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真面目で章 2 (ブリザラ編) ぶつかる意地(プライド)

ガイアスの世界


 氷の宮殿前 城門警備


氷の宮殿前に設置された城門は大きな作りになって降り巨人でも入れる程大きい。そんな城門を警備するのは新米と呼ばれる盾士として入隊したばかりの新人。

 城門の門番は後に盾士が任務としてこなす事になるサイデリーを囲う大きな壁の東西南北にある門の門番の訓練の意味合いが強い。

 サイデリーの外にある壁門は内部にある城門よりも気温が低く厳しい環境にある為にまず新米盾士はこの城門で訓練するのが常識となっている。


 


 真面目で章 2 (ブリザラ編) ぶつかる意地プライド



 剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス



 敵の侵攻を絶対に許さないと言われる難攻不落の鉄壁国、サイデリー王国。しかしどうやら逃走する者を追う能力はイマイチのようで、毎度隙をついて逃走する自国の王、ブリザラ=デイルに宮殿の者達は頭を悩ませていた。

 宮殿の者達の今一番の悩みが自分の行動である事など知らないブリザラは、今日も難なく宮殿の者達の目を盗み逃亡を成功させ最近のお気に入りの場所である宮殿の最上階にあるテラスから何かを見つめていた。

 氷の宮殿最上階から広がる光景、雪化粧をした美しい町並はこの場所からしか眺められない美しいものであった。しかしブリザラの視線は雪化粧をした町並に向くことは無く氷の宮殿の足元、城門へと向けられていた。


『王よ、最近毎日のようにこの場所にきて城門に目を向けているようだが、何かあるのか?』


 そんなブリザラに対して疑問を投げかけたのは、ここ最近ブリザラが肌身離さず背負っている大きな盾であった。ブリザラの背を覆い隠す程の盾、普通の盾よりも一回り大きい盾士が持つ盾よりも更に大きいその大盾の名は、意思を持ち伝説と呼ばれる盾キングであった。


「……」


『……はぁ……今日も語らず……か……』


 しかし自分の所有者であるブリザラからは何の返答も無くため息を吐くキング。

 ここ最近、毎日のようにこのテラスから何かを見つめているブリザラ。キングはそんなブリザラが何を考えこの場所にいるのか分からなかったが、きっととんでもない事を考えているのだろうと、そのとんでも無い事を口にするまで待つ事にした。


「よし決めた!」


 ジッと何かを見つめていたブリザラは突然そう言いだすと、自分を覆い隠す程大きな大盾キングを背負い直し駆け出しテラスを後にする。


『お、王よ決めたとは何だ? 何を決めたのだ?』


 駆けだしテラスを後にしたブリザラに声をかけるキング。ブリザラの突拍子も無い行動を今覚悟したばかりであったキングは駆け出しテラスを後にするブリザラの背から戸惑いの声を上げた。


「私、盾士になる!」


 最上階から下の階に続く階段を駆け下りながらそう叫ぶブリザラ。


『……はぁ? ……はぁぁぁぁぁいィ!』


 普段冷静沈着で落ち着いているはずのキングとは思えない声が漏れる。とんでもない事を考えているとは思っていたがブリザラの口から発せられた言葉はキングが想定していた、とんでも無い事を遥かに超えるものであった。


「うわっ! お、王?」


「ごめんなさい!」


 突然角から飛び出して来たブリザラとぶつかりそうになり慌てて避ける年齢の若い大臣。廊下を走り去っていく大きな盾を背負ったブリザラを見つめ目を丸くした年齢の若い大臣は呆気に囚われていた。


「あぁぁぁ! お、王がいたぞ!」


 突然の事に一瞬思考が停止していた大臣は、我に戻ると近くにいた宮殿の者達にブリザラがいた事を叫ぶとそのままブリザラを追う為に走り出した。


『……王、これは……諦めるべきではないか』


 気付けば宮殿の大臣やら盾士やらが数十名ブリザラの後を追ってきている。その光景に流石に諦めるべきではとブリザラに立ち止まる事を勧めるキング。


「大丈夫、私鬼ごっことかくれんぼ得意だから」


 しかしブリザラはなんとも子供のような返答をキングにすると、廊下の角を曲がった。


「よいしょ」


 角を曲がった所に不自然に置かれた大きな壺を手際よくずらすとその大きな壺の裏に空いていた穴を抜けていく。大臣達は不自然に置かれた壺を気にする暇も無くブリザラを追いかける為その場を通り過ぎて行った。


『むむむ、この状況ではあまり褒められたものでは無いが、見事だ王』


 事情はどうあれ自身の危機管理がしっかり出来ている事に感心するキング。


『さて、宮殿の外にはでたが……』


 ブリザラの背中越しから周囲を見渡すキング。穴を抜けた先は城門の近くであった。


『詳しく聞かせてもらおうか、なぜ王は盾士になりたいのだ』


 一国の王であるブリザラが盾士になると予想の斜め上なことを言いだした訳を聞こうとするキング。しかしブリザラはキングの話など聞かずキョロキョロと城門付近を見つめ始めた。


