルディネさん、どうかなさいましたか?」
「ああ、いやこれと言って話がある訳ではないのだが……」
見た目の姿と口調にギャップがある少女、彼女にもレーニとは違う秘め事があった。使用所の姿をしたその人物の正体は、水と癒しを司る上位精霊ウルディネであった。レーニに話しかけるウルディネの表情は少し硬い。
「そうですか……ふふふ、アキさんなら大丈夫ですよ!」
ウルディネの表情が硬くなっている理由を悟ったレーニは表情の硬いウルディネを励ました。
「あ、ああ……」
だがレーニの気配りは殆ど空振りに終わる。確かにアキの事も心配ではあったが、ウルディネの表情が硬くなっている理由はそこではなかった。
ウルディネは自分が今無力である事を痛感していた。スプリングのように強力な力を持っているわけでも、ブリザラのようにどんな事からも守りぬける力を持っている訳でもない。目の前にいる王も今自分がやるべき事、やれる事、やらなければならない事をしっかりと見据え行動している。だが自分はどうだと。
(ふん……なぜ精霊である私が人間の面倒事に首を突っ込まなければならない)
自分の中に浮かび上がる感情を否定するウルディネ。それが本来の体の持ち主から受ける影響であることはウルディネも気付いていた。だがこれまでアキ達を助けてきたのは単なる気まぐれであると言い聞かせるように、自分の中で凍らせていた感情を否定するウルディネ。
本来自己や意思を持った精霊達は、人々との接触を極力避けるようにしている。それは上位精霊の大半が持つ共通する考えと、個々の経験からくるものであった。
人と上位精霊が干渉すれば後にかならず無意味な争いや悲しい別れが待っている事、それを上位精霊達は知っているからだ。
事実、上位精霊と干渉、契約した者達はその大半が、精霊の強大な力を利用し争いに使うことが多かった。それは契約した者が、上位精霊の力に徐々に魅入られ、使わずにはいられなくなってしまうからだ。
好戦的な上位精霊は別としてそして大半の上位精霊達はその状況をよしとは考えていない。なぜならばその後に待っているのは契約した者の死だからである。あたかもそれが自分の力だと錯覚した契約者は次々と過酷な戦いに身を投じそして結果、戦いの中でその命を散らしていく事になる。そして悲しみを背負い置いて行かれるのはいつも自分達である事を知っている。人の心が脆い事を知っている上位精霊達はだからこそ人と契約を結ぶ事に慎重になる。そして契約を果たせば上位精霊は次は、次こそはと自分の心を打ったその者に希望を抱くのだ。そして上位精霊の希望を打ち砕き結局同じ結末を迎える。
ウルディネも契約した者との別れを何度か経験していた。自分の司る水と治癒の力は他の力に比べ争い向きでは無い。それでも契約者した者達はウルディネの気持ちに気付くことも無く、その強大な力に溺れ、激しい戦いの場へと足を踏み入れ命を散らしていった。契約した者が変貌してしまう姿と、悲しい別れに耐えられなくなったウルディネは、ガイアスの中で自然が一番豊かであり、人にとっては一番危険な大陸ムウラガに移り住んだ。
ムウラガならばその過酷な大地故に人との干渉は殆どないとウルディネは考えたからだ。ウルディネの考え通り、ウルディネの前に姿を現す者はそれから百年、現れなかった。テイチとアキが現れるまでは。
テイチはウルディネの湖によく水を汲みにやってくる子供であった。一人では抱えることも大変なほどの桶を一生懸命に抱えやってくるその姿をウルディネはいつの頃からか微笑ましくみるようになっていた。
そして上位精霊の気まぐれと言うように、ウルディネは毎度水を汲みにやってくるテイチが無事家に戻れる事を祈り、そして僅かな加護を与えていた。
元々ウルディネの加護によって湖とその周辺の草原には凶暴な魔物は存在しなかったが、念には念をとテイチに凶悪な魔物が近づかないようにするための結界と、桶から水が零れないようにするという加護を。
