真面目で章 5 (スプリング編) 盗賊団 闇王国(ダークキングダム)
ガイアスの世界
闇を背に王国を築こうとしている者達が住まう町
ガウルドの端に存在する旧戦死者墓地の地下に存在する町ギンドレッド。その面積はガウルドの半分程だと言われている。
なぜ町が築ける程の空間が旧戦死者墓地の地下にあったのかは謎であるが、そこを利用して表社会で生きていけなくなった者達が集まりできた町である。
しかしならず者達で作り上げられた町、秩序などは無いに等しくギンドレッド誕生直後は争いが絶えなかったという。
しかしある日を境にならず者達が住む町であったギンドレッドに変化が訪れる。
それがこの町を支配している男『闇王国』の団長の存在であった。それまで全く秩序が無かったギンドレットを恐怖で支配し数ある盗賊団の派閥を壊し一つにしたのである。
そしてギンドレッドに唯一と言っていい秩序が生まれる。それは『闇王国』は絶対である。
もしその秩序を無視すれば待つのは死。それもとんでも無い苦しみを味わった上での死だという。それを刷り込まれた者達は『闇王国』の団長に忠誠を誓い今日に至るのである。
闇王国には外道職の手練れが集まっており、他の盗賊団が闇帝国に手を出そうものなら、数時間も絶たずして団の一人残らず、その者達の家族すらこの世から消されると言われている。それゆえに闇王国に手を出す者達はギンドレッドにはいない。
現在事実上闇帝国は、国といっても過言では無いほどの力を有している。しかしその力を持ちながら地上にあるガウルドに対してはそこまで派手な行動を起こしてはいない。
勿論ヒトクイもガウルドの地下に『闇王国』が存在している事は知っているが、現在殆ど対策がとられていない。
そんな状況にガウルドに住む者達の中では裏でヒトクイと『闇王国』に繋がりがあるのではという考えを持っている者もいる。
その真意は定かでは無いが、ヒトクイと『闇王国』に何等かの関係がある事は間違いないと言ってもいいだろう。
真面目で章 5 (スプリング編) 盗賊団 闇王国ダークキングダム
剣と魔法が渦巻く世界ガイアス。
「……」
静まり返った暗く光の届かない地下へと続く道を少年は一人歩く。そこが月の神の誕生を祝う祭りが行われている場所と同じ場所とは思えない程静寂で暗い。しかし少年は何も見えない暗い道を一切の迷いなく進んで行く。
— ガウルド地下 闇を背に王国を築こうとしている者達が住まう町 ギンドレッド ―
小さな島国『ヒトクイ』の中心である町『ガウルド』。その町で職に有りつけず路頭に迷った者達が最後に辿り付く場所、裏社会に足を踏み入れ堕ちていった者達がたどりつく場所が『ガウルド』の片隅にある旧戦死者墓地の地下にある町『ギンドレッド』であった。
統一されてから数年後、新たな場所に戦死者墓地が作られた為に、全く意味を成さなくなった旧戦死者墓地は忘れ去られたように人の行き来が殆どない。墓地の跡地ということもあり、地元の人間も気味悪がって足を踏み入れない旧戦死者墓地は、人の道を外れた者や脛に傷がある者、外道職が隠れ住むには打ってつけの場所であった。
それを聞きつけた者達が一人また一人と集まり気付けば旧戦死者墓地の地下に大きな空間を作りそこに町を築き上げるまでになった。
しかし外道職や人の道から外れた者、脛に傷がある者の集まりである以上、当然争いは絶えない。『ギンドレッド』と名付けられたその場所は争いの中心となった。その場所を独占する為に何十もの盗賊団が『ギンドレット』を奪う為に争いそして散っていった。
しかしその争いはある男の出現によって終結することになる。その男の出現を契機に『ギンドレッド』には絶対的な秩序が生まれた。その男の出現により生まれた秩序によって、隠れ住み無駄な争いだけが続く場所だった『ギンドレッド』は今や地上の『ガウルド』を脅かす存在へと姿を変えたのだった。
当時数十もの盗賊団が『ギンドレッド』を巡りいがみ合っていたが、まるで『ヒトクイ』統一を成した王のように男は『ギンドレッド』に存在していた盗賊団を吸収、『闇王国』盗賊団を築き上げ『ギンドレッド』をその手に納めた。