『そもそも王よ自分の立場というものが分かっているのか? 王はこの国の……』


 説教するように話すキングの声を遮るようにブリザラは耳を塞ぐ。


『……王よ……他の者から幾度となく同じ事を言われてきたのだろう、だがそれは王が王であるからだけでは無いのだ、皆、王の事を心配しているからこそ口を酸っぱくして言っているのだぞ』


「……わかってる……わかってるよ」


 ゆっくりと音を遮っていた手を下ろすブリザラ。しかしその表情は納得していないといったものであった。


『ふぅ……それでなんでまた盾士なんかになりたいと思ったのだ? ……難攻不落なこの国と防衛に対しては右に出る者はいないという盾士がいるにも関わらず、なぜ王が盾士を目指す必要がある、私は王が盾士になる必要など無いと思うが……』


 不満げなブリザラの表情にこのままでは何も答えてはくれないと思ったキングは、話を変えることにした。

 キングの言う通り現状ブリザラが盾士を目指す理由は無い。難攻不落と言われるほどに鉄壁なサイデリー、そして防御を得意とする盾士という戦闘職がいる状況、そしてそもそも現在ほぼ平和である状況に置いて王であるブリザラが盾士という戦闘職を学ぶ必要は全く無かったからだ。


「この前ね、新しい盾士の人達がやってきたの」


『ああ、国専属職試験のことか』


 それは数週間前におこなわれた盾士になる為の試験の話であった。ブリザラは王として盾士として合格した者に挨拶をするという仕事があり試験後新米盾士達の前に顔を出していた。


「あの時私、新しく入った盾士の人達に自分の身は自分で守るから……だから無茶はしないでくださいって言ったの」


『ああ、あの時の王の言葉は私もしっかりと覚えている、試験管であった上位盾士は複雑な表情をしていた』


 本来ならその場でブリザラが新米盾士達に対しておくらなければならない言葉は士気を高める為の激励、国に尽くす者達の士気を高めるような言葉であった。しかしあろうことかブリザラが新米盾士達におくった言葉は、激励などでは無く自分の身は自分で守るという宣言、盾士達の存在理由を否定するような言葉であった。

 決してブリザラが盾士という存在を否定している訳では無い事は、その場にいた上位盾士もブリザラに背負われ一部始終を見ていたキングも理解はしていた。だが王という立場としては決して口にしてはならない言葉であった事も事実である。

 だがブリザラが最後に口にした言葉が「無茶はしないで」という言葉が響いたのか、ブリザラが話終えるとブリザラを称える新米盾士達の歓声が上がった。

 どうやらブリザラの優しさがその言葉から滲みでて新米盾士たちの心を掴んだようであった。形は違うが結果としてブリザラは新米盾士達の士気を上げる事に成功したのであった。


『全く、新米盾士達の士気が上がったからいいものの、王としてああいう言い方は問題があるぞ』


 その時の事を思い出したキングは再び説教の体勢に入ろうとする。すかさず耳を塞ぐブリザラ。


『むむむ……それで、その時の事の何処に王が盾士になるという話に繋がってくる?』


 耳を塞いだブリザラを見て説教を自制したキングは話を戻した。


「えーと、新米盾士さん達に話し事って私とキングにも当てはまるじゃないかなって思ったの」


『……私と王にも?』


 ブリザラの言葉に静かに考え込むキング。


「うん、キングは私を守ってくれる盾だけど、私もそんなキングを守りたい、だから少しでも盾の扱いがうまくなりたいと思ったの……そうすれば……」


 そこで口を閉ざすブリザラ。しかしその表情には何か強い想いが伺える。キングはブリザラ感じる強い想いを感じつつも今はそこに触れることはしない。


「だからこの前、新しい盾士さん達の教官をしているバイザーさんに頼みにいったの……だけど教えられないって追い返されちゃったんだ」


『当然だな、バイザー上位盾士の判断は正しい』


 王のたしなみとして盾士の技術を学ぶならばまだしも、ブリザラのそれはたしなみ程度では済まないもので、教官であるバイザーもそれを察したからこそ盾士の技術を教えるのを拒んだに違いと思うキング。


「……」


 キングの言葉に俯くブリザラ。


『……それに王よ、盾士達にも意地プライドというものがある。王を守る事か彼らの仕事なのだ、そのことを分かってやって欲しい、そして私も彼らと同じ気持ちだ、盾として所有者である王を守る事こそが本望なのだ』


 ブリザラの考えはとても立派であると思うキング。しかしブリザラが王である以上、盾士達もキングも譲れない意地プライドというものがある。


「……私は大切な人達をこの手で守りたい、この国を守りたい! キングや盾士の人達に意地プライドがあるっていうなら私にも王としての意地プライドがある、これは譲れないよ!」


