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兎にも角にも戦友

 新年のあいさつ


 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします山田二郎です。


 明けましたね、明けてしまいましたね……。2024年か……。

 昨年の最後の挨拶からそんなに日が経っていないので、特に書くことがありませんね……。まあ、とりあえず今年も細々と淡々とやっていこうというのが目標です。

 今年も何卒、伝説の武器が装備できませんをよろしくお願い致します!

 それでは山田でした。



 2024年1月11日 木  某ダンジョンで出会いを求めているゲーム系のガチャに悪戦苦闘しながら。

 

 兎にも角にも戦友



 剣と魔法の力渦巻く世界ガイアス




 亡骸、その魂すら今はもうそこには存在せず、ただ陰鬱とした不気味な空気だけが残る旧戦死者墓地。そんな空気を吹き飛ばすような一発の破裂音が突然鳴り響く。


 旧戦死者墓地で再会し一言二言会話を交えた後、スプリングとガイルズの間に流れた沈黙。その僅かな時間、2人の頭の中では様々な思考が巡っていた。

 思考時間1秒未満。それは隙を見せれば即座に命を落とす戦場を生き延びてきた者が得ることの出来る思考速度。

 もはや脊髄反射と変わらない超高速で回転した両者の思考が導き出した結論。同じ結論に至ったスプリングとガイルズは、戦うことを選択し次の瞬間には得物を抜剣する。

 腰に吊るされた長剣ロングソード、理想を形にした剣を鞘から抜剣するスプリング。同じく背負っていた成人男性の平均身長程ある特大剣『大喰らい』を一息で抜剣するガイルズ。同時に解き放たれた二本の刃は、吸い込まれるように交わった。その瞬間、亡骸、その魂すら今はもうそこには存在しない旧戦死者墓地に唯一残る陰鬱とした不気味な空気を吹き飛ばすような一発の破裂音が響き渡った。


 重さとその重さを振り下ろすだけの筋力が合わさった『大喰らい』によるガイルズの一撃はそれだけで何者だろうが叩き潰す必殺の一撃となる。真正面からそれを受けようものならば剣は簡単に砕け、その持ち主ごと押し潰される。それ故に常人にとってガイルズの一撃は、防御は愚か受け流すことも不可能。唯一残された選択肢は回避のみとなる。だがガイルズの振り下ろしの一撃はその見た目に反して恐ろしい程に速く常人の反応速度では回避することすら出来ないという理不尽さを備えている。

 しかしその一撃必殺をスプリングは受け流す。ガイルズから振り下ろされる『大喰らい』の半分にも満たない長剣ロングソード理想を形にした剣で軽々と受け流した。

 理想を形にしたというその長剣ロングソードの性能が異次元であることもガイルズの一撃必殺に耐え受け流した理由の1つではあるが、何よりもその持ち主であるスプリングの上位剣士としての技量が、ガイルズの圧倒的な破壊力を上回った瞬間だった。


 『大喰らい』の刃に擦り合わせるように己の刃を走らせながら間合いを詰めたスプリングは、ガイルズの顔に向け摩擦によって火花を散らす理想を形にした剣を横一閃に放つ。

 だがその体格からは想像できない柔軟さで体を逸らし火花を散らしながら放つスプリングの鋭い一撃を、躱すガイルズ。

 鼻先数ミリの所でスプリングが放った攻撃を躱したガイルズは本来なら力を籠めることが出来ない体勢であるにも関わらず、無理矢理両手首を返しスプリングへ切り上げた。

 十分な威力ではないとはいえ、それでも空気を切り裂く程の轟音を放つその攻撃は当然当たれば即死の破壊力を持っている。

 攻撃を放った後の僅かな隙を狙われたガイルズのその一撃は本来なら絶対に躱すことは出来ない。しかしその一撃をスプリングは自分の放った一撃の反動を利用しまるで舞うように体を横に逸らすことで回避する。

 ここまでで流れた時間、三秒半。傍から見れば一瞬の出来事。僅か三秒半の攻撃は両者不発に終わった。


「……」「……」


 初手の攻撃を出し切ったスプリングとガイルズは僅かに距離を取りながら相手を見つめる。名実共に強者である二人にとってその距離は必殺の間合い。何か僅かでもきっかけ、変化が起れば両者はその必殺の一撃を放つ準備が出来ている。

