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特別で章 ガイアスのクリスマス

 今回はありません



 剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス



 一年の終わりが近づいた頃、ガイアスの子供達にとっては夢のような一日がやってくる。


寝る前に枕元に靴下を置いておくと、全身真っ赤な恰好をした老人が、角が生えた四足の獣が引くソリに乗ってやってきて、一年間良い子にしていた子供達にプレゼントを置いていくというものである。

 全身真っ赤な老人の正体は子供好きの大精霊とも、人の世に落ちた神とも呼ばれているが、その正体は分かっていない。だが彼の正体など親からしてみればどうでもよく、子供達に「良い子にしていないとプレゼントを持ってやってこない」と彼の存在は躾の一環になっているほどであった。

 今宵はそんな子供達にとって最大級のイベントがやってくる。子供達の喜びがガイアスに広がる日が。



 ― ガイアス 小さな島国上空 ―


「さて……ニコ初仕事なわけだが」


 ソリを引く立派な角が生えた獣がソリにのった全身真っ赤な恰好をした老人とは程遠い青年に人語で声をかけた。


「ああ……たっく面倒だよな……なんで俺達一族は一銭にもならないこんなことをしなきゃならないんだろうなルドルフ」


悪びれることなく面倒だといいきり表情に現す青年ニコは、ソリから下に見える町や村を眺めた。


「それは君達一族が子供の喜びを糧にして生きている種族だからさ」


「そういうと……夢も希望も無いな……」


「君が理由を述べろといったからだろ」


ルドルフと呼ばれた獣のもっともな言葉にぐうの音も出ないニコは口をつぐんだ。


「さてではそろそろ子供達も寝静まったはずだ、彼らの望む物を贈りに向かうとしよう」


そういうとルドルフは蹄をカカッと鳴らし、優雅に空を駆け始めた。ルドルフの体やソリからは神秘的に輝く光の結晶がキラキラと解き放たれ、夜の暗さに神秘的な輝きを放っていた。

 ガイアスの世界でも珍しい時と時空を司る大精霊と人間のハーフであるニコの一族は《サンタクロース》と言われる種族であり、ガイアスの世界において極めて珍しい種族である。彼らは世界と世界を行き来する能力を持っていると言われており、その存在はガイアスだけにとどまらない。

 《サンタクロース》はその殆どが男性であり老人である。ニコは珍しい種族の中でもさらに珍しい存在であった。

 そんな彼達サンタクロースはハーフと言われているが、その存在はほぽ精霊であった。だがハーフが故に精霊のように自然からエネルギーを供給することが出来ない。そのため彼らは自らの力を保つためにとある物を人々から貰わないと生きていけない性質であった。

 それが子供達の喜びという感情であった。それを得るために効率のよい方法が、子供達の望む物をプレゼントとして置いていくということであり、目を覚ました子供達からは極上の喜びのエネルギーが貰えるのだという。

 そしてそのエネルギーはニコとともにガイアスの空を飛び回るルドルフにもまた必須な物であった。《サンタクロース》に仕える聖獣ルドルフは彼らの行動をサポートする役割を持っており、時と時空を司る大精霊から加護を受けた獣なのである。


 「よしではあの屋敷に向かおう」


ルドルフは小さな島国の北、村や町から離れた場所にある屋敷に視線を向けると鈴の音のような音を立てながら降下していく。


「よっこらせっと」


ニコは屋敷の屋根に生えた煙突付近に着地すると、空に浮いているルドルフを見た。


「初仕事頑張っておいで」


《サンタクロース》が子供達にプレゼントを与えるにあたって何個かルールがあった。その一つが、煙突がある家の場合必ずその煙突から出入りしなければならないということである。

 ニコは面倒な表情を崩すことなく、煙突の中に入って行った。

年配の《サンタクロース》は体格がふくよかな者が多く、時たま煙突にはまってしまうという事例があるが今回が初仕事であり、まだ若いニコは煙突にはまることなく、ゆっくりと暗い煙突の中を下りていく。


「くぅ……うおっ!」


だが逆に体が痩せている分、引っかかりがなく、煙突に溜まったススに足を取られ滑り落ちていくことがよくあり、ニコもまた煙突の下に繋がる暖炉に尻から落下した。


「ゴホゴホ……いってててて……」


ススが舞い上がり、咽るニコは口をふさぎ手でススを仰ぎながら暖炉から這い出していく。顔も体もススだらけとなったニコは真っ赤な服についたススを叩き落としながら暗い部屋を見渡した。