『……』


 キングはブリザラが途中で閉ざした言葉の続きを知る。ブリザラは守られるだけでは無く己の手でこの国を守りたいのだと理解したキング。


『確かに……国の頂点に立つ者は、国の人々を守らなければならないと私も思う、だがそれは決して皆の前に出て己の身を盾にして守るという意味では無い、この国は王を失えば間違いなく滅びる!』


 また説教モードに入ろうとするキングにブリザラは耳を塞ごうとする。


『逃げるな王! 私の話を聞け!』


 厳しいキングの言葉に耳を塞ぐことが出来ず硬直するブリザラ。


『王が居なくとも機能する国はある、大臣達が優秀な国であれば王などいなくても十分に機能することはできるだろう、しかしそれはサイデリーには当てはまらない、人々の心を支えてきた国の象徴である氷の宮殿のように、サイデリーに置いて王とは国の人々の心を支え絶対に折れてはいけない支柱なのだ、王と国の人々の間にある強い絆によって発展してきたと言っていいサイデリーに置いて王を失うという事は絶対にあってはならないこと、例えそれが幼き王であったとしてもだ』


 キングはブリザラがこの国においてどんな存在であるのか、熱を持った口調で説明する。


「そ、そんなこと……わかってるよ」


『分かっていない! 分かっているのならば軽々しく盾士になりたいなど言うはずがない!』


 ブリザラは自分の存在がどんな存在であるかを理解していないと真っ向から否定するキング。


「……それでも、私は皆をこの国を自分の手で守りたい!」


 真っ向からキングに否定されてもそれでもブリザラの心は折れない。


「国の皆が私を心の支えにしてくれているように、私にとっても国の皆が心の支えなんだもん! だからそんな皆が暮らすこの国を私は自分の手で守りたいの!」


 まるで駄々をこねる子供のようにブリザラは己の感情をキングにぶつける。


『いい加減にしろ!』


「いい加減じゃないもん! いい加減なのはキングじゃない! あれだけ私の事を守るって言って本当は私を守る自信がないんじゃない、だから私を盾士にしたくないんでしょ!」


『なっ! ……』


 ブリザラの言い分は明らかな屁理屈と言っていい。しかしキングはブリザラのその屁理屈に言葉を詰まらせた。


『……』


「何で黙る? ……伝説の盾なんでしょ、だったら私の我儘を受け入れるぐらいの度量をみせなさい!」


 そこに幼い少女の面影は無い。そこにいたのは一人の人間として決断を強いる王の姿であった。

 伝説の盾、それは所有者に向けられたいかなる攻撃も防ぎ切る鉄壁の盾。それがガイアスで噂される伝説の盾の認識である。それは誇張などでは無く、キングは敵からのあらゆる攻撃から所有者を守る術と自信を持っている。だからこそブリザラの言葉に己の意地プライドが反応する。それがブリザラの挑発だと分かっていても。


『分かった……王が盾士を目指す事を許そう……』


「本当! ありがとう! それじゃ今から城門に向かうよ!」


 キングの言葉に今までが嘘のようにいつもの様子に戻ったブリザラの姿があった。


≪私はまだ幼いと王を子供扱いしていたのかもしれない……》


 城門へ走り出したブリザラをみながらキングは心の中で反省する。


『所で王よ、結局の所、なぜ城門に向かうのだ? あそこには新米盾士しかいないぞ?』


 盾士になる事を認め納得したものの、なぜブリザラが城門に向かっているのか理解できないキング。


「それはね、新しく盾士になった人なら盾士の技術を教えてくれるんじゃないかなと思って」


 嬉しそうにそう言いながらキングの質問に答えるブリザラ。


「うむ、なるほど新米盾士に学ぶか……ん? 待て王よ! 新米盾士が盾士の技術を教えられるはずが無かろう!」


「なんで?」


『な、何でって……まだ盾士になったばかりだから彼らは新米盾士と呼ばれるんだ、そんな彼らが人に盾士の技術を教えられるはずがなかろう』


 キングの説明は正論である。未熟な者が技術を教えられるはずがない。


「大丈夫だよ、その日新しい盾士さんが教えてもらった事を私に教えてくれればいいんだもん」


『なっ!』


 何を言っているんだと理解に苦しむキングは再び言葉を詰まらせた。そしてキングは理解する。ブリザラという人間は理論や裏打ちされた情報で行動するのではなく感覚で行動する者であるのだと。


