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いい加減真面目に集合で章3 届いた声

ガイアスの世界


 今回ありません



 いい加減真面目に集合で章3 届いた声




 剣と魔法の力渦巻く世界ガイアス



 「……へ?」


 それは夜歩者ナイトウォーカーの本能と血に刻まれた記憶。人族にとって夜歩者ナイトウォーカーが天敵であるように、その存在は夜歩者ナイトウォーカーにとって天敵と言える。

 『闇』を滅ぼす力を纏いし聖なる獣、聖狼セイントウルフ。それが自分の首をいともたやすく切断した男の正体であると理解しているギル。だが、今ギルの心を恐怖で支配しているのは本能や血の記憶に刻まれた聖狼セイントウルフでは無い。

 それの姿形は人族と変わらない。いや見た目だけで言えば人族の中でもか弱い分類に入るだろう。しかし纏う『聖』は人族のそれではなく、恐怖を刻まれたはずの聖狼セイントウルフすら凌駕する。もはやそれは人族の皮を被った『聖』の塊、自我を持ってしまった『聖』だと言ってもいい。深紅の眼で見つめ話しかけてきたフリーデと名乗る人族の少女に対してギルはそう思いながらなんとも間抜けな声をあげてしまった。

 

(……今この人族は私に逃げろといったのか?)


 軽々と聖狼セイントウルフの恐怖を塗り替える程の『聖』を持つフリーデの言葉が一瞬理解できず混乱しながら思考するギル。

 本来人族に恐怖を振りまく側である夜歩者ナイトウォーカーを恐怖させるその存在は、聖狼セイントウルフのように蹂躙することも無く、浄化することもせずただこの場から立ち去れと言う。フリーデの言葉はギルにとって理解し難いものであった。


(……私を舐めているの……誇り高き『闇』の眷属、夜歩者ナイトウォーカーである私を……)


 そしてフリーデの放った言葉は夜歩者ナイトウォーカー自尊心プライドを刺激するには十分であった。

 ただ、例え夜歩者ナイトウォーカーとしての自尊心プライドが反発しようとも、生物としての本能がそれをねじ伏せる。


「……は、は……はひィ!」


 浄化されたくない、生き残りたいという生物としての本能の叫びが思考を断ち切りギルの口から漏れだす。その声は恐怖で悲鳴の混じる情けないものだった。

 その悲鳴の混じった情けないギルの声に反応するように離れた場所に倒れていたギルの胴体が突然活動を再開する。操り人形のように突然起き上がったギルの体は、己の頭部に向かって走り出した。


「ん? おい、逃がすかよ!」


 走ってくるギルの体に気付いたガイルズはそう叫ぶと、道を塞ぐようにギルの体の前に立ち塞がった。


「動かないでください」


「なっ!」


 一声。たった一言。静かにフリーデがそう発しただけでガイルズの体は再び自由を奪われた。


「ぬぐぅぅ!」


 何とか拘束を解こうとするガイルズ。しかし先程よりも強力な拘束に文字通り手も足も出ない。


「俺の邪魔をするなッ!」


 同じ力を持ちながら全く考えの異なるフリーデのその行動に手も足も出ないガイルズはその怒りを叫びとして吐き出す。


「このおおおおおお!」


 自由を奪われ動けずもがく自分の目の前を難なく走り抜けていくギルの体にガイルズの怒りが更に跳ね上がった。

 動けないガイルズを横目にギルの体は地面に転がる己の頭部を拾い上げ抱き上げると、踵を返し特別監獄の奥へ脱兎の如く走去って行った。


「あああ逃がしたッ!」


 特別監獄の奥へと姿を消したギルの姿を目で追っていたガイルズは悔しさを滲ませる。


「おい、お前は一体何がしたい! この力はお前のその力は俺を拘束ためじゃ無く……奴らを『闇』を消滅させる為の力だろう!」


 『闇』を消滅させる力として、『聖』を利用する。これは数百年前の人類と魔族の戦、夜歩者ナイトウォーカーとの戦いで人族が導き出した答えである。その答えの1つがガイルズの持つ聖狼セイントウルフであり、現在人族の中では『闇』に対して『聖』を力として行使することは常識となっている。その常識や己の存在意義である聖狼セイントウルフを真っ向から否定するフリーデの行動に怒りのままそう問いかけるガイルズ。


「本来『聖』は力として使うべきものではありません……あなたたち人族はそれを分かっていない」


「なんだと!」


 人族が『聖』を力として行使しなければ夜歩者ナイトウォーカーのような人族を家畜だと思っているような魔族に蹂躙されることは必須。それを受け入れろとでも言っているかのような物言いをするフリーデの発言に怒りが最高潮に達するガイルズ。


「ふざけるなよッ!」


 フリーデに対して絶対服従の姿勢をとり自分の言うことを聞かない聖狼セイントウルフを己の精神力だけでガイルズはねじ伏せると、再び無理矢理体の自由を奪っていた拘束を引き剥がし怒りのままフリーデへと飛びかかった。


