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いい加減真面目に集合で章5(アキ&ブリザラ編) 忍び寄る『闇』

ガイアスの世界


 闇歩者ダークウォーカーの眷属


 闇歩者ダークウォーカーの眷属になった者はその主が死ぬまで何度でも生き返ることが出来る特性を持つ。

 それは主の中に眷属の血が記憶として残されているからと言われている。しかし死ぬ前と全く同じ状態で復活することは難しく、何らかの変化がある。

 その中でも特に変化が激しいのは性格で、死ぬ前の記憶を持ちその見た目も同じでありながら全く性格の違う別人のようになってしまうこともあるという。



 いい加減真面目に集合で章5(アキ&ブリザラ編) 忍び寄る『闇』




 剣と魔法の力渦巻く世界ガイアス




 ここでは落ち着いて話が出来ないという理由で特別監獄に収監していたソフィアを解放したレーニは、地上へ戻ろうとアキたちを引連れ特別監獄の薄暗い通路を進んでいた。

 道案内もかねて先頭を進むレーニのその後ろにはブリザラとソフィアが続き最後尾にアキが続く形で列を作り特別監獄の薄暗い通路を進んで行く一同。すると突然先頭を進んでいたレーニの足が止まる。


「……レーニさん?」


 突然足を止めたレーニの背中に首を傾げながら話しかけるブリザラ。


「……申し訳ない……急用が出来ました……このまま真っ直ぐ進んで行けば通常監獄へ続く階段があります……そこを進んで先に城の方へ帰ってくれますか」


 まるで自分の顔を見せたくないという様子で振り返ること無くブリザラたちへそう告げるレーニ。


「え? 急用って……」


 レーニのその突然の言葉に戸惑うブリザラ。特別監獄という異質な場所での突然の急用とは一体何なのか、それがわからないブリザラは様子の変わったレーニのその言葉と仕草に違和感を抱いた。


『……ヒトクイの王よ……これは一体どういうことだ?』


 レーニへ違和感を抱いていたのはブリザラだけでは無い。自我を持つ伝説の盾キングは、ブリザラよりも更に強い違和感を抱き、そしてその違和感の理由に気付いていた。


『どうなんだ、ヒトクイの王よ?』


念を押すように再びレーニを問い質すキング。


「……」


 キングの問に答えず沈黙するレーニ。



「……ん?」


 キングが列の最後尾で足を止めレーニたちのそんな会話を聞いていたアキは、何かに気付き後方へ振り返った。


「……あ? ……灯りが消えていく?」


 アキが目にしたのは、特別監獄の通路を照らしていた灯りが次々と消えていく光景だった。


『マスター!』


 自分たちが歩いて来た通路の灯りが次々と消えていく光景に首を傾げるアキに対して叫んだのは自我を持つ伝説の防具クイーンだった。

 クイーンが叫んだ直後、通路に広がる暗闇から生まれ出たように姿を現した黒一色の給仕メイド服に身を包んだ女性が手に持つ剣でアキに襲いかかった。

 重く鈍い金属のぶつかり合う音が特別監獄の通路に響き渡る。


「防がれた」


 アキを襲撃した黒一色の給仕メイドはそう声を漏らす。


「何だお前……」


 全身防具フルアーマーを身に纏うアキは、その強度を生かし右腕で黒一色の給仕メイドの一撃を抑え込みながらそう尋ねた。


「……」


 睨みつけてくるアキから距離をとり離れた黒一色の給仕メイドは地面に着地するとロングスカートの裾をつまみながらその視線をレーニへと向け僅かに頭を下げた。


「大丈夫ですかアキさん」


 アキを守るというようにキングを構えながら駆け寄ってくるブリザラ。


「俺にかまうな」


 自分を守ろうと近寄ってきたブリザラを煙たがるように遠ざけるアキ。その視線は自分では無く別の者を見つめる黒一色の給仕メイドに向けられていた。


「おい……俺に襲いかかっておいて、今は他の奴を見ているっていうのはどういう了見だ?」


 自分を襲撃した黒一色の給仕メイドの視線が自分に向けられていないという事に苛立つアキは口元を歪ませる。


「……レーニ様、私の主がこの億でお待ちです」


 だがアキの問には答えず黒一色の給仕メイドは視線を向けていたレーニへそう告げた。


「おい!」


「アキ殿……」


 今にも黒一色の給仕メイドへ飛びかかろうという勢いのアキを腕で制するレーニ。


「すまない、少し時間をくれ」


「……チィ」


 少し時間をくれというレーニの言葉に舌打ちで返すアキ。


「……お前は奴の眷属か?」


 黒一色の給仕メイドと対峙したレーニの声に感情は無く普段よりも低い。


「はい、主の一の眷属、ギル=レイチェルバトラーと申します」


 レーニに対して主の一の眷属であることと自分の名を明かしたギルは、再びロングスカートの裾をつまむと頭を下げた。


「そうか……」


 目の前のギルがそしてその背後にいる者が何者であるか理解したレーニは短く息を吐くとギルの下へ歩み出した。


「レーニさん!」


 ギルの下へ歩き出したレーニを止めに入るブリザラ。


「行っては駄目です!」


 その言葉には何の根拠も無い。だが状況からしてレーニが自分たちの下から離れるのは危険だとなぜか予感してしまうブリザラは、ギルの下へ行こうとするレーニを再び止めた。


「……大丈夫……大丈夫です」


 ブリザラの肩に手を置いて頷くレーニ。


「レーニさん……」


 ブリザラの肩に置いたレーニの手は僅かだか震えていた。どう考えても大丈夫ではないレーニを止めなければと思うブリザラ。しかしそれと同時に覚悟を決めたという意思を感じるブリザラはレーニをもう止めることが出来なかった。