 キングが言葉を詰まらせているうちにブリザラは城門の前に辿り付いていた。城門の前にいたのは、うだつの上がらない顔をした新米の盾士。


「あの人、ハルデリアさんなら、まだこの国にきたばかりで盾士に対して固定概念が無いはずだからきっと私のお願いを聞いてくれると思う」


『なっ……?』


 ブリザラの言葉に驚きの声をあげるキング。


『ちょ、ちょっと待つんだ王……あの者は王の知り合いなのか?』


「ううん、盾士の試験の時に見かけただけだよ」


 キングの言葉に首を振りながらそう答えるブリザラ。


『ならばなぜあの者の名やこの国の者では無い事をしっている?』


 それはキングが抱いた疑問であった。


「え、だって私合格した人達の名前全部知っているよ?」 


 その疑問に対してブリザラは伝説の盾ですら驚愕する答えを口にした。

 今回の国専属試験に合格した者は百人。その百人全ての名前と顔を覚えているというのだ。普通百人の名前と顔を覚えるのにはそれなりの時間がかかるはずである。そしてやろうと思わなければ絶対に覚えられない数である。しかしブリザラと常に行動を共にしていたキングは、自分の記憶が正しければブリザラが新米盾士の名前と顔を覚える為に何かを見たりしている素振りは一切無かったはずであった。


『王よ、どこで百人もの新米盾士の名前と顔を覚えたのだ?』


「え? 見ればすぐに覚えるよ……この国の人達はもう皆覚えてるし」


 ニコリとそう言いながら微笑むブリザラ。


『……なっ……』


 もう今日だけで何度目であろうか、キングはまたしても言葉を詰まらせた。

 だがそれもそのはずである。ブリザラはサイデリーの人々全ての名前と顔を覚えているというのだ。例え名と顔を記した資料があったとしても普通の者ならば、万を軽く超える国の人々の名前と顔を覚えられるはずがない。しかしブリザラはそれを覚えているという。

 ブリザラが持つ特殊な力を知ったキングは、ここにきて自分の手で国を守りたいと思うブリザラの気持ちが少し理解できた。

 名前や顔を知っていればどんな人間でも少しは気になったり親近感を抱いたりする。人一倍優しいブリザラならば名前や顔を知る国の人々一人一人を守りたいと思ってもおかしくは無い。盾士になることを真っ向から否定したのにも関わらず全く心が折れなかったブリザラの盾士になりたいという動機はこころからきているのかと納得するキングであった。


 雪が一面に敷き詰められ大きな城門にも沢山の雪が積もっており、それに視線を向けるブリザラの吐く息は、外気に触れ白く吐き出され宙に消えていく。ブリザラは呼吸を整えると、目的の新米盾士が警備している城門前にゆっくりと歩みだした。

 城門前を警備していた新米盾士、ハルデリアは、王が後にいる事に気づく事も無く寒さに耐えながら城門の前に立っている。本人的には真面目なのだろうが、ブリザラが後ろにいる事に気付かない時点で、警備としては警戒心が低いことが明らかであった。

 ハルデリアの背後に立ったブリザラは大きく深呼吸すると、ゆっくりと口を開いた。


「ご苦労様です」


「……だ、誰だ!」


 ブリザラの声に明らかに不意を突かれた新米盾士は慌てるようにして盾を構えた。


「……ん? ……お、王?」


 自分の前に突然現れたサイデリーの王ブリザラに気が動転したハルデリアは、盾を構えたまま姿勢を正して王に顔を向ける。

 一見美しい少女にしか見えないブリザラの姿を前に新米盾士は緊張し口をつぐむ。ブリザラは盾を構えたまま姿勢を正したハルデリアをじっと見つめ続けていた。


「し、失礼ですが王、質問する事をお許し願いたいのですが?」


 じっと見つめてくるブリザラに対して意を決しハルデリアは質問の許しを乞う。


「はい、どうぞ」


 するとブリザラは気さくな口調でハルデリアの質問を許した。


「ここ数日、私の事を見ていたのは……その……王ですか?」 


 見た目はまだあどけない表情を持つブリザラであるが、その背にはサイデリーという国が重く圧し掛かっている。ハルデリアはそんな一国の王であるブリザラに素直に質問をぶつけた。


「あ、ばれていましたか、はいその通りです」


 意を決したハルデリアの質問は普通の少女のように可愛らしく微笑むブリザラの王とは思えない軽々しい口調によって解決することになった。


「あ、あの……なぜそのような事を?」


 全く王らしくないブリザラの様子にハルデリアは困惑しながら重ねて質問する。


「ああ、その……今日はあなたにお願いがあってきました」


「はぁ?」


 全く想像もしていなかった返答に思わず口から変な声が出るハルデリア。


「し、失礼しました……」


 自分の口から変な声が出てしまったことに気付き直ぐに頭を下げるハルデリア。


「ああ、そんなかしこまらないでください」


 頭を下げたハルデリアに頭を上げるよう促すブリザラ。


「あ、それで……そのまだ入隊して間もない私に……お願いというのは……なんですか?」


 一国の王が新米盾士に願う事が全く想像できないハルデリアは、ブリザラに恐る恐るお願いの内容について聞いた。


「その……私に、私に盾士の稽古をつけてくれませんか?」


「……」


 時が止まったようにさえ感じるよくわからない間が広がる。ハルデリアは目の前の王ブリザラが何を言っているのか理解できずその場で硬直していた。


「ああ、あのすいません、もう一度言ってもらってよろしいですか?」


 ハルデリアはブリザラの言葉が理解できなかった訳では無い。そもそもハルデリアが今まで住んでいた島国もサイデリーも使っている言葉は同じでありしっかりとブリザラの言葉は聞き取れている。しかしそれでも理解できないのだ。サイデリーの王ブリザラが言っている事が。


