過去で章 8 (スプリング編) 戦続きの剣、矛盾無き盾
ガイアスの世界
登場人物
名前 ヴァンゲル=チーバ=ラウル
年齢 不明
レベル 99+
職業 鍛冶師
今までにマスターした職業
剣を扱う職業を大半。
装備
武器 現在は無し
防具 作業服
頭 作業用のバンダナ
靴 作業用の靴
アクセサリー 曇った指輪
闘技島で鍛冶師をしている老人。だがその実態は元剣聖である。
鍛冶師にしては腰も柔らかくいつでもニコニコとした優しい老人である。
剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス
何かを叩く音が響き、火花が次々と生まれては消えていく。竈に灯された炎が薄暗い部屋を暗く照らし出す。炎は周囲にむせるような熱気を与えその場で作業をしている男は全身汗だくであった。その姿をみているだけの男も額からにじみ出る汗を何度も腕で拭っていた。
「岩竜の粘液は空気に触れると瞬時に硬化を始める。そのため粘液袋から中身を取り出す時は、最新の注意が必要だ。空気に触れさせず形を成型して炎の中に入れる」
鍛冶師の老人ヴァンゲルはそう言うと、型に入った岩竜の粘液を竈の中で燃え上がる炎の中に突っこんだ。
「そして……炎から取り出した型に入った粘液を炎から取り出し、すかさず型から取り外し叩く」
炎の熱で真っ赤に染まり固まり始めた粘液を型から取り出すと、銀色の鎚を振りかぶり、素早く叩き始めた。
ヴァンゲルはその工程をすでに何度も繰り返している。その姿をじっと見つめているスプリングは徐々に変わって行く粘液に驚きの表情を浮かべる。
透明だった粘液が徐々に金属のような輝きを放ち始めたからだ。熱を加えられ、幾度も叩かれた岩竜の粘液は岩ではなく金属に姿を変えていた。
熱を持った金属となった岩竜の粘液がバケツの中に入った水に入れられ凄い音をあげながら熱を冷まされていく。そして再び竈の火の中へと入れられる。その繰り返しを永遠と言えるほど繰り返すヴァンゲル。そんな姿をみていたスプリングのほうが疲れてしまうほど何度も何度も繰り返された金属となった岩竜の粘液は凄い輝きを見せていた。
「そうだ……言うのを忘れていたが、お主が持っている折れたロングソード、どうやらそのロングソードも岩竜の粘液を使った物のようだ……工程が荒くて不完全ではあったがの……」
「な、なに……」
スプリングは折れたロングソードの元所有者の顔が浮かんだ。
(今思えば、このロングソードの強度は尋常じゃないほどに高くて、折れるまで一切研磨をしたことは無かった……いやそれよりもなぜ俺はあのジジイが何者なのか聞かなかったんだ?)
スプリングの中で一つの答えが出ようとしていた。
まだまだと言うように金属に変化を遂げた岩竜の粘液を竈の炎に突っ込むヴァンゲルは自分の作業を続けていた。
「ヴァンゲル、聞きたいことがある……」
スプリングの表情は驚いたまま固まっていた。だが口は真実を聞こうと言葉を発する。
「なんじゃ?」
ヴァンゲルは作業の手を止める事無くスプリングの言葉に耳を傾けた。
「さっき話していた俺と同じ結論にたどり着いた剣聖って……」
「ふふふ……やっと気付いたか……そうお主の師、インセントじゃよ……」
ヴァンゲルは知っていてあえてその事実を隠していたというように笑いながら作業を続ける。
「なっ!」
(俺があのジジイの弟子だということも分かっていたのか……)
元剣聖であり、最上級の鍛冶師でもあるヴァンゲルの底知れぬ洞察眼に恐怖すら感じるスプリング。
「……驚いておるな……、お主も少し考えれば分かる話だとは思うがの……」
突如としてヴァンゲルから謎解きを出題されるスプリング。
(何だ……俺が見過ごしていること……共通点……共通点? そうか!)