しかしそこまで派手な動きを見せながら『闇王国』を率いる男の素性を知る者は常に男と一緒に現れた女性だけであった。
「これからお前達に与える仕事、それは伝説の武器の捜索だ」
『闇王国』に所属する者達が集まる旧戦死者墓地の地下に作られた広い建物。その建物の中にある広い部屋の中心には団長が座る椅子がある。、しかし当然その椅子に座る男の姿は無く、その代わりのように椅子の横には黒を基調としたメイド服姿の女性が立っていた。
鋭い眼光で集まった男女百人程の団員達に話しかけると団員達はざわついた。外道職ならば盗賊ならば、いやガイアスに生きている者ならば一度は聞いた事のある伝説の武器という存在。その言葉に薄暗い広い部屋に集まった団員達は静に心の炎を燻らせる。
「『ヒトクイ』に広まる伝説の武器の噂……」
メイド服姿の女性に釘づけになる団員達。
「団長はその伝説の武器がただの噂では無いとおっしゃっている」
メイド服を着ているというのに百人の男女の誰よりも偉そうに団員に語り掛けるメイド服姿の女性。明らかに違和感がある状況にも関わらずその場にいる団員達は一人としてその状況に違和感を抱かない。いやそれ以前にメイド服姿の女性に対して恐怖の表情を浮かべる者達もいた。
「所在の判明、もしくは所有者の素性が分かりしだい、速やかに行動に移れ……所有者の生死は問わない……」
メイド服姿の女性の言葉に、百人の男女の緊張した返事が松明の灯りだけが照らす暗く広い部屋に響き渡る。
「それでは、解散!」
メイド服姿の女性は団員達に簡素で物騒な命令を下すと解散と告げて早々に後ろに広がる黒い炎によって燃える城のエンブレムが描かれた暗幕の奥へと消えていった。
黒い炎によって燃える城のエンブレム、それは現在『ギンドレッド』に限らず『ヒトクイ』中にその名が轟いている盗賊団、『闇王国』を示すものでありメイド服姿の女性を含めその場にいる百人の男女全てが、『闇王国』に所属する外道職の者達であった。
メイド服姿の女性が姿を消した事で緊張の糸が切れたようにざわつき始める『闇王国』の団員達。
「……手にすれば一騎当千、ドラゴンすら両断する伝説の武器……か……」
そんな『闇王国』の団員の中で抜きんでて強面な男が呟く。すると強面の男の部下達が頷きながら強面の男の下へと歩いてくる。
「……にしてもあの女、まるで自分が団長のように振る舞いやがって……」
強面の男であってもメイド服姿の女性は怖いのか、近くにいない事を確認しながら小さく呟いた。だがその表情は面白く無いといった表情で強面に拍車がかかる。
「仕方ないよ、『闇王国』内で団長の事を知っているのはあの女だけだからね……あの女の一言一句は団長の言葉だ……まあ、そんなあの女の立ち位置が私は気に喰わないけど……」
ドスドスという重量感のある足音をさせながら、かすれた声を張りあげ強面の男達の下へやってくる巨大な影。強面の男達の前に現れたのは男達の二倍はあるかという巨体を揺らす女性であった。
「レイチェル……まだ近くにいるかもしれないんだ、あんまり声を張りあげるなよ」
その姿とは違い可愛らしい名を持つ巨大な女性レイチェルに声を落とすよう注意する強面の男。
「なんだいマルコ、あの小娘にビビってるのかい?」
こちらも顔に似合わず可愛らしい名を持つ強面の男、マルコを挑発するようにレイチェルはニタリと笑みを浮かべながら言う。
「な、そんな訳! ……ねぇよ……」
強く言葉を発したものの、結局尻つぼみとなり声が消えていくマルコ。
「ふん、『闇王国』で一、二を争う怪力が情けないね」
因みに『闇王国』の一番の怪力はレイチェルである。そんな『闇王国』一の怪力を持つレイチェルはその太い両腕を胸の前で汲む。しかし胸が大きいからなのか、それとも腕が短いからなのかそれともそのだらしない体型からなのかうまく腕を組めない。
「……くぅ……ぷぷ……てか、そもそも我らが団長は本当に存在しているのか? ……どうも俺にはメイド女……ギルの一人芝居にしかみえないんだが……」
