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暴走の果て、選択の果て

ガイアスの世界


 今回ありません




  暴走の果て、選択の果て

 


 『闇』に支配され剣や魔法が意味を成さなくなってしまった世界ガイアス




 ― 数十分前 インギル大聖堂内 ―




 様々な事情からこれまで実現することの無かったサイデリー王国の王によるインギル大聖堂訪問。一切の告知無し。抜き打ちによるブリザラ王の訪問は、情報を隠匿し非公開としているインギル大聖堂側に大きな動揺を与えることになる。

 そう考えたブリザラは、突然訪問した自分にインギル大聖堂側が動揺し慌てているその隙に、先行して聖堂内に侵入していたピーランが、これまで巷で流れていた噂が真実であると裏付ける証拠を集めさせるという作戦を実行に移した。

 

「……あれ?」


 しかしブリザラのその作戦はインギル大聖堂の扉を開いた時点で破綻した。


「……真っ暗?」


「誰もいない?」


 扉を開いた先にある大きな玄関口エントランス。日常的に僧侶プリーストたちが行き来するだろうその場所には灯りが付いておらず真っ暗であり、人の気配が一切無い。


「……?」


 暗闇に少し目が慣れた頃、警戒しながら周囲を見渡していたブリザラは暖炉を見つけた。


「……暖炉にも火が灯っていない」


 インギル大聖堂があるのはフルド山の山頂。フルード大陸の極寒な気候に加え雪山の山頂であれば、その気温は恐ろしいほどに低く到底人が生きていける環境ではない。例え雨風に加え雪を防ぐことができる屋内だとしても暖房器具は必須。だがそれにもかかわらず共同空間である玄関口エントランスに備えつけられている暖炉には火が灯っていないのだ。


「……おかしい……」


 暖炉に火が灯っていないということは、玄関口エントランスは現在使われていないということになる。それは即ち少なくとも玄関口エントランス付近には誰もいないということにもなるのだが、一日に何人もの僧侶プリーストたちが出入りするだろう共有空間である玄関口エントランスの暖炉に火が灯っていないなんてことは有り得るのかと首を傾げるブリザラ。


「……もしかして……皆何処かに出かけている……そんな訳ないですよね」


 自分の言っていることがおかしいと理解しつつも、しかしそうとしか考えられないテイチ。


「うーん」


 どう考えても防犯上の観点から全員が一斉に何処かへ出かけるなんてことは有り得ない。何が起っても最低限の対処ができるよう必ず留守番を数人は残すはずである。


「……」


 しかし事実、全員が何処かへ出かけたとでも考えない限り、玄関口エントランスの灯りが消えていることや暖炉に火が灯っていないことの説明がつけられないブリザラ。


「……後考えられるのは……」


 そこまで言って言葉を切るブリザラの脳裏に罠という文字が一瞬浮かぶ。


(これが罠へと繋がるなにかだとすれば……)


 そこまで思い浮かべてブリザラはその思考を止めた。これ以上思考を進めれば、疑いたくない者たちを疑わなければならなくなると思ったからだ。


(大丈夫……)


 それにこれがもし罠なら先行してインギル大聖堂へ侵入しているピーランから何か連絡があるはずとブリザラは自分に言い聞かせるように考えを切り替えた。


「……ここに留まっていても変わらない……先に進んでみよう」


「は、はい……ちょっと待ってください、今灯りを……」


 先に進むことを決めたブリザラの言葉に頷いたテイチは、火の精霊を使い視界を確保しようと召喚準備に入った。


「……あれ?」


 だが召喚準備に入った直後、テイチは違和感を抱いた。


「どうしたのテイチちゃん?」


 首を傾げたテイチに声をかけるブリザラ。


「……精霊たちが……な、何故か騒がしくて……」


 普段自分の前ではおとなしい精霊たちが騒がしくしている、その理由がわからないテイチは戸惑っていた。


 十代という幼い年齢で召喚士になったテイチ。界隈では精霊に愛された天才とも言われているテイチはその言葉通り精霊に愛される体質を持っている。

 事実、契約を交すことは愚か、出会うことすら難しいとされる上位精霊の一体と契約を交しており、その上位精霊からは溺れる程の寵愛を受けている。当然その体質は上位精霊だけでは無く自我を持たない下位の精霊たちにも効果があり、テイチの呼びかけに普段ならばすぐに力を貸してくれるはずだった。


 しかし今回は何かが違った。


「……待って皆……」


 対話をするように精霊たちへ呼びかけるテイチ。しかし返ってくるのは、自我を持たないはずの下位精霊たちの、まるで何かを訴えるような一方的な叫びだけ。


「駄目……このままじゃ……」


 精霊の力が暴走する。そう考えたテイチは、どうにかして精霊たちの訴えを聞こうとする。だが無数に吐き出される叫びが混じり合い何を言っているのかテイチには聞き取れない。


「……ッ!」


 普通の暴走とは違う、何かが精霊たちの間で起きている。それをつきとめなければ、精霊たちの暴走を止めることが出来ない。しかしその精霊たちの言葉を何故か聞き取ることが出来ない。


「ッ! ブリザラさん……離れてッ!」


 暴走を止めることが出来ない。最悪の状況を想定したテイチは、ブリザラの安全を考え自分から離れてと叫んだ。


「……ッ! でもッ!」


 僅かに距離を取ったものの、テイチのことを心配に思うブリザラはそれ以上離れようとしない。


「……駄目ッ!」


 一気に精霊たちの力が膨らんで行くのを感じるテイチ。


「……三属性の精霊たちが一斉に暴走して力を解放しようとしていますッ! もう私では抑えきれません、ブリザラさんは逃げて!」


 精霊の制御に失敗し暴走させた場合、小さい暴走ならば召喚士の負傷程度で済む。しかし大きい暴走ならば、状況や数、精霊の力にもよるが、召喚した精霊の属性に関した災害が発生する。

