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罰を受けし者

ガイアスの世界


 今回ありません 

罰を受けし者




 ― 場所不明 —



 深い霧に包まれた空間。何処までも続くその空間には霧以外、他に見えるものは無い。そんな何もない空間に、再び足を踏み入れたブリザラはある場所を求めて進む。


「……」


 位置は愚か方角すら掴めないその空間を自分の記憶と感覚だけを頼りに進むブリザラはそのある場所を見つけた。

 ブリザラが辿りついた場所には一脚の椅子があった。何も装飾が施されていない簡素で地味な椅子。まるでブリザラが座る玉座のような椅子がそこにはあった。


「……」


 かつてこの場所は同一個体と呼ばれる別の世界の自分たちが集まった場所。感覚が曖昧で夢や幻のように現実味の無い場所。本来交わることの無いはずの様々な世界に存在するブリザラたちとブリザラが対話した場所であった。


「……」


 別の世界に存在するブリザラたちと対話した時に自分が座っていた簡素な作りの椅子に近づきながらブリザラは何かを探すように周囲を見渡した。その視線の先には身に覚えのある椅子があった。

 かつてその椅子は長椅子ソファーであった。だが持ち主たちの心が通い合った瞬間、その長椅子ソファーは立派な脚を持つ一人用の椅子に姿を変えた。しかし今はその面影がない程に汚れ朽ち果てていた。


「……二人は……大丈夫……だよね」


 四脚の内、二本が折れて傾き、その機能を失っている椅子の姿を、持ち主であるソフィアたちに重ねてしまうブリザラの心には言いしえない不安が過った。


「……」


 現状解決することが出来ない不安を抱えながら、その視線を傾く椅子から横へずらしていくブリザラ。


「……」


 そこには明らかに人が座るには窮屈な椅子があった。様々なボタンや計器が付いたその椅子は、その持ち主によれば操縦席コックピットと言うらしいことをブリザラは記憶していた。


「……フリーデさん」


 奇しくも自分が存在している世界を創造したとされる女神と同じ名を持つその操縦席コックピットの持ち主の名を呟くブリザラ。


「……何だいブリザラ」


 するとまるでブリザラの呟きに答えるように、ブリザラの耳に見知った声が聞こえてくる。


「えッ!」


 それは一瞬の瞬きほどの時間。今まで操縦席コックピットには誰も座ってはいなかった。だがその僅かな時間、ブリザラの視界が暗転した直後、その操縦席コックピットには一瞬裸かと見間違えるほど体のラインがはっきりとした服を身に纏った女性、別世の界の自分、フリーデが座っていた。


「……ど、どうしてフリーデさんが……もう会えないって言っていたのに」


 以前この場所でもう会うことはできないだろうとブリザラたちに別れを告げたフリーデ。しかしそう言っていたはずのフリーデが目の前にいるという状況に驚きを隠しきれないブリザラ。


「……なるほど今回は呼ばれた側か……久しぶり……でいいのかな?」


 少し考えた後、ブリザラへ疑問が混じった再会の挨拶をするフリーデ。


「え……うん久しぶりですフリーデさん……でもどうしてここに?」


 思わぬ人物の登場に動揺が解けないブリザラは、もう一度フリーデになぜここにいるのか尋ねた。


「……さあ、何でだろう……」


 何かを知っていると言う感じで含んだ受け答えをするフリーデ。


「えー! なんですかそれ!」


 ブリザラと一応同一人物であるフリーデ。しかし慌てふためくブリザラとは違い、その声や仕草には経験を積んだ女性というような雰囲気が漂っていた。そして経験を積んだ女性のような雰囲気が漂っているのは声や仕草だけでなくその外見にも表れている。それもそのはずで別世界のブリザラであるフリーデは、ブリザラよりも十歳以上年上だからだ。

 十歳以上年齢を重ねたフリーデという存在は、言わばブリザラにとって様々な可能性の1つ、未来の姿なのである。


「ごめんごめん、ちゃんと答えるよ……今回は君が私を呼んだんだ」


茶化すつもりはなかったが、思った以上に慌てふためくブリザラを落ち着かせようと、現状自分が理解していることを話すフリーデ。


「……私が……フリーデさんをこの空間に呼んだ?」


 全く身に覚えがないといった表情でフリーデを見つめるブリザラ。


「ああ、なるほど自覚は無いんだね……」


 そんなブリザラの様子を見て少し深刻な表情を浮かべるフリーデ。


「……この空間は言わば……小さな世界なんだ」


「この空間が……小さな世界……」


 そう言いながら深い霧が漂う何も無い空間を見渡すブリザラ。


「……以前私は、私の世界の技術……君の世界でいう魔法のようなものを使って女神が持つ力、世界創造を疑似的に発生させこの空間を作り出し君たちを呼び寄せたんだ」


 フリーデは女神が持つ力、世界創造を疑似的に発生させ世界を作り出しブリザラたちを呼び寄せたと、今自分たちがいる空間の成り立ちを説明した。


「凄いッ! フリーデさんの世界では世界を作り出すことができるんですねッ!」


 深刻な表情を浮かべるフリーデに比べ、今一自分の置かれた状況を理解しておらず緊張感の無い発言をするブリザラ。


「いや、あくまで私の世界のものは疑似的でしかない……常に不安定で未完成……再現性の無い奇跡とも言える状態だった……だから最終的にこの世界は崩壊した……あの時もう会えないと言ったのはそう言った事情があったからだ」


