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真面目で章 7 (スプリング編) 迫る化物

 ガイアスの世界


 人間以外の獣人族


 ガイアスの世界には、人と呼ばれる種族以外に何種類もの知性を持った種族、獣人族がいる。それらをまとめた総称を人類、または人間呼ぶ。

 しかし中には人の形をしており人間と同様の知性を持っていても人類、人間の総称に入っていない種族もいる。人類、人間という総称に入っていない種族の大半が人間と敵対していると言われている。

 

 

 

 真面目で章 7 (スプリング編) 迫る化物




 剣と魔法の力渦巻く世界ガイアス。



 ― 小さな島国ヒトクイ 城下町ガウルド 旧戦死者墓地 ―



 『ガウルド』の町の端にあるその場所は、人々にさえ存在を忘れられ月並みな表現をすれば、何かが出てもおかしくはない不気味な雰囲気を放つ。その場所の名は旧戦死者墓地。


『ヒトクイ』統一をかけた最後の戦の場となった『ガウルド』では敵味方を合わせ沢山の戦死者が出た。戦が終わると町の復興作業に入った人々は町の至る所に転がった戦死者達の亡骸を葬る為に町の端にあった何も無い更地に戦死者を埋葬する為の共同墓地、戦死者墓地を急ごしらえで作り上げた。

 戦後であったため資材も無く急ごしらえになってしまった戦死者墓地には、石を積んだだけの墓とは程遠いものが沢山作られた。しかし『ガウルド』の人々にとってその場所は形がどうであれ喪った家族や、恋人、友人を弔う為の場所であった。

 それから数年が経ち戦で滅茶苦茶になっていた『ガウルド』の復興が進んでくると、『ガウルド』の人々から、自分達の家族や恋人、友人が眠る戦死者墓地が町の端にあるのは相応しくないのではという声が上がり始めた。その他にも石を積み上げただけの墓を立派なものにしたいという声もあがりはじめ、その年、国となった『ヒトクイ』は新たな戦死者墓地を『ガウルド』に建設する事を計画、実行する。

 それから数カ月の後、新たな戦死者墓地が『ガウルド』城の近くに完成、戦死者達の亡骸は全て新たに作られた戦死者墓地へと移されていった。それ以降、最初の戦死者墓地に足を踏み入れる者は居なくなり、その場所はじょじょに人々から忘れ去られていった。


 旧戦死者墓地と呼ばれるその場所へと突入したスプリング達は、入口でこそ盗賊団らしき男達と戦闘になったが、奥に進むにつれ人の気配が無くなりいつしか盗賊団らしき男達の姿は全く無くなっていた。