 ブリザラの肩から手を離したレーニはそのままギルの下へ進んで行く。


「……お前の主は一体何を企んでいる?」


 ギルと擦れ違った瞬間。レーニはギルに対してそう尋ねた。


「……それは私では無く直接主に伺ってください」


 ギルはレーニの問にニタリと笑みを浮かべるとそう答えた。


「……そうか……」


 ギルのその答えに短く頷いたレーニは、躊躇することなく暗闇が広がる通路へと進んで行った。


「……さて、先程は失礼しました……私殿方と視線を交え続けると発情してしまうもので……」


 暗闇の中へ進んで行ったレーニを見送ったギルは、給仕メイド服に隠れた煽情的な身体を弄りながら今まで無視した事をアキに詫びた。


「ああ? ……発情だと?」


「はい、あなたに見つめられて私、今にも絶頂してしまいそうですぅ」


 それは男を意識した発言であり明らかにギルはアキを誘惑していた。


「あ、アキさん!」『マスター!』


 だがギルの誘惑に別の意味で一番に反応したのはブリザラとクイーンだった。


「お前が発情しているなんてどうでもいい……俺が求めているのは戦いだ!」


 そう言いながら前進防具フルアーマー手甲ガントレットの部分を刃に変化させその切っ先をギルに向けるアキ。


「あら、ご立派なモノをお持ちですね、私更に興奮しちゃいますぅ」


 アキに刃を向けられ腰を左右にくねらせるギル。


「さあ、戦うぞ、お前も剣を抜け!」


 ふざけた相手ではあるものの、今から戦えるという期待感がアキの表情を歓喜で歪ませる。


『馬鹿者!』


 やる気満々、退屈な城暮らしで戦えなかった鬱憤を発情給仕(メイド)で晴らそうとするアキへキングの叱責が飛ぶ。


「……ああ? なんだ盾野郎……」


 念願の戦いを前に水を差して来たキングを睨みつけるアキ。


『周囲の状況を考えろ! 今のお前が地下のこの場所で暴れれば、直ぐにでもここは崩壊する、そうなれば王や我々は愚か城一帯、ガウルドにまで甚大な被害が出る事になるんだぞ!』


 黒竜ダークドラゴンの力や『魔王の種子』といった様々な要因によってアキが持つ力は既に人の域を越えた所にある。そんなアキがこの場で何も考えず戦いを始めれば、地下にあるこの特別監獄は簡単に崩落する。被害はそれだけに留まらず地上のガウルド城や町にまでその影響は及ぶとアキへ忠告するキング。


「アキさん……ここは私たちに任せてください」


 己の欲望を解放したい。周囲への被害など考えず直ぐにでも暴れ出したい。アキの中に存在する破壊衝動が今にも開放しろと叫んでいる。だが真っ直ぐに自分を見つめてくるその瞳がそれを許さない。


「うぅ……ちぃ……勝手にしろ」


 真っ直ぐに自分を見つめてくるブリザラの瞳に抗うことが出来ないアキはそう吐き捨てると荒ぶった破壊衝動を霧散させた。


「はッ……はいッ! ありがとうございます!」


 戦いを譲ったアキに対して満面の笑みで礼を言うブリザラはアキの前へでるとキングを構え直した。


「あら、残念……」


 アキが戦いから身を引いたことを残念がるギル。


「うふ……でも私、女の子でもイケる口よ」


 ギルはそう言いながら目の前に立ったブリザラへウインクをした。


「あ、あははははは……」


 どう反応すればいいのか分からず赤面しながら苦笑いを浮かべるブリザラ。


「……ねぇ私も手伝っていい?」


 ブリザラとギルの一悶着が終わったことを見計らったようにブリザラの横に立ったソフィアはこの戦いへ参加する意思を示した。


「ソフィアさん……」


 まさかソフィアが戦いに参加するとは思っておらずブリザラは少し驚いた表情を浮かべた。


「はいッ! お願いします!」


 だが次の瞬間にはブリザラの表情は喜びに変わっていた。


「あら……あなた何処かで……よくみたら盾を持ったあなたも……うーん、私顔を覚えるのって苦手なのよねぇ……まあ、でもどっちも可愛いから別にいいわ……これから3人でイイ事しましょう」


 二人の顔に何処か見覚えを感じつつも、気にしないという様子で、語尾にハートマークを羽ばたかせるギルは、黒一色の給仕メイド服の中に忍ばせていた剣を抜いた。

 


「……そう、覚えてないの……それじゃあの時の事、嫌という程これから思い出してもらうわ」


 ブリザラに聞こえない微かな声でそう呟いたソフィアは、手甲ガントレットを装着した腕を上げた。


「ルーク、私に力を貸して……」


 腕に装着した手甲ガントレット、自称5番目の伝説武具ジョブシリーズルークに告げるソフィア。


『お嬢様の仰せのままに……いやー本当の意味での初めての共同作業、興奮しますね!』


「はぁ……」


 一言余計だなと思うソフィアのため息が不気味に広がる暗闇へ響き渡った。



ガイアスの世界


 今回はありません。

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