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夕闇で章21 『魔王の種子』を持つ者

ガイアスの世界


 インセントが持つ特大剣『大喰らい』


 ガイルズが所有している特大剣『大喰らい』とインセントが『剣聖』の力を作りだした『大喰らい』は同一個体であるようだ。

 二人の間には何かしらの関係があるようだが、今の段階では不明。

 



 夕闇で章21『魔王の種子』を持つ者



 

 レーニが発言したバラライカの息子がアキであるという事実は、その場居たブリザラ達に衝撃を与えた。それもそのはずだ。アキの母親とされるバラライカは、魔法使いの間では原初の魔法使いに次ぐ伝説の人物。その伝説の人物に子供がいたということすら初耳であり、更にはその子供がアキだと言われればブリザラたちが驚くのも無理は無い。


「……その女が俺の母親だとして……それが、一体何だっていうんだ?」


 アキがバラライカの息子であったと言う衝撃的な事実にブリザラたちが驚きから立ち直れない中、誰よりもいち早く立ち直ったのは当人であるアキであった。いや正確には立ち直った訳では無い。突然の出生の発覚によって今もアキの心の中は様々な感情が入り混じっている。だがそんな心持ちを隠すように、アキは冷静に冷静過ぎる程にこの事実を口にしたその意図をレーニに尋ねた。


「……『魔王の種子』……この言葉に聞き覚えはありますか?」


『『「「「……ッ!」」」』』


 レーニの口から発せられたその言葉に伝説武具ジョブシリーズを含めたアキたち全員が更なる驚きを喰らう。

 ガイアスを混沌の渦に導くとされる『魔王の種子』とは、魔王を誕生させる因子、素質を持つ者の事を言う。潜在的に様々な人種、種族、魔物がこれを内包しているとされているが、魔王の種子が花を咲かせることは愚か、芽吹くことすら稀でその原因や要因も分かっておらず、魔王として覚醒する確率は限りなく少ないと言われている。

 だがこの場にいる者達はその種子が芽吹いた者を知っている。


「……皆さんのその反応からすると、『魔王の種子』についてある程度知っているようですね……」


 アキとバラライカの関係についての時とは違う驚きがその場に広がる。そんな一同の様子を見たレーニはアキ達が既にある程度の知識を持ち合わせていると判断した。


「……それがさっきの話とどう関係している?」


 自分の中で芽吹き始めた『魔王の種子』を頭の片隅に置きながらアキは先程の話、自分の出生についてと魔王の種子に何の関係があるのかレーニを問い詰めた。


「……過去に『魔王の種子』を芽吹かせた者を私は知っています……そして、あなたからはその者と同じ気配がします……」


 『魔王の種子』を芽吹かせた者を過去に知っていると言うレーニは、その者が発していた気配と同じ物をアキから感じると口にした。


「……芽吹くか芽吹かないか、花を咲かせるか咲かせないかは別として、『魔王の種子』はその血脈に受け継がれることが多いと聞きます……あなたが内包する魔王の種子の出所……それを今からお話しようと思います」


 そう告げたレーニは、今までで一番悲しい表情を浮かべながら中断していた昔語りの続きを語りだすのだった。




― 過去 ガウルド ガウルド城 屋上 ―




 不気味な静けさが漂う小さき島




「……止んだ……みたいだな」


 降り続く雨空を見上げながらそう呟くレーニ。突如として降り注ぎ、ガウルドの城下町を地獄へと変えた黒い球体。その黒い球体からガウルドの城下町を守る為、ガウルド城の屋上に上がり浄化の力、青い炎を発動させていたヒラキの体を支えていたレーニは、城下町に降り注いでいた黒い球体が消えた事に安堵していた。


「……あぐぅぅ」


「ヒラキッ!」


 支えていた自分の腕からすり抜けるようにして倒れかけたヒラキを慌てて支え直すレーニ。


「……わ、悪い……」


 ヒラキは息絶え絶えに倒れかけた自分を支え直してくれたレーニに詫びる。

 レーニの腕に支えられるヒラキの姿は、武装組織であったヒトクイを国にまで成り上がらせた面影は無い。あるのは他人に支えられなければ立つこともままならない程に弱った一人の男の姿だった。