 ただ今回の場合、テイチの下に集まったのは水属性を除いた三属性の下位精霊たち。多重属性による同時暴走である。多重属性による同時暴走から巻き起こる災害の規模がどれほどになるのかはテイチにも予想が付かない。だが確実にインギル大聖堂は吹き飛ぶことになる。それを察したテイチはブリザラへの指示を「離れて」から「逃げて」に切り替えた。


「……大丈夫ッ! 私が守ってみせる!」


 テイチの様子を見れば危険な状態であることはブリザラにも理解できる。しかしブリザラの中にテイチを残して逃げるという選択は無い。

 勿論ブリザラのこの行動には、彼女を今失えばこの先の未来は無いという打算的な考えはあった。しかしそれ以上にテイチという大切な存在を失うことをブリザラは恐れていた。


「待ってて、今側にいくから」


 聖堂内の空気を揺るがす精霊たちの叫びは重く、テイチの下へ行こうとするブリザラの行く手を阻む。だがそれでもブリザラは進む。背中に背負っている盾は飾りじゃないと言わんばかりに、沈黙を続ける自我を持つ伝説の盾キングを構え精霊たちの叫びを防ぎながらブリザラはテイチの下へ近寄って行った。


「駄目! ……駄目です! こないで……!」


 既に限界を越え、後は精霊たちのその時を待つことしか出来ないテイチは、顔を左右にふりながら近づいてくるブリザラへ自分から離れることを切望する。


「……大丈夫、大丈夫だよ……」


 テイチの手を優しく掴むブリザラ。


「まずは落ち着こう……」


 そう言いながらブリザラは自分の方へテイチ引き寄せる。


「落ち着いて……私の心臓の音をよく聞いて……」


 テイチの頭を抱き抱えるブリザラ。


「……」


 ブリザラに言われるがまま頭を抱き抱えられたテイチは、顔半分から感じる柔らかい感触とその奥から聞こえる一定の間隔で鼓動する心臓に耳を傾けた。


「……息を吸って……吐いて……」


 自分の心臓の音を聞かせながらテイチの呼吸を安定させていくブリザラ。その指示に素直に従うテイチの表情から緊張と悲壮感が消えて行く。すると、荒ぶり騒がしく暴走しかけていた精霊たちも徐々におとなしくなっていく。


「そう、大丈夫だよ……ゆっくり……ゆっくり……」


 母親が赤ん坊をあやすように優しい声色でテイチへ話続けるブリザラ。その言葉は精霊たちへも届いているのか、一体また一体とテイチの下から去って行く。その優しい声色に心が落ち着いていくテイチは既にこの世にはいない母親のことを思い出しながら意識が途切れていった。


「……はぁ……」


 嵐が静まったように静寂を取り戻すインギル大聖堂。精霊の暴走を何とか回避することが出来たブリザラは、自分の胸の中で眠るテイチの顔を見つめ安堵する。


「……やっぱり誰もいないのかな」


 ここまで騒ぎ立てても誰一人姿を現さないこの状況に違和感を通り越して不気味に思うブリザラ。


「……ッ!」


 しかしこの場所に抱いた不気味さすら吹き飛ばすような強烈な衝撃に襲われるブリザラ。


「まさかッ!」


 終わってはいなかった。それは一度引いた波が更に勢いを増して押し寄せてくるかのように突如としてブリザラの前に現れた。


「……」「……」「……」


 ブリザラの前に現れたのは森人エルフのような長い耳と端正な顔立ちをした小人のような少年と、たてがみを思わせる炎を全身に纏う筋骨隆々の上裸の男。そして熟練の魔法使いのような姿をした土色の肌を持つ老人たちだった。


「……?」


 突如現れた老人たちはまるで当然とでも言うように一瞬でブリザラからテイチを奪った。


「……ッ!」


 何が起ったのか、何をされたのか一瞬理解できなかったブリザラは、なぜかそれが当然だという思考に支配されていた。


「待って! ……待って……」


 思考が正常に戻り、その言葉を口にした時には、もうテイチや老人たちの姿はそこに無かった。



 

 月の最終金曜日、もしくは土曜日の掲載について


 どうも山田です。


 上記にもあるように三月から掲載日程を少し変更しようと思っております。

 

 従来通り、金曜日、もしくは土曜日に新しい話を掲載するのは変わらないのですが、掲載本数を減らそうと思っております。


 細かく説明しますと、月の最後の金曜日、もしくは土曜日(第四とかもしくは第五と言われる金曜土曜ですね)の掲載を止めます。

 掲載本数を減らす理由についてですが……クオリティーが崩壊しているからですね。クオリティーの現状維持……もとい底上げをする為に、月の最後の週を使おうって魂胆です。


 ここ数年、風呂敷を広げ過ぎた所為で設定の矛盾とか、物語の矛盾とか、未回収(忘れている)伏線とか沢山出てきてしまって管理ができていない状況に陥っております。明日やる、明後日やる、いつかやると先延ばしにした結果の果てが……これです。

 その為、既に掲載された話の内容が変更されるなんて場合も出てきますので、気になった方は読み返してみるのも……。


 と言う訳で、何卒ご理解していただけますとありがたいです。山田でした。



  2025年2月28日。某ゲーム機を持っていない為、某モンスターを狩るゲームの新作が出来ないと嘆きながら……



 

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