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勉強しま章 1 魔法使いとはなんぞや?

人物紹介 1 


  スプリング=イライヤ(魔法使い)


年齢 20歳


 レベル56


職業 魔法使い 熟練度1


 今までにマスターした職業


ファイター 剣士 ソードマン


 装備 


 武器 初心のロッド


 頭 初心のフード


 胴 初心の衣


 足 初心の靴


 アクセサリー 守りの指輪


 伝説のロッド、ポーンの影響で強制的に魔法使いにされたスプリング。


今スプリングの中には絶望しかない。




 


 勉強しま章 1 魔法使いとはなんぞや?



 剣と魔法の力が渦巻く世界ガイアス。


 周囲を海に囲まれた小さな島国『ヒトクイ』にある山岳地帯。そには『ゴルルド』という小さな町があった。山岳地帯にある『ゴルルド』は普段、静かで穏やかな町であったが、最近ヒトクイ中を賑わしている伝説の武器の噂の存在によって見たことも無い程の冒険者や戦闘職達の姿で騒がしいものとなっていた。

 普段の様子とは一変した『ゴルルド』はも冒険者や戦闘職達の行き来のお蔭でどの店も盛況であった。そんな盛況な店の一つ、普段は冒険者や戦闘職なのかただの飲んだくれなのか分からない者達が一人二人いるだけの小さな酒場もガチガチに武装した冒険者や戦闘職達で溢れかえっていた。

 ガチガチに武装した冒険者や戦闘職達が『ゴルルド』にやってきた目的はただ一つ。『ゴルルド』の近くにあるダンジョンに噂になっている伝説の武器があるのではという考えからであった。しかし『ゴルルド』の近くにあるダンジョンに伝説の武器を探しにやってきた冒険者や戦闘職達の顔は酒場だというのに浮かない。中には何かを警戒する者、表情を硬くして酒を飲む者もいた。

 そこが酒場だというのになぜ警戒したり表情を硬くしている者がいるのか、それは酒場の片隅で豪快な笑い声を上げながら酒を勢いよく飲んでいる男の存在が原因であった。

 人が扱うには大きすぎる剣、特大剣を酒場の壁にたてかけ豪快に笑う重剣士。昨日今日から冒険者や戦闘職を始めたという者でなければ、その特大剣を見ただけでその持ち主が誰だか分かるという程に豪快に笑い声をあげる重剣士は有名人であった。

 その重剣士の名は、戦場で敵側では勿論、見方側であっても聞きたくはない名、『大ぐらいの剣』という特大剣を振るう戦闘狂バーサーカーガイルズであった。だが彼が加担した戦は見方に甚大な被害が出るものの、必ず勝利するという噂が広がりガイルズは、小規模な戦争を続ける他大陸の国ではひっぱりだこであった。しかしそんなガイルズの様子を伺う酒場の冒険者や戦闘職達の中には少し違和感を抱く者達がいた。

 それは数年前からガイルズと共に行動している人物がガイルズの隣にいなかったからだ。その人物もまたガイルズに負けず冒険者や戦闘職の間では有名な人物で、目にも止まらぬ速度で敵をなぎ倒していくと悪名ではなく美名で有名な人物であった。しかしガイルズと同じ席に座る人物は、一目で初心者だと分かる魔法使いで違和感を抱く者達の首を傾げさせた。ガイルズと共に行動していた人物の戦闘職は魔法使いでは無く上位剣士のはずであったからだ。初心者丸出しの『初心の衣』を纏った魔法使いと仲良く酒を飲むガイルズの姿に若手で一番『剣聖』に近いと言われている男、上位剣士スプリングとガイルズはコンビを解消したのかと想像する冒険者や戦闘職達。

 しかし彼らの想像は間違っていた。ガイルズとスプリングはコンビを解消した訳では無い。勿論戦場でスプリングが戦死した訳でも無く、ガイルズが共に酒を飲み交わしている魔法使い、『初心の衣』を纏った初心者魔法使いこそが、若手で一番『剣聖』に近いと言われているスプリング本人であった。

 だが酒場にいた冒険者や戦闘職はまさか『剣聖』に近いと言われている男が魔法使いに転職しているなど思わず、『初心の衣』を纏った魔法使いがスプリングだと思う者はいない。

 自分達がコンビを解消したと思われているなど考えもしないガイルズとスプリングは、テーブルの上に置かれた魔法使いが扱うロッドに視線を向け話し込んでいた。

 仕切りに涙を浮かべ笑い続けるガイルズとどこか覇気の無い表情のスプリングの状況が話し込んでいると言っていいかは別として、二人しかいないはずそのテーブルからは、なぜかいるはずの無い三人目の声が聞こえてくる。

 幸い周囲は二人の存在に気付いていない冒険者や戦闘職達が騒いでいる為、ガイルズとスプリングのテーブルから聞こえる三人目の声は目立ってはおらず二人に気付き様子を伺っている冒険者や戦闘職達の耳にも届いていない。