答えを導き出したスプリングの瞳は見開かれる。
「そうか……あんた……インセントの師匠なのか!」
「ホホホ……正解じゃ孫弟子よ」
これはスプリングの推測でしかないが、ヴァンゲルに出会い弟子入りした時期とあのロングソードを作った時期が、どちらが先か前後はあれ、現在のスプリングと同じ道をたどってきたのだ。
「ホホホ……まさかそのロングソードにまた出会えるとは、そしてあのインセントの弟子に出会えるとは思っていなかったぞ」
相変わらず作業を止めることの無いヴァンゲルは、自分の弟子の弟子、孫弟子に出会えたことを喜んでいた。
「クソッ!……あのジジイと同じ道をたどるなんて……」
無意識のうちにインセントと同じ道を進んできていたことに腹を立てるスプリングは全身で悔しさを現した。
「まあ、剣聖になる者は似た道を辿ることになる、あきらめろスプリング」
スプリングの師匠の師匠であるヴァンゲルは自分の師と同じ道を辿ることは剣聖としてしょうがないことだと慰めた。
「岩竜との闘技場での戦いを見ていてすぐにお主がインセントの弟子だということは分かった、剣技が若い頃のインセントにそっくりだったからの」
ヴァンゲルのその言葉にそれは無いと不満な表情を浮かべるスプリング。
「彼奴は俺に技一つ教えてくれなかったぞ! それで似ていると言われても……」
「ホホホ……彼奴は人に教えるというのは苦手だからの、だがお主は戦いの中でインセントから盗んだはずじゃ戦い方を……」
「……」
スプリングの表情がハッとなる。
「たどり着くまでは似たり寄ったりな道であったとしてもその先は型の無い世界、そこからは己で考えどうなっていくかを考え続ける、それが剣聖だ」
「じゃ……今鍛冶師をやっているあんたはそれが剣聖の答えなのか?」
スプリングの言葉に今まで止まることの無かった手をゆっくりと止めるヴァンゲル。
「ああ……剣聖とは勿論その者の能力に左右されるが、己の能力で自在に剣と名の付く物を作り出させてしまう」
ヴァンゲルの言葉に、黒ずくめの男が使った力を思いだすスプリング。
「儂はその能力に虚しさを感じてしまっての……」
ヴァンゲルは己の手を見ながら何かを考えているようであった。
「一から物をつくること……それはとても大変で苦労なことだ、だがその大変で苦労することを儂は愛しくさえ思える、鍛冶師となった今だからこそその大切さが痛いほどにわかるのだよ」
ヴァンゲルは真っ赤になっている岩竜の粘液から出来た金属をバケツの中に入った水の中に突っこんだ。水が弾ける光景と音に微笑むヴァンゲル。
剣星であるヴァンゲルにとって剣を作り出すことは造作も無い事である。だがヴァンゲルは剣を一振り作る苦労がとても大切なのだと語った。
「だかからと言って剣聖が悪いと言っているわけでは無い、これはあくまで儂が突き進んだ道だ……儂にしか理解できない剣聖の道……剣聖になった先でお主が求める剣聖、自分だけの剣聖を目指せ……」
スプリングは鍛冶師という道を選んだ剣聖の言葉に頷いた。
「よし……冷えたら持ってみるといい」
ヴァンゲルはそういうと立ち上がった。どうやら岩竜の粘液が変化して出来た金属を使った剣は完成したようだ。
「後は盾だな……」
「へ?」
スプリングはヴァンゲルの言葉に首を傾げた。
「お主、盾を使った戦い方をしたことが無いだろう?」
確かにスプリングはインセントと出会ってから今まで盾など持ったこともなかった。それはスプリングの戦い方が盾を必要としない速度を中心とした戦い方であったからであり、昨今では両手持ちを主にしていたスプリングにとって盾は邪魔でしかなかったからだ。
「い、いやいらないよ」
