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真面目に合同で章 12 解かれる沈黙

ガイアスの世界


サイデリー 東の雪原


サイデリーの東壁の門を通り外に出るとそこに広がるのは何処まで続いているのではないかと思える程の銀世界。一面に積もった雪原である。


隣国までそれなりの距離がある雪原は殆ど人の手が加えられておらず自然豊かな場所である。

 寒さに耐性を持つ小動物や魔物が多く存在しており、防寒防具を作る為の素材が豊富に存在していることでも有名である。


真面目に合同で章 12 解かれる沈黙



 剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス 



 アキの体を支配した黒竜ダークドラゴンの力によって数分前までは銀世界であったサイデリーから少し東に出た雪原は、雪が蒸発し下に隠れていた地面がむき出しになっていた。所々爆発の影響で抉れた地面もあり一瞬みただけではそこがフルード大陸であることが分からない程その光景は一変していた。

 そんな荒れた大地にように激変した東の雪原に立つ正気を取り戻したアキは、自分が纏う全身防具フルアーマーから発せられた謝罪の声に驚き目を見開いていた。そして何よりその声は周囲にいる者達の耳にも届きブリザラを初めとしたその場にいた者達をも驚かせていた。


「……クイーン……」


自分が纏う漆黒の全身防具フルアーマーから久々に聞こえる美しい女性の声に、アキは驚きながら絞り出さすようにその声の名を呼ぶ。

 クイーン。それが自我を持つ伝説の防具、アキが身に纏う漆黒の全身防具フルアーマーの名であった。


『クイーン、どうやら抑えきれなかったようだな……』


同族である自我を持つ伝説の盾キングは、沈黙を破ったクイーンに深刻のトーンで話しかけた。


『ええ……マスターの想いが想像以上に強くて……』


「お、おい……何の話をしてる?」


 久々のクイーンの声に驚いていたアキは、その驚きから脱し何やら会話を始めた二つの、いや二人の会話に割って入る。


『……呆けた顔をしている暇は無いぞ小僧、お前が放った力、黒竜ダークドラゴンの力を嗅ぎつけこのサイデリーに災いをもたらす者がやってくるかもしれんのだからな……』


アキの言葉を無視しキングはサイデリーに危機が迫っている可能性があると告げる。


「……どういうことキング?」


キングのその言葉にいち早く反応したのは、サイデリーの王にしてキングの所有者であるブリザラであった。


『……我々の同胞……いや我々の敵が小僧とクイーンの中に存在する黒竜ダークドラゴンを狙っている……そういうことだなクイーン』


 自分の所有者であるブリザラにそう告げた後、答え合わせをするようにクイーンに尋ねるキング。


『ええ……隠していてごめんなさいキング』


 ガイアスでは無いある場所で伝説の武具達が人の姿で顔を合わせた時、黒竜ダークドラゴンが自分の中に存在している事を打ち明けなかった事を今になって後悔した。


黒竜ダークドラゴン……」


キングが口にしたその言葉を不思議そうに復唱するブリザラ。


黒竜ダークドラゴンってよく絵本に出てくるあの黒竜ダークドラゴンの事?」


 確かに黒竜ダークドラゴンはガイアスに存在する。それは学者や冒険者、戦闘職の者達の証言から明白である。しかし出現率の低さと出会ったが最後、生きては帰れないという状況からその存在は物語上の魔物と捉えている者達がガイアスには多い。その一人であるブリザラは信じられないという表情でアキが纏う漆黒の全身防具フルアーマー、自我を持つ伝説の防具クイーンを見つめた。