「……大丈夫だ、気にするな」


 レーニは弱々しく詫びるヒラキを勇気づけるように力強くそう言って顔を横にふった。


「……とりあえずあそこで体を休めよう」


 そう言うとレーニは周囲を見渡し、ヒラキが休める場所を探した。そして見つけたのはヒラキの体をあずけられそうな城の壁だった。


「よし、あそこまで歩くぞ」


ヒラキを支え直し近くの壁へと移動するレーニ。ガウルド城の壁に着くとレーニはその壁を背もたれにしてヒラキを座らせた。


「どうだ、少しは楽になったか」


体勢を変えたことで多少楽になったのではないかとヒラキに尋ねるレーニ。


「……ああ」


短く返事するヒラキ。だがその表情は苦悶に歪んだままであった。


「……ヒラキ、これから私はどうすればいい?」


 ヒラキと共に屋上にいたレーニは、今ガウルドの外で何が起っているのかはっきりとしたことは分かっていない。だが未だガウルドが危険な状態にあるのは外から感じる禍々しい気配で理解出来できる。しかし力を使い果たしたヒラキはもう戦えない。ならばどうするべきかと考えたレーニは、酷だとは思ったが苦しむヒラキに自分はこれからどうすればいいのか尋ねた。


「……このガウルドに黒い球体を放っていたのはバン=デンダだ」


 ヒラキは痛みとは違う苦悶の表情を一瞬浮かべた後、重々しく口を開いた。


「……そうか……やはり……」


 このガウルドに攻撃を仕掛けてきた者の正体がバン=デンダであることにレーニは薄々気付いていた。

 レーニがバン=デンダと最後に顔を合わせた時、既にその兆候はあった。だがまさかバン=デンダがこれほどまでに大きな負の感情、『絶対悪』の残滓を取り込み、それを力に変えるなどとは想像もしていなかったレーニはあの時反対されても殺しておけばと自分の考えの甘さを呪った。


「お前の所為じゃない……」


レーニが自分を責めていることに気付いたヒラキは優しくそう口にする。


「だがッ!」


自分の過ちの所為でこれほどの被害がと考えるレーニは声を荒げた。


「いいや、お前の所為じゃない……アレはどうしようも無かったんだ……例えお前や俺があの時点で止めたとしても……」


ヒラキも『闇』へと堕ちていくバン=デンダの兆候に気付いていたようだ。しかし話しの途中で何故か話すことを止めるヒラキ。


「……多分今インセントかバラライカのどちらかが『闇』に堕ちたバン=デンダを抑えているはずだ……その証拠に黒い球体によるガウルドへの攻撃は止んだ」


 ガウルドの城下町に降り注いでいた黒い球体が止まった理由を説明するヒラキ。直接目にした訳でも指示を出した訳でもないが、ヒラキはこれまで自分と共に幾多の戦場で戦ってきたインセントとバラライカのどちらかが今バン=デンダの動きを抑えていると確信しているようであった。


「……だが、浄化の力を持たない二人では奴を倒すことは出来ない……」


 ただの『闇』の眷属ならば、今のインセントやバラライカでも相手にすることは出来るかもしれない。だがバン=デンダは、以前この城で戦ったダオ=ノーブルと同様に負の感情『絶対悪』の残滓を取り込み力に変え『闇』へと堕ち人間から化物へと変貌し存在。浄化の力を使わなければ倒せない。浄化の力を持たないインセントとバラライカでは倒すことが出来ないと断言するヒラキ。