 しかし罠という可能性も否定できない為、スプリング達は物陰に姿を隠し警戒しながら周囲の様子をみることにした。


「……ん?」


 物陰から旧戦死者墓地の中心の様子を伺うスプリングは、自分の背後で初心の衣をつまむ様子のおかしいソフィアに首を傾げていた。


「ひぃ!」


 何の前触れも無く突然旧戦死者墓地に響く羽音に小さな悲鳴を上げながらスプリングに抱き付くソフィア。


「お、おい、鳥だよ」


 昼過ぎだというのになぜか薄暗い旧戦死者墓地の空へと飛びたつ鳥を指差しながら自分の体抱き付くソフィアに羽音の正体を説明するスプリング。


「なあ? もしかしてお前……怖いのか?」


「うッ!」


 スプリングの指摘に顔を引きつらせたソフィアは自分がスプリングの体に抱き付いている事に気付き慌てながらスプリングから離れた。


「……べ、別に怖く何か……」


 しかしその声はうわずっており全く説得力が無い。明らかに墓地という場所に怖がっているソフィア。


「ちょ、ちょっと苦手なだけよ」


 しかしソフィアはそれを隠すように強がってみせる。しかしその言葉とは裏腹に目は泳いでおりやはり説得力が無い。


「それは怖いってことだろ?」


「ひぃ? ひぃやあ……モゴモゴ!」


 突然背後からの声に悲鳴を上げようとするソフィア。しかしソフィアの悲鳴が響きわたる前にスプリングがソフィアの口を押える。


「ガイルズ……」


 スプリングとソフィアがいる場所から少し離れた所で盗賊団らしき男達の様子を伺っていたガイルズの登場の仕方に呆れるスプリング。


「おいおい、俺は別に何もしてないぞ」


 冤罪だというようにガイルズは困った表情で首を横にふる。しかしその何とも胡散臭い困った表情にスプリングは疑いを隠さない。


「あのな……俺だってそこまで馬鹿じゃない、特に今回はふざけるのはなしだ」


 自分を疑った目で見るスプリングに抗議するガイルズ。その表情は珍しく真面目で口調には緊張感が漂っていた。


「そ、そうか……」


 珍しい物でも見たという表情でスプリングは真面目な表情のガイルズに頷く。


「モゴモゴ!」


「ああ、悪い!」


 声にならない声で今度はソフィアが抗議する。ソフィアの口を押えている事を忘れていたスプリングは直ぐにその手を離した。


「ぷっは! 何するのよ……」


 口が自由になったソフィアは間髪入れずに今度はちゃんとした抗議をスプリングにぶつける。


「お前の悲鳴の所為で奴らに気付かれたら面倒だろう」


 ソフィアの口を塞いだ理由を説明するスプリングは、怯えた表情のまま自分を見つめるソフィアに視線を合わせる。



「……ソフィア、正直に言え……怖いんだろ?」


 優しく語り掛けるスプリングの質問に肩をビクンと跳ね上げたソフィアは、目を泳がせ気まずそうに静かに頷いた。


「……はぁ……素直でよろしい、じゃあ大人しく俺の後にいろ」


 正直に自分の気持ちを現したソフィアに呆れるでも怒るでもなくスプリングは優しい口調でそう言うと自分の背を指さした。


「ぅぅ……うん」


 スプリングの言葉に素直に頷いたソフィアは、スプリングの言葉通りに背後に移動する。


「あ、ありがとう……」


 俯きながら恥ずかしそうにそう呟いたソフィアは再びスプリングが纏う初心の衣の端をつまむ。


「ああ……」


 自分の背後にソフィアが移動した事を確認したスプリングは短く返事すると、旧戦死者墓地に視線を戻した。


「……それにしても……明らかに入口と雰囲気が全く違う……? 空気が重い……」


 ソフィアが怯える理由、そしていつでもふざけているあのガイルズが妙に真面目になっている理由、それは全てこの重く圧し掛かる旧戦死者墓地の雰囲気であると確信するスプリング。


「……気を付けろスプリング、ここからは化物退治だ」


「はぁ? ……化物ってそれはいつもやっていることだろ?」


 化物退治など普段からやっている事ではないかとガイルズの言葉に疑問を抱くスプリング。しかしガイルズの口調は真剣そのものであり軽口を叩いているようには見えない。


「ピンと来てない顔しているな……だったら目を凝らしてあそこを見てみろ」


 自分の言葉を理解していないといった感じのスプリングの顔を見ながらそう言うガイルズは、旧戦死者墓地の中心を指差した。

 そこには盗賊団らしき男達の姿がある。元気が無いように見えるが、それ以外別段変わった所は無いと思うスプリングは首を傾げた。


「ッ!」


 しかし盗賊団らしき男達の中の一人がとった行動でスプリングの目つきが変わる。そこに人間の腰程の高さがある墓石にぶつかっているにも関わらず避けもせず進もうとする盗賊団らしき男の姿があった。その行動が不自然であることは誰の目にも明白でありスプリングはその盗賊団らしき男の行動に一つの答えが頭に浮かぶ。


「まさか……奴らは……」


「ああ、活動死体ゾンビだ」


 活動死体ゾンビとはその名の通り動く屍のことである。活動死体ゾンビは遺体が多い場所、戦場やちゃんと手入れのされていない戦場で発生することが多く、『ガウルド』で早急に戦死者墓地を作った理由の一つも活動死体ゾンビを発生させない為であった。


「おいおい、だけどこの墓地にあった遺体は新しい墓地に移されたはずだろ? もし残っていたとしても数十年前の遺体だ、すでに腐り果てて骨兵スカルソルジャーになっているのが普通じゃないのか?」


 活動死体ゾンビは長い期間活動を続けていると当然体の肉はどんどん腐り果てていく。その行きつく先は骨だけとなり活動死体ゾンビ骨兵スカルソルジャーへと姿を変えていく。

 旧戦死者墓地に葬られた遺体は、『ヒトクイ』統一後、すでに数十年という時が流れており、もし新しい戦死者墓地に移されていない遺体があったとすればすでに骨兵スカルソルジャーに姿を変えているはずなのだが、スプリング達が目にしているものはどう見ても活動死体ゾンビであった。


「ああ、あれはまだ新鮮だ、活動死体になって一日、二日って所だろう」


 冷静に旧戦死者墓地を徘徊する活動死体ゾンビの死後推定を口にするガイルズ。


「一日、二日って……じゃああそこで徘徊している奴らは死んで直ぐに活動死体ゾンビになったって言うのか?」


「ああ、そういう事になる……」


 驚きながら質問してくるスプリングに頷くガイルズ。


「待て待て、俺もそんなに詳しくないが、遺体が活動死体ゾンビになるにはそれなりの時間が必要なんじゃないのか……?」


 何処で聞いたのか忘れてしまったが、スプリングは活動死体ゾンビが誕生するまでには時間がかかるのではとガイルズに疑問をぶつける。

 その場所の環境や状況にもよるが、遺体が活動死体ゾンビになるまでにかかる時間は、ガイアスでは約二十日前後だと言われている。肉体から完全に魂が抜け腐乱が始まりその形が保てなくなり始めた頃に、ある程度の条件が揃う事によって活動死体ゾンビは誕生する。しかしガイルズは旧戦死者墓地を徘徊する活動死体ゾンビは死んでから一日から二日しか経っていないと断言した。


