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もう少し真面目に合同で章(アキ&ブリザラ編)8 口にする言葉

ガイアスの世界


日々平穏、旧本店が存在する理由


 世界各地に展開する日々平穏。その本店はヒトクイの首都にあるガウルドのもっとも人が行き来する大通りにある。しかし最初からその場所にあった訳では無く、開店当時は大通りの隅、冒険者や戦闘職の者達が次の冒険もしくはダンジョンに行く為に準備を整える通称旅支度通りの一角にあった。

 人気が出て人の行き来も多くなったことによって日々平穏本店は大通りの中心に移転することになったのだが、なぜ旧本店はそのまま残っているのか、しかも人が立ち寄れないような結界が施されているのか、それは全て創設者ンキの我儘である。

 武具を探求する為、日夜鍛冶師の技術を高めていたロンキは、日々忙しいく騒がしい本店に嫌気がさして倉庫のようになっていた旧本店を勝手に自分の工房にしてしまったのである。

 店の看板であるロンキが本店に居ないという事実は従業員からしてみれば死活問題であったが、創設者ロンキの我儘を誰も咎めることが出来ず、結局現在もロンキはそこで鍛冶師として活動を続けている。


 




 もう少し真面目に合同で章(アキ&ブリザラ編)8 口にする言葉




 剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス




「……はぁ……一体何だったんだあの猫獣人……」


クイーンの能力によって人より遥かに疲労に対して耐性があるアキだがその能力も精神まではカバーできないのか、自分達が今まで居た日々平穏旧本店を見つめるその表情はゲッソリとしていた。


「は、ははは……私は楽しかったですけど……」


焦燥するアキの表情に苦笑いを浮かべながらロンキとの出会いが楽しかったと自分の意見を述べるブリザラ。


「ハッ! 私は一体ッ!」


日々平穏、旧本店からブリザラに連れられ外に出たピーランは我を取り戻したように周囲を見渡す。どうやら店内での自分の奇行は覚えていないようだった。


「ピーランはこれからあそこには近づかないほうがいいかもね……」


自分の状況を整理しようと頭を抱えるピーランを見ながらそう呟くブリザラの表情は苦笑いを引きずっていた。


『冗談では無い! あの毛玉が傍にいて我々は僅かも生きた心地がしなかったぞ!』


ブリザラの言葉に冗談では無いと怒りを露わにするキング。


「ねぇなんでキング達はそこまでロンキさんの事を嫌がるの?」


普段、冷静なキングとクイーンがあそこまで取り乱したことは珍しく、そんな珍しい状況に興味を抱いたブリザラは、なぜそこまでンキに対して取り乱したのか真正面から自分の疑問を二つの武具にぶつけた。