必至で腕を組もうとしている間抜けなレイチェルの姿に笑いを堪え見ないようにしながらマルコは、疑問をぶつけた。
「ん?……もしギルが一人芝居しているって言うなら今ここで私達が肩を並べることは無いね……私もあんたも本来誰かの下に付くような玉じゃないんだから」
腕を組むのを諦めたのか両腕を下に下ろしたレイチェルは狂気を隠しきれない視線をマルコに向ける。
「……違いねぇ……」
自分が笑いそうになつたのを手で隠しどうにか誤魔化すマルコはレイチェルが向ける視線から目を逸らす。
元々マルコもレイチェルも『ギンドレッド』にある数ある盗賊団の一つで頭をやっていた存在。そんな者達が今は肩を並べ同じ盗賊団の一味に成り下がっている。それを取り仕切っているのが団長では無くメイド服姿の女性、ギルであるとは到底考えられないとマルコの疑問を否定するレイチェル。そのレイチェルの言葉に納得したのか頷くマルコ。
「や、やっぱり……団長は……」
「馬鹿、あれはただの噂、しかも何の確証も無いしょうもない噂だよ」
団員の一人が怯えたように団長に関する噂を口にしようとする。しかしすぐさまそれを止めに入る別の団員。
『闇王国』が誕生してから団員達の前に一切姿を現した事が無い団長。団員達の間では一切姿を現さない事が拍車をかけその不気味さから色々な憶測や噂が飛び交っていた。
団員達の口から上がる噂の中で最も有名でありそして現実味の無い噂が『闇王国』の団長は人間では無いというものであった。
この噂で出てくる人間という言葉は獣人や亜人という類も含まれている。その人間以外の存在が『闇王国』の団長であるという噂ははっきり言って陳腐な噂話でしかないと鼻で笑ってしまう程度の物であるのだが、何故かこの噂は消える事無く残り続けていた。
団員達誰もがこの噂を鼻で笑い一蹴するが、しかしその実、団員達の心の中には実はそうなんじゃないかという疑念が無い訳では無く団員達の心を気持ち悪く漂い続けていた。
「……まあ、今は団長の正体が何であるかよりも伝説の武器を探すのが先だ、前回仕事でミスって無理難題な仕事を振られたあいつのようにはなりたくないからな……」
「ああ、そうだね……そうならないようお互い頑張ろうじゃないか」
一つ前の仕事でミスを犯した団員の行く末を知るマルコとレイチェルは自分達がそうはならないようにと互いに念を押す。団員達もマルコやレイチェルの言葉に頷くのであった。
マルコとレイチェルを中心とした話が一段落つき、団員達はそれぞれ仕事へ向かおうと出口へ足を進めていく。そんな中、その流れに逆らうように出口へ向かう団員達を見送るように出口の扉の横にある壁に背を預けている少年の姿がマルコとレイチェルの視線に入った。
「おう、ガキ、今日は稼げたか?」
「……は、はい」
声をかけてきたマルコに怯えるように返事する少年。
「うーん、もう少し稼げるようになったら私が遊んであげるよ」
そう言いながら怯える少年の尻を軽く撫でるレイチェルは、少年の尻の感覚を味わうとまるで男のソレのような下品な顔つきでニタリと笑みを浮かべた。
「……」
何と返していいのか分からないと言った表情で固まる少年。
「ガッハハハ! お前がこのガキと遊んだら一秒もしないうちにこのガキが圧死するからやめておけ」
「うっさいよ、あんたを圧死させてやろうか!」
「それは御免だ」
高笑いしながら部屋から出ていくマルコとレイチェル。その後ろ姿を何も言わず見送る少年。しかしその少年の目には深く暗い何かが写っていた。
「もう出てきて大丈夫だよ」
団員達が全て部屋から出ていった事を確認した少年は、『闇王国』のエンブレムが描かれた暗幕に視線を向けてその裏に隠れている者に声をかけた。少年の雰囲気はマルコやレイチェルと話していた時のようなものでは無く同一人物には思えない程大人びていた。
少年の言葉に反応するように『闇王国』のエンブレムが描かれた暗幕からチラリと覗かせる者が現れる。そこに居たのは先程団員達を冷たい視線で見ていたメイド服姿の女性、ギルであった。