「いや、それが出来るんだよ……いや正確には出来る存在がいるんだ、死んだ直後に活動死体ゾンビを作り出す事が出来る存在が」


 何故かガイルズは恨めしそうにそう語ると周囲を見渡し警戒を始めた。


「死後直後に活動死体ゾンビを作り出す存在ってなんだよ?」


 全く聞いた事の無い知識を出されスプリングは更にガイルズに質問する。


「話は後だ、俺達は今かなり危険な状況にいる……まずは切り抜ける事を考えろ!」


 そう言いながら物陰から飛び足していくガイルズは背中に担いでいた特大剣を一息で抜き徘徊を続ける活動死体ゾンビへと突っ込んでいく。


「お、おい待て!」


 完全に出鼻を挫かれた形となったスプリングは立ち上がりガイルズを追おうとする。


「ん?」


 しかしスプリングはそこで違和感を覚える。


「ソフィア?」


 違和感の元を辿るスプリングは背後にいるはずのソフィアへと振り返る。しかしそこ恐怖に怯えスプリングの背でじっとしていたはずのソフィアの姿は無かった。


「ど、どこに行ったソフィア?」


 消えたソフィアの姿を探し周囲を見渡すスプリング。


『主殿、ソフィア殿ならガイルズの後を追ってもう飛び足していったぞ』


「はぁ?」


 意思を持つロッド、伝説の武器ポーンにそう言われ飛び出していったガイルズに視線を向けるスプリング。そこには素早い動きでガイルズを追うソフィアの姿があった。


「お、お前怖かったんじゃないのか!」


 もう大声をだすことも気にせず活動死体ゾンビへと向かって行くソフィアの背に声を張りあげるスプリング。ガイルズが一体目の活動死体ゾンビの頭を吹き飛ばし、その場に追いついたソフィアが素早く向かって来る活動死体ゾンビを切りつけていた。


活動死体ゾンビだったら私怖くないのよ! だってナイフで倒せるから!」


「は、はあ? え? ……どういう事?」


 てっきりソフィアは旧戦死者墓地に渦巻く異様な気配に怯えているものだと思っていたスプリングは理解出来ないというようにポカンと口をあける。


「わ、私……幽霊が大嫌いなの! 死霊とか私の攻撃じゃ絶対倒せないから! でも活動死体ゾンビだったら実体があるから私の攻撃も通るでしょ!」


「ああ、なるほど……」


 先程怯えていた姿が嘘だというように的確に活動死体ゾンビを処理していくソフィアの姿に納得するスプリング。

 ガイアスでは活動死体ゾンビ死霊レイスを総じてアンデット系と分類しているが、この二つの存在は本来全く違う存在である。

 物理攻撃でも何とかなる活動死体ゾンビに対して死霊レイスは肉体が存在せず物理攻撃が効かない。

 現状自分の能力では死霊レイスと戦うには厳しい事を知っていたソフィアは状況を踏まえ旧戦死者墓地に死霊レイスが現れるのではないかと怯えていたのであった。しかし旧戦死者墓地に存在しているのが活動死体ゾンビだけと分かると一瞬にして自分の心に巣くっていた恐怖は消え去っていた。

 単に怯えていた理由が戦えないから怖いというだけであった事を知ったスプリングは、活き活きと活動死体ゾンビと戦うソフィアを見て優しくするのでは無かったと後悔するのであった。

 次々と姿を現す活動死体ゾンビは、活き活きと動き回るガイルズとソフィアに向かい歩みを進めていく。だがその動きは鈍くガイルズやソフィアに襲いかかる暇も無く倒されていく。明らかにガイルズとソフィアにとって格下の敵であった。

 しかし鈍足で物理攻撃が効く活動死体ゾンビにも注意しなければならない特徴が幾つかある。その一つは必要以上のしぶとさだ。顔を潰されたぐらいでは活動を停止する事は無く手足が千切れようが容赦なく生きている存在へと襲いかかっていく。だがその辺の事を二人は十分に理解しているようで迫ってくる活動死体ゾンビ達をその速い動きでソフィアが翻弄し動きを止め、まとまった所をガイルズが特大剣を振り回し跡形も無く押しつぶしていた。

 二つ目に注意しなければならないのは活動死体ゾンビに噛みつかれないということである。活動死体ゾンビ活動死体ゾンビが持つ本能で生ある存在に噛みついてくる。一度でも噛みつかれれば、噛みついた場所から腐敗が始まっていく。しかもその腐敗はただの腐敗では無く仲間を増やす効果を持っている。噛まれた場合、直ぐに噛まれた傷口を切り取るかもしくは浄化の力を持つ僧侶やプリーストに対処してもらわなければ二十日前後でその者は活動死体ゾンビになってしまうのだ。