「……いずれ今の戦い方では倒せぬ敵が現れる……いやもうすでに出会っておるのではないか? 盾の扱いに慣れておいて損は無い……まあこれはサービスだ」
スプリングは押し切られる形でヴァンゲルに近くにあった盾を押し付けられた。
「盾が出来るまで、その盾でも触って待っておれ」
そういうとヴァンゲルは再び竈の炎の前に置いてあった椅子に座ると、作業を始めた。
「ちょっ……」
集中したヴァンゲルは、スプリングの言葉が聞こえないというように目の前にある岩竜の粘液に火を入れる。
「ま……まじかよ……」
スプリングは手にしたどこにでもある盾を手にヴァンゲルの鍛冶場の外に出た。
― 闘技島鍛冶師の町 ドルバ ヴァンゲル鍛冶場、庭 ―
「でかいな……」
あまりにボロい鍛冶場に目を向けていたスプリングは鍛冶場の後ろにそびえる巨大な大樹に気付いていなかった。大樹を見上げるスプリングの足は自然とその根元に向かって歩き出していた。
「ンゴォォォォ」
「ん?」
大樹がそびえる小さな庭に足を踏み入れると幻想的な光景に似つかわしくないなんとも不細工な音が響き渡っていた。
「んっ……んごぉぉぉぉ」
大樹の根元で大きなイビキをかきながら昼寝をしているガイルズの姿があった。
「まったく帰ってこないと思ったらこんな所にいたのか……」
気持ちよくイビキをかきながら寝ているガイルズを呆れた顔でみるスプリング。
「おぅら、起きろよ!」
スプリングは容赦なくガイルズの脳天についさっき手に入れた盾を振り下ろした。直撃さ
「がふぅ……!」
ガイルズの頭にめり込む盾。
「いてぇええええ! 何しやがる?」
ガイルズの超回復が発動し、すぐさま頭の傷が煙を立てながら塞がり始める。塞がりかけている傷口をさすりながらガイルズは自分の頭に盾を振り下ろした犯人であるスプリングを睨みつけた。
「いや~気持ちよく昼寝しているお前を見たら、無償に盾を振り下ろしたくなってな……」
「いやいや……おかしいだろその理屈!」
珍しくボケとツッコミが逆転する二人。
「それで新しい剣の調子はどうなんだ?」
ガイルズはヴァンゲルの製作したスプリングの新たな武器に興味を示していた。
「ああ……だいたいは出来ている、後少しって所だな」
「ふーん、ならそいつが出来たら俺と手合わせしようぜ!」
ガイルズは目を輝かせながらスプリングに再戦を申し入れた。本来スプリングとガイルズは敵同士であった。初めて出会った戦場で刃を交えて以来、なんやかんや色々とありタイミングを逃していいたが、お互い相手の事を強敵と考えており、二人とも機会があればまた戦いと心の奥底で考えていた。
「ああ……いいぜ……」
ガイルズの期待に応えるかのように、闘志をみなぎらせながら微笑み快諾するスプリング。その顔を見てガイルズも大きく笑みを浮かべた。
「ガッハハハ! 完成が楽しみだな……ところでスプリング、その手に持っている盾はなんだ?」
ガイルズは一笑いすると、視線をスプリングが手に持つ盾に向ける。
「あ、ああ……何かいずれ今の戦い方じゃ対応できなくなるから盾を使った戦い方を覚えろとヴァンゲルが言うからさ……」
すでに自分の戦い方が通用しない相手と遭遇してボコボコにされたことを伏せるスプリング。
「なるほどな……確かにそういう相手もいるかもしれないな……」
フルードで死にかけていたスプリングを思いだすガイルズ。だがその事には触れずに話を続ける。
「んじゃ俺が練習相手になってやるよ」
そういうとガイルズは立ち上がり大樹の根元に立て置いていた特大剣に手をかける。
「まっ待て……俺は一度も盾を使ったことが無いんだから、お前の攻撃に耐えられるわけないだろ?」
スプリングはガイルズの馬鹿力を知っている。ガイルズの攻撃を盾で防いだとしても、良くて腕が折れて地面に埋まる。悪くて剣圧に耐えられず盾が砕けて自分の体が肉塊に変わることが容易に想像できた。
