表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/512

時を遡るで章(スプリング編)25 かたじけない

 ガイアスの世界


 なぜニダルマスは巨人と化したのか。


 武具商人がニダルマスに渡した黒い球体は一種の願望機であったようで、持つ者の願いを叶える効果があった。しかしその願望が素直に叶えられることは無い。使用者の願望を歪曲し願いとはかけ離れたものにする。

 ニダルマスの場合、老いによって失われた自分の力を再び取り戻したいという願いがあった。その願いを黒い球体が歪曲して叶えた結果、ニダルマスは理性無き巨人になるという形で圧倒的な力を手にすることになった。





 時を遡るで章(スプリング編)25  かたじけない




 青年が自我を持つ伝説の武器と出会う少し前……




 数時間前まで人の命と希望を刈り取る為の場所であった処刑場。誰もが目を逸らし苦痛に耐えるしかなかったその場所は、幻であったように今は希望と幸せに満ちた人々の歓喜の声に包まれていた。

 誰もが支配からの解放に、これからやって来る未来への希望に胸を高鳴らせ、その高鳴りを自由に声に出す。まさに英雄誕生の物語に相応しい結末エピローグの光景がそこには広がっていた。

 しかしこの英雄誕生の物語にはまだ続きがあった。しかもその続きは誰しもが未来と自由を語り幸せに歩き出す幸福結末ハッピーエンドなどでは無く誰もが記憶に留めることが無い虚無という不幸結末バッドエンドと言う形で終わりを迎えることになった。


 そのきっかけを作った人物は、今の今までログ国の人々から熱い視線を送られていた人物だった。



 処刑場の高台に立ち、この国が解放された事を告げたゴッゾに対し、何か言いたいことがあるのか、一人の男がゴッゾに近寄って行く。


「ゴッゾ、本当にありがとう」


ログ国の人々を代表するようにその男はゴッゾに対して感謝の言葉を口にし頭を下げた。


「……」


男の感謝の言葉に対してにこやかに微笑み浮かべるゴッゾ。


「確かにニダルマスを討ったのは大きな剣を担いだあの方だ」


処刑場の何処かに居るだろうガイルズの事を探す男。だが目立つ姿をしているはずなのにガイルズの姿は見当たらない。


「……でも我々はあなたがやってきた事を忘れたつもりは一切ない……あなたも我々の英雄だ」


ガイルズの姿を見つけられなかった男はその視線をゴッゾに戻すと、ゴッゾも自分たちにとって英雄である事を告げる。


「……」


自分も英雄だと男に告げられたゴッゾは何故かこやかに微笑むだけで一切口を開かない。


「……?」


先程から微笑むだけで一切口を開かないゴッゾを少し不思議に思う男。


「……この国を解放してもらっただけでもありがたいのだが、もう一つ我々の我儘を聞いてはくれないか?」


多少ゴッゾのその様子が気になりはしたが、この国が解放されて感激して言葉が出ないのだろうと勝手に解釈した男は、もう一つだけ自分たちの我儘を聞いてくれないかと話を続ける。


「この国の……」


「……それでは皆さん、さようなら」


それは突然だった。今まで微笑みながらも沈黙を続けていたゴッゾが男の言葉を遮るようにして口を開いた。支配から解放され自由を手に入れ未来へ希望を抱くログ国の人々の歓喜の声の中、不気味な程にゴッゾの声はよく通った。しかしその場にいた誰しもがその言葉の意味が理解できず一瞬その場には静寂が訪れる。


「ゴッゾ、突然……ゴフゥ……?」


突然口を開いたゴッゾにその言葉の意味を尋ねようとした男は次の瞬間、吐血した。

 ログ国の人々をニダルマスによる支配から解放しようとしていた男、元侍にして現盗賊のゴッゾ=バルミリオンは何を思ったのか、突然刀を抜くと自分に話しかけてきた男の胸を突き刺した。