 しかしその注意しなければならない点も今の二人の戦い方ならば何の問題も無い。


「うぉぉぉぉぉぉりぁぁああああ!」


 活動死体ゾンビ達を吹き飛ばすたびに獣のような雄叫びをあげるガイルズ。そんな一方的な戦いを唖然とした表情で見つめるスプリング。


「ボサボサするなスプリング!」


 襲って来る活動死体ゾンビを次々と叩き潰していくガイルズは、ただ立ち尽くすスプリングにそう叫ぶ。


「はっ!」


 ガイルズの叫びに我に返るスプリング。


『主殿、二人に遅れをとってはいけない、せっかく二人が前衛で戦っている、一発でっかいのをお見舞いしようではないか』


「ああ、分かってるよ」


 ポーンにそう言われ頷いたスプリングは、初心のロッドを構えた。

 圧倒的な力の暴力、全く追いつくことの出来ない速度を持つガイルズとソフィアの前に何も出来ず倒されていく活動死体ゾンビ達。しかしそんな圧倒的な戦況でありながら、戦いが終わる気配は無い。

 それが最後の一つである活動死体ゾンビと対峙した時に注意しなければならない特徴であった。

 例外はあるが基本、活動死体ゾンビ一体の戦闘力はそれほど高くは無い。だが塵も積もればという言葉があるように、活動死体ゾンビは集団になると厄介な存在になる。

 頭や四肢を吹き飛ばしてもしぶとく襲いかかり、噛まれれば基本的に終わりという特徴を持つ活動死体ゾンビの怖さは集団になった時にあった。

 すでに二人合わせて二十体以上の活動死体ゾンビを倒しているガイルズとソフィアであったが、活動死体ゾンビ達の数は減るどころか増えていた。


「ちょ、ちょっと! 何で遺体が無いはずの場所から活動死体ゾンビがゾロゾロと湧いてくるのよ!」


 ソフィアがそう抗議している最中にも、旧戦死者墓地の地面からは活動死体ゾンビがワラワラと湧き出てくる。


 ソフィアが言うように死体の無い場所で活動死体ゾンビが出現することは有り得ない。しかし現状死体の無い場所から活動死体ゾンビ達は姿を現している。それが何を意味しているのか、その場の者達は理解出来ていない。


「チィ……やっぱりそうだよな」


 何かを知っているという表情で湧き出てくる活動死体ゾンビに舌打ちしながら小さく呟くガイルズを除いて。


「二人とも聞いてくれ!」


 ガイルズとソフィアが終わる事の無い戦いを活動死体ゾンビと続けている中、スプリングの声が旧戦死者墓地に響き渡る。その声に戦いながら耳を傾けるガイルズとソフィア。


「今から大きいのを一発放つ、準備が整うまで俺の周りに活動死体ゾンビが近寄ってこないようにしてくれ! それと出来るだけ活動死体ゾンビ達を密集させてくれ!」


 スプリングの指示にガイルズとソフィアは互いに視線を交え頷くとスプリングの下へと走り出す。

 活動死体ゾンビ達はスプリングの下へ走り出したガイルズとソフィアの背を追う。


「一応聞いとくけどポーン、まだ俺はお前を扱うことはできないか?」


 自分の腰に差さったポーンに話しかけながら魔法を放つ準備に入るスプリング。


「ああ残念だがまだ主殿は私を扱うまでの能力には達していない」


「ああ、分かった」


 スプリングは魔法を放つ為の媒介である初心のロッドを強く握り直すと魔法を放つ為に必要な集中を保つ為に黙り込んだ。

 先程も述べた通り活動死体ゾンビ単体の戦闘力はたいしたことは無い。しかしその数が集まれば集まる程、その脅威は増してくる。活動死体ゾンビが20~30体集まれば、戦闘職として熟練した者、凄腕の者であっても勝敗は分からないと言われている。

 熟練した者や凄腕の者でも苦戦を強いられる集団戦闘に長けた活動死体ゾンビ達が次々と旧戦死者墓地の土の中から姿を現していく。その数は200超えても止まる気配は無い。『ガウルド』で現在おこなわれている祭りの賑わいも霞むほどに旧戦死者墓地は魂を失い生命を貪るのに執着する死体と化した存在で溢れかえろうとしていた。


「うおぉぉぉりゃゃゃゃゃ!」


 雄叫びと共にガイルズは特大剣、『大喰らいの剣』を大きく縦に振りぬく。すると、その風圧で舞い上がった墓石や石などが前方に飛んでいき、活動死体ゾンビの身体を貫き押し潰していく。


「はあぁぁぁぁぁ!」


 竜巻のようなガイルズの攻撃の横では縫うように活動死体ゾンビ達の間を高速で移動するソフィアの姿があった。活動死体ゾンビ達の間を抜ける瞬間、ソフィアは活動死体ゾンビの足を手に持ったナイフで切りさき動きを封じているようで、ソフィアが通った後には地面に倒れていく活動死体ゾンビの姿が続出していく。