そしてその日はやってきた。いつものようにテイチは水を汲みにウルディネの湖にやってきた。何事も無く水を汲み終えるとその場を後にするテイチ。だがそれから数十分後、再びテイチは空になった桶とアキを連れてやってきたのだ。その時ウルディネはわずかに放たれた異変を見逃していた。
アキから放たれる咽るほどの力の気配が呼び水となり凶悪な魔物が湖に接近していた事、そしてテイチに与えた加護がアキの気配によって掻き消えていた事を。
そして悲劇が訪れる。アキの気配を感じやってきた凶暴な魔物がテイチを襲ったのだ。魔物の爪や牙によって命を絶たれたテイチ。その姿にウルディネは声を押し殺した悲鳴を上げる。そしてウルディネと同じように激昂し、テイチの命を絶った魔物を切り捨てるアキ。その光景にウルディネは自分が再び人に魅入られていた事に気付いた。
自分と同じようにテイチの亡骸に悲しみをあらわにするアキ。ウルディネは同時に二人の人間に魅入られていた。テイチの健気な姿と自分と同じ感情を抱くアキに。その後ウルディネはテイチの体に乗り移る事でテイチの命を繋ぎ止めた。テイチの意識は深い眠りについたまま。
(結局……私は何も出来ない……)
― そんなことないよ ―
ウルディネの頭の中に突然幼い子供の声が響いた。
「ウルディネさん?」
「あ、ああ……すまない……」
じっと何かを考えていたウルディネに心配そうに声をかけるレーニ。
(……あの声は……)
― 精霊さんのおかげで私は、色々な所に行けたよ、氷や雪が沢山ある町とか、海の匂いがする人が沢山いる町とか、薄暗くてちょっと怖い場所とか ―
子供の声は今までウルディネがアキ達と一緒に行った場所を振り返るように口にする。
― お母さんとお父さんが死んじゃった事は凄く悲しいけど、でも、アキさんやブリザラさん、スプリングさん、忍者のお姉さんとかいろんな人と出会えたから悲しくないよ ―
(……テイチ)
― だから私は出会った人達を助けたい、精霊さんも出会った人達と離れ離れになるのは嫌でしょ? ―
頭の中に響く声がテイチであると確信するウルディネ。だがテイチの言葉に顔を横にふるウルディネ。
(……私にはそんな力無い)
自分に力が無い事をテイチに吐露するウルディネ。
― そんな事ない、精霊さんは私の命も救ってくれたし、皆のピンチだって何度も救ってくれた! ―
(それは、単に私よりも弱かった、運が良かっただけだ……)
― そんな事無い……私知ってる、精霊さんが誰よりも誰かが居なくなる事を怖がってるの…… ―
(うっ……)
テイチの言葉に表情が揺らぐウルディネ。
― 私はお母さんやお父さんのようにもうみんなと離れ離れになりたくない……精霊さんも同じでしょ、だからさっきから胸がギュってなっているんだよね……お願い精霊さん、みんなを……みんなを助けて! ―
頭の中に響くテイチの願いが、矢のようにウルディネの心を貫いていく。
(私は……私は……)
― 大丈夫だよ……精霊さんが考えている事にはならない ―
優しくテイチの声がウルディネに響く。ウルディネは一度目をつぶり、一呼吸置いて口を開いた。
「約束だテイチ、私を悲しませるような事にならないでくれ」
それは約束というよりもウルディネの願いのようであった。
「ウルディネさん?」
突然黙ったかと思えば口を開いたウルディネに驚くレーニ。だがウルディネはレーニの言葉に反応せず、自分の頭に響くテイチの言葉を待った。
「うん! 大丈夫私は精霊さんを悲しませない」
(ありがとう……)
― うん! ―
子供特有の気持ちの良い返事にウルディネは笑みを浮かべる。この者ならば、もしかしたらとこれまで前の契約者と契約する時に願った想いがウルディネの頭をめぐる。だがその一歩を踏み出すことを決心するウルディネ。
「ならば……我名を唱えよ……テイチ=ブレアブレット!」
― 私と契約してください、ウルディネ! ―
