表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
278/512

合間で章 女神の記憶

ガイアスの世界


 『女神の面影を持つ者』


世界を創造した女神の面影を持つ者の事をそう呼ぶ。

 女神の面影を持つ者達たちには、女神が今までに創造した世界に存在する同類、同一体と繋がる力がある。

 現在それ以上のことは解っていない。


 合間で章 女神の記憶




 神々が住まう世界に女神は失望し絶望していた。もう何が原因なのかもよく解らない争いを続ける神々に女神はほとほと嫌気がさしていた。

 だからある日女神は、自分が持つ創造の力を使い神々の世界を模倣した新たな世界を創造することを決意した。

 争いが絶えない神々の住まう世界を模倣しながらも一切の争いが起る事の無いよう女神は、新たに創造した世界に神の御業、奇跡を振りまいた。

 すると広大で美しく豊かな自然と幾多の生物たちが生きる女神が創造した世界は、争いの無い楽園のような場所となった。


 女神が争いの無い楽園のような新たな世界を創造する中、他の神々たちは既に理由を失った争いに明け暮れていた。

 元々は女神と同様に平和を平穏を望んでいたはずの神々。しかしいつしかその望みは少しずつすれ違い始め、気付けばその神々のすれ違う望みは争いへと発展してしまった。平和と平穏を望みつつも、神々が持つそれぞれの価値観の違いによって巻き起こる争い。目的は同じはずなのに交わらない価値観は、己の平穏と平和を勝ち取るための争いへ、そしていつしか争いそのものが目的となってしまった。

 争う神々の力は、地を割り緑を燃やし海や空を汚していく。刻々と壊れていく世界を目の当たりにした女神は本来の目的を忘れ、ただ争う神々たちに失望し絶望し嫌気がさしたのだ。

 だからこそ、そんな神々が住まう世界を見限った女神は、新たな世界を創造することにしたのだ。争いの無い平穏で平和な楽園のような世界を。

 しかし形あるものはいずれ壊れる。世界も世界という形である以上、いずれ終わりがやって来る。例え神の力であってもそれは変わらない。

 女神が創造し平穏と平和を願い祈り奇跡を振りまいた新たな世界はある日突然、破壊の音と共に終わりを迎えた。


 世界を破壊する音が鳴り響く。

 世界の壊れる音が鳴り響く。

 世界の終わりの音が鳴り響く。


 破壊の音、それはいつからか争いを司る神となった二人がぶつかり合う音。双子の神の出現と存在を表す音であった。


 幼い頃は仲がよかったとされる双子神。だがいつの頃からか同質の存在であったはずの双子神の考え方にはズレが生じるようになった。最初は僅かであったそのズレは次第に大きくなり、双子神は言い争うことが多くなっていった。そしてあれよあれよという間に気言葉による争いは形を拳と拳、力と力に変えた争いへ発展していく。最初はまだ兄弟喧嘩の範疇だった。しかし双子神の力は争えば争うほどに高まり、いつしか兄弟喧嘩では済まされない規模へと発展した。

 双子神の兄弟喧嘩を越えた争いは他の神々にも影響を与え、世界を巻き込んた大きな争いへと発展していく。

 双子神を中心とした神々の争いは神々の世界を消滅させてしまう程だった。

世界が消滅し殆どの神々が息絶えても尚、双子神の争いに決着は付かなかった。神々の世界を壊し尽くし争う場所を失った双子神は新たに戦う場所を求めた。そして行きついたのが女神の創造した世界だった。


 双子神の出現によって広大で美しく豊かな自然と幾多もの生物が生きる楽園であった女神の世界は、全てが焼き尽くされ汚された争いが絶えず生まれ続ける世界へと変貌してしまった。そんな見る影も無くなってしまった世界に涙する女神。だが女神が涙し泣き叫んでも、双子神の争いは止まらず終わらない。

 争い続ける双子神に自分の声は届かず他に出来ることは無いと悟った女神は、自分が創造した世界を捨てた。後ろ髪を惹かれる思いはあったが、女神にはそれ以外の選択肢が無かった。

 また新たに世界を創造すればいい。そう考え決意を新たにした女神は涙を拭い双荒らされた世界を後にし双子神に見つからないほど遠くへ逃げた。そしてその逃げた先に再び新たな世界を創造した。


 しかし遠くへ逃れようと双子神の争いは再び女神の現れることとなった。神々の世界と同様に、女神が創造した世界を破壊し尽して尚、決着が付かなかった双子神はまた争う場所を求めたのだ。そしてそこには女神がまた新たなに創造した世界があった。

 何度も涙し世界を捨て新たな世界を創造しようとも必ず現れる双子神。偶然という悪戯が必然の如く重なり幾度も女神の楽園を、願いを、祈りを、奇跡を、平穏と平和を望む世界を争いによって破壊していく双子神。

 やがて繰り返す双子神の争いによる破壊に、女神の心は壊れた。そして女神はその壊れた心のままに新たな世界を創造した。争いの源となるものを抑え込むシステムを持つ世界を、双子神が呼び寄せる争いすら寄せ付けない絶対的なシステムを持つ世界を。それはもう奇跡とは呼べる代物では無くある種の呪いのようなものであった。

 争いを拒む絶対的なシステムを持つ世界を創造したことで女神は力を使い果たした。力を使い果たした女神は、争いを拒む絶対的なシステムを創造する中で誕生した副産物である擬似神にこの世界の管理を委ねると長く深い眠りについた。


 たが眠りについた女神は知らない。双子神の争う原因が自分であり、その双子神の力はその絶対的なシステムすら突破して行くことを。そして自分が創造した数えきれないほどの世界が争いを拒む絶対的なシステムに大きな負荷をかけ歪みを生み出してしまうことを。




 — ガウルド城 地下最深部 特別牢獄 —



「……ッ! ……はぁ……」


 牢の中で目覚めた少女は、深くため息を吐いた。


「……これが本当の私」


 手錠に繋がれた両腕を見つめそう呟く少女。


「……ッ!」


牢獄の扉の奥から人の気配を感じる少女の視線がその扉に向かう。


「……結局、私達は尻ぬぐいをさせられるのよ……」


 今にも開こうとする扉を前に、そう吐き捨てた少女は扉の奥にいる何者かに備え身構えた。




— ガウルド城 上層 客間 —




「……そうか……彼女は……」


 城の上層部、客間にあるベッドの上で目覚めた少女は何かに気付いたと言う様子でそう呟くと上体を起した。


「……ちょっと行って来るね」


 自分の隣で何とも無防備な表情で眠る護衛兼お付であり友人でもある女性に静かにそう囁いた少女は何かにはやし立てられるようにベッドから飛び出すと寝間着のままベッド脇に置かれた大盾を背負い客間を飛び出していった。



ガイアスの世界


 今回はありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