 しかしガイルズは別としてもソフィアは女性であり人間である。疲労が無いといえば嘘になりその表情には徐々に疲労が見え始めていた。


「くぅ……」


 それは本当に僅かな隙。ソフィアがただ僅かに足を止めただけであった。だがその僅かな瞬間にソフィアの前には大量の活動死体ゾンビが波のように押し寄せてくる。一体を踏み台にして一体が。またその一体を踏み台にして一体が。活動死体ゾンビ達の間に仲間意識など当然ある訳も無く、ただ生のある肉体を目指し腐った手をソフィアに向けるのだ。


「しまった」


 一体の活動死体ゾンビがソフィアの腕を掴む。瞬時に活動死体ゾンビの腕を切り落とし距離をとり逃れるソフィアであったがその僅かな間に他の活動死体ゾンビが次々とソフィアに迫り手を伸ばしてくる。


「しゃがめっ!」


 ソフィアの目の前に迫る活動死体ゾンビ達の手。その瞬間ガイルズの声が旧戦死者墓地を揺らす程に響き渡る。ガイルズの指示に体で反応したソフィアは即座にその場にしゃがみ込んだ。


「おららぁあああああああああ!」


 獣のような野太い声と共にガイルズが持つ特大剣がソフィアの頭上を通り過ぎる。すると遅れて凄い風圧がソフィアの頭上を通り抜け目の前にいた活動死体ゾンビの体をバラバラにして吹き飛ばしていく。


「な、なんなのよ……風圧だけで倒すって……」


 目の前のバラバラになっていく活動死体ゾンビ達を見ながら自分の後ろで邪悪な笑みを浮かべるガイアスにある恐怖といっていい感情を抱くソフィア。特大剣を持つ者はソフィアも何度かみたことはある。その特大剣の重さを利用し対峙する相手を押し潰すように倒す姿もみたこととはある。遠目からガイルズの戦闘を見ていたソフィアは最初ガイルズもそういう戦い方をしているものだと思っていた。しかし自分が見てきた特大剣を扱う者とガイルズの戦い方は根本的から違うものである理解するソフィア。

 ガイルズは特大剣の重さを利用して相手を押し潰していくのではなく、そもそも相手に特大剣が相手に触れていない。ただガイルズが特大剣を一振しているだけ。そこに発生する風圧だけで相手の体をバラバラにして吹き飛ばしていたのだ。それが例え他の魔物に比べ脆い活動死体ゾンビであったとしても、風圧だけでバラバラにして倒してしまうのは常人ではありえないものであった。

 今自分の背後にいるのはどんな魔物よりもそれこそ自分が苦手とする幽霊よりも恐ろしい存在なのではないかと思うソフィアは、この時ガイルズという人間の凄さをまざまざと理解させられたのである。そしてソフィアは僅かな時間で自分達の背後にいるスプリングに視線を向け思う。こんな化物と渡り歩くことが出来たスプリングという男も化物なのではないかと。


「ボサっとしてないで早く立ち上がって腐った野郎達を攪乱しろ!」


 自分の頭上で絶えず特大剣を振り回し続けるガイルズの声で冷静になるソフィアは直ぐに立ち上がると再び活動死体ゾンビ達の間を縫うように走り出した。


(こんな奴らを相手に私は伝説の武器を盗もうとしていたなんて)


 活動死体ゾンビを相手にソフィアの頭の中では別の恐怖が渦巻いていた。自分は魔物よりも恐ろしい存在を相手にしようとしていたのではないかと。しかしそれ以上に今はこの状況を突破できるという希望も同時に湧き上がっていた。


「私を殺す気!」


 希望が見えればそれだけ心に余裕か出来る。ソフィアは活動死体ゾンビを相手にしながらガイルズの無茶苦茶な攻撃に文句をつけた。


「ふふ、へばっちまったかと思ったが、それだけ言えればまだやれるな!」


 ニヤリと笑みを浮かべながら絶えず特大剣を振り続けるガイルズ。


「うっさい! 黙ってあんたはそこの腐った奴らを吹き飛ばしてればいいのよ!」


 疲れはどんどん蓄積しているものの今のソフィアはそれを感じさせない程に興奮していた。まさか自分にもこんな一面があったなんてと思いつつもソフィアは、圧倒的な力を持つガイルズの力に憧れを抱く。人間でも努力をすればここまで強くなれるのだと。ガイルズに対して恐怖を抱いていたソフィアの心はいつの間にか強さへの憧れに変わっていたのだ。