『お初にお目にかかります、サイデリー王、マスターが所有する伝説の防具クイーンです』


「あ、は、はい……ど、どうも初めましてブリザラ=デイルです」


 突然自分に対して丁寧な挨拶をしてきたクイーンに少し動揺したブリザラは、それでもサイデリーの王として、クイーンと同族であるキングの所有者として挨拶を返す。


『……あなたが言うように、確かにただの幼き王では無いようねキング』


 ブリザラの挨拶を聞いたクイーンは、ガイアスでは無いとある場所で、自分に所有者の自慢をしてきたキングの言葉を思い出しながらキングの言葉が真実であった事を口にする。


『ふん、今はそんな話をしている場合では無いだろう』


と強く言いつつも何処か嬉しそうなキング。


『あなたをサイデリーの王と見込んで、今まで一体何があったか、そしてこれからどんな事が起こるのかをお話したいのだけれど、よろしいですかサイデリー王?』


「えっ! あ、はい」


 美しく響く声。その声から紡がれる柔らかな口調、しかし何処か余裕の無いクイーンの言葉、にブリザラは返事をして頷いた。


「あっ……でも外では何ですから場所を変えて、一度宮殿に戻るというのはどうでしょうか?」


そうクイーン提案しながらブリザラは自分の後ろに立つお付のピーランの顔を見る。


「はい、それがよろしいかと」


顔を向けられたピーランは、ブリザラの提案に頷く。


『そうですね、確かにここではあなた達も凍えてしまいますね、配慮が足りませんでした……サイデリー王のご厚意に甘えることにしましょう』


 寒さに対しての感覚が一切無いクイーンは、周囲にいる者達が肉体を持った存在だという事を失念していた事をブリザラに詫び、そしてブリザラの提案を受けることを承諾した。


「あ、あの……クイーンさん、私の事はサイデリー王では無くブリザラと呼んでもらえますか?」


 一旦話が終わりサイデリーの氷の宮殿にそれぞれが向かおうと足を向けた始めた時、ブリザラはクイーンに向かって名前で呼んでほしいと伝えた。


『……分かりました……これからよろしくお願いしますブリザラ』


「はいッ!」


 クイーンが自分の名を呼んでくれたことに満面の笑みを浮かべるブリザラ。その満面の笑みを見ながらアキは何とも言えない複雑な表情で歩き出した。


「……おい、何で今まで口を閉ざしていた?」


 笑みを浮かべるブリザラから少し距離をとったアキは、周りの者達に聞こえない小さな声で、ムウラガから旅立ちこのフルード大陸に向かう海の上から一切喋らなくなった理由をクイーンに聞いた。


『それは……先程キングが言った私達の敵に黒竜ダークドラゴンの存在を悟られないようにする為です、その為には私の機能を最小限にする必要があったのです』


「悟られない為? お前やあの盾野郎にとっての敵に何で存在を悟られちゃいけないんだ?」


なぜ悟られてはいけないのか理由が分からないアキ。


『……私達の敵、ビショップが私達よりも遥かに強力な力を持っているからです』


「……強力な力?」


 自分達の敵の名を口にしたクイーン。そのクイーンの言葉に圧倒的な力に対する恐怖とそれを凌駕する恨みのような感情を感じるアキ。


『兎に角今は、氷の宮殿に向かいましょう、話はそこからです』


「……ああ」


 クイーンの言葉に対して短く返事を返したアキは、視界に入ったサイデリーの代名詞である堅牢に高くそびえる壁を見上げるのであった。



― サイデリー王国 東壁の門 ―



 東の雪原から氷の宮殿に向かう為、東壁の門に戻ってきたブリザラ達一行は、門の前に立つ初老の男と視線があった。


「王、ご無事で何よりです」


「グランさん」


門を抜けようとするブリザラに声をかけ駆け寄ってくる初老の男、東地区最上級盾士グランであった。


「それで……特例の方は無事終わったのですか?」


周りに聞こえないようにする為か、ブリザラの耳元で囁くグラン。


「え、ええ……その……はい」


グランの問に動揺するような素振りを見せるブリザラは、慌てながら頷く。


「ああ、それよりも急いで最上級盾士全員を氷の宮殿に集めてくれませんか?」


「……最上級盾士をですか?」


 ブリザラの唐突な集合命令に疑問を抱きながらグランの目は何故かブリザラの背後に向けられる。そこには南地区最上級盾士ランギュー二ュの姿があった。


「ランギューニュ……」


 ブリザラの背後でコソコソとするランギューニュに声をかけるグラン。グランに呼びかけられたランギューニュは肩をビクつかせると、グランの視線から逃れるように物陰へと移動しようとする。


「……」


 物陰に移動するランギューニュの姿を黙って見つめるグラン。コソコソとする理由も気になるが、それよりもグランはランギューニュのボロボロな姿が気になった。ランギューニュの姿はどう考えても何かと激しい一戦交えたような姿だったからだ。