「はい、私に盾士の稽古をつけてください!」


 稽古。それはサイデリーの王が盾士の技術を学びたいという事なのかと混乱した頭で考えるハルデリア。


「その……稽古つけてくれますか?」


 重ねてそう告げながら首を傾げハルデリアを見つめるブリザラ。


「……」


 念を押したブリザラの問にハルデリアは答えない。いや答えられなかった。ハルデリアの頭は今、完全に容量を超えており思考は停止してしまっていた。

 その時、全く反応しなくなった新米盾士の頭上で門番の交代を告げる鐘の音が空しく響き渡った。


「はっ! ……交代の時間だ、すみません王、私はこれから交代なのでその話は……」


「頼みます、ハルデリアさん! 私に盾士の稽古をつけてください」


 一国の王であるブリザラが懇願するようにハルデリア=イルバートに詰め寄ってくる。自分の名など覚えられていないと思っていたハルデリアはブリザラに自分の名前を呼ばれ混乱する。なにより美しい美少女が詰め寄って来てドギマギしない男はいない。


「あ、あの……いやだったら他の人に……」


「あなたじゃなきゃ駄目なんです!」


 ブリザラのその言葉は殺し文句であった。美少女にそんな言葉を言われれば余程の者では無い限り男は頷いてしまう。しかしハルデリアはその余程の者に分類する男であった。いやハルデリアが男を好む人種という訳では無い。

 ハルデリアには奇跡とも言える危機管理能力を持っていた。幼いころから何度か命を落としそうになる事があったがその度この危機管理能力のお蔭で助けられてきた。その危機管理能力が囁くのだ。目の前の美少女の願いに頷いてはいけないと。その後に待つ光景を想像するハルデリア。

 もしどこの馬の骨とも分からない新米盾士である自分が一国の王に盾士の訓練をつけている所を先輩盾士や上官にでも見られれば、その先に待つのは身の毛もよだつ程の暗闇であった。そんな危ない橋を渡るなどできるはずも無くハルデリアは思いっきり首を横に振った。

 そんなハルデリアの様子に深いため息を漏らすブリザラ。


「そうですか……ならば仕方ないですね……この方法は使いたくなかったですが……」


 そう言うと一旦言葉を切ったブリザラ。


「えっ?」


 それは新米盾士であるハルデリアでも分かる変化であった。今まで美少女であった目の前のブリザラの雰囲気が一瞬にして変わる。


「……サイデリー王国の王の名において命じます、私に盾士の稽古をつけなさい」


 美少女のそれとはまた違うブリザラの殺し文句がハルデリアにさく裂する。

 王の命令は絶対、これは王を頂点とした国では何事でも翻りはしない絶対の言葉である。それがたとえどんなに理不尽な事であったとしてもかならずその命を受けた者は実行しなければならない。ブリザラは自分の立場を最大限に利用し、究極の我儘で自分の意見を押し通そうとする。

 なぜその究極の我儘を新米盾士の教官であるバイザーに使わなかったのかと一瞬思ったキングではあったが、ブリザラが王という立場を利用したくは無かったのだとすぐに理解した。

 ハルデリアはブリザラの王としての言葉に内心汚いと叫んでいた。しかし再び己が持つ危機管理能力が叫ぶ。王の命令に従えと。ハルデリアは自分の危機管理能力の真の通らなさに心の中で深いため息を吐く。


「王」


 ブリザラの目を見つめながらハルデリアは口を開く。この時のハルデリアには何かが降りていたのだろう、本来の彼ならば自分の危機管理能力に従いブリザラの言葉に即答で返事を返しすぐさまブリザラに盾士としての稽古をつけていたに違いない。だがこの時のハルデリアは違った。


「なんですか?」


 汚いやり方であったと思いつつもこれでどうにか盾士としての稽古をつけてもらえると思っていたブリザラ。


「すみません……残念ですが、私では荷が重過ぎます、他の盾士に相談してみてください」


 深く頭を下げたハルデリアは頭をかき苦笑いしながそう言った。ハルデリアの言葉に驚き茫然とするブリザラ。


「え? 王の命令ですよ……それを断ることがどういうことかわかっていますか?」


 ブリザラはその言葉を口に出しながら自分の心が嫌悪に包まれるのを感じた。自分の立場を利用した相手に否定を許さない言葉、ブリザラ自身言ってはならないと分かっていたが、驚きのあまりに口が滑る。