「わーてるよ、力抜いてやるから」
ガイルズは本気で戦う前の前哨戦というように、ワクワクしながら特大剣の素振りをはじめる。それを見ていたスプリングは、ガイルズの言葉を信じられないという表情で物凄い音を立てながら風を切りさくガイルズの素振りを見つめた。
「さて……んじゃ始めるか?」
明らかに手を抜く感じには見えない目つきでスプリングを見つめるガイルズ。
「おいまだやるなんて言ってないぞ!」
重い音を立てながら振り下ろされる特大剣を回避するスプリング。
「おい! ……避けちゃ盾の意味が無いだろ!」
そう言いながらガイルズは特大剣を振り回す。
「お、おい、速い速い! 待てよ!」
スプリングの視線は特大剣の剣筋を捉えおえているのだが、体がどうしても盾を使うのに慣れていなく回避行動をとってしまう。
「戦いで待つ奴なんていねぇぞ!」
声の調子が上がるガイルズ。それに比例するように特大剣の剣筋の速度も上がっていく。
「いやマジで速い! 速いから!」
いっこうに盾を使うタイミングが無いスプリングは速度の上がった特大剣を避けることしかできない。
「うお! これじゃ……おい! まったく……盾の……練習にならないだろうがぁぁぁ!」
自分の頭上を通り抜けていく特大剣を見送り、スプリングは盾を思いっきり振り上げてガイルズの顔面にブチ当てる。
「がふぅ……!」
「お前……軽くって言ってたじゃねぇか!」
ひっくりかえるガイルズを見ながらスプリングは怒鳴りつけた。
「いてててて……盾で攻撃とかお前どこの国の盾士だよ」
真っ赤に腫れた顔を摩りながら立ち上がるガイルズは再び特大剣を構える。
「うぅぅぅ……まだやる気か……」
「当たり前だ! お前に一撃いれるまで終わらないぜ!」
目的がすり替わっているガイルズ。
「おい! 目的が変わってるぞ! お前から一撃喰らったら俺は死ぬ! うおっ!」
ガイルズの一撃で即死すると言い切るスプリングの言葉を待たずして鋭い斬撃が飛んでくる。
「おいィィィィィイイイ!」
静かであるはずの大樹の立つ小さな庭で風切り音とスプリングの悲鳴が響き渡った。
― 数時間後 闘技島 ヴァンゲルの鍛冶場 ―
空に昇っていた太陽が沈み、月が顔を出した頃、ヴァンゲルの鍛冶場の前ではスプリングとガイルズの姿があつた。互いにボロボロの姿となっているがその表情は正反対であった。
ガイルズは満足そうに微笑み、スプリングはゲッソリとした表情で鍛冶場の扉を見つめる。
「いや~、結局一撃も入れられなかったな」
一撃も入れられなかったというのにニンマリと笑顔でスプリングに話しかけるガイルズ。
「お前……ワザとだろ、絶対!」
まったく盾の稽古にならなかったガイルズの攻撃をことごとくギリギリの所で回避してきたスプリングの全身には浅い切り傷が所々に出来ていた。
「はぁ……もう絶対お前と稽古はしないからな……」
「ふん!」
金属の鈍い音が響き渡る。突然のガイルズの強襲にスプリングは手に持っていた盾で防いでいた。スプリングはニヤリと口許を吊り上げる。
「けっ! そう言いながら盾を使えるようになっているようだが……」
本気では無いとはいえ、綺麗に攻撃を防がれたガイルズは面白くないといった表情でニヤニヤしているスプリングを見た。
「まだまだ……だよ」
先程に比べればだいぶマシになった盾の扱いではあったが、それでもまだまだ荒く、実戦で使えるか使えないか、微妙な所であった。
「なんだ、鍛冶場の前でうるさいの……」
ヴァンゲルが鍛冶場から顔を出し、騒いでいたスプリングとガイルズに声をかけた。
「ああ、ごめん……」
スプリングは鍛冶場の前で騒いでいたことを、頭を下げて詫びた。