「さて……それじゃ早速お前の魔法使いとしての才能を確かめにいくか」


残っていた酒を一気に飲み干しガイルズは席を立った。浮かない表情のままスプリングもガイルズに言われるがまま座っていた椅子から腰を起こし立ち上がりテーブルに置かれていた魔法使いが扱うロッドを手にした。


『主殿よ、ちょっと待ってくれ』


するとそのロッドがスプリングに話しかけてきた。


「どうしたポーン?」


それが普通というように喋るロッド、伝説の武器ポーンの言葉に対して返事するスプリング。その様子を静かに見つめるガイルズ。


『主殿に私の能力の一つを見せたいのだが』


「……ん?」


自分の能力をスプリング達に見せたいというポーンの言葉に首を傾げるスプリング。


「ほほ……やらせてみせろよスプリング」


興味津々、いや何とも悪い表情でガイルズは首を傾げているスプリングに視線を送る。


「はぁ……ああ、分かった、で、どうすればいい?」


ヤレヤレと呆れ興味がないという表情をしているスプリングではあったが、内心自分の戦闘職を強制的に転職させてしまったポーンの能力かどんなものであるのか気にならないはずも無く、ポーンの願いを聞き入れ頷いた。


『それでは……我々の隣で酒を飲んでいる魔法使いに私を向けてくれ』


少し考えポーンはスプリングに指示をだすと、スプリングは言われるがまま自分達の隣のテーブルで頬に手を当てながら困った表情で酒を飲んでいる頼りない魔法使いにポーンを向けた。


「……」


一瞬何をされているのか理解できなかったスプリング達の隣の席で酒を飲んでいた魔法使いは、自分に向けられたロッドを茫然と見つめる。


「はッ! あ、な、何ですか!」


突然自分に向けられたロッド。その意味を理解した魔法使いは腰に差していたロッドに手を当てる。


「わ、私が何かしましたか?」


慌てながらもそれが魔法使いの決闘の合図だと悟った魔法使いは、動揺しながらも腰に差していたポーンに比べ大分安物に見えるロッドを取り出すとスプリングに向ける。


「あ、おい……警戒してるぞ、俺はここで戦闘なんて御免だぞ……」


魔法使いの警戒した面構えを見たスプリングは、漂う不穏な空気に自分の手に握っているポーンに抗議する。


『大丈夫だ主殿、すぐに終わる』


しかし抗議するスプリングの気持ちなどお構いなしにまるで近くの店に買い物をしてくると言ったノリですぐ終わると口にするポーン。


「……だ、そうだ……すぐ終わるみたいだから、少し付き合ってもらえないかな」


ポーンが何をしようとしているのか全く理解できていないスプリングは頭を掻きながら手に持ったポーンを指差し魔法使いに付き合ってもらえるよう伝える。


「は、はぁ?」


自分にロッドを向けるスプリングの言葉を全く理解できない魔法使い。それ以前にロッドが突然喋り出した事に動揺を通りこし困惑する魔法使いは、涙目になりながら自分のロッドを握る手に力を込める。


「た、確かに僕はたいした実績も無い無能な魔法使いだけど、君みたいな初心者にからかわれる程、弱くは無い!」


困惑している魔法使いは、自分が見下されていると勘違いしたのかその叫びの勢いのまま、ロッドの先端を赤く輝かせた。


「エッ?」


 魔法使い本人が口にしたように彼の魔法使いとしての能力は下の下、はっきりと才能無しと言い切れる程にたいした能力は無い。自分の能力をしっかりと自覚している彼であったが、下は下でも戦闘職であり魔法使い。そして彼は男であった。例え負ける戦いであっても退いてはならない時、今がその時だと思った魔法使いは唯一習得できた初心者中の初心者の魔法を発動させようとスプリングに向けたロッドに意識を集中する。しかし彼の男としての戦いは次の瞬間、一瞬にして終わりを告げた。魔法を放とうとした瞬間、彼の視界は真っ暗になっていた。


「「「「ええええええええ!」」」」


その叫びは視界が真っ暗になった魔法使いのものでは無く、酒場にいたスプリングやガイルズ、周囲でスプリング達の様子を伺っていた冒険者や戦闘職達の驚きの声であった。

スプリングの手元で突然粘土やスライムのようにその形状を変化させたポーンは、巨大な口へと変化し目の前で魔法を発動しようとしていた魔法使いを一飲みにしていたのである。 