「「「「「「……」」」」」」


 ゴッゾはこの国を解放へと導いた英雄だと誰もが思い疑わなかった。そんな男の突然の蛮行、凶行にその場にいた人々は一瞬何が起こったか理解出来なかった。一瞬の静寂が流れた後、人々はその光景を理解すると歓喜の声が響いていたその場は一変、目の前で起った信じられない光景に恐怖と怯え、そして戸惑いの悲鳴をあげた。

 その瞬間、一瞬にして状況が一変し処刑場は再び恐怖の場へと姿を変えた。


「……」


 突き刺した男をまるでゴミを捨てるように切り払ったゴッゾは、状況が把握できず怯える別の男に視線を向けると血に染まった刀を容赦なく振り下ろした。

 一人二人と次々ゴッゾの刃に倒れていく人々。その光景を少し離れていた人々は怯えと恐怖が入り混じった悲鳴を上げながらその場から逃げようとする。だが人々がゴッゾから逃げることは叶わなかった。巨人が姿を現した時と同じように処刑場からチリジリに逃げていく人々の首を黒い何かで次々と刎ねていった。

 それはもはやサムライでもなければ盗賊でも無い。そればかりか人間のもとも思えない動きだった。


「……なッ」


その光景を遠目から見ていたスプリングの胸中には何故というログ国の人々と同じ感情が渦巻いていた。

 悩む自分の背を押し、己の志を語っていたはずの男の姿はそこにはいない。そこにいるのは狂気を孕み他人の命を狩る事に執着した一人の殺人鬼の姿だった。

 英雄から一点、死神を背負った殺人鬼と化したゴッゾは刀を振るうことを止めない。逃げ惑う人々を無慈悲に突き刺し切り裂き、刎ねて放り投げ次々と殺していく。その刃に男も女も老人も子供も区別が無い。


「や、止めろ……やめろ……」


未だ目の前の状況を信じられないスプリングは、目に映る惨劇に対し思考が追い付かず弱々しく呟く事しか出来ず体すらまともに動かすことが出来なかった。


「この場から離れろォォォォォ!」


「ハッ!」


嫌に馬鹿デカい声が耳に届き混乱から一時的に我に返るスプリング。


「うらあああああああ!」


そこには雄叫びを上げながら猪のようにゴッゾの下へと向かうガイルズの姿があった。


「……」


人々の返り血に染まったゴッゾはそんなガイルズに視線を向けると刀を鞘に納めると態勢を低くする


「ハッ! ガイルズ! 迂闊に飛び込むな!」


思わず声が漏れるスプリング。ゴッゾのその構えは、サムライという戦闘職にだけ伝わる秘技を放つ前の予備動作、相手の攻撃に合わせ一撃を放つ抜刀の構えであった。だがガイルズはゴッゾの抜刀を知らない。このまま勢い任せにゴッゾに攻撃を仕掛ければ確実にガイルズは抜刀の一撃を喰うことになる。


「だらぁっ!」


天性のものなのか、はたまた獣が持つ特有の勘とでも言うのか、抜刀の構えをとったゴッゾに対して何かを感じ取ったガイルズは突進する威力そのままに上へと飛んだ。上空へと高く飛んだガイルズは落下の威力を加えた特大剣の一撃をゴッゾに目がけて振り下ろす。

 正面や左右からの攻撃に対して抜刀は凄まじい威力を発揮する。しかし上空からしかもガイルズのような超重量級の一撃を前に抜刀が有効なのかその光景を見ていたスプリングには分からない。己の経験則から言えば五分五分と言った所か見守るスプリング。しかし次の瞬間、スプリングが見たのは己の経験則など全く意味を成さない光景だった。


「ガハッ!」


 突然吐血するガイルズ。ゴッゾは上空から落下するガイルズに向けて抜刀していた。間合いは完全にゴッゾの範囲外であった。それにも関わらず、ゴッゾの手から抜かれた刀はゴッゾの刀は炎のように揺らめく黒い何かが巨大な刀のように形を変えその鋭い刃で落下しながら攻撃を仕掛けたガイルズの体を切り裂いていたのだ。もはやそこにあるのは剣や刀の技術でもなれば一撃で粉砕するような物理的な力でも無い、異質な力、別の何かであった。