「本当に?」
小首を傾げながら少年に聞くギル。先程まで冷たい視線で団員達に指示を出していた者とは思えない程にギルの動作は幼さない。
「大丈夫だよ、もう僕一人しかいないから」
暗幕に近づきながらまるで妹をあやすように両手をギルに向ける少年。
「スビア……本当に大丈夫?」
幼さを通り越し怯えたようにも見えるギルはそう言いながら周囲を見渡し少年、スビアの言葉が正しいかを確認する。
「大丈夫」
「ふぇ~怖かったよ」
周りにスビアしかいない事が確認できたギルは暗幕から抜け出すと凄い速度で両腕を広げたスビアの胸へと飛び込んで行く。
「よく頑張ったね、えらいねギル」
スビアは自分の背丈が一回り違うギルの頭を撫でる。
「団長からの指示をうまく皆に伝えられたかな?」
膝をつきスビアと同じ目線の高さになったギルは上目遣いでスビアの顔を見つめる。
「ああ、団長からの指示はちゃんと皆に伝わっているよ、みんな伝説の武器を手に入れる為に動いてくれている」
スビアの言葉を聞いたギルの表情はまるで子供のような無邪気で柔らかい笑顔になった。
「よかった~」
ギルの笑顔につられスビアも笑顔になる。
「ギル、これからも頼むね……」
「うん、スビアの為に私頑張る」
まるで子供のようにスビアの言葉にはしゃぐギル。
「それじゃ俺も伝説の武器を取りに行ってくるよ」
ポンポンとギルの頭を優しく叩き柔らかい笑みをギルに向けるとスビアは出口へと向かって歩きだすギルはまだ一緒にいたいのか名残惜しそうに掴んでいたギルの腕を離した。
「スビア気をつけてね」
スビアの背に向かい大きく手をスビアに向けて振るギル。
「うん」
ギルのほうには振り向かず、手だけを振るスビア。だがスビアの表情はギルといた時とは違い優しい笑みなど微塵も無い獲物を見つけた狩人のような冷たいものになっていた。
ギルと別れスビアが部屋の外へ出ると、そこには先程外に出ていったはずのマルコとレイチェル、そしてその部下数人の姿があった。
「ど、どうしたんですか先輩方?」
再び気弱な少年のような表情でスビアは目の前に現れたマルコ達に話しかける。
「おう」
するとマルコはニカリと嫌な笑みを浮かべた。
「ガキ……お前、見た目に反して中々なことしているじゃねぇか……」
「まさかあのギルとあんたがそんな関係だったなんて、お姉さん悲しいよ」
威圧するようにマルコとレイチェルはスビアに顔を近づける。すると周りの部下達が下品に笑った。マルコ達はスビアとギルの様子を外から覗いていたようだった。
「まさかキレッキレのギルが、お前の前では甘えん坊だとは知らなかったぜ」
今まで見たことの無いギルの姿に少々興奮気味のマルコは何か企てているような表情でスビアに話しかける。
「あれなら、少し怖い思いをさせればすぐにでも俺達の玩具にできるかもな」
マルコがそう言うと部下達は更に下品な笑い声を上げる。
「イヤだね、男ってのは……」
そう言いながらもマルコやその部下達に負けず劣らず下品な笑みを浮かべ笑うレイチェル。
「しょうがないね、それじゃ私はあんた達が楽しんでいる間、この子と遊ぶ事にでもするかね」
巨体とは思えない速さでレイチェルの太い腕はスビアの体を捉え持ち上げる。
「ぐふふ……スビア……あんな女とじゃなくこの私とこれからは良い事をしようじゃないかええ?」
既に理性というタガが外れただの性欲の塊と化したレイチェルは、自分の手の中に居るスビアを見つめながらよだれを垂らし始めた。先程まで下品な笑い声を上げていたマルコとその部下達はレイチェルのその姿に顔を引きつらせる。
「あんた達! そんな所で突っ立ってないで早くあの女の所に行きな!」
邪魔だと言うようにレイチェルは目を血走らせながらマルコ達を怒鳴りつけた。するとマルコの部下達は我先にと先程までいた広い部屋へ続く扉をあけ飛び込んで行く。それに続くように部下達の後を追って扉を通ろうしたマルコの足が不意に止まる。
「……スビア……俺達はこれからお前の愛しのギルと大人の時間だ……楽しんでくるぜぇぇぇひひひ」