「ははは、あいつ目に分かるほど強くなってやがるな」


 活動死体ゾンビと戦い始めた頃は、チョロチョロと素早く動き周り足などを攻撃して活動死体ゾンビの動きを止めるぐらいしかできていなかったソフィアが今では活動死体ゾンビ達を蹴散らししっかりとトドメを刺すまでに成長している事にガイルズは再び笑みを浮かべた。


「さてさて、ソフィアも成長してんだ、お前はどうなんだスプリング?」


 活動死体ゾンビを吹き飛ばしながらガイルズは自分の背後で詠唱を続けるスプリングに声をかける。


「ああ……俺も見せてやるよ、成長した所を」


 ゆっくりと目を開いたスプリング。別段何の変化も無いスプリングではあったが、ガイルズは何かを察したのかすぐさまその場から退避する。


「ソフィアそこから離れろ!」


「え、えええ!」


 言葉では驚きの声を上げながらもソフィアは活動死体ゾンビ達の間を抜けその場から離脱していく。


 ソフィアがその場から離脱したのを見計らったように旧戦死者墓地に突然地響きが響く。


「な、なんなの?」


 揺れ出した地面に戸惑いながらもスプリングとガイルズがいる場所へと走るソフィア。揺れる地面にバランスを崩した活動死体ゾンビ達は次々と転んでいく。


「おうおうこれがド派手なやつか?」


 地面の揺れに期待を抱き満面の笑みを浮かべるガイルズ。


「行くぞ! 今の俺の集大成その一! 轟け大地を蠢く灼熱の炎、大地炎ロックファイアぁぁぁ!」


 スプリングが魔法の名を叫ぶとそれに反応するように今まで揺れていた旧戦死者墓地の至所が地割れを起こす。足をとられて割れた地面に落ちていく活動死体ゾンビ達。だがスプリングが放った魔法はそれにとどまらず割れた地面から次々と赤々とした炎が噴き出していく。柱のように噴き出した炎が至る所に飛散し地割れから逃れた活動死体ゾンビ達の体を焼いていく。


「「「「ぎぃあああああああああ!」」」」


『なんと、長い詠唱だと思ったがまさか二属性魔法とは!』


 スプリングの詠唱を黙って待っていたポーンは、スプリングが放った魔法に驚きの声を上げる。

 二属性魔法とは、属性の違う魔法を混ぜ合わせ放つ合成魔法で本来初心者魔法使いが扱う事は無理と言われている中級魔法使い達が覚える魔法の術の一つであった。


「おいおい、初心者の魔法使いってこんな規模の魔法放つことが出来たっけか?」


 割れた地面に落ち、そこから噴き出す炎の柱によって焼かれていく活動死体ゾンビ達を眺めながら、ガイルズは顔を引きつらせる。


『どうやら詠唱に大規模詠唱を重ねているのだろう……しかも中規模では無いとは……想像以上だ主殿!』


 ずっと修練に付き添いスプリングの成長の度合いを理解しているはずポーンですら興奮し驚きの声を上げる。

 ポーンが驚くのもむりはなく、スプリングが放ったさいに口にした詠唱には大規模詠唱という上級魔法使いが上級魔法を習得するうえでの必修詠唱を唱えていたからであった。  

 大規模詠唱とは、点での発動が多い初級魔法を面の魔法へと変化させる詠唱なのだが、本来はまず中級魔法使いが必修とされる中規模詠唱を習得してからしなければ詠唱できないと言われている。そんな大規模詠唱をスプリングはやってのけてしまったのだ。


「……まだまだ行くぞ! 今の俺の集大成その二! 解き放て炎の竜巻 炎竜巻ファイアサイクロン!」


 勢いよくスプリングが魔法の名を叫ぶと、裂けた地面から噴き出していた柱のような炎が渦を描きながら空へと舞い上がっていく。やがて舞い上がった炎は舞い上がる風と混ざりあい炎の竜巻となって活動死体ゾンビ達を舞い上げ焼いていった。


「ちょ……もうこれ初心者って言う規模じゃないでしょ……」


 炎の竜巻によって焼かれながら舞い上がり消し炭になっていく活動死体ゾンビ達を見上げながら初心者という肩書きは何処にいったのかと混乱した表情を浮かべる。


『ムムム……二属性魔法、大規模詠唱に加え、接続詠唱まで付け加えるとは……もう言葉も出てこないぞ主殿!』


 唸りそう言いながらしっかりとスプリングの魔法の解説をするポーン。

 接続詠唱とは、すでに発動している魔法に新たな詠唱を接続することによって発動している魔法に変化を加える詠唱方法で、新たな魔法を放つ時よりも詠唱時間を短縮させる効果を持っている。

 気付けば地獄絵図のような光景になっている旧戦死者墓地。その場所で唯一の安全地帯と言えるスプリングの側に集まったガイルズとソフィアは、古い歴史のある魔法使いという戦闘職の底力を目の当たりにしたような気分になった。