「ゴフゥ!」


何が起こったか理解できないといった表情のガイルズは吐血を続けながら宙を舞う。しかし次の攻撃に備えてガイルズは、その面積から攻撃だけでは無く防御としても使うことが出来る特大剣を自分の体の前に出す事で一旦、防御体勢をとった。


「グフゥ!」


しかし巨大な刀の形をした黒い何かはまるで触手のように枝分かれすると、特大剣の隙間を縫うようにしてガイルズの体を貫いていく。


「な、なんだ……あれ……」


防御に失敗し前進を貫かれたガイルズが地面に落下する姿を見ながらスプリングは顔を引きつらせた。

 それはもはや戦いとも言えない一方的な暴力だった。地面に落下したガイルズに対して枝分かれした黒い何かき今度は鞭のような動作で追撃する。鞭のように柔軟な動きをしながらもあたった瞬間刃のように肉を切り裂く黒い何かは、一方的にガイルズを嬲って行く。

 本来、暴力を相手に押し付ける側であるガイルズが一方的に押し付けられる側になっているというその光景にスプリングは驚愕するしかなかった。


「くぅ……」


地面さえ抉るその威力は瓦礫をや土煙を巻き上げる。今ガイルズがどんな状態なのかその位置からでは分からないスプリングは腰に差した長剣ロングソードの持ち手を握り、得体の知れないゴッゾに挑もうとした。


(……俺にやれるのか……今のあの男を?)


しかしその瞬間、スプリングの動きが止まる。ガイルズが何も出来ない相手に自分が挑んで勝てるのか、そんな邪念がスプリングの中に過ったからだ。

 砂漠での戦いでゴッゾに一度勝利したスプリング。しかしあれがゴッゾの本気で無かったのは剣を交えたスプリングには当然理解できた。もし今のゴッゾが本気だとしたら。突然豹変しもはや人間の技とは思えない力を振うゴッゾのあの姿が本気だとすれば自分は勝てるのか、そう考えた時スプリングの体は石のように固まってしまった。


「……あーあ、私の思い違いだったのですかね……いや、単に彼には早すぎたのか……まあ、どちらにせよこのまま石のように固まったままでは待つのは単なる死……これでは喜劇にもなりませんね」


主を失った城の内部、外の光以外は光が無い玉座の間にある窓から処刑場の惨劇を見下ろしていた武具商人は、動かずゴッゾを見つめるだけのスプリングに落胆した表情を浮かべた。


「……」


ジリとスプリングの靴が地面を鳴らす。石のように固まっていたスプリングの体は、僅かではあるが前に進もうとしていた。


「ほう……動きますか……」


一旦は落胆の表情を浮かべた武具商人だったが、僅かでもまだ前に進む意思を示すスプリングの行動にその目を輝かせた。


「ふぅ……恐れるな……俺は勝てる……俺はこんな所で死ぬ訳にはいかない……俺には目的が……ある」


傭兵となってから感じることが無くなっていったその感覚。戦いに慣れ過ぎて忘れていた恐怖を思い出しスプリングは、その感情と再び邂逅し対峙する。


「……諦めるな……可能性を引寄せろ……」


傭兵を続けていく内に心が磨り減り、自分の目的を見失いかけていたスプリング。それは母親の最後の言葉すら頭の片隅に追いやってしまう程であった。だがスプリングは今一度その言葉を噛みしめるように思い出し復唱する。


「……油断するな」


自分が何のために戦いの中に身を投じたのかもう一度向き合うようにそう口にしたスプリングは、鞘から長剣ロングソードを引き抜いた。その瞬間、スプリングの体はもうその場にはいない。


「ぬらぁぁぁぁぁ!」


スプリングが新たに思いを決意し閃光の名に恥じない動きで飛び出した瞬間、時を同じくして一方的にゴッゾから攻撃を受けていたガイルズは、唸り声とも雄叫びともつかない声をあげながら立ち上がった。