「あ、はい……下手をすれば死罪ですよね……ですがその命令は聞けません、盾士になってまだ僅かな期間ですが、それでも私にも盾士としての意地プライドがあります……ああ、いや嘘です、かっこつけていました! 正直に言うと人に物事を教えた事が無いので自信がないのです」


 挙動不審な仕草で目を泳がせながらハルデリアは、自分の意思をブリザラに伝えた。


「そ……そうですか……」


 自分の負けだと肩を落としながら踵を返すブリザラは、氷の宮殿に向け歩き出した。


「あれ? ……あ、あの……王よ、それで私への罰は」


 そのままブリザラを行かせればいいものの、正直者であるハルデリアはその場から去ろうとするブリザラに自分の処遇を聞いた。氷の宮殿へ向け歩き出していたブリザラはハルデリアの言葉に足を止めた。


「そうでした……ハルデリアさんの処遇を言い渡すのを忘れていました」


 そういいながらゆっくりとハルデリアへ振り返るブリザラ。


「は、はい!」


 ここにきて急に自分の選択した道は失敗であったと後悔し始めるハルデリアの声が上ずる。


「……ハルデリアさんへの罰は……ありません、これは単なる私の我儘なので、忘れてください……というか、ごめんなさい」


 ハルデリアに向け振り向いたブリザラはそのままそう言うと頭を深々と下げた。キングが言っていた意地プライドなどで凝り固まった考えだけでは国の人々を守ることは出来ないと考えるブリザラの考えは正しい。しかし絶対に譲ってはいけない意地プライドもあるのだと新米盾士であるハルデリアから学んだブリザラは、自分の行ないを恥じていた。


『ふふふ、新米の癖に中々見どころのある盾士だ』


 ハルデリアに頭を下げ謝るブリザラ。その背中に背負われた盾士が持つ盾よりも一回りおおきな大盾、伝説と呼ばれ意思を持つ盾キングはそう言うと、突然形状を変化させ大きな口へと変貌する。


「キ、キングどうしたの?」


「あ、ああああああああああああああああ!」


 今まで自分の背中で芸術品のように美しかったキングの形状が、今ではその面影も無い醜い大きな口に変化した事に驚くブリザラ。しかしそれ以上に驚いているハルデリアであった。王が背負っていた大盾が突然魔物のような形状に変わったのだから驚くのは当たり前である。しかしハルデリアの驚きはそこでは無い。今まで何の変哲も無い物がいきなり形状を変化させるという事にハルデリアは身に覚えがあった。そしてその形状が大きな口に変化した事にも身に覚えがあったハルデリアの目の前は真っ暗になった。


