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狼で章2 狼が見つめる先

ガイアスの世界


 ガイルズに送られる熱視線


 人族の異性から見て中でガイルズの評価は中の上。意外にも評価は高い方であるガイルズ。

 しかしもっと以外なのが森人エルフ混血森人エルフ。その評価は上の上。

 乱暴で粗悪な印象のある異性を嫌う傾向にあった古き良き森人エルフ。しかし時代の流れなのか、現在の森人エルフたちは、その乱暴で粗悪な印象をワイルドと捉えており、ガイルズに対しての評価は予想以上に高く青天井らしい。……どうでもいいか。




 狼で章2 狼が見つめる先



 獣の姿でありながらそれは人族を守る為、生かす為だけに生まれた。人族が潜在的に内包する光によってこの世に生を受けた獣たちは文字通り守護者となった。人族を守る為、襲いかかる影からの脅威を討ち滅ぼす為、獣たちはその光を力に変え迫りくる影と戦った。その鋭い牙で、その強力な爪で、人類に襲いかかる影を次々滅していった。

 影を討ち滅ぼし戦いに勝利した獣たちはその役目を終えた。しかし英雄と称えられてもいいだけの偉業を成し遂げた獣たちは、人族に弾圧され捨てられた。だがそれでも獣たちはいっさい対抗しなかった。それは獣たちが誕生した時に私が施した約束、いや呪いの所為だ。


 獣たちにとってそれは私や人類と交した約束。

 私や人類にとってそれは獣たちへ施した呪い。


 役目を果たした獣たちは、その約束という名の呪いを胸に人類の手によって歴史から抹消され滅ぼされたのだ。

 それからどれほどの歳月が過ぎたのか、短命過ぎる人族が獣たちの存在を忘れ去った頃、その獣は私の前に姿を現した。その獣は守護者という役目を知らず約束という呪いを受けずに生まれた出来そこないだった。

 だが出来そこないだからこそその獣は、己が強くなることを望むことが出来た。私や人族に逆らい抵抗出来るからこそ、更に強くなることを望むことが出来た。

 そして己の役目を知らず、約束という名の呪いを受けず自由であった出来そこないの獣は、私の前で更なる力を得てより獣に近い姿へと変貌を遂げた。その姿は美しさと恐怖が混在するまさに聖なる獣と呼ぶに相応しい姿をしていた。



 剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス

 


 

「さて……それで結果の方はどうなんだ?」


 部屋で着替えを済ませ広間に入ってきたガイルズは、そう尋ねながら広間の入口に一番近い席、イングニスの正面に見据えることが出来る席へと腰掛けた。


「……お前は……あの姿になってどう感じた?」


 尋ねられたイングニスだったが、その問には答えずまずガイルズ本人がどう感じたのかとと尋ね返した。


「はぁ……正直……分からないというのが本音だ……あの姿になって最初に感じたのは全能感だ、今の俺なら何でも出来る、そんな感覚が頭を痺れさせていた……だがその力を振い続ける程に、あの獣の姿になり続ければなり続ける程、意識が保てなくなりそうな感覚もあった」


 先程までイングニスを口説こうとしていた軽い調子とは違い、真剣な表情でそう答えるガイルズ。


「……全能感……そうか……聖狼セイントウルフの本能を極限まで引き出した調整チューニングだ、そう感じてもおかしくはない」

 

 この数週間、イングニスはガイルズが持つ聖狼セイントウルフの力を高める為に『聖』の力を更に拡張、増幅する実験を繰り返していた。しかし本来、人族に内包されている『聖』は微量。その微量である『聖』を無理矢理に高めれば当然肉体と精神に負荷がかかる。特に精神にかかる負荷は大きく強大な『聖』を保ち続けることは難しい。結果、聖狼セイントウルフの本能に抗えなくなり自我を保てずに暴走を引き起こしやがて死に至る。そうイングニスは考えていた。だがガイルズはその強靭な精神で高まり続けた聖狼セイントウルフの本能を抑え込み自我を保ち続けたことで強大な『聖』の力を維持しのである。そしてガイルズは聖狼セイントウルフを越える力を手にした。


「……過剰な『聖』の拡張と増幅を受け、身も心も完全に獣になって尚、お前は聖狼セイントウルフの本能に抗い自我を保ち続けた……」


 普段の半人半獣の姿であった聖狼セイントウルフに対し、ブルダンの外でガイルズが見せた聖狼セイントウルフの姿は、まさに聖なる獣、巨大な狼の姿をしていた。それは美しさと恐怖が同居する不思議な光景であり、イングニスは思わずその姿に目を奪われてしまった。


「……私はお前が不思議でならないよ」


 自身の想像を上回る結果とガイルズの強靭な精神に、半ば呆れたように驚きを口にするイングニス。


 「……それで、結局の所……この力を俺は使っていいのか?」


 呆れた表情を浮かべるイングニスに対して、新たに手にした力を使っていいのかと尋ねるガイルズ。


聖狼セイントウルフの上位存在……大聖狼アークセイントウルフといった所か……正直、不安材料が消えた訳じゃない……今の状態では、いつお前が聖狼セイントウルフが持つ本能に自我を呑み込まれてもおかしくない……そんな不完全な状態でその力を使うことを許可したくはないのが私の本心だ」


聖狼セイントウルフという存在を作りだした者として責任があるイングニスは、ガイルズが手にした新たな力を不完全なままにしておくことには納得していなかった。


「……だがここらが今の限界……もう我慢できないと言う顔をしているからな」


ガイルズの顔を見て呆れるイングニス。


「ならッ!」


イングニスのその反応に手応えを感じるガイルズ。


「……長時間の力の使用は厳禁……これが守れるなら好きにしろ」


 渋々という様子で新たな力を使うことを許可するイングニス。


「おし……」


 嬉しそうな表情を浮かべつつもイングニスの言葉に静かに頷いたガイルズは席を立った。


「……そうか、もう旅立つのか」


 席を立ったガイルズの姿を見て、何を考えているのか手を取るように分かってしまったイングニスは、数週間ではあるが目の前の男と濃い時間を過ごしたのだなと自嘲気味な笑みを浮かべそう言葉を口にした。

 

「……ああ、すぐにでもこの力を彼奴で試してみたいからな」


 ガイルズの目は真っ直ぐイングニスを見つめている。しかしガイルズの目に映っているのはイングニスでは無く、自分を負かした宿敵の姿であった。


「そうか……ならばとっとと出て行け、これでやっと静かに暮らせる」


 もう数百年は感じていなかった僅かな胸の痛み。その痛みを単なる気のせいだと早々と片付け、憎たらしくガイルズを送りだそうとするイングニス。


「なんだ、寂しいのか? しょうがねぇーな、お前がどうしてもって言うなら……」


 何処となくその表情に陰りや切なさのようなもの感じたガイルズは、何を勘違いしたのかイングニスを再び口説き始めた。


「今晩、俺とベッドで一夜……ん?」


突然ガイルズの視界いっぱいに広がる眩い閃光。


「……え?」


ガイルズは口説き文句を言いきる暇も無く、原初の魔法使いが放った魔法によって閃光に呑み込まれ消えていくのであった。



ガイアスの世界


 大聖狼アークセイントウルフ



 半人半獣の姿であった聖狼セイントウルフに対し、完全な獣、狼の姿になったのが大聖狼アークセイントウルフ

 その体は巨大で平均的な貴族が住む程の大きさ。

 現時点で、大聖狼アークセイントウルフがどのような能力を持つかは不明。



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