 立ち上がったガイルズの姿は常人なら瀕死の状態であった。纏っていた防具は全てが大破。既に防具としての役目を成しおらず、その防具に包まれていた体には幾つもの大きな傷があり、左腕は千切りかけていた。そのどれもが深手であり未だに辛うじて五体満足であるのが不思議なくらいであった。だがガイルズが致命傷を負って尚、立ち上がり五体満足であるのには理由がある。

 ガイルズという人物を現すうえで一番に言われるのは人間離れした力と破壊力だ。その力をもってして今までガイルズは幾多の戦場を暴れ回ってきた。

 だがそれは戦場に立つガイルズ一面に過ぎない。圧倒的な力、破壊力とは違う、ガイルズが戦場を今まで生き抜いた理由がもう一つある。

 ガイルズも最初から強かった訳では無い。誰しも新人時代があるようにガイルズにも傭兵として新人ルーキーだった時代がある。

 右も左も分からない新人ルーキーであったガイルズはしかし、この時から自分の命を顧みない無茶な戦い方をしていた。当然そんな無茶な戦い方をしていれば命が幾つあっても足りなくなる。結果ガイルズは戦場で幾度となく死にかけた。いや、常人ならば数えきれない程の数、既に死んでいたであろう。だがガイルズは死ななかった。どんなに致命的な傷を戦場で負ってもガイルズは必ず生きて立ち上がり無傷で自軍へと帰還したのだ。

 致命的な傷を負いながらも無傷で帰還する。言葉だけで聞けばおかしなことこのうえないが、実際にガイルズはそれが出来る体質の持ち主だった。

 その体質とは超回復。ガイルズは人間離れした超回復の持ち主であった。どれだけ致命的な傷を負おうともたちまちその傷は癒えてしまう。まるで死とは無縁の不死身とも思えるその体質が、戦場に出るガイルズの身を常に危険に会せ、そして強くしていったのだ。

 その体質を最大限に生かし、一撃一撃がどれも必殺級であるゴッゾの攻撃を受け切りながらガイルズは一歩また一歩と着実に距離を縮めていく。


「ふんッ!」


一定の距離で足を止めたガイルズは、そう唸りながらゴッゾが放つ黒い鞭状の何かを全て左手で掴んだ。


「やれ! 閃光ッ!」


風を切る鞭のしなる音が止んだ瞬間、ゴッゾの攻撃を封じたガイルズはスプリングに叫ぶ。


「ああっ!」


その瞬間、一瞬にしてゴッゾとの距離を詰めていたスプリングが姿を現し手に持っていた長剣ロングソードを振り上げる。


「……」


「……ッ!」


その刹那。長剣ロングソードを振り下ろすスプリングの視線とゴッゾの視線がぶつかる。

 スプリングの視線とぶつかったゴッゾの視線は、今までの殺人鬼のものとは違い、正気をとりもどした様なスプリングの知る志を強く持った目をしていた。


― 介錯を頼む ―


その刹那に両者に会話があった訳では無い。だがスプリングはゴッゾの声を聞いたような気がした。国の言葉なのかそれとも侍だけが持つ独自の言葉なのかスプリングはゴッゾが何を言っているのか分からない。だが正気を取り戻したゴッゾの目が自分に何を望んでいるのか、感じ取れたような気がした。スプリングは己が感じた事を信じ振り下ろし途中だった長剣ロングソードの軌道を変えた。

 軌道を変えたスプリングの長剣ロングソードはゴッゾの首を一閃する。次の瞬間、ゴッゾの首は胴体から切り離され宙をまった。


首を刎ねられ宙を舞うゴッゾの頭部。だがゴッゾの表情に苦悶の色は無く、穏やかに眠るようにゴッゾの目がゆっくりと閉じていく。


― かたじけない ―


その時、再び国の言葉なのか、聞き馴染みの無い言葉がスプリングの耳には聞こえたような気がした。


頭を失った胴体から噴き出す鮮血。それはゴッゾが生きていた証と言ってもいい。しかしその生きた証を穢すようにゴッゾの首から噴き出した鮮血は突如として禍々しい色へと変わった。その禍々しい鮮血は、正気を失っていたゴッゾが扱っていた黒い刀や鞭と同じ物であった。