「あ、あのグランさん、私の話聞いていますか? 最上級盾士の皆さんを集めてほしいのですが……」


先を急ぎたいブリザラは自分から視線を外し何かを凝視するグランに再度、最上級盾士を氷の宮殿に集めてほしいと念を押した。


「あ、申し訳ありません……はい、他二人の最上級盾士を直ぐに集めます」


 王と対峙しながらその視線がランギューニュに向けられていた事を謝罪したグランは、この場に居ない二人の最上級盾士を集めるとブリザラに言うとすぐに近くにいた盾士達に指示を出した。


「ありがとうございます、それでは私達は先に宮殿へ向かいます」


グランに礼を告げたブリザラは、商業区へと続く道に視線を向け歩き出す。それに続く他の者達。


「ランギューニュがあれほどまでにボロボロになるとは、一体何があったんだ……」


 盾士としての技術だけでいえば、グランよりも最上級盾士の長であるガリデウスよりも高いランギューニュ。ここ数年ランギューニュが自分の装備に傷一つ付けられた所を見ていなかったグランは、あれほどボロボロになったランギューニュの姿を見て只ならぬ予感を抱く。ブリザラの不審な動き、突然最上級盾士に会議室に集まれと集合をかける言動、そしてボロボロな姿のランギューニュ。これだけの事を見聞きして何も無いと言うほうがおかしな話であった。そんな事を考えながら、氷の宮殿へと向かうブリザラ達の背を見送るグランの表情は笑みを浮かべるのであった。


― サイデリー王国 氷の宮殿 会議室 ―



「王よ、一体これは何事ですか?」


 春の式典開催によって仕事量がいつもの二倍、三倍に膨れ上がっている北地区最上級盾にしてその長でもあるガリデウスは、突然の会議室へ集まれというブリザラの招集に戸惑いの表情を浮かべながら、会議室に集まっていた面々の顔を見渡す。


「こんな忙しい時にごめんなさいガリデウス、でも急いで聞いて欲しい話があるんです」


「急いで聞いて欲しい話?」


 春の式典真っ最中のこのタイミングでブリザラから急ぎの話があるということに全く見当がつかないガリデウスはブリザラの横に立つピーランに視線を向けながら首を傾げる。ガリデウスの視線に気付いたピーランは軽く頭を下げるだけで情報を伝える気が無く、ガリデウスは小さくため息をつくと再びブリザラに視線を戻した。

 ブリザラの表情は何処か堅く、焦っているようにも思える。その表情でふざけた話では無いことがすぐにわかったガリデウスは、ブリザラの言葉に耳を傾けることにした。


「……王よ、その大事な話の前に、まず東の雪原で何があったかを教えてほしいのですが」


「東の雪原? 何の話だ!」


 ガリデウスがブリザラの話に耳を傾けようとした矢先、思わぬ所から思わぬ話が飛び込み思わず声を荒げるガリデウス。

 ブリザラに尋ねたのは、東壁の門で顔を合わせていたグランであった


「ん? なぜ特例を出したお前がそんな事を言う?」


とぼけた表情でガリデウスに視線を向けるグラン。そのやり取りを見ていたブリザラ達の表情は青くなっていく。


「特例? 私は特例なぞ出しておらんぞ! どういうことだ?」



 そう言いながらグランに向けていた視線をゆっくりと再びピーランに向けるガリデウス。ピーランは何も知らないという表情を貫き通そうとするが、ガリデウスの圧に負け顔を伏せる。


「ああ……そこら辺の話はややこしくなるから後にしてくれませんか二人とも……」


 グランになぜこのタイミングでその話を持ちだすという気持ちを心に仕舞い込みボロボロになった防具から新しい防具へ着がえたランギューニュが、グランとガリデウスの会話に割って入る。


「ランギューニュ、お前……何か知っているな?」


不自然に自分とグランの会話に割って入ったランギューニュを疑いの目で見るガリデウス。


「いやいや、そんな……何も知りませんよ僕は……」


 そう言いながらピーランが思わず顔を伏せたガリデウスの圧に負け視線を逸らすランギューニュ。どう見ても誤魔化しきれていないランギューニュの様子に更に圧を強める疑いのガリデウス。その圧から逃れ助けを求めるようにランギューニュはブリザラに視線を向ける。


