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もう少し真面目に合同で章(アキ&ブリザラ編)5 きな臭い話

ガイアスの世界


ヒラキ王との会話


 ヒラキ王と対面を果たしたブリザラ達。その中で交された内容は他愛無いことから真面目なことまで様々なものであった。その中に先代のサイデリー王、つまりブリザラの父に関しての話もあった。

 両国とも非戦争という同じ志を掲げる国である為にヒラキ王と先代のサイデリー王は話が合ったようで、良い関係を築いていたようだ。

 色々な話をする中で特に先代のサイデリー王は自分の娘ブリザラの事をヒラキ王によく話していたようでハイハイができるようになった、自分をお父さんと呼ぶようになったとブリザラの成長を逐一ヒラキ王に報告していたようだ。



もう少し真面目に集合で章(アキ&ブリザラ編)5 きな臭い話




剣と魔法の地下から渦巻く世界、ガイアス




「……ここが……」


 夏本番を迎えどこもかしこもうだるような暑さが広がるガウルドの商業区の一角。だが夏の暑さに負けない程の熱さを発する場所が、商業区には存在する。凄まじい熱量を感じるその場所を前に状況を把握しきれないブリザラはポツリと呟いた。


「そう、ここが日々平穏本店です」


 暑さによるものなのかそれとも大勢の人々が行き来するその場所に圧倒されているからなのか茫然とするブリザラにピーランはそう答えた。

 絶えることのない人の流れ、その流れの先には貴族の屋敷程ある建物。そこがヒトクイ発祥であり今や世界一と言われる武具屋、日々平穏本店であった。


「サイデリーではここまで人は多くないよね……」


今にも人の波にさらわれそうな程に店の外、中にいる人の数にそう呟くブリザラ。

 世界一と言われるだけあって、世界中の国々に支店を持つ日々平穏。その数は100を超えると言われ、その広がりは未だに続いている。当然大国と言われるサイデリー王国にもサイデリー支店と呼ばれる日々平穏があり、ブリザラも日々平穏の存在は認識している。しかしサイデリーでも人気な武具屋ではあるものの、本店に比べサイデリーの店の規模は本店に比べると半分以下、人の行き来もここまで多くはない。


「本店ですから、世界各地からわざわざこのヒトクイに武具を買いにやってくる者が多いようです」


自分の出身国が発祥ということからなのか、何故か自慢げに日々平穏について語るピーラン。


「……本当だ、いろんな国の人がいるね」


ピーランの説明を聞きながら日々平穏を行き来する人々の姿を眺めるブリザラは頷く。確かに日々平穏に入って行く者、出てくる者は様々な国、人種が多い。それこそ数十年前でヒトクイでは珍しかった亜人や獣人と言った種族の者達の姿も多くみられる。


「……でも、日々平穏とその土地に合わせた防具を販売するのが特徴でしょ? だったら自分の国のお店で買えばいいんじゃないの?」


 日々平穏が世界一と呼ばれる理由の一つは、地域密着型にあった。その国、地域に密着した武具、サイデリーで言えば防寒に特化した防具などを販売することで、利便性を追求することで日々平穏はその人気を不動のものにしているのである。しかしだからこそブリザラは、わざわざ本店にまで足を伸ばす必要は無いのではないかと疑問を抱いた。


「それはこの本店に凄腕の鍛冶師がゴロゴロいるからですね、多分行き来している人々の半分以上は一点物を注文しに来ているのだと思いますよ」


 国や地域に寄り添った商品展開ばかりが日々平穏を世界一に押し上げた理由では無い。武器や防具を作る職人、鍛冶師の腕の凄さというものも人気な理由の一つだ。

 元々手先が器用なヒトクイの人々、その技術は町の建物にある細やかなデザインにも表れている。そんな手先の器用な者達が職人や鍛冶師として武具を一つ一つ作り上げていく。更には客の細かな要望に応える、一点物、オーダーメイドも可能であるということもありガウルド本店にはそれを求めてやってくる者達が大勢いる。しかし実際の所あまりにも人気で予約が一カ月、二カ月、下手をすれば半年待ちまでいるというのが現在の状況であった。それにも関わらず予約が途切れないのは、一点物やオーダーメイドの品質が極上であるからだろう。


「ですが本当に日々平穏が人気な理由は……可愛い猫のマス……ゴホゴホッ……失礼」


何かを言いかけて突然咽るピーラン。


「……失礼、日々平穏が本当に人気な理由は創業者にしてガイアス一の鍛冶師とも言われるロンキの存在です、彼がつくる武具はどれもが一級品で生涯新調する必要が無いと言われる程に凄い品を作ることで有名です、彼が作る防具を求めて人々はこの本店に通うといっても過言ではありません」


日々平穏を創業し、一代で世界一にした男、ロンキ。鍛冶師としての彼の腕を求め、様々な国々から冒険者や戦闘職、一流の料理人までもが武具や包丁などを作ってもらう為にやってくるのである。