「あ……真っ暗だ」


 二回目ともなるとその状況に慣れるものなのか、自分が置かれた状況を冷静に呟くハルデリア。


『突然の無礼を申し訳ない』


 前回ハルデリアが島国の小さな町の酒場で同じ状況になった時に聞いた声とはまた違う低く響く声が暗闇に響く。


「ああ、どうも」


『新米の盾士よ、やけに冷静だな……』


 全く今の状況に動じていないハルデリアに驚きを隠しきれないキング。その言葉にハルデリアは眉毛の端を下げるように曲げ困った表情になった。


「ああ、その……前にも同じような経験をしたことがあるので、まあ……まさかまた同じ経験をするとは思いませんでしたが」


 暗闇に響く声と世間話をするかのような様子で自分がこの状況に置いて驚かない説明をするハルデリア。


『なるほど……前にも同じ経験を……』


 ハルデリアの言葉に頷くキング。


「えっ?」


 驚きの声をあげるハルデリア。いつの間にかハルデリアの前にはこれぞ王と言える姿をした初老の男が立っていた。


『さすがに奴はこの姿までは見せなかっただろう……私の名はジョブアイズ……いや、キングと言う』


 ハルデリアが奴とは誰だとそしてあなたは誰だと聞く暇も無く自己紹介をするキング。


「……ジョブアイズ……キング……変わった名前ですね……ああすいません」


 思わず出てしまった本音に口を塞ぎながら頭を下げるハルデリア。キングは自分の真の名を聞き取り口にしたハルデリアを見据える。


『ほう、私の真の名を聞きとり口にするか……とりあえず私の事はキングと呼んでくれ』


 そう言ういいながら何処からともなくキングはテーブルと椅子を出現させた。突然現れたテーブルと椅子に驚くハルデリアは、キングに促され恐る恐る席に腰を下ろした。


「あの……それで……何で私はここに?」


 前回もそうであったが、なぜ自分がこの場所に連れてこられたのか全く思い当たらないハルデリアは首を傾げながら目の前の椅子に腰かけたキングに聞いた。


『大丈夫だ、消化などしないから安心しろ』


 冗談交じりにそう言うキング。しかしハルデリアの耳に届くキングの声からはそれが冗談のように聞こえない。


『……私は王が持っていた盾であり、このガイアスでは伝説の盾と呼ばれている』


 冗談が通じていない事を察したキングは、何事も無かったかのように本題への導入を開始する。


「へー伝説の……で、伝説の盾ですかぁぁ!!」


 伝説の盾という言葉に思わず立ち上がるハルデリア。その勢いの所為で座っていた椅子がひっくりかえる。


「ああ、すいません」


 ハルデリアは直ぐにひっくり返った椅子を元に戻すと静かに座る。


 ハルデリアは初めてブリザラと出会った時の事を思いだしていた。出会ったと言っても一方的にハルデリアがブリザラ見つめるだけという形で、ブリザラからしてみれば合格した百人の新米盾士の一人という位置づけだと思っていた。しかし先程、氷の宮殿前にある城門で会った時、ブリザラはハルデリアの名前をしっかりと口にした。まさか自分の名を知っているなんてとハルデリアはブリザラの記憶力に驚愕していた。

 そんな国専属職試験会場でハルデリアがブリザラを目にした第一印象は、「でっかい盾を背負っているな」だった。勿論ブリザラの美しい容姿に目がいかなかったと言えば嘘になるがそれを踏まえてもブリザラが背負った大盾は強い印象に残るものであった。まさかそれが伝説の盾だったとはと今は見る影も無い人の姿をした伝説の盾をマジマジと見つめるハルデリア。

 国専属職試験の少し前からブリザラはその大きな盾を背負うようになったと後々先輩や上官の話を耳にした事を思いだすハルデリア。

 なぜブリザラが自分よりも大きな大盾を背負うようになったのか詳しく知る者はおらず誰もその事について聞く者はいなかったようで、ハルデリアは宮殿内で初めてブリザラが背負った盾が何であるかを知った人物になった。


「あ、あの……まさか秘密を知ってしまったから……私を消す……なんてことは無いですよね……」


 宮殿の誰が知らない事実を知ってしまった事に気付いたハルデリアは自分の身の危険を感じ恐る恐る目の前に座るキングに聞いた。


『ああ、問題ない……余計な事を言わなければ……だがな……』


 再び冗談を織り交ぜるキング。しかしやはりというかキングの低い声の所為で全く冗談には聞こえずハルデリアは引きつった表情を浮かべる。


『数年前に、宮殿の宝物庫で眠っていた私を呼び起こしたのが王だ、それで私は王を所有者として認め今にいたる』


 冗談が全く通じないと話を変えるキング。


「は、はあ……」


 冗談を冗談として受け取っていないハルデリアは話半分でキングの言葉に相槌を打った。


『先程も言ったが私の事は内密で頼む、余計な騒ぎは起こしたくない』


 今度は冗談では無く本気でハルデリアにそう言うキング。


「あ、はい!」


 自分の命がかかっていると誤解したままハルデリアは勿論だと頷く。それは別にしても伝説の盾がサイデリーにあるという事実が他の国や大陸の者達に広まれば、それを知って良からぬ事考える輩が現れてもおかしくは無い。下手をすれば伝説の盾を狙ってサイデリーに攻め込んでくる可能性もある。鉄壁の守りを誇るサイデリー王国に喧嘩を売るだけの価値が伝説の盾にはあると言っていいからだ。それを理解しているハルデリアはキングの言葉に真面目に頷いた。


『さて私の事はこれくらいにして本題に入ろう』


 キングのその言葉にハルデリアは複雑な表情になる。ハルデリアは心の中で(え、これが本題じゃなかったの?)と呟いていた。


『……王が盾士を目指している件についてだ』


 ああなるほどと心の中で頷くハルデリア。


『私の本心は、王が盾士になる必要は無いと思っている……いや思っていたが正直な今の私の本心だ……私は王の言葉にあてられたようでな……どうやら王は私を使ってこの国を、この国に住む人々を守りたいだそうだ』


 キングの言葉に少なからずの迷いは見える。しかし前のような完全否定という雰囲気は見られない。


「それって……」


『ああ、無茶な話だと思うだろう』


 一国の王が国やそこに住む人々を守りたいと思う気持ちは立派だとハルデリアは思う。しかしそれにも限度がある。王一人の力で国一つを守る事は考えても実行することは不可能に近い。例えそう考える王の手元に伝説の盾があったとしても難しい話である。

 しかしハルデリアは自由奔放でおてんばなどと言われている幼き王ブリザラが国をどう思い考えているのかを知り幼くともやはり王なのだと納得するように頷いた。


『本人はそれがどれほど大変なことか分かってはいない……王が言っていることは少女が妄想する絵空事なのかもしれない、たとえ王だとしても一人の人間だ、人一人がやれることなど限りがある……だが私は王の絵空事に付き合ってみたいと思うのだ……ハルデリアよ……君はそんな少女の願いをどう思うかね?』


 突然のキングの質問に困惑するハルデリア。しばらく考えた後、口を開いた。


「私は……」





 城門で突然形状を変化させ大きな口となってハルデリアを飲み込んだキングはそれ以降その形状のまま全く反応しなくなっていた。一切反応しないキングに慌てふためくブリザラ。