「畜生……結局落ちちまった」


体のススを叩き落とすとニコは早速この屋敷にいるであろう子供が寝ている部屋を探し始めた。


「そんなに広く無さそうだな」


家主に対して失礼な発言をするニコは、物音を起てぬようにゆっくりと歩き出した。《サンタクロース》が子供にプレゼントを与えるうえでのルールのもう一つが家の者達に見つからないことであった。家主達も彼らの存在に気付いたとしても決して顔を合わせたりしないというのが人間側の暗黙のルールでもある。

 なるべく周囲に気配を感じ取られないようニコはすぐに子供部屋だと分かる扉を、音を立てぬようゆっくりと開けた。


「ちょいと失礼しますよ」


はたからみれば泥棒のように抜き足差し足で、ベッドで眠る少年の枕元まで進んでいくニコは、ベッドの横にある窓に視線を向ける。すると窓の外ではニコのことを心配そうに見つめるルドルフの姿があった。ニコは手で払うような仕草をすると嫌な顔をしながら再びスヤスヤと寝息を立てる少年の顔を覗きこんだ。


「さてさてお前の望む物は何だ?」


ニコは白い手袋を脱ぐと少年の額に手をそっと置いた。


「……!」


少年の額から伝わる想いを感じ取るニコ。しばらくしてそっと少年の額から手を離すニコの表情は険しかった。


「……」


しばらく少年の顔を見つめたニコは大きな白い袋を何も無い空間から取り出すと、その袋の中に手を突っ込み何かを取り出した。


「……悪いな……お前にプレゼントを贈ることは出来そうにない……」


寝息を立てる少年にそう言いながらニコは枕元に置いてあった靴下の中にそっと何かを忍ばせると仕事は終わったとニコはその少年の部屋を後にした。


「どうしたニコ、浮かない顔をして」


明らかに様子がおかしいニコの姿をみてルドルフは声をかけた。


「……あの子の未来が見えた……」


《サンタクロース》はまれに子供に起こる近い未来をみることができたりする。ニコは少年の近い未来を見たとルドルフに告げた。


「そうか……」


《サンタクロース》が子供にプレゼントを与えるにあたってのルールの一つに、子供の近い未来をみた場合、それは自分の胸に留め誰にも口外しないというものがあった。

 時と時空を行き来できる力を持つ者としての最低限のルールでもあり、それは聖獣ルドルフであっても口外できない。そのことを理解しているルドルフはそれ以上ニコに聞くことはしなかった。

 言葉や態度が乱暴で誤解されがちではあるが、ニコはとても優しく繊細な心の持ち主であり、少年の近い未来で何かとても酷い事が起こることはニコの表情から察することができた。

 

「冷たいようだがあまり深く考えるな……我々にはどうしようも無いこと……気を取り直して次の子供の所まで向かおう」


「あ、ああ……」


ルドルフの言葉に頷くニコは宙に浮いたソリに腰掛けた。


「それじゃ……行くぞ」


ニコは少年が寝ている部屋に視線を向けると、少年の身に近々起こる過酷な未来にどうか負けぬようにと祈りを捧げ、ルドルフとともにその場を離れ小さな島国の上空へと飛び立った。

 ルドルフは自慢の角を揺らし、夜の空に切れ目を入れた。するとその切れ目はルドルフ達を飲み込むほどに広がりその空間に躊躇することなく飛び込んでいった。



― 一年中雪が降る大陸 ―


 一年のうちほとんどが雪や氷に閉ざされた大陸は現在一番厳しい季節になっていた。連日猛吹雪であるその大陸では皆早くこの季節が通り過ぎることを祈りながら過酷な日々をおくっていた。


 「お、おお……さ、寒い……」


吹雪が猛威を振るう大陸上空に姿を現したニコとルドルフ。体をガタガタ震わせながら顔に容赦なく降りかかる吹雪に目も開けられず、すぐに雪に埋まっていくニコ。


「ああ、悪いちょっとまってくれ」


そういうとルドルフは体から光を放ち、ニコが乗るソリ全体を覆うと、吹雪からニコを守った。


「……はぁ……ルドルフ……お前は寒くないのか?」


雪まみれになっていたニコはそれを払いながら、雪が舞う空を駆け抜けるルドルフに質問した。


「ああ、私は本来こういった場所に生息する生物だからな、これくらいなら問題ない」


ルドルフは活き活きとしたような動きで未だ止まぬ吹雪の空の中を駆け抜けていく。そんなルドルフをみてニコは小さくため息をついた。


「さて次の場所はここだ」


ルドルフの言葉にニコはソリから下に広がる建物を覗きこんだ。そこには吹雪で視界零であったとしてもその存在を悠然に示す大きさを持った建物が広がっていた。


「お、おいおい……俺には城みたいに見えるんだが……」


 明らかにその大きさは一般人が住んでいる建物ではなかった。貴族か、それ以上ならば王族が持つ建物であり、徐々に下降していくソリの上で吹雪によって閉ざされていた視界が晴れていくと、ニコはそれが王族の住まう居城であることを確認した。