「へーみんなその人に武具を作ってもらう為にここに来ているんだ」


日々平穏という店の事はそれなりに知っていたが、創業者のことまでは知らなかったブリザラはそこまで偉大な人物がこの本店にいるのかとピーランの言葉に頷いた。


「……ですが、ここにいる者達の殆どは彼に会うことはできないでしょう」


「どうして?」


ロンキを求め店にやってくる殆どの者達が会うことが叶わないと言うピーランの言葉に首を傾げるブリザラ。


「それは……ロンキという人物が非常に一癖も二癖もある変わり者だからという点と、月の半分以上をヒトクイ各地にある遺跡ダンジョンで鉱石を掘って過ごしているからと言われています」


ロンキという人物は非常に気難しい人物、悪く言えば変わり者であると噂で聞いたことがあるピーランは、ロンキが鍛冶師であると同時に冒険者という側面も持っているという情報と共に滅多にあうことが出来ない理由を首を傾げたブリザラに説明した。


「ふーん」


興味があるのか無いのか、今一判断の付かない返答をするブリザラ。


「あ……ま、まあ、私達には関係のないこと、とりあえずここでブリザラ様の防具を新調しましょう」


ロンキの話に興味が薄れ始めていることを悟ったピーランは、自分達には関係の無いことだと話題を畳むと日々平穏に自分達がやってきた目的をブリザラに伝えた。


「新しく防具を買うの? 別にこのままでも……」


 混雑する日々平穏の店内を光景を眺めながらブリザラは僅かに表情を引きつらせる。店内からは目で確認できる程の湯気が立ち上っていたからだ。サイデリーという極寒の地域で生活していたブリザラは寒さには強いが暑さはあまり得意では無い。特にヒトクイのような高温多湿な地域は特に苦手なようで、日々平穏の店内が外以上に暑くジトジトしている事に体が拒否しているようだ。


「大丈夫です、日々平穏では耐熱に特化した涼しい防具があります、それを着ればブリザラ様も多少このヒトクイで快適に過ごせるようになるはずです」


「そんな防具まであるの! 本当に凄いね日々平穏」


まるで日々平穏の回し者であるかのようなピーランの言葉に目を丸くし驚くブリザラ。


「なので少しだけ我慢してください」


目的とする防具を買うまでは少し我慢してくださいと店内に入ることを拒むブリザラの背中を押すピーラン。


「う、うん、分かった、頑張ります」


ピーランに背中を押され暑さと高温が待つ店内へと入ることを決意するブリザラ。


「……ん?……ああ、お前居たのか……」


あたかも今まで存在を視認していなかったというようにピーランは機嫌悪そうに黙りこむアキに視線を向けそう口にする。


「……その恰好だと他の客に通報される可能性があるからお前は店の前で待っていろ」


ブリザラと話す時よりも一つ二つ低くした声で不機嫌そうにずっと黙りこんでいるアキに店の外で待っていろと告げるピーラン。


「……ふん、言われなくても誰があんなゴミゴミした場所に付いていくか、さっさと行ってこい、このクソメイド」


自分とて一緒に店内に居るのは願い下げだと吐き捨てるようにブリザラの背中を押すピーランに返事するアキ。


「それではブリザラ様参りましょう!」


アキが同行しない事を知ったピーランはどこか楽しそうに声を弾ませるとブリザラの背を押しながら一緒に日々平穏の店内へと入って行った。


「はぁ……」


騒がしい奴らが居なくなったと言いたげにため息を吐くアキ。


『どうしましたマスター?』


ため息を吐いたアキを心配して声をかけたのは、アキが身に纏う漆黒の全身防具フルアーマー、自我を持つ伝説の防具クイーンだった。


「……帰ってきたか、遅かったな……」


 度々アキの下から存在が消えたように居なくなるクイーン。最初の頃こそ驚きはしたが、今はもうそれにも慣れ彼女が何処に行っているのかも把握しているアキは、普段よりも遅い帰りのクイーンにそう口を開いた。


『その……実は……』


歯切れの悪いクイーン。心なしか声に元気が無い。


『……ビショップが我々に宣戦布告をしました』


「……ッ!」


一瞬にして元気が無い理由を理解したアキはクイーンの言葉に目を見開いた。


「……チィ……悠長に一カ月も足止めを喰らって結局このざまか……」


目を見開いていたアキの顔がゆっくりと苛立ちの表情に移り変わる。

 ヒトクイに飛ばされてから一カ月、アキ達はガウルドから一歩も外には出ていない。それはヒトクイの王による指示によるものだった。

 当然アキは素直に指示に従う気も無く試練の場へと向かおうとした。だが向かおうとしたアキの足を一睨みでヒラキ王は止めた。

 統一戦争から数十年、見た目は変わらぬとも年齢で言えばとっくに初老を迎えているはずの王が放つ威圧感は未だ戦いに対して現役の姿勢をとる者、強者のものであることをアキに主張していた。そんなヒラキ王の強力な威圧感に当てられたアキの足は不覚にもそれ以上進めることが出来なくなった。クイーンの能力や黒竜ダークドラゴンの力をその身に内包し強者として申し分ない実力を持つはずのアキを、ヒラキ王はその威圧感でその場に釘付けにしてしまったのであった。