「だが……」


そう一言置いて、更に苦悶の表情を浮かべるヒラキ。


「お前なら……俺と一緒に『闇』堕ちたダオ=ノーブルを倒したお前ならバン=デンダも倒せるかもしれない」


 レーニから視線を外し歯切れ悪くそう話すヒラキ。


「……ああ、なら私はこれからバン=デンダを倒しにいく、それでいいな!」


 歯切れの悪いヒラキとは対照的に、力強く宣言するようにそう答えるレーニ。


「悪い……お前を守る、お前を戦わせないと言っておいてこんな事を頼める義理じゃない……だが頼む……俺の仲間……あの二人を助けてくれ……」


 ヒラキは苦悶な表情を浮かべながらすがるようにインセントとバラライカを救ってくれたとレーニに頼み込んだ。ヒラキにとってそれは苦渋の決断であった。


 レーニの力はインセントやバラライカも凌駕する。それは『闇』の眷属であることも当然要因になってはいるが、それ以上に純粋な実力の高さが由縁となっている。

 だがヒラキはそれほどまでの実力を持つレーニを戦場に立たせることをこれまで頑なに拒んできた。

 何故ならレーニには人類と魔族の友好関係を築くきっかけ、平和の象徴になってもらいたいというヒラキの目的があったからだ。そう考えていたヒラキは例え人間同士の戦であってもレーニを戦場へ立たせることはこれまで一度も許さなかった。

 しかしそれは建前でしかない。その建前の後ろにあるヒラキの本当の想いは、ただ自分が愛した女性を失う事を恐れていただけだ。ヒラキは己の身勝手と自己中心的な想いの為に、今までレーニを戦場から遠ざけていたのである。そしてそれができるだけの実力を今までのヒラキは持っていた。

 だが状況は変わった。現状ヒラキにはもう自分の想いを突き通すことが出来るだけの力は残っていない。力を使い果たし満身創痍であるヒラキは戦うことは愚か動くこともままならない。力を使い果たしたヒラキには自分の我儘を貫き通すことさえもう許されないのである。

 最前線で戦っているであろう二人を助ける為には、レーニのその強大な力が必要であったのである。


「ヒラキ……お前の気持ちは十分理解している……でも私も同じだ……」


 力の足りなさを嘆き、不甲斐無い気持ちを露わにするヒラキへ、レーニは子供を諭すような優しい声で語り掛ける。


「……私もお前を守りたかった……そもそも私は最初からお前達と一緒に戦う気満々だった……」


 語り掛けてくるレーニに目を合わせることが出来ず俯くヒラキ。そのヒラキの頬に触れその顔を自分の方へ無理矢理向けるレーニ。


「……私は心許せる仲間と……この胸が張り裂けそうになる程、好きになったお前と共に戦いたい……だから、大将……いいや、王様……私に戦わせてくれ」


 レーニは今までに見たことの無い弱気なヒラキの目を真っ直ぐ見つめるとそう言って優しく微笑んだ。


「……王……様か……」


この島の王になるという夢。それが後少しで叶う。だがレーニ王様と呼ばれても実感がわかないヒラキは少し戸惑った表情を浮かべた。


「さあ、王様ご命令を」


 優しく微笑むレーニのその表情とその言葉にヒラキは少しぎこちない笑みを浮かべ頷く。


「頼む……あの二人を助けてくれ」


新国ヒトクイの王としてヒラキはレーニにインセントとバラライカを助けろという命令を下した。


「仰せのままに」


 王となったヒラキの命令を受け入れ頷いレーニは、その熱を確かめるようにヒラキを抱きしめた。


「それじゃ行ってく……行ってまいります」


名残惜しそうに抱きしめていた腕を解きヒラキから離れたレーニは、ガウルド城の屋上を駆け抜け禍々しい気配がする方へと勢いよく飛び出していった。



「……行ったか……」


 ヒトクイの王としてレーニを見送ったヒラキは、そう言いながら背もたれとなって自分の体を支えていた壁に手を当てながら弱々しく立ち上がった。


「王様……そう俺はこの国の王になったんだ」


 何かを決意したように自分が王である事を呟くヒラキ。


「……悪いなレーニ……だがやっぱり俺の意地と我儘は貫き通す……」


 この場から立ち去ったレーニのことを想いながら再度呟くように詫びたヒラキは、既に底をついているはずの力を振り絞り壁を支えにして歩き出す。己の本当の目的を成し遂げる為に一歩一歩屋上の出入り口へ歩みを進めるのであった。