「その願い承った……我ウルディネ=ラングスターは、その名を捨て、ウルディネ=ブレアブレットとし、テイチ=ブレアブレッドとの契約を交わす!」
その瞬間であった。ウルディネの足元から水が湧きだしウルディネの体を呑み込んでいく。
「ウルディネさん!」
状況が分からないレーニは水に呑み込まれていくウルディネに驚きの声をあげる。
しばらくすると水が弾けるようにしてウルディネの体から飛んでいく。
「ウルディネさん?」
水浸しとなった部屋を見渡しながら、レーニはびしょびしょに濡れたウルディネの下へと駆け寄っていく。
「はぁはぁ……」
荒い息を上げるウルディネ。肩にそっと手をやり自分の服で濡れているウルディネの顔をふき始めるレーニ。
「い、一体何があったのですか、ウルディネさん?」
「?」
首を傾げるウルディネ。それにつられるようにしてレーニも首を傾げた。沈黙が流れ、最初に状況を把握したのはウルディネ、いやテイチであった。
「あ、あああ……お、王様ですね、初めましてテイチといいます」
跳ね上がるようにしてテイチは目の前の王に頭を地面にこすり付けるように下げた。
「へ、へあ?」
訳の分からないレーニは土下座のような姿勢のテイチを見下ろす事しかできていない。
「ど、ういう事ですか? テイチって……ウルディネさんは?」
『王よ、私はこっちだ』
聞きなれない声に驚き周囲を見渡す。すると土下座しているテイチの後ろに半透明である見知らぬ女性が立っていた。
「だ、誰だ!」
その姿に警戒するレーニはいつでも戦えるように戦闘態勢に入る。
『まてまて、私だウルディネだ』
「精霊さん!」
自分がウルディネだと主張する半透明である女性の声に頭を上げ後ろに振り向くテイチの顔は、満面の笑みを浮かべた。
「え……ええええ!」
結局何が何だか分からないレーニは混乱からか頭を抱えるのであった。
殆ど裸同然で、体に川が流れているような水の布を纏った艶めかしい姿をした女性、本来の姿であるウルディネがその場に立っていた。
「混乱させてしまって申し訳ない」
「いえそのような事があったとは」
足をブラブラさせながら椅子に座るテイチという少女に視線を向けながらレーニから、今まであった事をウルディネから聞いて納得したように頷いた。
「驚きましたよ、ふふふ」
納得したレーニは微笑みながら半透明のウルディネに視線を向ける。
『ああ、正直私も驚いている……しかも何が要因になったのか分からないが、私は神精霊になったようだ』
ウルディネの言葉に硬直するレーニ。本人も驚いてはいたが、一番この場で驚いたのはレーニであり、テイチは事の凄さが理解できておらずニコニコと笑顔を振りまいていた。
「あ、あの……神精霊って……」
『ああ、水の精霊の頂点に立った訳だ、今ならこの町、いやこの国の水という水を全て干からびさせる事も簡単にできるな……』
平然と言い放つ神精霊であるウルディネの言葉に顔が真っ青になるレーニ。
『ははは、大丈夫だそんな事はしない』
悪戯っぽく笑うウルディネに引きつった笑みを浮かべることしか出来ないレーニ。それほど目の前にいる存在はとんでも無い者であった。
神精霊とは言葉通り精霊の神であり、その力はガイアス全土に及ぶ。滅多に所ではなく、人の人生の中で会える事そのものが奇跡といってもいい存在であるのが神精霊であった。
平然とウルディネが口にしたヒトクイの水を干からびさせるという言葉は冗談では無く、ウルディネがその気になればヒトクイどころでは無くガイアス全土も可能である。
そんな存在が目の前にいるのだ、たとえ夜歩者であるレーニであっても驚きは隠しきれない。
そして水の精霊は治癒も司っているのだが、それは神精霊となったことで生命へと司るものが変化していた。それを理解したウルディネはうんうんと頷いた。
「どうしましたか?」
神精霊となったウルディネに迂闊な事は言えないと言葉を選び恐る恐る聞くレーニ。
『どうやら前任の水の神精霊はこの国の前ヒラキ王と関係があったようだ……何か心辺りはないか?』