「お、お前なにやってるんだ!」


「おいおい、人を喰っちまったぞ」


突然起きたとんでもない光景にスプリングやガイルズは驚きの声を上げる。周囲にいた冒険者や戦闘職もその驚きの光景に空いた口がふさがらない。


『これは主殿のためだ』


まるで一飲みした魔法使いを味わうように咀嚼しながら大きな口、ポーンはスプリングにそう説明した。


「お、俺の為って、その魔法使いが俺に何かしようとしたか!」


当然こんな事になるとは微塵も思っていなかったスプリングは、魔法使いを一飲みして咀嚼までしているポーンを怒鳴りつけた。


『いや、彼は全くこちらには敵意は向けていなかった……』


「……じゃなんで!」


全く自分が犯した行為に悪気を持っていいなポーンの言葉に自分はとんでもないものを手にしてしまったのではと困惑するスプリング。


『主殿は何か勘違いしているようだが、私の行動は攻撃動作では無く情報収集だ』


「……情報収集?」


魔法使いを飲み込み咀嚼する大きな口。この状況をどう見れば情報収集に見えるんだと思うスプリングであったが、当の本人の言葉には一点の曇りも無い。


『そうだ、私の能力の一旦、主殿の為に魔法使いの情報収集をしている……モグモグ……情報収集完了……んがぁ』


どうみても口に含んだ魔法使いを味わっているようにしか見えない大きな口へと形を変えていたポーンは、魔法使いの味を堪能……情報収集を終えた事を伝えるとモグモグと咀嚼していた口は動きを止め大きく開いた。するとその大きな口から丁寧に魔法使いが吐き出された。


「……」


自分に何が起こっていたか全く理解できないという表情で茫然とする魔法使い。


『魔法使い殿、情報提供ありがとう、その礼といっては何だが魔法使い殿の悩みの種であつた不調は解消しておいた』


茫然とする魔法使いにロッドの形へと戻ったポーンは情報提供の感謝とその礼を口にする。誰に何をされたのか今一理解できていない魔法使いは、訳が分からないまま素直にポーンの言葉に従い悩みの種であった不調な部分に手を当てた。


「……な、治ってる虫歯が治ってる!」


茫然としていた目に力が戻ったかと思うと魔法使いは不調であった場所、虫歯が治っている事に気付き叫んだ。


「おお、スゲェな!」


魔法使いの歓喜の舞いを見ながらポーンの能力の凄さに素直に驚くガイルズ。


「ま、紛らわしい……」


引きつった表情で情報収集であったポーンの行動にポツリと呟くスプリング。


『さて、魔法使いの情報は得た、これで主殿に魔法使いについて語れるぞ』


「……お前なんでもありなんだな……」


意気揚々にそう語るポーンを見つめながら、再度自分は計り知れない能力を持ったロッドを手に入れてしまったと自覚したスプリングは驚きを通り越し呆れていた。

 悩みの種であった虫歯が突然治った事に喜び続ける魔法使い。そんな魔法使いの姿が目立たない訳も無く冒険者や戦闘職達の視線は騒がしく歓喜の舞いを踊る魔法使いに向けられる。その中の一人、中堅といった風貌の戦闘職の男がフラリとスプリング達の下へ近づいてくる。


「見ちゃったぞ! ……あの初心者魔法使いが持っているデカい口に化けるロッドに喰われれば、体の悪い場所が治るのを?」


まるでわざと騒ぎを大きくしようとするかのように不自然なほど大きな声で中堅戦闘職の男が騒ぎだした。


「なんだって!」「だったら俺も喰ってもらって悪い所治して欲しいな!」「だったら俺の水虫も頼む!」「恋の病は治りますか!」「最近俺の夜の伝説武器の調子が……」


すると中堅戦闘職の男の一言を皮切りに酒場でガイルズ達の様子を伺っていた冒険者や戦闘職達は、ガイルズに怯えていた事などすっかり忘れスプリング達を取り囲み騒ぎ始めた。


「んー面倒な事になっちまったな……うん! 店を出よう、今日は俺の奢りだ!」


そう言うなり壁に立てかけていた特大剣を手に取り背負うとガイルズはスプリングの纏う『初心の衣』の襟をつかみ酒場の出口へと脱兎の如く走り出した。その巨体からは想像がつかない程にガイルズの動きは速くその場にいた者達の目では捉える事が出来ず、スプリングを引っ張りながらガイルズは店を飛び出していったのであった。


「ああああああ! お代! 酒代置いてけぇぇぇぇぇぇ!」


目にも止まらぬ速さで店を出ていったガイルズ達に唖然としていた酒場の亭主は、ガイルズ達が酒代を払っていない事に気付き怒鳴り声を響かせる。


「何が奢りだ、無銭飲食じゃないか」 


襟を掴まれガイルズが走る速度に旗のようにユラユラと揺れるスプリングは、自分達が犯罪者になってしまった事を呟く。


「仕方が無いだろ、あの騒ぎじゃ面倒な事になるのは間違いない訳だし」


騒ぎに巻き込まれるのは面倒だと無銭飲食を無理矢理正当化しようとするガイルズ。しかしその表情には儲けたというような悪い笑みが浮かんでいた。


『主殿、私もガイルズ殿の意見に賛成だ、情報収集ができるのは助かったが……騒がれるのは好ましくない』


「好ましくないって……そもそもお前が騒ぎの張本人だろ……」


ガイルズに襟を掴まれ旗のようにユラユラと揺さぶられるスプリングはポーンに文句を垂れる。


『心外だ、私は主殿の事を思って……』


「まてぇ!」「お願いだから俺の悪い所癒して!」「水虫ィィィィィィ!」「モテモテになりたいぞォォォォォォ!」「絶倫になりたい!」


スプリングとポーンが言いあっている中、冒険者や戦闘職達の叫びが響き渡る。冒険者や戦闘職達は己の願い、中にはポーンの能力でもどうすることも出来ないような事を叫んでいる者までいた。そんな冒険者や戦闘職達は目を血走らせ爆走するガイルズとスプリングの後を追跡するのであった。