「はぁ……」


ランギューニュの視線にため息を一つ吐くブリザラ。


「ガリデウスにグランさん、申し訳ありません、今はその話、後にしてもらえませんか」


 何時かのアキとは違い空気を読んだブリザラは、圧をランギューニュに向けるガリデウスとそれをニタニタした表情で見ているグランにそう告げる。


「……分かりました」


「……はい」


 サイデリーの王であるブリザラの言葉に一応頷く二人。しかしガリデウスは明らかに不満そうな表情を浮かべている。二人が頷いたのを見てホッと胸をなで下ろすランギューニュ。


「後ほど、しっかりとランギューニュさんが説明してくれると思いますから」


「えっ!」


 ホッと胸をなで下ろしたのも刹那、ランギューニュの逃げ道を塞ぐようにそうガリデウスとグランに告げたブリザラ。その言葉を聞いたランギューニュの表情は更に青くなった。


「分かりました、それでは後ほど一から十まできっちりとランギューニュ最上級盾士から話を伺うことにします」


 不満な表情を浮かべていたガリデウスの表情が一気に晴れやかになる。だが晴れやかに見えるガリデウスの表情は、ランギューニュからしてみれば鬼が一時笑っているようにしか見えない。この後に待つ地獄のような時間を想像したランギューニュは憂鬱な気持ちになるのであった。そんなガリデウスとランギューニュの姿に込み上げてくる笑いを必至で抑え込むグラン。


「……」


そんなグランの姿に気付いたランギューニュは抗議の目をグランに向けるが、グランとどこ吹く風というように相手にはしなかった。


「はぁ……それで、王、我々を……いえ、ここに集められた者達に話というのは一体何ですか?」


 ランギューニュを巡るガリデウスやグランの話に全く興味が無い西地区最上級盾士ティディは、疲れた表情でブリザラが自分達をこの場に集めた理由を聞いた。

 ガリデウス程では無いが、ティディも春の式典では最上級盾士としての仕事以外に色々と任されており多忙であった。まだ全く手を付けていない仕事もありできれば早く仕事に戻りたいと思っているティディは、眼鏡から覗く虚ろな目でブリザラを見つめる。


「は、はい……これから話します」


無言の圧。ティディの疲れ果てている無言の視線に慌てるブリザラ。


「それではある方を紹介しようと思います、クイーンさん」


そう言いながらアキに視線を向けるブリザラ。


「クイーン?」


この場には存在しない名を発し、そして何故かアキに視線を向けたブリザラの行動に首を傾げるガリデウス。グランやティディも同様になぜという表情でアキに視線を向ける。


『まず、今まで自分の存在を隠していた非礼を皆さんにお詫びします』


「!」「!」「!」


アキの元から発せられるアキの物では無い女性の声に、同じタイミングで驚きを露わにするガリデウス達。


『……私の名はクイーン、自我を持つ伝説の防具です……』


 そう名乗ったクイーンに対して驚きの表情が固定されるガリデウス達。それもそのはずで、伝説の武具が一つあるだけで大騒ぎになる昨今、現在この会議室に新たな伝説の武具が存在しているという事実は、大いにガリデウス達を驚かす理由になる。それに加え、その伝説の防具はキングと同様に自我を持ち、自分達の前で言葉を発したのだ、驚かない方がおかしいというものであった。


「……キング殿と同じく自我を持つ伝説の防具!」


突然突きつけられる事実に驚き戸惑うガリデウス達はまじまじとアキが纏う漆黒の全身防具フルアーマーを見つめる。


「ちょ、ちょっと待ってください、王が話したかったことというのは、この伝説の防具、クイーンさん? のことなのですか? もしもそうだとすれば、王には悪いですが、春の式典で忙しい私達をわざわざ集めてまで話す必要のある事では無いと思うのですが?」


 驚き戸惑いながらも三人の中でいち早く驚きと混乱から立ち直ったティディは、驚いたことによってずれた眼鏡を直しながらブリザラが話したかったこととはクイーンの事だったのかと聞く。

 