「ヒラキが…………心辺りはないです」
自分の事ではないヒラキという名前を久々に聞いたレーニは長い沈黙の後にウルディネの質問に答えた。
『そうか……分からないか』
ならばいいとウルディネは話を終わらせる。ウルディネは十数年前にガウルドで起こった反乱で前水を司る神精霊が、前ヒラキやレーニに力を影ながら貸していた事を、己が神精霊になった事で知ったが、話すのは無粋だと自分の心の奥底に仕舞うことにした。
『さて王よ……王には決着を付けなければならない相手がいのではないのか?』
水の記憶、前神精霊の記憶でウルディネはレーニが決着を付けなければならない存在がいる事を理解していた。だが地下空間で結界を張らなければならないという使命があり、その存在に向かって行けないということも。
「なぜ……それを……」
レーニは驚いた表情でウルディネを見つめる。
『まあ私神精霊だからな』
ニコリと笑うウルディネ。ある意味う何でもありなのだなと、隠し事をしていても意味が無いと悟ったレーニは首を縦に振る。
『一時的に王の背負っているものを私が肩代わりしてやる、その間に決着をつけてこい』
ウルディネのその言葉に目を丸くするレーニ。
「でも、これは王としての役目……」
『今王はどんな姿をしている? 王では無く、一人の夜歩者ではないのか?』
レーニの姿を指差すウルディネ。その言葉にレーニは沈黙する。
『結界の事は気にするな……この程度今の私なら容易い……行って決着をつけてこい』
ウルディネの言葉に背中を押されたような感覚になるレーニ。
「……あ、ありがとうございます……この御恩はいつか必ず」
言葉を言い終わるか終わらないかですでに動きだしその場から姿を消したレーニに驚くテイチ。
「凄い! ビュッと消えちゃった! アキおじさんよりも速い!」
どうやらテイチはアキと出会った時に肩車で草原を走った時の事を思い出したのだろう、目を輝かせながらキャッキャと喜んでいた。
『すまないなテイチ、皆を助けるのはもう少し後になりそうだ』
はしゃぐテイチに頭を下げて謝るウルディネ。
「うんうん、いいよ、だってこの町の人だって大切な人だもの……守る事ができるなら私頑張る」
すでにウルディネが乗り移っていた時のような無愛想な表情はどこにもなく、子供特有のコロコロと変わる表情をウルディネに向けるテイチ。その表情にウルディネには笑みが零れる。
「ありがとう」
「うん!」
こうして深い眠りから目を覚ましたテイチとウルディネはレーニ不在の中、ガウルドの人々全員を守る水の結界をガウルド城地下に張ることになった。
ガイアスの世界
水と生命を司る神精霊、ウルディネ
何が要因になったのか解明されてはいないが、深い眠りについていたテイチが目覚め、ウルディネと契約することによってウルディネは上位精霊から神精霊へと転生を果たした。
その力は水に関しては神と言って過言では無い力で、ガイアス全土のありとあらゆる水を操ることができる。それは水の精霊や上位精霊とのつながりも意味しており、神精霊となったウルディネと契約をしたテイチはありとあらゆる水の精霊を扱うことができるようになった。
本来精霊を扱えるのは召喚士や精霊術師だけであるのだが、テイチはそう言った職業にはついておらず、無職のまま無知で契約を結んだことになる。
だが神精霊と契約した事によって、テイチの職業は神子に変化したようだ。
神精霊は前任の神精霊が消滅することによって次の神精霊が生まれる。どうやらウルディネが神精霊になるまで、その位置は空席になっていたようだ。
そして前任の神精霊の記憶は次の神精霊へと受け継がれるようで、本来ならば知らないはずの物事をウルディネがしていたのは前任の記憶を取り込んだからのようだ。
それにともない、何やらヒトクイの前の王ヒラキと前任の水の神精霊に何か繋がりがあると口にしたウルディネではあったが何があったのかはウルディネだけしか知らず定かでは無い。