「……」


そんなブリザラ達の様子を黙って見つめるアキ。興味があったのかブリザラの問に口を出さずアキはジッとキングやクイーンの返答を待った。


『……それは、あの毛玉……いえ、あの人物が……』


外に出てから黙りこんでいたクイーンが口を開く。


『なッ! ま、待てクイーン』


クイーンの行動に慌てるようにその言葉を遮るキング。


「……ん? どうした?」


明らかに不自然なキングの行動に高圧的な態度で首を傾げるアキ。


「う、うん、どうして止めたの?」


アキに続くようになぜクイーンの言葉を遮ったのか尋ねるブリザラ。


『くぅ……王よ、これは我々の問題だ、王や小僧が気にする必要は無い』


無理矢理にでも何かを隠そうとする雰囲気がその声から漂うキング。だがそれでもキングは自分の意思を貫くようにブリザラの問に答えずぴしゃりと話を終わらせようとした。


「……おいおい、ここまで俺を引っ掻き回しておいて、俺達は関係無いってのは筋がとおらねぇぞ、盾野郎」


キングやクイーンに重要な話ははぐらかされることが多いアキは今回逃がさないというようにキングの文言に呆れたような表情を浮かべる。


『……』


この場にいる者達に語る気が一切無いキングは、最後の手段というように黙りこんだ。


「ああ? はぁ……はいはい、いつものだんまりか……たく表情がわからねぇ奴はこれだから……お前な、俺に助けを求めておいてその態度は何だッ!」


先程まで憔悴していた者とは思えない苛つきを見せるアキは、ブリザラが背負うキングに顔を近づける。


「近づくな!」


ブリザラとアキの距離が近づいたことに即座に反応したピーランは、未だ混乱を残しつつも自分の役目の一つである護衛の任務を果たそうと二人の間に割って入った。


『……助けただと? お前はただあの毛玉の話を聞いていただけではないか!』


確かにキングはアキに助けを求めた。しかし実際その場でアキがやったことと言えばロンキの話を聞いていただけだと主張するキング。


「ほほう、無様な姿を見せていた奴の言葉とは思えない上からの物言いだな、このヘタレが!」


キングの言葉に今にも盾に襲いかかりそうな表情を浮かべるアキ。


「ま、待ってくださいアキさん!」


今にも人間と盾による傍から見れば不思議な喧嘩が始まりそうな気配にすかさず言葉で割って入るブリザラ。


「キングが語りたくないということはその……えーと、禁則事項? に引っかかっているんですよ、だから喋りたくても喋れないんじゃないですか?」


キング達がロンキに対して恐怖を抱く理由を語らないその訳をそう汲み取ったブリザラは今にもキングに飛びかかりそうなアキを落ち着かせようと両手をバタバタと広げた。


「ああ? あの猫獣人に関しての事が禁則事項だって言うなら、こいつらはその時点で即座に禁則事項だって言ってだんまりを決め込むはずだろう? だがなぜかクイーンは喋ろうとした……この時点でこいつらにとってあの猫獣人は禁則事項に該当しないってことだろう」


 以前キング達は自分達の中に存在する禁則事項について悲劇を繰り返さない為だと語っていた。禁則事項とは、言語を持つ生物と言葉を交わすことが出来る自我を持つ伝説の武具であるキングやクイーンに施された言葉を制限する封印プロテクトのことである。

 主にキングやクイーンに施された禁則事項の対象となる事柄は、自分達が作られた時代、過去についてであり、それに関連した事柄は全て語ることは出来ないようになっている。それは所有者であっても例外では無く、アキやブリザラも禁則事項に引っかかるキングやクイーンのことについては何も知らない。

 もっとも近しい存在である所有者にすら語ることが出来ない自分達の過去や存在理由。そこまで厳重に過去や存在理由を隠すのは、キング達が口にした悲劇を繰り返さない為という言葉が関係している。強力過ぎる武具は一瞬にして世界を滅ぼす、一つ所持するだけで世界の状況を一変させることが出来る程の力を持つと言われている自我を持つ伝説の武具。その能力は所有者として未熟ではあるが自我を持つ伝説の武具を扱うアキやブリザラの戦いを見れば明らかである。

 そんな強力な力を前にした者の中には当然、同じ物を作りだしたいと思うものがいてもおかしくは無い。ロンキのように武具に対して並々ならぬ探求心を持つ存在ならば尚の事、自我を持つ伝説の武具という存在には興味を惹かれてもおかしくは無い。そしてもしロンキのような者達が自我を持つ伝説の武具を作りだすことに成功すればその先に待つのは、強力な力を持った武具同士による争いそして滅びだ。

 それを理解していたからこそ自我を持つ伝説の武具の製作者は、自我を持つ伝説の武具達に禁則事項を与え、安易に過去や自分達のことを語らせないようにしたというのが、キングやクイーン達が禁則事項に関して認識していることであった。

 しかしキング達は自分に都合が悪い事、禁則事項に触れていない事でも禁則事項という便利な言葉を用いて話をはぐらかすことがあることをアキは知っていた。だからこそクイーンとキングの行動の違い、認識のズレに目をつけていた。


『……マスター、実は……』


『よせクイーン!』


何かを語ろうとするクイーンの言葉を再び遮ろうとするキング。


『キング……禁則事項の一部解除……これには何等かの意味があると私は考えています、だから……』


自分の言葉を遮ろうとするキングに対して禁則事項の一部解除という気になる言葉を残すクイーン。その口調には強い想いが籠っていた。


『……うむ、わかった……だが、これによって生じる全ての事柄はクイーン、お前の責任とする……』


クイーンの想いに理解しつつも納得はしていないキングは、これから話すことで起るかもしれない全ての責任は全てお前にあると冷たく突き放しそのまま黙りこんだ。


『……ありがとう、キング……」


キングに冷たく突き放されたのにも関わらず優しい口調で礼を言うクイーン。


『それではあの毛玉……ロンキが一体私達にとってどういう存在なのかをお二人にお話します』


アキやブリザラが感じていた疑問、ロンキが自分達にとってどういう存在なのかについてクイーンはゆっくりと語り始めるのだった。







ガイアスの世界


禁則事項


 自我を持つ伝説の武具達に与えられた禁則事項とは言語を制限する一種の封印プロテクト。その存在理由は自我を持つ伝説の武具が作られた時代のことや、製造方法を知られない為である。

 自我を持つ伝説の武具の製作者は、後の未来に自分が作りだした物を真似る者達が現れそうなれば世界が滅びることを予測しているようで、そうならない為に自我を持つ伝説の武具達に禁則事項という言語制限をつけたようだ。


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