「ねぇキング返事してよ、どうしたの?」


 座り込んだブリザラは天を仰ぐようにして返事の無いキングへ叫ぶ。するとその叫びに反応するように突然大きな口へと形状を変化させていたキングがウネウネと動きだした。


「キング? どうしたのキング!」


 今まで全く動くことすら無かったキングの様子が変わりその動きに動揺するブリザラ。ピタリと動きが止まり、大きな口が開くとその中から勢いよくハルデリアが吐き出された。


「ハルデリアさん!」


 苦笑いを浮かべながら出てきたハルデリアに詰め寄るブリザラ。


「王……」


「大丈夫ですか……キングに何かされたんじゃないですか?」


 キングの意味不明な行動にブリザラは混乱しているのかワタワタと慌てふためく。そんなブリザラの姿を見つめながらハルデリアはニコリと微笑んだ。


「大丈夫です、何もされていません、むしろ先程よりも元気になったぐらいです」


 そう言いながら余り鍛え上げられて無い細い腕に力コブを作るハルデリア。


「ど、どういうことですか?」


 全く話について行けないブリザラ。


『王よ、これは男同士の内緒な話だ』


「な、何それ! どういうことですかハルデリアさん!」


 自分だけ除け者にされた気分になったブリザラは怒った表情でハルデリアに詰め寄る。


「あ、いえ、キングさんとお話させてもらっただけですから……」


 困った表情で可も無く不可もない返答をするハルデリアはブリザラから逃げるようにして離れるとそれではそろそろ交代なので失礼しますとブリザラに頭を下げ氷の宮殿へと走っていく。


「キング……ハルデリアさんと何を……どんな話をしたの?」


 宮殿に走っていくハルデリアの後ろ姿を見つめながらブリザラは再度キングを問い詰めた。


『彼に危害は加えていない、王の願いを受けてくれと頼んだだけだ』


 キングはブリザラに事の顛末を話した。


「私は……やっぱりその願いに答えることはできません……」


 キングの話とブリザラの想いを聞きながらもハルデリアは盾士の技術をブリザラに教える事を拒んだ。


『そうか……ならば仕方が無い、本当に申し訳なかった……それでは出口を開ける少し待ってくれ』


 ハルデリアの意思は固いと判断したキングは、そう言うと暗闇に姿を消した。すると暗闇の空間に外の光が差し込んだ。


『そこから出れば外に出られる』


 どこからともなく聞こえるキングの声を聞いてハルデリアは椅子から腰を上げると外の光があるほうに歩いて行く。


「ああ、そうだ……私、盾捌きに自信が無いので明日の朝から朝練をしようと思うんですよ、私物覚えも悪いので口にしながら色々と動き回って稽古しようと思っているんです」


 まるで独り言のようにそう呟いたハルデリアは、姿の無いキングに頭を下げると光の中へと入って行った。


『だ、そうだ、残念だったな王よ』


 少し笑みを含んだ言い方でブリザラにそう言うキング。


「そう……稽古はつけてくれないのね……私明日から早起きする事にする」


 キングの調子に合わせるようにブリザラは明日から早起きする事を決意すると、満面の笑みを浮かべ氷の宮殿に向かい歩き始めた。


『私は起こさないから自分で起きるんだぞ』


「もう私は子供じゃないわ、一人で起きられる」


 寝坊しても知らないと言うキングにブリザラは頬を膨らませ抗議するのであった。

 この日からサイデリー王国の王ブリザラは、非公式ながら盾士の稽古を始めた。一国の王であるブリザラが盾士を目指しその行動の裏に隠された想いがある事を知る者は居ない。ブリザラの想いを知る者はサイデリー王国、新米盾士の一人と伝説の盾だけであった。



ガイアスの世界


 上位盾士


 盾士の訓練をこなし、国に認められたものだけが上位盾士になれる。その数は盾士に比べると数は少ない。盾士が氷の宮殿前の門警備を平然と一時間こなすことができるようになれば、一人前というなら上位盾士になることは、盾士として一流であると認められた印である。

 当然国から貰える給料も上がり、待遇もさらによくなる。話によれば国内で上位盾士が持つ事を許された盾を見せれば大抵の事は融通が利くとも言われたり、言われなかったりしている。

 その分盾士としての責務や仕事も増える。上位盾士は盾士達へ指示を出す立場であり、それぞれ部隊を持っている。城門前で警備をしている新米盾士達はまだ部隊に振り分けられていないが、時期がくればそれぞれ上位盾士の下につくことになる。

上位盾士が使用している盾にも違いがあり、上位盾士の盾には盾士の盾には無い凹凸があり相手の剣の攻撃などをはさみこむことができるようになっている。熟練者になると挟み込んだ剣を折ることも可能で、一瞬にして相手を行動不能にすると言われている。

 


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