 その瞬間、金属同士のぶつかりあう重い音が特別監獄に響き渡った。


「なん、だと!」


 フリーデへ飛びかかったガイルズは、特大剣『大喰らい』を最高速で躊躇なく振り下ろしていた。聖狼セイントウルフの姿では無いとはいえ、ガイルズの放つ一撃はどれもが一撃必殺。当たればただではすまない。だがフリーデは、手に持っていた大盾でガイルズの一撃を軽々と防ぎきった。


「……だから、彼女の肉体を依代にして私はやってきました」


 自分の一撃を大盾で軽々と防ぎきったその光景に怒りを忘れ唖然とするガイルズに対して、そう答えるフリーデ。


「無駄な争いを止める為……この世界を争いの無い世界にする為、この世界を作りかえる為に私はやってきたのです」



「ふざけるな! 」


 突然そう叫びながら対峙するブリザラとガイルズの間に割って入ってくる乱入者。


「この邪魔するなッ!」


 突然割り込んで来た乱入者に対して一切の予備動作無く特大剣『大喰らい』を振り下ろすガイルズ。


「うるせぇ! お前こそ途中からしゃしゃり出てきてデカい顔してんじゃねぇ!」


 自分に目がけ振り下ろされるガイルズの特大剣『大喰らい』を黒竜ダークドラゴンの力、黒炎ダークブレスで弾いたのはアキだった。黒炎ダークブレスに接触した衝撃で黒い火の粉を撒き散らしながらガイルズの頭上へ弾かれる特大剣『大喰らい』。


「なッ!」


 今日だけで二度も自分の攻撃を塞がれたことに驚きを隠しきれないガイルズ。


《マスターッ!》


 アキの戦闘行動に警告のような声を発したのは、アキが所有しその身に纏っている全身防具フルアーマー、自我を持つ伝説の防具、伝説武具ジョブシリーズクイーンだった。


《戦っては駄目ですッ!》


 刻々と肥大化し続ける黒竜ダークドラゴンの力と目覚めてはいないが着実に芽吹きつつある『魔王の種子』という人が扱うには強大過ぎる力をその身に内包するアキ。その力を特別監獄という閉鎖された空間で使えば、被害は特別監獄だけに留まらず地上にあるガウルド城は愚かその周辺一帯を巻き込みかねない為、アキは戦うことを禁止されていたはずであった。だが何が引き金となったのかその約束を破るようにアキはその力をガイルズへ向けた。


『マスターッ!』


 アキが所有する伝説武具ジョブシリーズであると同時に、アキが内包する2つの強大な力を制御する安全装置ストッパー役でもあるクイーンは、突如として爆発的に膨れ上がつた黒竜ダークドラゴンの力を必至で制御しながら悲鳴のような声をあげてもう一度アキに警告した。


「おん? なんだこの声……」


 特別監獄に響き渡ったクイーンの声に驚きつつも何か既視感のようなものを抱くガイルズ。


「お前……」


 自分の一撃を弾き返したアキの顔を凝視するガイルズ。


「スプリング……」


 アキの顔を凝視したガイルズは思わず数カ月前に別れた好敵手ライバルの名を零していた。


「誰だそいつッ!」


『マスター!』


 再三たるクイーンの警告を無視し己の中に内包する黒竜ダークドラゴンが持つ『闇』の力を解放したアキは、特大剣『大喰らい』が頭上へ弾かれたことによって両腕が上にあがったままがら空きとなっていたガイルズの腹へ両手に出現させた黒炎ダークブレスを叩きこんだ。


「ぐふぅ!」


 黒炎ダークブレスをもろに腹に喰ったガイルズは一瞬にして黒い炎に包まれその勢いのまま特別監獄の奥へ吹き飛んでいった。


「ぐぅぅぅぅぅ……」


 戦闘による昂ぶりによって今にも暴発しそうになる黒竜ダークドラゴンの力を無理矢理抑え込むアキ。


「はぁはすぁはぁ」


 何とか己の中の黒竜ダークドラゴンを抑え込むことに成功したアキは、息を整えると普段とは違う感情が喪失した表情を浮かべているブリザラへ視線を向けた。


「……お前は……誰だ?」


 感情の無い表情で自分を見つめるブリザラに対してそう尋ねるアキ。


「私はフリーデ……この世界を創造した女神……」


 ブリザラの口から語られるそれらの言葉は、ブリザラの声色をしているのにも関わらず別人のように聞こえる。


「誰だよそれ、知らねぇーよ」


 表情の無いブリザラが発した言葉に呆れた表情を浮かべるアキ。


「……お前は誰だ……」


 もう一度そう訪ねるアキ。だがその言葉を向けている相手はフリーデと名乗る人物にでは無い。


「お前は誰だ……甘っちょろい理想を掲げたあの国のオウサマだろう?」


 呼び戻そうとするようにアキの言葉は次第に強くなる。


「戻って来い……戻って来いブリザラ!」


 何度も自分がそうされたように、アキはブリザラの名を叫んだ。


「……」


 そんなアキの呼びかけにも一切表情が変わらないブリザラの顔をしたフリーデ。しかしその目から一筋の涙が零れ落ちた。


「アキさん……助けて」


 アキの呼びかけは確かに届いていた。だがアキに救いを求めるその声はか細く、今にも消え入りそうな声であった。



ガイアスの世界


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