 — 山に囲まれた町ゴルルド外 ―


 周囲が山に囲まれた町『ゴルルド』。『ヒトクイ』という島国の中で初心者が最初に足を踏み入れる旅立ちの町。その理由は簡単で『ゴルルド』の周囲に生息している魔物の能力が低いからであった。それ故に初心者冒険者や戦闘職達でも比較的安全に戦闘を行える場所であった。しかしそれはあくまで山を一つ越えるまでの話であり山を越えれば初心者にとって本当の戦いが始まるのである。

 しかし戦場でその名を轟かせているガイルズにとっては『ゴルルド』周辺だろうと山を一つ越えた場所だろうと関係無い。

 成人男性の平均身長程ある特大剣を背中に担ぎ、一緒に戦場を駆け抜けてきたが今はただのお荷物でしかないスプリングを脇に抱えているとしてもそのハンデを物ともせずガイルズは襲って来る魔物に対して圧倒的な速度という威力で襲いかかる魔物達を吹き飛ばしていた。そしてその脚力で自分達の後を追っていた冒険者や戦闘職達を突き放し今はもうその姿は見当たらない。

 いっきに上り坂を駆けあがるガイルズは、『ゴルルド』全体を見渡せる崖に辿り付くとようやくその足を止めた。


「ふぅ……ここまでくれば大丈夫だろう」


ガイルズは涼しい顔で数分前まで自分達がいた町『ゴルルド』を見下す。ガイルズの視線の先には、まだ『ゴルルド』の町の中でガイルズ達を探す冒険者や戦闘職の姿があった。


「ガッ……はぁはぁ……はぁはぁ……」


涼しい顔をしているガイルズとは逆に走ってもいないのに息切れを起こすスプリングの表情は今にも死にそうであった。


「な、なんて、ゴホぉ、なんてことだ……こんなにも体力が落ちているなんて」


 ガイルズの脇に抱えられていたスプリングは、今の自分の状態が予想以上に問題を抱えている事を理解する。自分は走ってもいないのにガイルズの脇に抱えられその驚異的な速度を体で感じただけで自分の体は悲鳴をあげていたからであった。

 スプリングの本来の戦闘職である上位剣士であったならば、ガイルズの速度に体が悲鳴を上げるなど絶対に無かったと思いながらスプリングは、魔法使いという戦闘職がどれだけ体力面で脆いのかを痛感していた。

 魔法使いの圧倒的な脆さはスプリングの精神にも影響を与えたのか、スプリングの視界には一瞬綺麗なお花畑と川がチラついていた。


「大丈夫かスプリング?」


脇に抱えていたスプリングを地面に下ろしたガイルズは、なぜかボロボロになっているスプリングに笑みを浮かべながら声をかける。


「はぁはぁ……くそ……」


笑みを浮かべるガイルズとは対照的に深刻な表情で地面を見つめるスプリング。何時までたっても整わない息を肩でやわらげながら笑み浮かべているガイルズとは対照的に深刻な表情で地面を見つめるスプリング。


「まあ気を落とすな、魔法使いじゃ……ぷぷ……しょうがない……だっははははは!」


「はあはぁ……こんなんじゃ、ゴホ……無理だ、俺は……奴を……」


上位剣士であった頃の自分と明らかに差がある魔法使いの能力、力の差を感じてしまうスプリングは、自信を喪失しながらある者の姿を脳裏に蘇らせていた。

 スプリングが脳裏に蘇った男こそスプリングが『剣聖』を目指した理由。『剣聖』という戦闘職の力をもって復讐しなければならない男の姿であった。

 こんな所で躓いている訳にはいかないというのに、そんな焦りがスプリングの心を蝕んでいく。


『さて、丁度いいそれでは青空学習を始めるとしよう、さっそく酒場で出会った魔法使いの情報を元に魔法使いという戦闘職について勉強を開始しようではないか主殿』


 焦りと絶望が渦巻くスプリングの心を全く無視するように、スプリングの手に握られたポーンは、マイペースに魔法使いという戦闘職についての学習を始めようとスプリングの手から離れた。すると酒場で大きな口に変化したようにポーンはロッドの形状からなぜか学校にあるような大きな黒板へと形を変えていく。