 ガイアスで魔法使いという戦闘職は、終わりの無い戦闘職と呼ばれる事がある。古い時代から幾多の者達によって研究され尽くしたと言われる魔法使い。名立たる者達をもってしても極める事が出来ないこの戦闘職には、未だに新たな発見や常識が誕生し続けている。それが終わりの無い戦闘職と言われる由縁であった。


「これで最後だ! 今の俺の集大成その三! 凍えて朽ち果てろ! 嵐氷ストームアイス!」


 暴れまわる炎を纏った竜巻の影響で蒸し暑い熱気が漂う旧戦死者墓地。しかしスプリングが魔法の名を叫んだ瞬間、その場の温度は急激に下がっていく。暴れまわっていた炎の竜巻から炎が消えそこに現れたのは氷の粒であった。竜巻によって舞い上げられた氷の粒は触れた物を一瞬にして凍らしていく。地面に落ちた氷の粒は地面を凍らせ旧戦死者墓地の光景を一瞬にして変えていく。当然その場にいた全ての活動死体ゾンビ達も凍りついていた。


「お、終わった……?」


 唯一凍りついていないスプリングの隣でソフィアが茫然と凍りついた旧戦死者墓地を見つめる。


『主殿、凄いぞ! ここまで魔法使いを熟練させるとは! いや本当に凄い! 凄いぞ主殿!』


 興奮が冷めやらないと言った声でスプリングを褒めちぎるポーン。


「はあはあ……これでようやく魔法使いとして役にたてたか」


 全てを出し切ったという表情でスプリングは墓場であり地獄絵図と化しそして氷の大地のようになった旧戦死者墓地を見渡しながら弱く笑みを浮かべる。


「……ねぇ……お、終わったってことでいいんだよね?」


 全てが終わった事を確認するようにソフィアは少し不安な顔でスプリングに聞く。


「ああ……終わ……」

「スプリング! 気を緩めるな!」


 凍える旧戦死者墓地にガイルズの叫び声が響く。


 何が起こったのか分からないといった表情で茫然とスプリングを見つめるソフィア。


「……全くこの敷地を全て凍らせるなんて、とんだ魔法使いもいたものですね……」


 抑揚の無い女性の声と共にスプリングの背後に姿を現した黒い影は手に持った細長い長剣でスプリングの背中を貫いていた。



「がはぁ……」


 吐血と共に体の力が抜けるようにしてその場に倒れ込むスプリング。


「えっ?」


 吐血するスプリングの血を見つめるソフィアの目は見開きその状況を茫然と見つめる事しか出来ない。


『主殿ぉおおおお!』


 己の所有者であるスプリングの危機にはりさけるような叫び声を上げるポーン。


「やりやがったなあああああああ!」


 スプリングの背後に現れた黒い影に向かい全速力で走り出したガイルズは特大剣を振り上げ黒い影に振り下ろす。


「やりやがったのはあなた方ではありませんか」


 次第に輪郭がはっきりする黒い影は、フードが付いた黒いマント姿に変わるとガイルズの攻撃を避け次いでとばかりにスプリングに刺さった長剣を引き抜く。


「ゴフゥ……」


 長剣を引き抜かれたスプリングはその反動で再び吐血する。傷口からは大量の血が流れだしていた。


「あなたの魔法は褒めるに値するものでした……ですが……所詮は人間ですね」


 ガイルズが振う特大剣の連続攻撃を軽々とかわしながらフード付の黒いマントを纏った女性はまるでスプリングを射抜くような冷たい視線をフードから覗かせる。


「こっち見ろ! 化け……」


 フード付の黒いマントを纏った女性に何かを言いかけながら特大剣を振るった瞬間、ガイルズの体は吹き飛ばされ凍りついた木に打ち付けられた。


「静かにしてもらえますか……私は今この魔法使いと話をしているのです」


 声からは感情が読み取れないが、言葉から少し苛立っている事が伺えるフード付の黒いマントを纏った女性は一切ガイルズに視線を向けずスプリングを見続ける。


「さあ、あなたが持っているという……伝説の武器、渡してもらいましょうか?」


 既に意識の無いスプリングに話しかけるフード付の黒いマントを纏った女性は、そう言いながらスプリングに手を伸ばす。


「止めて!」


 スプリングに手を伸ばしたフード付のマントを纏った女性から守ろうとスプリングとフード付の黒いマントを纏った女性の間に入り両腕を広げるソフィア。


「……あなた可愛い顔をしていますね……私もあなたみたいに可愛い容姿をしていれば、あの方はもっと私を受け入れてくれるのでしょうかね……」


「……ヒィ!」


 一瞥だった。フード付の黒いマントを纏った女性の視線に声にならない悲鳴を上げるソフィア。何処まで黒く深い『闇』のようなフード付の黒いマントを身に纏った女性の瞳に言い知れぬ恐怖がソフィアの体を走り抜け、ソフィアは一歩も動けなくなる。