『いえ、私の存在を知ってもらう為に集まってもらったのではありません、サイデリー王が話したかったこととは、私がこれから話すサイデリーに押し寄せるかもしれない災いについてです』


ティディの問に答える伝説の防具クイーン。


「災い……具体的には?」


 クイーンの言葉に一瞬にしてその場の雰囲気が変わる。ティディに遅れながらも驚きと混乱から脱したガリデウスは、クイーンに災いとはどんなものかと尋ねる。


『はい、とても強大な力を持つ者がこのサイデリーに向かっているかもしれないのです』


クイーンの言葉に既に事情を知っているピーランやランギューニュ達は真剣な表情を浮かべた。


「曖昧な言い方だな……」


クイーンの言い方が曖昧な事に疑問を抱くグラン。


『はい、何分、その存在は気分屋な者なのではっきりとは言い切れません、ですが……可能性は高いと思われます』


「まるで知り合いのような物言いをするが……一体何者なんだ?」


 サイデリーに迫っているかも知れない災い、その存在を気分屋と称したクイーンの言葉に再び疑問を抱くグランは、その正体に迫った質問をクイーンにした。


『……正確に言えば、一人と一つと言った方がいいかもしれん……』


だがグランの問に答えたのはブリザラの腕の中で抱きかかえられたキングであった。


「……一人と一つ……?」


 クイーンとグランのやり取り、そしてキングの言葉に何かが引っかかったガリデウスは深く考え込むように顎に蓄えられた立派な髭を触り、視線をブリザラとキングに向ける。


「!」


何かに気付いたガリデウスは、慌てるようにアキとクイーンに視線を向けた。


「一人と一つ……まさか! ……キング殿やクイーン殿と同じ存在を持つ者のことを言っているのですか?」


 伝説と名の付く武器や防具は、当然強力な力を持っており、世界をひっくり返せる力を持つ物があるとも言われている。ひっくり返せないとしても国一つに対して大打撃を与えられるだけの力を持つ物はそれなりに存在する。

 だがガリデウスはその先の答えに気付いた。伝説の武器や武具の力を凌駕する物、自我を持つ伝説の武具、キングやクイーンのような存在であった。

 キングの能力の凄さを知っているガリデウスは、その力があれば国を一人で相手にすることも不思議では無いという結論に行きつきその結論をクイーンに告げる。


『はい、その通りです……彼の名は、自我を持つ伝説の本ビショップ……我々伝説の武具の中で最も強力な能力を有する存在です』


怒りにも怯えにも捉えることの出来る口調で災いの正体を明かすクイーン。その正体にグランとティディは再び驚きの表情を浮かべる。


「もし、クイーン殿が言っている事が正しいとしてなぜそのビショップとやらがこのサイデリーに災いをもたらそうとしている?」


災いの正体は分かったが、サイデリーとは何の接点も無いように思える自我を持つ伝説の本ビショップが何故この国に災いをもたらそうとしているのか見当もつかないガリデウス。


『……それは、その……私とマスターの中に……』


『クイーン』


何かを言いかけたクイーンの言葉を遮るようにキングがクイーンの名を呼ぶ。


『それについては私が話そう……』

そう言ってキングは、クイーンに集まっていた注目を全て奪っていった。


「チィ……余計な気遣いしやがって……」


 なぜキングがクイーンの言葉を制したのか、その理由を理解するアキは、クイーン以外誰にも聞こえない声でそう呟いた。


『……我々とビショップの間には、深い溝があるのだ……』


そう言うとキングはまるで語り部のように自分達とビショップの間に何があったのかを語り出すのであった。


ガイアスの世界


クイーンが沈黙していた理由


 今までクイーンが沈黙していた理由、それは同族であり今は宿敵でもある自我を持つ伝説の本ビショップに自分と黒竜ダークドラゴンの位置を把握させない為であった。位置を把握されない為クイーンは極力、能力を使わずアキとの会話も避け己の存在を隠してきた。

 戦いの度、黒竜ダークドラゴンの力を使うアキから漏れだす『闇』の力を押さえつけるという役割もクイーンは担っていた。

 しかしアキの感情の爆発によって黒竜ダークドラゴンを押さえつけられなくなり解放させてしまった、クイーンは、自分と黒竜ダークドラゴンの位置を教えることとなってしまった。

 



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