嫌な笑みを浮かべ下品な笑い声を漏らしながらマルコはレイチェルに捕まるスビアにそう言うと扉の中にある部屋に勢いよく飛び込んでいった。
「……ごゆっくり……」
ゆつくりと閉まっていく扉の隙間から覗くマルコの背を見送るスビアはレイチェルに聞こえないように呟く。
「ん? どうしたんだいスビア?」
自分から視線を背けたままのスビアに首を傾げるレイチェル。
「いえ……別に……」
一切レイチェルに視線を合わそうとしないスビア。
「ん? 妙に大人しいね……普通男ならここで人騒ぎするもんだろ? まあそれでも私はかまわないさ、グゥフフ……さぁ、楽しもうじゃないか……スビア」
自分の大切な女性の身に危機が迫っているというのに一切喚かないスビアに疑問を抱くレイチェル。しかしそのような疑問は今のレイチェルにとってはどうでも良い事であった。もう限界というようにレイチェルは大きく口を開ける。その姿は子供を食べようとしている魔物のようにさえ見る。しかしスビアの様子に焦りや恐怖というものは一切感じられない。どこまでも平坦。その状況に全く心が動いていない。そんな感じであった。
「ええ……それじゃちゃっちゃっとすませましょうか……」
「うん?」
スビアがレイチェルに視線を合わせそう呟く。その言葉にレイチェルが首を傾げた瞬間であった。レイチェルの巨大な顔は首を傾げたまま宙を舞う。まるでボール遊びのように地面で跳ね転がっていくレイチェルの首。切断されたレイチェルであった巨体からは大量の血が噴き出し一瞬にしてその場を血の海へ変えていく。
動きを伝達する脳を失ったレイチェルの体は捕まえていたスビアを手放すとそのまま大の字に倒れた。
「お前のような奴の血は臭くて飲めたものじゃないな……当然その脂しかない肉も口に入れるのも御免だよ……」
頭と体に別れたレイチェルの肉塊を見ながらスビアは人間とは明らかに違う深い『闇』を纏った笑みを浮かべる。
「「「「ギァアアアアアアア」」」」
突然響き渡る野太い悲鳴の数々。『闇王国』の者達が集まっていた部屋に響き渡ったのはギルの悲鳴では無くギルを狙ったマルコ達の悲鳴。
「……」
マルコ達の断末魔の悲鳴を聞きながら部屋へと続く扉を見つめるスビア。
「ギルは雑食だからな……」
スビアがそう呟くと同時に部屋の中で響いていた悲鳴がピタリと止む。スビアは扉か視線を外すと視界が真っ暗であるはずの暗い道をまるで見えているかのように進んで行く。そしてスビアの体は闇に溶け込むかのように消えていくのであった。
登場人物
スビア=スネック
年齢 推定13歳
他は現在不明
見た目は少年だが、どこか大人びており時たま冷たい残忍な表情をすることもある。
職業は盗賊であり、その腕前も一流であるようだが、他の団員達の前では気弱な少年を演じているようだ。
闇王国団長の側近であるギルと仲がいい。
ギル=レイチェルバトラー
年齢 推定26歳
盗賊団、闇王国団長の側近で唯一団長のことを知る人物。
普段は冷たい表情と鋭い眼光で部下に命令を下す立場にあるが、スビアと二人だけになるとその容姿から想像も出来ないような幼い性格になる。
職業は暗殺者で団長の側近でありながら守護者という面も持っている。
腕前も一流で、大柄の男数人に囲まれても人が自然に息を吸うがごとく殺せると言われている。
戦闘状態の彼女と相対した者達の最後はみな恐怖に引きつった表情で死んでいるそうだ。
『闇王国』団長
何もかも不明
素性を知る者は側近であるギルだけと言われているがスビアも何かを知っているようだ。しかし現在はほとんど謎に包まれた存在である。
団員達の中で広まっている噂では、人間ではない者だと言われているがそれも定かではない。
彼の力によってはギンドレッドは一定の秩序を保っていると言っていい。それ故にギンドレッドの支配権を奪いにやってくる者達がよくいたのだがそれは昔の話で、彼の命を狙いにやってきた者達は全て側近でありボディーガードでもあるギルによって殺されている。
その事実がある現在、彼を狙おうとする者は殆どいなくなったという。




