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夕闇で章8 休憩 『闇』とは? 『絶対悪』とはなんぞや?

ガイアスの世界


 魔族と『闇』の関係


 魔族にとって『闇』は人類で言う『聖』の存在にあたる。しかし立ち位置は似ているがその役目は大きく違う。

 魔族一人一人が内包している『闇』には『聖』とは違いはっきりとした力が存在している。内包している『闇』が高まれば高まる程、その魔族の力も高まって行くのである。





 夕闇で章8 休憩 『闇』とは? 『絶対悪』とはなんぞや?




― 現在 ガウルド城上層 客間 ―




 昨日のことのように思い出すことが出来る王都ガウルドへと向かう愛しき人の背中。


「……少し、休憩にしましょう」


当時の光景を思い出し言葉を詰まらせたたレーニはそう言うと、昔語りを中断した。


「……あ、あの大丈夫ですか? ヒラ……レーニさん?」


 何か思いつめたような様子のレーニの姿を心配して声をかけるブリザラ。


「……」


真剣な眼差しで自分を心配してくれるブリザラにヒラキと似た面影を重ねたレーニ。


「ありがとう」


種族など関係なく接してくれるブリザラのその底無しの優しさに幾分か救われた気持ちになったレーニは感謝の言葉を口にした。


「あの、一つ聞きたいことがあのですがいいですか?」


「ふふふ……構いませんよ」


自分の事を気遣ってか申し訳なさそうに質問してくる負ブリザラに対してレーニは快く頷いた。


「ありがとうございます……それでレーニさんのお話に出てきた『闇』についてなのですが……その『闇』とは一体何なんですか?」


頷くレーニ対して頭を下げたブリザラは早速自分が気になっていた事を質問した。


「え?」


既に『闇』が何であるかについてブリザラは知っているものだと追っていたレーニは驚いた表情を浮かべた。


「……アキさんが戦っている時に『闇』の力を使っているんですが……どうみても、使っていい力には見えなくて……『闇』の本質が分かれば……その……アキさんを手助けできるんじゃないかと……レーニさんなら何か詳しい事を知っているんじゃないかなって……」


少し離れた場所で壁に背をあずけているアキには聞こえないようにコソコソとレーニの耳元でなぜ『闇」について知りたいのか説明するブリザラ。


「……あーなるほど」


コソコソと説明する頬を僅かに赤らめたブリザラの表情を見て色々と察するレーニ。


「……えーと、それについては伝説武具ジョブシリーズ……キング殿から説明を受けいる……のでは?」


異性に対する淡い想いは今は別として、ブリザラが『闇』について知らないという状況がどうにも納得できないレーニは、キングから説明を受けていないのかと尋ねた。


「……?」


レーニの問にキョトンとした顔をするブリザラ。


「……なるほど……」


ブリザラのキョトンとした顔を見て状況を把握したレーニは、ブリザラと少し離れた場所で壁に背をあずけているアキに視線を向けた。


「アキさんに質問なのですが……あなたは自分が扱っている『闇』の力についてどれほど理解していますか?」


もし自分の推測が当てっているのならば、昔語りよりも先に話さなければならないことがあると思ったレーニは、『闇』についてアキがどの程度理解しているのか尋ねた。


「……『闇』……あれだろ、黒竜ダークドラゴンの力だろう?」


「……あ、ありがとうございます」


アキの答えに絶句しかけるレーニ。


「なるほど……」


あの様子から見て二人は『闇』についてそれほど知識がない事を理解したレーニは、その視線をブリザラとアキに向けた。


「……伝説武具ジョブシリーズの御二方は、まだ彼女達に『闇』やそれに関する事の説明をしていなかったのですか?」


ブリザラとアキに向けられていたように見えたレーニの視線は、二人を捉えていた訳では無く、彼女達が所有する伝説武具ジョブシリーズに向けられたものであり、その言葉もまた伝説武具ジョブシリーズであるキングとクイーンに向けられた。