「なっ!」


噴き出したその禍々しい鮮血にガイルズは表情を変える。

 人間の体内を巡っている血液の量をとっくに超えている黒い何が屍となったゴッゾの体から噴き出すとそれは、まるで悪霊のように姿を変えログ国中に散って行く。


「……力無き者が触れ、もし傷を負わすことができたとすれば、それは災いの始まりです……さぁ、あなた達はこの災禍を生き残れますか?」


ログ国中に散らばる悪霊の姿をした黒い何かを見ながら、まるでスプリングたちに語り掛けるように武具商人はそう呟くと、嫌な笑みを浮かべ主を失った城、玉座の間に広がる暗がりに溶け込むようにして姿を消していった。


「チィ……不味い! 閃光ッすぐにここから離れるぞ!」


既に体の傷が全て癒えたガイルズは黒い何かに呑み込まれていくゴッゾの頭部を見つめるスプリングの肩を掴んだ。


「……」


しかしスプリングは反応せずその場から動こうとはしない。今起っている状況などどうでもいいと言うようにスプリングは黒い何かに呑み込まれていくゴッゾの頭部を見続けていた。

 黒い何かに呑み込まれていくゴッゾの表情は今の状況には相応しくない程に穏やかであった。何かを達成した男の顔にも見える。


「くぅ! ふざけるなッ! ……こんな……こんな終わり方があっていいはずがないッ! 何で……あんたみたいな人が……」


満足したような穏やかな表情をしたゴッゾのその顔に納得できないスプリングは、自分の弱さ、自分の不甲斐なさ、苛立ち、怒り、悲しみ、様々な感情を言葉として吐き捨てる。


「くぅ! 本当に不味い!」


まるでスプリングの感情に反応するようにゴッゾを呑み込んだ黒い何かが反応する。まるで次はお前の番だというように黒い何かはスプリングを取り込もうと襲いかかった。


「うらぁ!」


スプリングに襲いかかった黒い何かを特大剣で防ぐガイルズ。


「グゥゥゥゥゥ!」


しかしガイルズの馬鹿力をもってしても黒い何かの侵攻は止まらない。何処からともなく湧き出るように増殖を続ける黒い何かはその物量でもって自分の邪魔をするガイルズを取り込もうとする。その侵攻は止まることなく、特大剣を呑み込み、その特大剣を持っていたガイルズを呑み込み、そしてその後ろに立っていたスプリングを呑み込むのであった。


 何を糧にしているのか黒い何かの増殖は止まらない。みるみるうちに増殖し巨大化し肥大化していく黒い何かは、悪霊の姿をしながらログ国の王であった屍を呑み込んでいく。ゴッゾに切り捨てられた人々を呑み込んでいく。逃げ惑う人々を呑み込んでいく。処刑場を呑み込んでいく。城を呑み込んでいく。そしてやがて黒い何かはログ国の全てをその腹の中に呑み込んでいった。


 この日、小国ログは忽然と姿を消した。それは物理的な消滅に留まらず、ログ国という存在を知っていたはずの人々の記憶の中からも消えてしまった。消滅の中心にいたスプリングとガイルズ、そして一部の人ならざる存在を除いて、もう誰一人としてログという国が存在した事を語る者も思いだす者もない。




ガイアスの世界


ログ国のその後


 物理的、そして国の存在を知っていたはずの人々の記憶の中からも完全に消滅したログ国は現在、まるで時が戻ったかのように百数十年前と同じ姿をしたオアシスが存在している。

 たまに冒険者や戦闘職が迷い込み、一時の休憩場所となっている。そこにはログ国があった形跡は一切ない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