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もう少し真面目で章(スプリング編)14 違う光景

ガイアスの世界



 聖狼セイントウルフに付けられた安全装置セーフティー


聖狼セイントウルフは、暴走して人間を襲わないように安全装置セーフティーが付けられている。これによって聖狼セイントウルフは人間を襲うことが出来ないようになっている。

 しかしこの安全装置セーフティーによって、聖狼セイントウルフたちは、魔族との戦い以降、その力を恐れた人間たちの手によって歴史から抹消されることになった。

 人間が聖狼セイントウルフを抹消したという話を知った、聖狼セイントウルフを作り上げたイングニスは、安全装置セーフティーを付けたことを今でも後悔し、これ以降、人間に不信感を抱き深い関わりを持つことを嫌うようになったとされる。


因みに、聖狼セイントウルフには安全装置(セイフティ―)の他に制限リミッターというものも付けられている。

 安全装置(セイフティ―)が人間に危害を加えないようにする為のものに対して制限リミッターは、聖狼セイントウルフになった者の精神と肉体を守る為のものである。

 元々強大な力を持つ聖狼セイントウルフの元になった存在の力を人間の肉体や精神に合わせるために調整目的で制限リミッターはつけられたようだ。もしその制限リミッターを外せば…… 




 もう少し真面目で章(スプリング編)14  違う光景




剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス




 唐突の父親の絶叫が屋敷に響き渡る。父親の絶叫にいち早く反応した母親は少年の手を引き、屋敷の二階へと駆け上がった。二階の一番奥にある部屋に駆け込んだ母親と少年。そこは少年の部屋であった。

 肩で息をしながら少年を抱きしめる母親。普段とは違う雰囲気に只ならぬことが起っているのだと幼いながらに察した少年は自分を抱きしめる母親にすがりつくように抱き付いた。

 少年の部屋に二人が駆け込んで間もなく、物が焼ける臭いが漂い始める。それと同時に扉の隙間からは黒い煙が噴き出し始めた。

 異様な熱さと呼吸のしづらさ。家が燃えていることに気付いた母親は、少年を部屋の隅にある窓脇のカーテンに追いやった。カーテンの裏に身を隠すように母親に言われ少年は素直にその指示に従った。

 カーテンの裏に隠れた少年は、カーテンの隙間から僅かに離れた母親の背中を見つめる。たった1メートル程の距離しか離れていないというのに少年はその僅かな距離が心細く少しでも母親の近くに

行きたいと体が前に進む。だが母親は自分を求める少年を突き放すように手で押し隅へと押しやった。

 だがそれが意地悪ではないことは幼い少年にもわかる。周囲の状況、只ならぬ雰囲気、母親は何かに警戒しその何かか少年を守る為に隅へと突き放したのだ。何かを感じたように母親は自分達が入ってきた扉に視線を向ける。少年もカーテンの隙間から扉を見つめた。扉の外からは何者かが階段を昇ってくる気配がある。それが父親のものではないことは少年にも何故か分かった。

 扉へと迫る気配。そしてゆっくりと扉が開かれる。開かれた扉の先には全身黒ずくめの男が立っていた。警戒する母親を視界に捉えながらゆっくりと部屋に入ってくる男。

 目の前に現れた黒ずくめの男の雰囲気に恐怖する少年。明らかに普通では無く、更に少年を恐怖させたのは、男が手に持つ剣。刃先には大量の血がこびりついていた。少年は恐怖で荒くなる息を口で押えながら母親の背越しに黒ずくめの男を見つめる。今までに出会ったことが無い人間。

 母親が黒ずくめの男に語気を強めながら話しかける。だが男は一切答えない。その代わりに母親の前に男は何かを放り投げた。少年の角度からでは母親の背が邪魔で男が何を投げたのかは分からない。ただ、それを見た母親は激昂した。今までにみたことのない怒りを露わにする母親の姿に肩が跳ねあがる少年。

 母親は怒りの声と共に突然両手を青白く光らせた。少年は母親がこれから何をしようとしているのかこの時は理解出来なかった。ただ普段とは違う母親のその姿に少年の目は釘付けとなった。

 両手を青白く光らせた母親は男に向かって何かをしようとした。だがその瞬間、男は少年と母親の視界から忽然と姿を消す。秒数にすれば一秒にも満たない僅かな時間。次に男が二人の前に姿を現した時、少年の視線の先には剣で貫かれた母親の背中があった。

 剣を胸に刺され吐血する母親。思いもよらない光景に思わず声を上げそうになる少年はそれでも自分の感情を自制するように両手で口を塞ぎ何とか声を漏らすのを堪える。

 剣で体を貫かれた母親は苦しそうな声を上げながらも青白い光を失っていない両手で自分を貫いた男を掴もうとする。しかし掴もうとした瞬間、母親の左側が鮮血に染まる。男は突き刺した剣を左側へ切り上げたのだ。母親の体から噴水のように噴き出す血。噴き出した血はカーテンと少年の目の前を赤く染める。

 その光景は火の手が回る部屋と共に少年の心に深い傷として今も残り続けている。


― 油断しては駄目よ……スプリング…… ―




「うああああああああああ!」


まるで暗闇に呑まれたような平原に怒りに満ちた叫び声が響き渡る。それまで天気だった空が嘘のように一瞬にして黒く染まりユモ村の外にある平原は暗闇に包まれていた。その暗闇と同調するようにその姿を現した黒い球体。自然界においてあまりにも不自然であるその球体、不気味に蠢き、向かって来る男を待ち構える。