 城と呼ばれているが、実質宮殿であるその建物の各所に、吹雪の中でもいっさい微動だにせず大盾を構えた兵士達が立っていたからだ。


「さすがに~ここに入っていくのはやばいんじゃないか?」


たとえガイアスの理を離れている《サンタクロース》であっても、一国の城に潜入するのは中々の勇気が必要であり、無事に戻れるという保証はなかった。


「どんな立場であっても我々にとって子供は平等だ、それが王族であっても、貧困に嘆く少年でも変わらないはずだが?」


《サンタクロース》が子供にプレゼントを与える上でのルールの一つをルドルフに口にされ、深くため息をつくニコ。


「ああ~わかったよ、んじゃいってくるよ」


半ば諦めた表情のニコはそういうとソリが接近した城のテラスに飛び降りた。


「それじゃ健闘を祈る」


ルドルフはそういうと上空に上がりニコの視界から消えていった。


「さてと……」


一国の王が住まう城だというのに、テラスの窓に鍵はかかっておらずすんなりと窓が開けてしまった。


「あらら」


ニコは開いた扉に手間が省けたと躊躇することなく部屋の中に足を踏み入れていく。これまた運がいいのかそこは王族の少女の寝室であり、即ちお姫様の部屋であった。


「さてさて失礼して、お姫様はどんな物をお望みかな?」


先程の少年と同じく少女であるお姫様の額に手を置こうとするニコ。だがその瞬間、お姫様の目がバチッと開いた。


「んっ……」


突然の事に硬直するニコ。


「あなたがサンタクロースさんですね」


少女の瞳ははっきりとした形をしており、少女だというのにその目力は異常なほど強くニコは吸い込まれそうになった。少女はベッドから上半身を起こすとニコをじっと見つめた。


「私にプレゼントを持ってきてくれたのですね?」


待ってましたとばかりにニコリと笑う少女の表情は可愛らしくどこにでもいる少女の笑顔であり、ニコが寸前にドキリとした少女と同一人物なのか疑うほどであった。そこでようやくニコは、目の前でニコリと笑う少女が自分を待っていたのだと理解した。

 時たま《サンタクロース》の正体を暴こうとする子供が現れ、《サンタクロース》は苦労させられることがあると、ニコは自分よりも遥かに先輩である《サンタクロース》から聞いたことを思い出した。


「あ、いや……」


口を開くことが出来たニコではあったが危機は去っていない。このままでは《サンタクロース》のルールに違反してしまうからだ。この場をどう切り抜けるか考えるニコをじっと見つめる少女は何かに気付いたのか手をポンと叩いた。


「すいません、《サンタクロース》の方々には色々とルールがあるのでしたね」


なぜそのことを知っているのかとニコは首を傾げる。だが少女はそんなことお構いなしにベッドに横になると目を瞑った。


「私は何もみていません、なので《サンタクロース》さんは自分の仕事を全うしてください」


そういうと少女は寝たふりをはじめる。どうやらニコの事情を気遣ってそうしたようだが、ニコにとってはやり難いことこの上なかった。だがそうしなければ先には進まない。寝たふりをしている少女が一体何を考えているのか理解できないニコだったが、少女の額にとりあえず手を置き少女の思考を読み取ろうとする。

 

「……んんん……?」


少女の額に触れたニコの表情が歪む。


(……何なんだ……全く思考が読めない……) 


ニコの頭に少女が欲している物のイメージが浮かんでこない、白紙そのものだった。


「……欲が無いのか……?」


 目の前の少女を見ながらニコは小さな声で呟いた。その言葉に少女は少しだけ首を傾げる。

 誰しもが持つ欲、特に子供ならばそれは一応に強いはずなのだが、目の前の少女からは欲している物がまったく感じ取れない。その事に困惑するニコは、一体どうすればいいのか悩んだ。


「……」


結局悩んだ末にニコはある決断をする。


「その……君の欲しい物はなんだ?」


直接少女に聞くことにした。それは《サンタクロース》のルールに違反しており、ばれればそれなりの罰を受けることになる。だが自分の姿を見られ会話までしてしまった以上、欲しい物が分からないから帰ると言うわけにもいかず、ニコはルールに背いても本人に欲しい物を聞くことにした。