「今はそんな気分……」


そんな気分になれるかと言いかけ黒板に形を変えたポーンから顔を背けた矢先、スプリングの首はグキリという嫌な音を立てながら無理矢理黒板へと向けられた。


「まあまあとりあえず聞いてみようぜ!」


スプリングの頭を無理矢理黒板へ向けたのはスプリングの隣に座ったガイルズであった。


「……」


スプリングの視界が真っ白になっていく。薄れゆく意識の中、再びスプリングは綺麗な川とお花畑の光景を見つめていた。ガイルズやポーンの声がどんどん遠くなっていくのをスプリングは薄れゆく意識の中で聞いていたのであった。


「お、お前……俺を殺す気か!」


回復薬を浴びながらまだ少し痛む首を摩り突然あの世に送ろうとした戦友を怒鳴りつけるスプリング。


「ああ、悪い悪い、お前を殺すのは戦場だったな!」


笑いながら恐ろしい事を口にする戦友の言葉に顔を引きつらせるスプリング。


「そしてお前もお前だ! 俺が自分の運命に絶望しているというのに、何が魔法使いの勉強だ! そしてなんだその黒板は!」


どう考えてもポーンの今の形が悪ふざけにしか見えないスプリングは、目の前に突如として現れた黒板、ポーンを指差しながら怒鳴りつける。


『ここで自分の運命に絶望するのは勝手だが、私はその運命を乗り越える事を推奨する、主殿が抱いている野望を達成するなら間違いなく今は魔法使いという戦闘職について学ぶべきだ』


「……」


ポーンの言葉に絶句するスプリング。確かにポーンの言う通りであった。自分の運命に絶望するのは簡単である。しかし自分が抱いていた夢や野望、復讐の気持ちは魔法使いに強制的に転職してしまったぐらいで諦めてしまう程、弱いものであったのかと思うスプリング。


「ふふふ、こりゃ一本とられたな挑発されているぞ、スプリング……」


目の前のすでに伝説のロッドでは無く伝説の黒板になっているポーンの言葉を挑発だと受け取ったガイルズはポーンへの援護とばかりにスプリングをたきつけた。


「くぅ……ちぃ……わ、分かったよ!」


回復薬ですっかり良くなった首を摩りながらスプリングは、バツが悪そうな表情で黒板となったポーンに視線を向けると顎を突き出しさっさと始めろと合図を出した。


『それでは始めよう、魔法使いという戦闘職は、その名の通り魔法を使い戦う者の事を言う』


学校の先生のようにポーンは魔法使いについて語り出す。すると黒板には白いチョークで文字やら解説図などがスラスラと書かれていく。


『魔法とはこの世に存在する四大属性、風、水、土、火の力を使い術にする事を言う』


 黒板には綺麗な字で、四大属性の関係図が書かれて行く。


『巷にあるロールプレイングゲームでは、魔法使いが覚える最初の魔法は火の属性を持つものが多い』


 聞きなれない言葉に頭をかしげる二人。


「ま、待て……ろうるぷれいんぐってなんだ?」


黒板で小気味よく鳴るチョークの音が止まる。


『ああ、それは主殿達への説明じゃないので聞き流してもらって構わない』


「誰に説明してるんだよ!」


 ポーンはスプリングのツッコミを気にすることなく話を進める。


『だがこの世界ガイアスにおいての魔法は違う、初心者魔法使いが最初に覚える魔法は火では無く風の魔法だ、それはなぜか……それは人体に存在している四大属性の中で風が最もイメージしやすいからだ』


「イメージしやすい?」


『例えば主殿、熱い食べ物を食べる時、どうやって主殿は熱い食べ物を冷ます?』


宙を浮いたチョークがスプリングに向けられる。しかしスプリングはポーンの質問などそっちのけでなぜチョークが浮いているのかが気になった。


『主殿?』


「ん? ああ、そりゃ息を吹きかけて……」


チョークが浮いている説明などされるはずも無くスプリングはポーンの呼びかけに応じるように質問に答えた。


『正解だ主殿、人は口から息、つまり小さな風を起こす事ができる、これが人体にある四大属性の一つ、風になる……そして主殿が即答できたように風は四大属性の中で一番イメージしやすい、だからこそ魔法使いが最初に習得するのは大抵が風の魔法だ』


口から息を吐く人の絵がチョークで黒板に描かれ息の所に矢印が引っ張られると風と文字が書かれていく。


「……はっきりと自分の中にある四大属性をイメージ出来ればとお前は言ったが、だとすると魔法使いで無くても魔法を使えるって事か?」


四大属性の説明に疑問が浮かんだスプリングは、何やら少し思考するとチョークで細かく書き込みがされていく黒板、ポーンに質問を投げる。


『率直に言えば可能であり不可能だ』


「……可能で不可能?」


はっきりとしないポーンの言葉に首を傾げるスプリング。


『先程も言ったが魔法を使用するうで最も大事なのは体内に存在する四大属性のイメージだ、その四大属性をしっかりとイメージし形にする事が出来れば魔法使いで無くても魔法を使用する事は可能になる』