 もはやそれが生物なのかはたまた別の何かであるのかも判断が付かないその黒い球体に怒りの叫び声を上げる男。身形から拳士であることが分かるその男、スフブリング=イライヤは打撃用手甲バトルガントレットを纏った両手を硬く握ると黒い球体に向かって走り出した。


『主殿!』


拳士であるスプリングの腰に吊るされたもう一つの打撃用手甲バトルガントレットから発せられる声。突如として怒りに染まった自分の所有者スプリングの様子に戸惑いが隠しきれないその声の正体は、自我を持つ武器、伝説武具ジョブシリーズの一つ、伝説の武器ポーンであった。


《……くぅ怒りで私の声が届いていない……》


黒い球体に対して明確な殺意を向けるスプリングの耳に自分の声が届いていないことをその様子から悟ポーン。


《これが……『絶対悪』の残滓の特性の一つ……主殿にはアレが別のものに見えているということか》


ポーンは焦っていた。

 スプリング達が対峙する『絶対悪』の残滓は非常に厄介な特性を持っている。それは残滓が対峙した相手の心を読み取りその者が最も苦手とする存在に姿を変えるというものである。だがそれは人類に対してのみ効果のある特性であり、自我は持つものの、人類のような心の定義を持たないポーンにその特性は効かない。その為、ポーンには『絶対悪』の残滓が本来の黒い球体の姿に見えていても、スプリングには別の何かに見えているのだ。

 幾度もの戦いの中、自分の力を発揮することが出来ないスプリングを今まで言葉で助言サポートしてきたポーンからすれば、スプリングと同じ光景を共有できないということは、非常にやりにくいからだ。更に状況が悪いのは、対峙する『絶対悪』の残滓が扮した何かに対してスプリングが怒りに冷静さを失いポーンの声に一切耳を傾けない状況にあった。


「俺は……お前に復讐する為に、お前を追い続けてきたんだ!」


『復讐……』


だが同じ光景を共有できなくともわかることはある。言動や行動、その様子からスプリングが何と対峙しているのか推測することはポーンにも出来る。


『はッ! 』


ポーンはスプリングがこれまで旅を続けてきた理由を知っている。詳しい詳細までは本人の口から語られることなかったがポーンは、その理由と現在のスプリングの言動や行動、様子を照らし合わせ、一つの答えに辿りついた。


『主殿、落ち着くんだ! 今目の前にいるのは主殿が追い求めている者では無い!』


 『絶対悪』の残滓へ攻撃を仕掛けようとするスプリングにポーンはそう叫んだ。だがポーンのその行動は無意味に終わる。怒りに支配された今のスプリングにはポーンの言葉が届かない。


「うらあああああ!」


攻撃範囲内に入ったスプリングは、『絶対悪』の残滓が扮する何者かに目がけ怒りを込めた渾身の拳を放つ。


 スプリングには必ず成し遂げなければならない目的があった。それは剣を扱う戦闘職ならば一度は夢に見る、剣士としての最終目標。しかしそれは誰もがその最終目標に到達できる訳では無い。一握りの者だけが持つことを許された才能と、それに甘んじることのない努力をした者だけが辿りつける領域。剣の道を究めた者だけに名乗ることが許された戦闘職『剣聖』になること。

 だがスプリングにとって『剣聖』は本当の目的を成し遂げる為の通過点でしかない。スプリングの本当の目的は復讐。幼少の頃、自分の目の前で両親を殺した男に『剣聖』という最強の力をもってして復讐を果たす事にあったのだ。


『……』


今スプリングはその復讐の相手と戦っている。相手は素早い動きでスプリングの攻撃を躱しているのだろうか、スプリングは間髪入れずに攻撃を続けている。だがそれはスプリングが求めていた復讐相手などでは無く、『絶対悪』の残滓が見せている幻。幼少の頃にスプリングが負った心の傷を『絶対悪』の残滓が見せているに過ぎなかったのだ。


『主殿……』


 スプリングが虚空に向かって拳を振り回しているその姿に悲痛の声を上げるポーン。そんなスプリングの姿を嘲笑うかのように少し離れた場所から『絶対悪』の残滓は、攻撃を仕掛ける訳でも無くその姿を眺めているようであった。


ガイアスの世界


 『絶対悪』の残滓が持つ対象者の心の傷を目の前に作りだす特性


残滓が持つ特性の一つに対象の苦手としているもの、もしくは惑わすことができる存在に姿を変えるというものがあるが、これは一見幻のようにも思えるが幻などでは無く実体である。

 対象者の記憶をもとに実体化したそれらは対象者に触れること、攻撃することが出来る非常に厄介なものとなっている。

 その為、殆どの者は残滓のこの特性の影響を受けた場合、何も出来ずに残滓の成されるがままになってしまうようだ。


 お詫び


 どうも山田です。


今回もまた短い話になってしまいました。章が変わった最初の話だというのに申し訳ありません。色々と調整しながら少しづつ、ギアを上げて行こうと思っていますので、どうか、生暖かい目で見守って貰えるとありがたいです。


 それではまたいつか!  


    2021年 7月9日 某馬の育成ゲームと、某英霊のボックス周回に追われながら……

 



 

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