 ニコの言葉に初めて子供のような表情になる少女は、少し俯き上目使いでニコを見た。


「……私の欲しい物……ですか……えーと……欲しい物というか……お父様と、一日でも一時間でもいいから一緒に過ごしたいです」


少女の欲しい物はオモチャでも、おいしい何かでもなく、父との時間であった。一国の王の娘は王である父と一緒に過ごす時間を望んでいたのだ。

 一国の王ともなれば中々時間も取れず自分の娘との時間も取れないことは容易に理解できる。その事を目の前の少女はちゃんと理解しており、それが叶わないことだと知っているというように、眉毛をへの字に曲げ、少し困ったような切ない表情を浮かべていた。少女の表情をみてニコはどうにかして少女の願いを叶えてやりたいと思った。だがニコは全知全能の神では無い。一国の王に無理矢理時間を作るなどそんな大それたことができるはずも無く、悩みに悩んだ。そして


「わかった、その願い叶えよう」


その言葉にパッと花が咲くような満面の笑みを浮かべる少女。本来サンタクロースは子供が嬉しがる物を贈る存在であり、願いを叶える存在ではなくニコの行動は《サンタクロース》の行動理念から逸脱していた。


「それじゃもう一度目を瞑ってくれるかいお姫様」


ニコは少し芝居がかった調子で少女にそういうと、少女はコクリと力づよく頷き、目を瞑った。

 再度少女の額に手を置くニコ。しばらく経つと少女からは可愛い寝息が聞こえ始める。


「実際に時間を作ってやることは出来ないけれど、せめて夢の中では……」


そう言うとニコは静かに幸せそうな表情で眠る少女の部屋にある窓を開け外のテラスに出た。


「お疲れさまニコ、それでどうだった?」


「どうだった? ……うまくいかねぇよ……まったく」


ルドルフの問にそう答えるニコ。少女の願いをまったく叶えてやることが出来なかった自分に、少し失望しながらニコはソリに飛び乗った。


「そうか……まあまだ夜は始まったばかりだ、次に向かうことにしよう」


中々うまいこと自分の役割を全うできず凹んでいるニコにあまり触れることなく、ルドルフは次の場所へ向かうため極寒の大陸の空へと駆けあがる。


「それじゃ行くぞ!」


先程と同じようにルドルフはそういうと、夜の空を角で切りさき、空間を開いた。ルドルフ達が入れるほどの穴が開くとその空間にルドルフとニコは入っていった。




― 自然多き大陸 ―


ニコとルドルフは空間を一瞬にして飛び越え、新な大地に姿を現した。


「ん? ……今度は過ごしやすいな」


 季節は冬だというのにそれほど寒くもなくかといって暑くも無い丁度いい気候を肌で感じながら、周囲を見渡すニコ。その視界に広がるのは何処までも続く自然であった。尋常ではなく大きな巨木などが連なるその大地は巨大な森であり到底子供が、いやそれ以前に人が居るような場所ではなかった。


「おいおい、ルドルフ……こんな所に子供が居るわけがないだろ」


空に浮かぶソリから下を眺めるニコ。そこには町や村などは見当たらない。


「いや、自分の物差しで物事を考えるのはよくない、人という種族は以外にしぶとい……こんな所にもいる可能性は十分にある」


「可能性って……お前、結局居るか分かんないじゃないかよ」


とりあえず空をフラフラしていても仕方が無いと、ルドルフとニコは地上に降りることにした。地上に降りて自分の足でその大地を踏みしめる。歩き始めるとそこは険しい道のりでありしばらく歩くと、ニコの顔からは汗が伝っていた。