「……だったら……」


『早まるな主殿……』


ポーンの言葉で自分の考えが正しい事を理解したスプリングはその考えを口にしようとする。しかしすでにスプリングが何を言わんとしているかを理解している口調でポーンはスプリングの言葉を遮った。


『魔法使いで無くも魔法が使えるなら他の戦闘職で魔法を習得した方がいい……と主殿は言いたいのだろう……』


「あ……ああ……」


自分の思考が読まれた事に驚くスプリング。


『確かに肉体的に非力な魔法使いなどにならず肉体的に強力な戦闘職で魔法を習得した方が、戦闘のうえでも有利に戦える、それは誰しもが考える事だ……そうだろうガイルズ殿』


「ん……? ああ、そうだな……」


既に飽き始めているのかガイルズは突然話しかけてきたポーンに対して生返事を返した。


『しかしその考えには問題がある』


「問題?」


『ああ、まずは『精神力』だ……』


そう言いながらポーンはチョークで剣を持った剣士を模した絵を描いた。その絵の内側に魂のような絵を付けたしていく。


「『精神力』ってあれか剣技を使う時に消費するやつのことだろ?」


『そう、元前衛の戦闘職であった主殿やガイルズ殿ならば理解していると思うが、剣技を使用するさいにその剣技の威力の代価として消費されるのが『精神力』だ』


「大技使うと一気に体が疲れるんだよな……」


『精神力』を代価として使用する事が出来る剣技を何個も習得していたスプリングは、自分が大技の剣技を使った時にやってくる疲労感を思いだし渋い顔になった。


『そう使用する技が強力であれば強力なほど発動した本人の体は疲労を感じる、それは魔法使いも同じだ』


そういうとポーンは黒板に描かれていた剣士を模した絵の横に今度はロッドを持った魔法使いを模した絵を描き同じくその絵の内部に魂のような絵を付け足していく。


『だが、『精神力』の消費の量が剣士のような前衛の戦闘職と魔法使いのような後衛の戦闘職では違う』


剣士を模した絵と魔法使いを模した絵の内側に描かれた魂のような絵の所に100と書き記すポーン。


『例えば剣士が使う剣技、初心者が直ぐに覚えられる剣技の威力を50として使用した時に消費される精神度が1だとしよう』


剣士を模した人の絵の剣の部分に矢印を引っ張り50と書き魂のような絵の所に書かれた100という数字を消し99と書き直すポーン。


『これを魔法使いに置き換える、初心者が直ぐに覚えられる魔法、風の魔法の威力を50とした時、消費される疲労度は10……』


剣士を模した人の絵同様、黒板に描かれた魔法使いを模した絵が手に持つロッドの部分に矢印が引っ張られ50と、魂のような絵の部分の100が消され90と書き直される。


「な、何! 剣士に比べて全く割に合わないじゃないか!」


剣技に比べると魔法によって消費される『精神力』が割に合わない事をポーンの説明で理解した驚きの声をあげるスプリング。


『もう分かったと思うが、魔法は剣技に比べ消費する精神度が多い、そうなるとどうだ? 前衛の戦闘職で魔法を覚える必要が無いように感じられるだろう』


前衛の戦闘職が魔法を覚える事の無意味をスプリングに説明するポーン。


「ああ……なんかとても気持ちが落ち込む説明だな……」


酒場にいた時と同じようにスプリングの表情は暗く沈む。ポーンの説明で明らかになった魔法使いの燃費の悪さは、魔法使いの存在意義すら怪しいのではと思うスプリング。


『しかしだ主殿……これならどうだ? ……魔法使いが持つ『精神力』の絶対値が高かったとしたら……』


そういうとポーンは黒板に描かれた魔法使いを模した絵の内側に描かれていた魂のような絵の近くに書かれた90という数字を消し300と書き直す。


「300……?」

 

『その者が持つ潜在的な物に影響はするが、魔法使い最大の特徴は他の戦闘職には無い『精神力』の絶対量……』


ポーンの話を聞く限り魔法使いはかなり癖のある戦闘職といっていい。しかし魔法使いはその癖を補ってあまりある特徴を備えていた。それが『精神力』の特化。

魔法使いの基礎体力は極端に低い。例え筋力を鍛えても他の戦闘職のように伸びる事は無い。そんな基礎体力を補うように魔法使いの『精神力』の成長は他の戦闘職に比べかなり大きい。ポーンが言うように人が持つ潜在能力によってその成長は大小ふり幅があるが、どんなに魔法使いとしての潜在能力が低かったとしても他の『戦闘職』では得られない『精神力』の絶対量を手に入れる事ができるという訳であった。