『ソフィア殿! くぅ……このままでは!』


 恐怖に支配され体を震わせながら身動きが取れなくなったソフィアに声をかけるポーン。しかし言葉にならない言葉を小さく呟くソフィアにポーンの声は届かない。


「これは驚いた……」


 ソフィアを呼ぶポーンの声に抑揚の無い声で驚いたと口にしたフード付の黒いマントを纏った女性はスプリングの腰に差さるポーンを見つめる。


「伝説の武器は喋る事ができるのですね」


 どう聞いても驚いているようには思えないフード付の黒いマントを纏った女性は硬直したままのソフィアを横に、スプリングの腰に差さるポーンに手を伸ばす。


『させるか!』


 そう言うとポーンは以前『ゴルルド』の酒場で見せた大きな口に変化しスプリングを丸のみにするとそのまま大きな球体へと形を変えた。


「あらら……そんな芸当まで……これは本当に興味深いですね」


 球体に変化したポーンをマジマジと見つめるフード付の黒いマントを纏った女性。


「あ、ああああ……うわわわわわわ!」


 恐怖に心を支配され硬直していたソフィアは、己が感じた恐怖に発狂するように悲鳴を上げると手に持ったナイフでフード付の黒いマントを纏った女性に切りかかった。


「お粗末な攻撃ですね」


 何の考えも無い安易なソフィアの攻撃を抑揚なくそう吐き捨てながら手に持った長剣で弾き返すフード付の黒いマントを纏った女性。


「いい加減にしろよこの化物が」


 それはソフィアからすれば一瞬の出来事であった。吹き飛ばされ凍りついた木に体を打ちつけられていたはずのガイルズが一瞬のうちにフード付の黒いマントを纏った女性の横まで距離を詰めていたからだ。


「ん?」


 フード付の黒いマントを纏った女性もソフィアと同じくガイルズが距離を一瞬にして詰めたように見えたのか反応が遅れる。


「ふんぬ!」


 勢いよく堅く握った拳がフード付の黒いマントを纏った女性の顔面を捉える。ガイルズの渾身の一撃で体が吹き飛ぶフード付の黒いマントを纏った女性はガイルズと同じように凍った木に体を打ち付けズルズルと地面に倒れ込んだ。


「ソフィア……その何かよくわからない球体と一緒にこの場から離れろ」


 ガイルズは庇うように前にソフィア達の前に立つと吹き飛んだフード付の黒いマントを纏った女性を見つめる。


「で、でも!」


「いいから行け!」


 ソフィアの言葉を遮るように怒鳴るガイルズ。そこにはいつもふざけているガイルズの姿は微塵も無い。そこにはただ目の前の敵を殲滅しようとする獣のように鋭い眼光をフード付の黒いマントを身に纏った女性に向けるガイルズの姿があった。


「なるほど『聖』の力ですね……」


 ガイルズの拳によってフードが吹き飛び中から素顔が露わになるフード付の黒いマントを身に纏った女性。その正体は、『闇王国ダークキングダム』の団長の側近であるギル=レイチェルバトラーであった。


 ガイルズの拳を喰ったギルの顔からは謎の煙が上がっていた。


「……あなた、どう見ても聖職系の戦闘職の方には見えませんが……」


 ガイルズから受けた攻撃に疑問を持ちながら立ち上がるギル。


「ああ……俺はそんなもんじゃねぇよ……言うならあんたらみたいなのを狩る獣だ」


 そう呟くやガイルズは人間では出せないような速度で飛び出しギルに詰め寄ると再び拳をギルに放つ。しかしガイルズの拳はギルの顔を捉えることが出来ず、ギルの背後にあった凍った木にぶち当たる。すると凍った木に亀裂が入り砕け散り氷の結晶となってバラバラと地面に落ちていった。


「夜を歩く者、『夜歩者ナイトウォーカー』……俺はお前達を滅ぼす存在だ」


 砕け散った凍った木から手を引き抜いたガイルズは、ソフィア達が見たことの無いような表情でギルを睨みつける。


夜歩者ナイトウォーカー……」


 ガイルズが口にした聞きなれない言葉を復唱するソフィア。その言葉がどんな意味を持つのかソフィアには理解できなかったが、長剣を手に持ちガイルズに向けた女性が人間では無いことだけは理解するのであった。



 ガイアスの世界


夜歩者ナイトウォーカー


 基本夜を活動時間とした種族で数百年前まではその勢力は人間を凌駕する程であった。人間達にとって夜歩者ナイトウォーカー達は脅威の存在であったが、ある時を境にして夜歩者ナイトウォーカーは衰退していき、現在では数百程度程の数しかいないと言われている。

 夜歩者ナイトウォーカーを忌み嫌う者達は、夜歩者ナイトウォーカーの事を化物と呼ぶ。化物と呼ぶ理由はいくつかあるようだが、姿形は自分達にソックリなのに魔物のように凶悪で恐ろしいからだという人間達の恐怖のあられからくるものが多いようだ。

 

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