 スプリングは体勢を低く保ち光の如く閃く一撃を放つ瞬間を、ガイルズはその重さと筋力による破壊の一撃を放つ瞬間を待った。


 しかしその瞬間は訪れなかった。


「……ッ!」「……!」


 両者に訪れた変化。だがそれは渾身の一撃を放つ合図にはならなかったのだ。


 小さな島国ヒトクイの首都ガウルド。その中心に位置するヒトクイの象徴ガウルド城。そこから突然放たれた強大な気配が、二人の集中力を強制的に霧散させた。


「だはぁ……これからって時に……」


 集中力が途切れ大きく息を吐いたガイルズはその強大な気配がする方向を見つめながら愚痴を零す。


「……この勝負、おあずけでいいかガイルズ」


 同じく集中力が途切れたスプリングはガイルズにそう話しかけながら理想を形にした剣を鞘に納めた。


「しょうがねぇ……ここは一旦御開きだな」


 まだ戦いたいという欲はあれ、状況がそれを許してくれないとスプリングの言葉に頷き同意したガイルズは成人男性の平均身長程ある『大喰らい』を軽々と背中に納めたガイルズはニヤリと口の端を吊り上げた。


「なぁ? この状況で剣を納めたって事は、お前も感じたのかアレの気配を」


 ガイルズが感じた気配。それは負の感情、または『闇』。しかし本来それらの気配をはっきりと感じとれる者は少ない。常人ならばせいぜい悪寒や鳥肌、嫌な感覚を抱く程度。だがはっきりと感じることが出来る者、『聖』に属する者は違う。ガウルド城から放たれたその気配は、『聖』に属する者にとって相当に危険なものであると理解ができる。そう理解できるのだ。『聖』に属する者、聖狼セイントウルフであるガイルズにはガウルド城で何が起ろうとしているのかが。


「アレ? ……ああ感じるよ」


「そ、そうか」


 しかしスプリングは違う。はっきりとそれらの気配を捉えられる側では無いと思っていたガイルズは、スプリングのその反応に僅かに驚いた表情を浮かべた。


「……うん……何となく答えが見えてきたな……俺は行くぞ」


 ゴルルドの宿屋の窓から見えた幻のような光景。ガウルドが『闇』に覆われたその原因の一端に触れたと確信したスプリングは、ガイルズにそう告げるとガウルド城へ続く旧戦死者墓地の出入り口へと走り出した。


「おい待て! 何となく答えが見えてきたってどういうことだ? アレは俺の獲物だ横取りするなよ!」


 ガウルド城へ向かい走り出したスプリングを慌てて追いかけるガイルズ。


「獲物……行先は一緒だが目的は違うみたいだな……戦闘狂バーサーカー


 ガイルズが言う獲物。それがガウルドを覆う『闇』と関係していることは確か。だがガイルズ自身の目的は自分とは違い強者と戦うことを求めているだと理解しているスプリングは呆れたようにそう呟く。


「え? 何? 何か言った?」


「何も」


「嘘だ、今俺のこと馬鹿にしたでしょ?」


「はぁ……地獄耳」


「ああ! また馬鹿にしたよな!」


「ああああああ! もう五月蠅いな!」


 先程まで命のやり取りをしていたことが嘘のように子供のように騒ぐスプリングとガイルズの言い合いが澄んだ空気の広がる旧戦死者墓地に響き渡るのだった。



ガイアスの世界



 浄化された旧戦死者墓地


亡骸もその魂も今は無く、その役割を失った旧戦死者墓地。唯一残っているのはそこが墓地だとわかる砕けた墓石と漂う陰鬱とした不気味な空気のみ。役目を失った旧戦死者墓地には負の感情が漂っていた。

 しかしそんな陰鬱ととした不気味な空気は、スプリングが持つ『絶対悪』の残滓を消し去ることが出来る力とガイルズが持つ聖狼セイントウルフの力がぶつかり合うことで偶然にも吹き飛ばされた。……らしい。

 

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