『……そして魔法使いという戦闘職をマスターすれば鍛え上げられた『精神力』の絶対量は転職しても継続される……』


「なっ……!」


ポーンの言葉に絶句するスプリング。それと同時にスプリングは自分が口にした魔法使いで無くても魔法は使えるのではという質問に対してのポーンの答えの意味を理解する。


「なるほどな……お前の魂胆が理解できたぞ……」


顔を引きつらせながらスプリングは黒板の形になっているポーンの考えを理解したと宣言した。しかしその引きつった表情には先程のような暗い影は無い。


「お前は俺に魔法使いをマスターさせ、『精神力』の絶対量を増やそうと考えているんだな」


『精神力』の絶対量が増えれば、前衛の戦闘職に戻った時に必ず役に立つ、ポーンがそう言いたいのだとスプリングは感じていた。


『その通りだ、主殿、『精神力』の絶対量が増えれば主殿が先程言っていた魔法使いで無くても魔法を使用する事も夢では無い、前衛の戦闘職の大技を放っても疲れる事は無い、魔法使いを経験して損は無い!』


そう言い切るポーン。黒板に描かれた魔法使いを模した絵の周りには花丸が書き加えられていた。


『さて、それでは話を戻そう』


「おう、かかってこい!」


やる気に満ち満ちているスプリング。一体何があったのか居眠りをしていたガイルズには訳が分からず欠伸をしながら二人の様子を見守る事しか出来ない。


『先程言ったように魔法は自分の中に存在する四大属性をイメージする事が重要だ、先程私が説明したイメージの方法だけでは無く主殿がイメージしやすい方法を見つけ出し魔法習得のキッカケを探って行って欲しい』


「ああ分かった……とりあえず一番簡単な風属性の魔法から初めてみる」


『ああ、それと最後に魔法使いのイメージを伝える触媒についての説明をしよう、触媒というのは魔法使いがイメージした魔法の威力を増幅して放つ物、ロッドや杖の事を言う、ロッドや杖の質が良ければその分威力も上がるというものだ』


「へー……んッ?」


 触媒についての説明を聞きながら頷いたスプリングは少し考えると何かを思いついたように立ち上がった。


「んぁ……終わったか?」


まだまどろんだ表情のガイルズは、立ち上がったスプリングを見て勉強は終わったのかと聞いた。


『ああ、ひとまず初歩的なものは終わった、退屈させてすまなかったなガイルズ殿』


ポーンは黒板から元のロッドの形へ戻りながら居眠りしていたガイルズに謝罪した。


「ああ、気にするなよ、大事な事だったんだろ?」


居眠りをしていて全く内容は把握していないガイルズであったが、やる気に満ちたスプリングの様子を見ればそれが重要な事であった事は直ぐに理解できる。謝罪してきたポーンに気にするなと口にしたガイルズはスプリングと同様に立ち上がった。


『ふむ……少々不味い事になったな』


気付けば日が落ちはじめ空は暗くスプリング達がいる高台はオレンジ色に染まり始めていた。夜が近くなると夜行性の魔物達が活動を始める。寝起きである夜行性の魔物達は減った腹を満たす為にまず食料を探す為に動きだす。そんな魔物達は高台で無防備な姿をしているスプリング達を食料とみなしたのかみるみるうちに魔物の群れがスプリング達を取り囲んでいった。


「あ、ああ……」


スプリング達を取り囲んだ魔物は角犬ホーンドッグの群れであった。角を持った犬。人間社会でペットとして飼われている犬とその姿は瓜二つだが、その額には立派な角が生えており防御力の低い防具など一突きできる程に鋭利に尖っている。初心者にとっては最初の鬼門と言ってもいい魔物、角犬ホーンドッグ達は今晩の食事だというように口から大量のよだれを垂らしスプリング達を取り囲みその数を増やしていく。

 当然ガイルズにとっては何匹来られようとも痛くもかゆくも無い魔物であったが、魔法使いに転職してから初の戦闘になるスプリングの表情は堅い。


「なあ? ……お前は本当に伝説のロッドなんだよな?」


様子を伺うようにゆっくりと前進してくる角犬ホーンドッグを見つめながら突然ポーンに今更のような質問をするスプリング。


『ああ、私は正真正銘……ん? ……主殿何を考えている?』


『集中する声をかけるな』


 喰い気味でポーンの言葉を遮ったスプリングは、角犬ホーンドッグを前に目を閉じ自分の中にある四大属性をイメージする。身体から一定のリズムで吐かれる息を感じ、その息が風となり何もかも切り裂く鋭い刃になるようなイメージを膨らますスプリング。