― ガウルド南門 草原 ―



「……ぐぅあ!」


 バラライカの苦痛の声が雨り足場の悪くなった草原に響き渡る。


「はぁはぁ……」


 圧倒的な物量による魔法攻撃によって先程までリューとの戦いを有利な状況に進めていたはずのバラライカ。しかし気付けば形勢は逆転しようとしていた。


(……どういうことだ、戦えば戦う程に強くなっている)


 サムライであるリューは距離を詰めなければ攻撃出来ない。その弱点を突くようにしてバラライカは間合いを詰めさせない戦い方をしていたはずであった。最初こそ距離を詰められず攻めあぐねていたリューであったが、何度目かの攻防によってその均衡は破られた。

 バラライカの放つ圧倒的なによる数様々な魔法を掻い潜り自分の間合いにまで距離を詰めたリューは手に持つ自分の身長よりも長い長刀で一撃を放ったのだ。

 幸いその一撃はバラライカの左腕をかすめる程度で済んだ。しかしかすめただけにも関わらずその傷口は思ったよりも深くバラライカの左腕からは一筋の血が流れていた。


(……くぅ……)


 動かなくなった左腕を気にしている余裕はない。傷を癒す魔法を唱えている暇も無い。負傷した傷すら見ることはせずバラライカはリューに全神経を集中させる。


(……まだ、迷いが残っている……)


 いつ仕掛けてくるか分からないリューに集中しながらバラライカはこれまでの戦いを思い出していた。そこで気付いたのは自分に迷いが残っていたということであった。

 最初から全力で戦っていれば例え相手が『剣聖』に等しい実力を持つリューだったとしても殺せない相手では無い。ならばなぜバラライカはそうしなかったのか。

 ヒラキを王として建国したこの国を守る為に、自分が愛した男を殺すと決意したバラライカはなぜ全力を出さなかったのか、それは未だ彼女の心の中に迷いがあったからだ。リューを殺すと決意したのにも関わらず、バラライカは潜在意識の深い所でリューを殺すのではなく倒す事を望んでいた。その思考と心の僅かなズレがバラライカの攻撃の手を無意識に緩ませてしまっていたのだ。

 自身の分析が済みバラライカがそれを自覚した時には遅かった。リューは驚異的な速度で、戦いの中で学びその強さを高めてしまった。あと数回交戦すればリューは自分の手に負えなくなる。それが互いの間合いを見合いう僅かな時間でバラライカが出した結論であった。


(一体彼の中で何が起ったのだ……)


 リューの急成長はバラライカの目からしても異常であった。まるで本人の意思とは関係ない力が働いているようにバラライカには見えた。

 最初リュー自身にも迷いがあったのは確かだ。それはバラライカと同様の迷いであったはずだ。愛する者を手にかける、そこに迷いが生じない訳が無く、確実にリューの太刀筋は鈍っていた。

 だが数度の交戦の後、明らかにリューの様子が変わった。体に漂っていた禍々しい気配は強さを増し、リューを呑み込んで行くようであった。そこからリューの太刀筋は変わった。

 動きからは迷いが消えた。まるでバラライカに対しての想いを捨てたかのようにその動きは鋭く激しくなっていたった。

 リュー自身は静かに長剣を構えている。だがそこから溢れだす禍々しい気配は先程よりも明らかに騒がしくなっている。内に秘めている何かがリュー自身の意思とは関係無く増幅され暴れているようにさえみえる。対峙するバラライカはそのリューの姿に恐怖した。


(ハッ! 恐怖……しているのか私は……)