「ああ、過ごしやすいとは思っていたが、森の中を歩くと暑いな……」


だらしなく赤い服を着崩すとニコは手で自分の顔を仰いだ。


「だらしないぞ、こんな所を子供に見られたら《サンタクロース》のイメージが悪くなる」


「悪くなるってこんな所に子供がいるわけねぇ……」


足がピタリと止まるニコの目の前には、巨木に横たわる傷だらけの少年の姿が映っていた。


「おいおい、いたよ……」


「私の言ったことは正しかっただろうニコ」


「んなこと言ってる場合じゃない、体中傷だらけだ、まさか死んで無いよな」


傷だらけの少年を前に駆け寄ろうとするニコ。


「待て、ニコ!」


ルドルフの声に足を止めるニコ。


「だけど……」


一旦足を止めたがニコは今にも少年に駆け寄ろうとする勢いであった。


「……なんだ……今度は幻覚を使う魔物か?」


少年はニコとルドルフのやり取りに目を覚ましたのか、背中に背負っていた弓をゆっくりと構えた。


「お、おい待て待て俺達は魔物じゃ無い……」


「いや、騙されない……ここはそういう場所だ」


目の前の少年は完全に戦闘態勢だった。だが弓の向いている方向はニコに定まっておらずあらぬ方向を向いていた。


「お、おい……俺はこっちだ」


「な、何っ! こっちか」


弓の方向を素早く変える少年、だがその弓はまたニコとは別の方向に向けられていた。


「お前……目が悪いのか?」


少年のおかしな行動に目が悪いのではないかと考えたニコ。


「な……くそ……ばれてしまったか……」


「おいおい」


正直な奴だなと苦笑いを浮かべるニコ。だがその少年が欲しているであろう物が分かったニコは少年に近づいていく。


「う、うぅぅぅ……ち、近づくな!」


力なく叫ぶ少年は後方へとフラフラした足取りで後退する。だがニコの歩く速度のほうが早くすぐに追いつかれてしまった。


「いい加減信じてくれ、俺はお前に危害を加えたいわけじゃないんだ」


ニコはそう言いながら少年の額に手を乗せる。


「な、何を……」


一瞬抵抗しようと体を動かそうとした少年であったが、すぐに力尽きたように足から崩れ落ちる。少年の体を支えたニコは巨木に根に少年を寝かさせると少年の横に少年が欲しているであろう物をそっと置いた。


「ようやく、仕事が出来たな……」


満足したような表情を浮かべるニコ。


「まあルールを幾つも破っているから帰ったら叱られるだうけどな……」


ニコの背後で一部始終をみていたルドルフは達成感を味わっていたニコに水を差した。ニコの表情は氷着くように固まった。


「さや気を取り直して次の子供に会いにいこうか」


ルドルフは固まってしまったニコを無理矢理ソリに乗せると巨木の根で眠っている少年がいる場所から空へと飛び立っていった。


 子供達から喜びの感情を貰うため世界中を駆け抜ける《サンタクロース》達の夜はまだまだ続く。長い夜は始まったばかりであった。



 ― 翌朝 -


 小さな島の最北に住む少年が目を覚まし、枕元に置いていた靴下の中を覗くとそこには、無骨に輝く指輪が入っていた。これじゃないという表情を浮かべた少年はベッドから飛び起きるとその指輪を持って一階にいる両親の下へと泣きながら向かって行った。

 その指輪の名は守りの指輪。少年の未来をみてしまったニコのせめてものの贈り物であることを少年は知らない。

 

 一年中雪が降る大陸のとある城、宮殿の寝室で目を覚ました少女の表情はこれでもかというほど幸せに満ち満ちていた。

 滅多に会うことも出来ない自分の父親である一国の王と、楽しい時間を過ごした夢が見れたからであった。

 少女は寒さなど弾き飛ばすほどのホクホクの笑顔でテラスから覗く城下町を見下ろし、今日も頑張るぞと両手を上げた。


 鳥の鳴き声で目を覚ました少年は巨木の根から背を離した。手が何かに触れそれを手にする少年。視界がぼやけておりはっきりと分からないがそれはメガネのように少年にはみえ思わず少年はそのメガネをかけた。

 するとぼやけていた視界は開けたように広がり、巨木が連なる森がはっきりと少年の視界に入ってきた。

 少年の表情はパッと晴れやかになり、体中に力が湧き上がってくるようなそんな感覚さえあった。少年は見据える。これから自分が向かうであろう道をはっきりと見えるようになった視界で。 



 一年に一度やってくる子供達が待ちに待っていたその日、世界中から子供達の喜びの感情が舞い上がっていく。その思いを胸に世界中に散っていた《サンタクロース》達は笑顔になるのであった。



 メリークリスマス!


 山田はリア充では無いのでまったく縁遠い日ではありますが、昔からサンタクロースは好きでした。まあ他にもプレステやセガサターンなどで出ていた某とんでもゲームの影響も十分にうけてはいるのですが、大好きですサンタクロース!

 現在働いている場所もオモチャ屋なので縁はあるのですよ(笑

 ということでガイアスのクリスマスを書こうと思い書き始めたのですが、何分時間が無かったので、(←ゲームやってただけ)仕上がりのほうはお恥ずかしいものになっています(汗

 いやはやすいません(汗笑

 

 さてさてクリスマスが終わればもう一年も終わりなわけです。そこでご挨拶を。

 今年約一年、伝説の武器が装備できませんを読んでいただきありがとうございます、誤字脱字、辻褄が合わないなど色々とご迷惑をかけていることと思いますがなにとぞ生暖かい目でこれからもよろしくお願いします。

 それでは来年もよろしくお願いします。


                 山田次郎

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