「……くぅ……今思い出しても腹が立つ、何故俺はあそこで躊躇した」


なぜヒラキ王を前にして戦うことを躊躇したのか自分の行動が理解できないアキはその時の事を思いだし苛立ちを露わにする。当然一国の王に刃を向ければその先に待つのは国を相手にした戦い。しかし国一つと戦うリスクなど今のアキには何の問題もないはずであった。そうアキはヒラキ王一人に対して戦うことを躊躇してしまっていたのだ。それほどまでにヒラキ王という存在は強大な力を秘めた強者であるということを認識するアキは重ねて苛立ちを露わにする。


『……兎に角、時間の猶予がないかもしれません、即座に試練を……』


「ああ、分かってる……俺も我慢の限界だ……いくぞ」


一カ月という時間を無駄にしていると自覚するアキは、今からでも試練に向かおうと日々平穏に向かう人の流れに逆らいはその場を後にしようとした。


「……お前それ本当か?」


「ああ、日々平穏で自分に合った武具を作ってもらえないって酒場で嘆いていたら、変な奴が話しかけてきてさ、自分が御作りしますよってそいつがこの武器を作ってくれたんだよ」


 人の流れに逆らい日々平穏を後にしようとするアキの横を通り過ぎる戦闘職の二人組。


「……」


その会話に何となく耳を傾けるアキ。


「そしたら今まで苦戦していた魔物も楽勝に倒せるようになったんだよ……これなら今この町で騒ぎになっている闇帝国ダークキングダム狩りも楽勝だぜ!」


「いやいやそりゃ流石に無理だろ、でもいいな、そんなに性能がいい武具を作ってくる奴がいるなら俺にもそいつ紹介してくれよ、どうせ日々平穏じゃ予約待ちが多すぎてしばらくは作ってもらえないからな」


そんな会話をしながら戦闘職の二人組はアキから離れ日々平穏の店内へと消えて行った。


「どうもきな臭い話しをしていたな……クイーン」


自分とすれ違った戦闘職の二人組の話が気になったアキはクイーンに声をかけた。


『はい、既に識別出来ています、マスターとすれ違った二人組の片割れが持つ武器、『闇』の力が微かに感じられます』


「やっぱりな……」


黒竜ダークドラゴンの力、『闇』の力を内包しているアキは、クイーンの答えに納得した表情を浮かべる。


「どうもこの町は『闇』の気配が多いと思っていたんだ……」


ヒトクイに辿りついた時からアキがガウルド全体に感じていた『闇』の気配。その正体が分かったアキは周囲を見渡す。


「クイーン、これから一波乱あるかもしれない、今すれ違った奴みたいに『闇』の気配を持つ武器や防具を所持している奴がいたら俺に教えろ」


『はい、それは構いません、ですがマスター今は他の事に手を回している時間は……』


指示を受けつつもクイーンは自分達に残された時間が残り僅かであることをアキに伝える。


「ああ、俺もそう思う……だが、どうも何か引っかかる……」


 ビショップが宣戦布告をしたことによってアキ達に残された時間が僅かであるのは事実。本来なら今は兎にも角にも試練の場へ向かうことがアキ達にとって最優先事項のはずであった。それは理解しているし行けるものなら今からでも行きたい気持ちは当然アキにもあった。

 だが戦闘職の二人組とすれ違った時にアキは一瞬自分の中に存在する黒竜ダークドラゴンの力が僅かに荒ぶったような気がしたのだ。あくまで気の所為の範疇なのかもしれないと思いつつも何かを感じ取ったアキは自分が感じた勘を信じることにした。


「後もう一つ、出来る限りでいい、闇帝国ダークキングダム狩りの情報を手に入れてくれ」


重ねてクイーンに指示を出すアキ。それは戦闘職の二人組が話していたもう一つの話題、闇帝国ダークキングダム狩りについてだった。


『はい分かりました』


アキの指示を引き受けたクイーンは頷くように返事をする。


「さてとりあえず、城に戻るか……」


今はまだガウルドの外にでることが出来ないアキは、クイーンが情報を持ってくるまで城で待とうと足をガウルド城へと向ける。その時だった。


『……クゥ、小僧! 来てくれ!』


今は日々平穏の店内にいるはずの自我を持つ伝説の盾キングの危機迫る声が突如としてアキの頭の中に響き渡るのだった。



ガイアスの世界


 ある一部の者達に流れた噂。


 闇帝国ダークキングダムと暗い繋がりがあった者達の間で流れた数々の噂。その殆どは事実では無い虚言であった。しかし闇帝国ダークキングダムという後ろ盾を失った者達は焦りそれが虚言であるという判断が出来ずに噂に踊らされ自滅する者が続出したという。




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