 バラライカは対峙するリューに恐怖を抱いている事に気付いた。

 これまで幾多の戦場を駆け巡ってきたバラライカ。しかしどの戦場でも恐怖を感じたことは殆ど無かった。あるとすれば、敵として戦場で対峙したヒラキぐらいなものであった。

 だがリューから受ける恐怖はヒラキから味わった恐怖とも違っていた。それは圧倒的強者に心臓を掴まれているような、絶対に抗えない存在に本能が危険を叫んでいるとでも言えばいいのか。バラライカがリューから感じた恐怖はおよそ人が人に与える恐怖を遥かに超えていた。


(死にた……あぁ! 駄目、このままでは恐怖に呑まれる)


 その恐怖を理解した途端、死を望んでいる自分がいることに気付くバラライカ。少しでも気を緩めれば死にたいという衝動が上り詰めてくる。死の衝動を駆り立ててくる恐怖から自分の心を守ることに徹することしか出来なくなるバラライカ。

 そこから形勢が完全に逆転した。攻撃する事を放棄し、ただ守り耐えることしか出来なくなったバラライカに容赦なく長刀を振るうリュー。

 守り耐えることしか出来ないバラライカの体にはリューによる攻撃で傷が次々と増えていく。そして傷つき疲弊するのは体だけでは無い。リューが放つ恐怖を受けバラライカの心も瞬く間に疲弊していた。


(死に……死に……死にた……死にた……)


 気付けば頭の中で死にたいと連呼している自分の存在に気付くバラライカ。その心には限界が近づいていた。


「よくここまで耐えたな……」


 舌鋒てきな状況、バラライカの心の中で死への衝動が最高潮になろうとした瞬間。希望を抱かせる声が一筋の光となってバラライカの心を照らした。


「……ヒラキ……」


 死へと誘われていたバラライカは、両目から涙を流しながら希望の象徴である者の名を口にするとその視線を背後に向けた。そこにはこれまで信じて一緒に歩いて来たヒラキの姿があった。


「……」


 何かを感じ取ったのか姿を現したヒラキに警戒するリュー。そんなリューを横目に、屋上の時とはうってかわってしっかりとした足取りでバラライカの下へ近づいていくヒラキ。


「大丈夫だ、後は任せろ」


 リューの攻撃によって全身に傷を負い血だらけになって立っているバラライカを安心させるようにそう言って肩に手を置くヒラキ。


「……ヒラキ……」


 ヒラキの手が肩に置かれた事で安堵したのか、これまで蝕んでいた死への衝動が消えたバラライカは力が抜けるように膝から崩れ落ちその場に座り込んだ。


「……よう、リュー隊長」


 安心しその場に座り込んだバラライカから視線を外し、まるで友人に声をかけるようにして長刀を構えるリューに視線を向けるヒラキ。


「それが……『魔王の種子』の力ってやつか……」


 叫んでいるような暴れているようなリューの全身に漂う禍々しい気配をその目で捉えたヒラキはその正体を口にする。


「魔王……の種子……?」


 心身共に疲弊し薄れゆく意識の中、辛うじてヒラキの言葉を聞き取るバラライカ。


「……まあよくも仲間をここまでボロボロにしてくれたな……」


 自分の背後でバラライカが倒れたのを確認したヒラキは、腰に携えていた剣を鞘から引き抜いた。


「残念ながら俺に残された時間は無い……一撃で決めるぞ」


 リューに向けてそう口にしたヒラキのその姿は力強く、既に力を使い果たし満身創痍である姿のようには思えない。

 だが何故であろうか、遠のく意識の中バラライカの目にはヒラキの体から命が花びらのように散っていくように見えていた。

 



ガイアスの世界


 『魔王の種子』の出現方法。


ガイアスを混沌の渦に導くとされる『魔王の種子』とは、魔王を誕生させる因子、素質を持つ者の事を言う。潜在的に様々な人種、種族、魔物がこれを内包しているとされているが、魔王の種子が芽吹く事、花を咲かせることは稀でその原因や要因も分かっておらず魔王としての覚醒する存在は数少ない。

 だがある者はこの『魔王の因子』を人為的に造りだし埋め込む技術を持っているという。


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