「……」「……」


レーニの言葉を発端にして、キングとクイーンが自分たちに何か隠していることがあると理解したブリザラとアキ。その目はとても冷たいものであった。


『……ああああ、申し訳ない王よ……実は伝えておかなければならないことがあった……』


ブリザラの冷たい視線に耐えられなくなったキングは白状するように対し伝えていないことがあるとブリザラに詫びた。


『マスター申し訳ありません、私も伝えなければならないことがありました』


キングに続くようにして冷たい視線を向けるアキに対してクイーンも伝えていないことがあると白状した。


『だが信じて欲しい、決して隠しておこうと思った訳では無い、色々ゴタゴタが合って伝え損ねていただけなのだ』


必至で弁明をはかるキング。


『うんうん』


キングの弁明に同意するように高速で頷くクイーン。


「……そうだよね、色々と大変だったものね」


キングの弁明を受け入れるブリザラ。


「はぁ……」


『マスター!』


深くため息はついたものの別段起っている雰囲気の無いアキに安堵の声を上げるクイーン。


「まさか、ここまで来て『闇』について説明していないとは……その抜けた感じ、本当にあなた方は創造主に似ていますね」


伝説武具ジョブシリーズを作りだした創造主と顔見知りであるレーニは呆れた表情を浮かべた。


「さて、それでは伝説武具ジョブシリーズの御二方に代わり私が『闇』について説明しましょう」


気を取り直したレーニは先程までの気の抜けたものでは無く真剣な表情で『闇』についての説明を始めた。


「……まず『闇』は何であるかについてですが……『闇』とは自我や知性……所謂、感情を持った生物が発する怒りや憎しみといった負の感情を糧にして発生する力のことです……我々魔族は感情を持つ生物、特に人類から発せられるその負の感情を吸収することで命を繋ぎ、力を高めることができます」


「……ッ!」「……なッ!」


これまで自分達が抱くことがあった怒りや憎しみと言った感情が魔族の力の糧になっていたという事実に驚きを隠しきれないブリザラ。その事実は気配を殺し客間の扉前に立っていたピーランが声を漏らす程に衝撃的であった。


「……それはおかしいんじゃないか?」


だがアキだけは驚いていなかった。


「……もしあんたの言うことが正しいのなら、なぜ人類は魔族との戦に勝利した?」


そればかりかレーニの説明に対して反論するアキ。

 確かにアキが言うように魔族が負の感情を力に変換しているのであれば、数百年続いた人類と魔族との戦いの結果は変わっていたはずだ。そもそも話、その戦すら起っていなかった可能性も考えられる。


「確かに私が説明した通りで行くならば、今このガイアスを支配しているのは魔族のはず……でもそうはならなかった……それは何故か……そこには魔族と人類の力の均衡バランスを保つシステムが存在していたからです」


「……?」


興味を持ったのか顔をあげたアキはレーニに視線を向けた。


「……際限なく人類から湧き出る負の感情を過度に魔族に摂取させないようにするする為……ガイアスという世界自身が作りだしたシステム……それが『絶対悪』です」


「絶対悪?」


『絶対悪』という言葉を聞いたことが無いブリザラは首を傾げた。


「魔族と人類は『絶対悪』というシステムの存在のお蔭で、ある時までその力の均衡バランスを保っていました」


「……ある時までは?」


レーニの言葉の一部に引っかかるアキ。


「……質問ですブリザラ王……グラスに水を注ぎ続けるとどうなりますか?」


突然、何の脈略も無い質問をブリザラに尋ねるレーニ。


「え……それは勿論、グラスから水が溢れます」


子供でも分かるようなレーニの問にブリザラはその意図が分からず困惑した。


「そうです、グラスに注ぎ続けた水はいずれ溢れる……これと同じことが『絶対悪』にも起きたのです……ある時期を境に爆発的にその人口を増やした人類……当然負の感情は人類の数に比例して増えていきます……その量に『絶対悪』は耐えられなくなった……グラスから溢れだした水のように『絶対悪』から負の感情が溢れだしてしまったのです……そして溢れだした負の感情は、その性質を変質させ魔族を凶暴化させ力を高めた……これが魔族と人類との長い戦の始まりです」


「え!」


人類と魔族の戦の始まりについては不明な点が多く、当然歴史書にも詳しい詳細は書かれていない。その長く続くことになる戦の発端となったのが人類の人口増加にあったと知ったブリザラは驚きのあまり声を上げた。


「……幸か不幸か、数百年と戦いが続いたことで人類の命が多く失われました、それによって負の感情の量は『絶対悪』が許容できる量にまで減少、それにより『絶対悪』の機能は正常に戻り、変質した負の感情が魔族へと供給されることは無くなった……これによって力が低下した魔族は、人類の手によって作りだされた対魔族兵器によって敗北したのです」


「……」「……」


ガイアスに現存する歴史書には一切書かれていない魔族と人類の戦いの真実と結末を知り絶句するブリザラとピーラン。


「……ですが……歴史は繰り返します……」


絶句するブリザラとピーラン。そして沈黙するアキを前にレーニは不穏な言葉を口にするのであった。


ガイアスの世界


 『絶対悪』の正体


 『絶対悪』とは人類と魔族の力の均衡を保つ為にガイアスという世界が生み出したシステムであった。


人類と魔族の均衡を保つ為にガイアスという世界によって生み出された『絶対悪』自体には善意も悪意も無く、そこから溢れだし変質した負の感情、『絶対悪』の残滓が諸悪の根源ともいえる。


 人類と魔族との戦にも関与していた変質した負の感情、『絶対悪』の残滓。どうやらこれまでガイアスで起った大きな戦や事件などに『絶対悪』の残滓は深く関わっているようだ。

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