 二度目は無い。そんな奇跡とも言える状況の中、フリーデはブリザラたちが抱えていた問題を解消し、そして女神の危険性を伝える伝言者メッセンジャーとしての役目を終えたはずだった。

 自分が造り出した未完成で不完全な世界から自分を切り離すように目を閉じたフリーデ。体感でいえばそれは一瞬のこと。目を閉じて再び目を開いた僅かな時間でしかない。フリーデが次に目を開いた瞬間、そこは自分の世界では無く崩壊し消失したはずのこの空間だった。そして数秒前に別れたはずのブリザラの姿がそこにあった。

 フリーデはその僅かな時間で今自分が置かれた状況、ブリザラを取り巻く状況が加速的に悪化したことを瞬時に理解したのだった。


「……ブリザラ……君を取り巻く今の状況は、私と出会った時よりも悪化している……この空間が再構築され、そして君が私を呼び寄せたのがなによりの証拠だ」


 そう言いながらフリーデは真っ直ぐにブリザラの目を見つめた。ブリザラの目の中に女神の姿を見たように思えたフリーデは話を続ける。


「……これは女神が君の肉体に定着し始めているからだ」


 ブリザラ自身、薄々気付いていただろう事実。それをはっきりと告げるフリーデ。


「……」


 自分が置かれた状況をはっきりと告げられたブリザラの顔から明るさが消えて行く。ブリザラはどうすればいいのかわからないという表情を浮かべながらそれを言葉にも出来ずすがるようにフリーデを見つめた。


「もう君に……残された時間は少ない……」


 それでも事実を突きつけるフリーデ。人間でありながら神の力を扱えるという事実。それはブリザラが既に人間では無い何かに変質し始めていることを意味する。ブリザラに残された時間が無いことを理解するフリーデは、ある決断をした。


「……これから私は君に助言をする」


 別の世界の存在であるフリーデは、ブリザラの世界に大きく干渉することが出来ない。多少その役目ロールを逸脱しながらも伝言者メッセンジャーとしてフリーデはブリザラに対峙してきたつもりだった。しかしブリザラが無意識に女神の持つ世界創造の力を使ってまで、この空間を再構築し自分を呼び寄せたことには何か意味があると考え、それに答えてあげたいと思ってしまったフリーデは、伝言者メッセンジャーという役目ロールを捨てて助言者アドバイザーになることを決断した。

 しかし伝言者メッセンジャーとは違い、世界のルールを大きく逸脱し別世界の存在であるブリザラへ干渉することになる助言者アドバイザーに生じるペナルティがいか程のものなのか、それはフリーデにもわからない。下手をすれば世界のルールから弾かれて死よりも辛いことが待っているかもしれない。だがそれでもフリーデは助言者アドバイザーになることを決断した。

 そう決断させたのは単純にブリザラを救いたいという思いともう1つ、既に未来の無い閉鎖された世界を生きるフリーデにとって自分という存在は消し炭に等しいからだった。そんな消し炭が他の世界の自分を救えるのならば死よりも辛いことだって受け入れようとそう思った、思えたのである。


「……女神を利用する悪意を正し、女神に巣くう悪意を魔の頂点に立つ者と共に取り払え……そして常に笑みを抱く者を倒し、悪意の根源を世界から解放しなさい」


 助言者アドバイザーとして自分を認識した瞬間、それは自分自身の言葉でありながら別の何かが干渉してきたようにフリーデの口から紡がれていく。


「……女神を利用する悪意……女神に巣くう悪意……常に笑みを抱く者……」


 フリーデから紡がれた助言を反復するブリザラ。


「……ありがとうフリーデさん、これから自分が何をするべきかわかったような気がしますッ!」


 先程までどうしたらいいかと戸惑いと不安を浮かべていたその表情がフリーデによる助言を得たことで本来の明るいさを取り取り戻したブリザラは、自信に満ちた笑みを浮かべた。


「……あ、あれフリーデさん体がッ!」


 助言を言い終えた途端、フリーデの体が消え始めた。それに気付き慌てるブリザラ。


「……そろそろ時間のようだ……最期……君に会えてよかったよ……ありがとう」


「……さいご……」


 フリーデの不穏な言葉に明るかった表情が再び暗くなっていくブリザラ。


「冗談だよ冗談……」


 不安がるブリザラを見ながら悪戯な笑みを浮かべるフリーデ。


「……でも、本当にこうして会うことはもう二度とないだろう……こう何度も別世界の自分と干渉するのは本来いけないことなんだから」


「フリーデさん」


 悪戯な笑みが柔らかいものへと変わるフリーデ。柔らかい笑みを浮かべるその表情は、戦場を駆け抜ける撃墜王エースパイロットでは無く、ただ友人と楽しく談笑する少女のようにブリザラには見えた。


「……それじゃ幸運を祈る!」


 既に体の殆どが消え残すのは顔のみとなったフリーデは、ブリザラにそう言葉を残すとゆっくり目を閉じた。


(……ありがとう……ブリザラ)





 ― 数瞬 —



「……」


 ゆっくりと目を開くとそこには双子の男たちが立っていた。顔や名前も知らない双子。でもどこか懐かしく感じる。そう感じたフリーデは双子へ向けて話しかける。


「私はフリーデ……あなた達の名前を教えて?」


「×××」「×××」


 双子は互いの顔を見合うと再びフリーデを見つめ自身の名前を告げると新参者であるフリーデを受け入れるように笑みを浮かべるのであった。




 そこは死すら超越した永遠を約束された地。そしてルールを破りペナルティを背負う者たちが集まる神々の牢獄、神々が住まう世界であった。




 ガイアスの世界


 今回ありません

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