「―—今だ! 風よ!」


目を見開いたスプリングは 勢いよくポーンを角犬ホーンドッグの一匹に向けて突き出す。


「……」


『……』


「……どうしたスプリング?」


角犬ホーンドッグの前に突き出されたポーンを見つめながらガイルズは茫然としているスプリングに話しかける。


「……えっ? なんでだよ」


訳が分からないという顔をしながらスプリングは、ポーンを角犬ホーンドッグに向けて何度も振る。しかし風の刃は愚か微風すらポーンからは放たれない。


「ああ……なるほど魔法の発動に失敗したのか」


何度もポーンを振るスプリングの様子を見て魔法の発動に失敗した事を理解するガイルズ。


「魔法が発動しないぞ! どうしてだ?」


『はぁ……当たり前だ主殿……』


スプリングが何をしようとしていたのか、理解したポーンはため息を吐く。


「当たり前? 何が当たり前だ、俺はお前が言った通りにしたぞ!」


ポーンに言われた通りの事を実路したスプリングは、なぜ魔法が発動しないのかポーンに喰ってかかる。


『主殿の魔法使いとしての熟練度はまだ1、私を使えるはずがないだろう』


「……はぁ?」


 ポーンの言葉に理解が出来ないという表情で小首を傾げるスプリング。


「いやいや、何を言っているのかな? お前は俺を主と認めただろう、だったら俺の魔法使いとしての熟練度が1だとしても使えるのが道理じゃないのか?」


顔を引きつらせながらスプリングは自分を所有者だと認めたポーンを使用することが出来ないという事実に対して疑問を口にした。


『それはそれ、これはこれだ主殿』


「何がそれはそれこれはひれだぁあああああ!」


スプリングには浅はかな考えがあった。例え魔法使いの熟練度が1だとしても伝説のロッド、ポーンを使えばとてつもない威力の魔法が直ぐに使えるのではないか、そうなれば強い魔物を相手にして魔法使いの熟練度を直ぐにでも上げる事ができるのではないかと。

しかし現実は違った。規定の熟練度に達していない今のスプリングではポーンを持つ事は出来ても扱う事が出来ず、目の前の初心者殺し角犬ホーンドッグを倒す事も出来ない

 今まで襲ってこなかったこと事体が不思議であったというように角犬ホーンドッグ達はガイルズには目もくれず何も出来ないスプリングに一斉に襲いかかってくる


「お、おい……どれぐらいになったらお前を使えるようになるんだ!」


何も出来ないスプリングは、何も出来ない中で唯一出来る行動、襲いかかる角犬ホーンドッグから逃げ出しながらスプリングは、ポーンがどれほどの熟練度に達すれば使う事ができるのか叫んだ。


『はて? ……どれくらいだったか?』


伝説のロッド、ポーンはとぼけたようにスプリングに答えを口にする。


「なっ! ……分からないってお前それでも伝説のロッドか!」


鋭利で尖った角を向ける角犬ホーンドッグに追い回されながら悲鳴を上げるスプリング。


「はたからみたらただの変人だな」


全く助ける気は無いのかガイルズは角犬ホーンドッグに追い回されているスプリングをボーと見つめながら大きく欠伸をすると再びその場に寝ころご静かな寝息をかき始める。


『主殿よ、どうやら私の記憶には不具合があるようでどの程度の熟練度に達すれば主殿が私を使用できるのかなど他にも色々と抜け落ちている所がある』


自分が本調子でないことを所有者であるスプリングに今更告げるポーン。


「な、なん……だと……!」



基礎体力が著しく低く、熟練度が1である今のスプリングの体力は既に限界を通り越していた。しかしそれでも尚角犬ホーンドッグから逃げ続けるスプリングの底力は凄まじいものがあった。


『使えるようになるまでは武器屋でロッドか杖を買って使ってくれ』


申し訳なさそうにポーンはスプリングに告げる。


「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ伝説の武器が装備できませぇぇぇぇぇん!」


響くスプリングの悲しみの叫びは高台一帯に響きその悲しみを広がせていった。


「何? ……あれが伝説の武器……」


そんな悲痛な叫びを耳にして反応する者が一人。素早くだが静かに物陰に隠れたその人物は、脅威の底力で角犬ホーンドッグから逃げ回るスプリングを目で追いながら口元を二ヤつかせるのであった。


 ガイアスの世界 2 魔法


 ガイアスの世界の魔法は、自分の体内に潜在的にある四大属性を使って発動する。


 風は人の呼吸で。


 水は体内の水分から。


 土は人を構成する物質から。


 火は人にある油や体温から。


これらを使いイメージし触媒、杖やロッドにイメージを伝え放つ。持たなくても魔法を使える者もいる。

 職業としては古くからあるもので魔法使いの人口は初心者職業であるファイターや剣士に続いて多い。

魔法使いも戦闘職的には初心者向けの職業ではあるが、他の職業以上に奥が深く、初級中級上級とランクを設けられるほどに奥が深く癖も強い。

 魔法使いは『精神力』に一番長けた戦闘職ではあるが、その他の能力は圧倒的に低く、特に基礎体力は目も当てられない程に低い。それ故に途中で断念する者、戦闘で命を落とす者がも多い戦闘職である。


 毎年約300ほどの新魔法が生まれていくが、その内の九割は使えない魔法として世の中から消えていくようだ。


 

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