「それで剣のほうは?」
下げた頭が上がらぬうちにスプリングは武器の製作状況を聞いた。
「とっくに出来ているよ」
そう言うと一旦鍛冶場の中に入っていったヴァンゲルは布に包まれた物を持ってすぐに鍛冶場の外にあらわれた。
「ほら、依頼の品だ」
ヴァンゲルに投げ渡された物をキャッチするスプリングは包まれていた布をはぎ中身を確認する。
そこには漆黒と銀の線が光る鞘に収まったロングソードがあった。ゆっくりと柄を握り、ロングソードを引き抜くスプリング。そこには透き通っているのではないかというほどに磨かれた銀色の刃が姿を現した。
「お……スゲェな……」
刃の異常なほどの輝きに先に感想を口にしたのはガイルズだった。手にしていたスプリングは声も出せないほどにそのロングソードに見入っていた。
「希望に答えられたらこちらも幸いだ」
ヴァンゲルはそういうと、もう一つロングソードよりも大きな布に包まれた物を手渡した。
「……これは……」
布を開くとそこには、ロングソードと対を成すかのような漆黒と銀色に輝いた盾があった。
「そういや名前がまだだったな、ロングソードの名前は、どれだけ戦っても壊れないという思いを込めて『戦続きの剣』、そして盾のほうは、どんな攻撃にも耐えるという意味で『矛盾無き盾』と名付けた」
「『戦続きの剣』と『矛盾無き盾』か……」
新たな自分の相棒となる武具に目を落とすスプリングの目には希望の光が宿っていた。
「よし……ガイルズ……!」
「おお、早速約束を果たすのか?」
スプリングとガイルズはお互いを見合い、ニヤリと口元を吊り上げた。
「お主ら……まだやるのか? 若いの……儂は疲れたから寝るぞ」
ヴァンゲルは呆れた表情で二人を見ながら鍛冶場へと戻って行った。
すっかり周囲は夜の静けさに包まれ、聞こえるのは夜に活動する動物の鳴き声と風になびく木々の音だけだった。再び鍛冶場の裏手にある小さな庭に向かった二人は互いを見合っていた。
「大丈夫か? すでにボロボロみたいだが……」
「お前こそ、ボロボロなのは変わらないだろう?」
お互いボロボロの姿をへへと一笑いすると、両者の顔色は真剣なものへと変わる。
その瞬間周囲に張りつめた空気が立ち込め、木々で眠りについていた鳥たちが騒ぎ出す。柔らかかった風も張りつめた空気に反応するように強くなる。強くなった風の影響で木々の葉が何枚も舞いそして地面にゆらゆらと落ちていく。そして最後の葉が地面に落ちた瞬間、スプリングとガイルズは当時に鞘から己の武器を引き抜き相手に向かい走り出した。
ガッキィ――――ン!
金属のぶつかる音が響き渡り、二人の戦闘職の戦いが始まる。金属のぶつかり合う音は、それから朝方まで続くのであった。
ガイアスの世界
戦続きの剣、矛盾無き盾
鍛冶師であるヴァンゲルがスプリングの依頼を受け、岩竜の粘液を変化させた金属で作り上げた戦続きの剣は、その名の通りどれだけ戦を続けようとも刃こぼれ一つしないという思いを込めて、ヴァンゲルが作り上げたロングソードである。
その形は通常のロングソードよりも微妙に小さい。その理由はスプリングが二刀流での戦い方を好んでいることから、片手でも素早く振えるようにするためである。そのため重量は人や魔物を殺傷できるギリギリの重量になっている。
スプリング自身が使いこなすまでに時間のかかる武器であることは間違いないが、他の者では絶対に扱えない一振りである。
『矛盾無き盾』は、『戦続きの剣』の製作で余った岩竜の粘液で出来た金属を使いヴァンゲルが勝手に作った盾である。
その強度は名の通り、どんな攻撃も防ぐと言われるどこかで聞いたことのある伝説の盾のような強度を持っている、とされている。
だが実際は何処まで耐えられるのか分かっていない。




