もう少し真面目で章(ブリザラ編)9 白い世界、色恋、狸寝入り
アキとベンドットの関係
ベンドットがアキの事を知っていたかは定かではないがアキはベンドットの事を知っていたようだ。当時から前ムハード王の影に大暴れしていたベンドットの事を幼いアキが知っていたとしてもおかしくは無い。しかし、アキの様子からみるに、ただ知っていたというだけでは無いようだ。
だが奪う側と奪われる側、両極端にいた二人の関係が良い関係であったとは思えない。
もう少し真面目で章(ブリザラ編)9 白い世界、色恋、狸寝入り
剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス
「……ここは……」
ゆっくりと目を開けたブリザラの目の前に広がったのは、草木や建物が存在しない一面白色に染まった世界。
「……ここ何処?」
当然白以外色が存在しない場所など心当たりがないブリザラは首を傾げた。
「……確か私……」
自分がなぜこの場所にいるのか分からないブリザラは、一番新しい記憶を思い出そうとした。
「……?」
だが頭の中の記憶にこの場所に結びつくようなものは無く、それ以前にここに来る前自分が何をしていたのかもはっきりと思いだせないブリザラ。
「キング?」
所有者となってから肌身離さず持ち続けている特大盾、自我を持つ伝説の盾キングならこの状況を理解し説明してくれると思ったブリザラはその名を呼び視線を自分の手元に向ける。
「あれ?」
だがブリザラの手元にキングの姿は無かった。既に体の一部のようになっていたキングの重みが無いことに気付かなかった感覚に違和感を抱くブリザラ。
「……」
ここは何処なのか、なぜキングの姿が無いのか、理解出来ず自分の手を見つめていたブリザラは、ふと視線を白に染まった世界に向ける。
(おはよう、気分はどうだい紡ぎの王)
白い世界を再び視線に捉えたブリザラを紡ぎの王と呼ぶ優しそうな男の声が頭に直接響く。
「……誰?」
例え優しそうな声だとしても自分の頭に突然見知らぬ男の声が響けば、普通なら慌てたり疑問を抱いたりするものだが、ブリザラはその声に慌てることも疑問も抱くことなくすんなりとその声を受け入れ素直に声の主に誰と尋ねた。
(私は……創造主……君が所有するジョブアイズ……キングを作りだした者だ)
「キングを作りだした……」
「ああ……そして君達、伝説武具ジョブシリーズの所有者達に試練を与える存在でもある」
白色に染まった世界にフードが付いた外套マントを纏った男が忽然と姿を現しブリザラの前に立った。口元以外フードで隠れ表情は分からないその男は、自らを創造主と名乗りそう説明すると口元を優しく吊り上げた。
「ムハード国の復興に忙しい君の為に私自ら君の精神に入り込んできたんだ」
「私の精神の中?」
創造主の言葉を疑う様子が無いブリザラは、ただ理解できないといった表情で首を傾げる。
「ふふふ、そう、穢れを全く知らない真っ白なこの世界は、まさに君の精神そのもの……」
そう言いながら両手を広げる創造主。
「君の心は純粋だ……いや言い換えよう、君の心は無垢過ぎる、聖人なんて足元にも及ばない程に穢れを知らない……ただ人の為、国の為に……いや、世界の為に君はその時が来れば何の躊躇も無くその身を犠牲にすることが出来るだろう……故に君は穢れに対して脆い、非常に脆い……」
まるで歌うようにブリザラの心を語る創造主。すると突然、真っ白な世界に水面に滴が落ちるように一滴の黒い滴が白い世界に落ちた。すると波紋を広げるように黒い滴は広がり白い世界はたちまち黒く染まって行く。
「は、あッ!」
何かを思い出したように短い声をあげたブリザラは頭を抱えその場に崩れるように座り込むと体を震わせ始めた。
「こ、怖い……」
得体の知れない恐怖がブリザラを襲う。
「そう、それが人の悪意や憎悪、本来ならば成長と共に自分の中にそれがあることに気付き、それが常に周囲にもあることを知って行くはず……だけれど君はあの独特な環境と君自身の感受性の影響で今まで穢れを殆ど知らないまま生きてきた……いや、下手をすれば向けられていた穢れすらもその類まれな感受性で包み込んでいたのかもしれない……それが君の強さだ、だがそれは弱さでもある」
「嫌だ……怖い……怖いよ……」
「誰しもが穢れ……自分に向けられた悪意や憎悪……負の感情に対して恐怖を抱く、だからこそ自分自身も負の感情を他者に向け己を守る盾とする……けれど君は負の感情を知らない、他人を守ることはできても自分を守る術を知らない、己を守る盾を持っていないんだ」
歌うように負の感情について語る創造主は指を鳴らす。すると黒く染まった世界が再び真っ白な世界へ戻って行く。
「はっ!」
周囲が再び白い世界へと戻ると同時に自分に向けられていた負の感情から解放されたブリザラの顔には安堵が広がる。
「……紡ぎの王、これから君は選択しなければならない……その純真無垢な心を持ったまま世界の悪意に呑み込まれるか、それとも負の感情というものを知り世界の悪意を包み込むのか……」
「せ、選択?」
恐怖から解放されたブリザラは創造主を見上げながら創造主の言葉に再び首を傾げた。
「ああ、選択するんだ、これが、伝説武具ジョブシリーズの所有者である君に対して創造主である私からの試練であり、紡ぎの王である君への古き友からの試練だ……紡ぎの王よ……悩み自ら選択するんだ……そして望む世界を紡ぐんだ……」
まるで幻であるように創造主はそう言葉を残すと消えていく。
「私が……選択……する?」
創造主の言葉や声に何処か懐かしさを感じるブリザラは目の前がぼやけ意識が遠のいていくのだった。
「創造主よ……」
ブリザラがいた世界と同じように真っ白な世界が広がるその場所に立つ立派な髭を蓄えた初老の男は何かを求めるように、ブリザラの前に姿を現した人物と同じ名を呟いた。
(普通なら人の自我を模して作られた君達のような存在だけがこの穢れを知らない世界を持っているはずなんだ……だけど彼女は……彼女達は人でありながらいつも純粋で無垢だった……それ故に、ある時はその尽瘁で無垢だった心を黒く染め上げられ世界に絶望した……またある時は、穢れることを恐れ自身の半身を別の世界へと飛ばすことでその恐怖から逃れた、それらは全て双子の存在によって引き起こされたことだ……彼らの輪廻を止めなければ紡ぎの王の役目は終わらない、双子の片割れはその輪廻を崩そうとするだろう、そしてもう一方は世界を救う為にその輪廻を留めようとするだろう……ジョブアイズ、君は他の伝説武具ジョブシリーズと共にその結末を見届けて欲しい、その為に君の封印ロックを一部開放する……だがこれは紡ぎの王の選択を大きく左右するものだ……くれぐれも紡ぎの王の意思を尊重してほしい……)
「創造主……」
姿を見せない創造主に切ない表情を浮かべる初老の男。その表情はまるで親に会えない子供のようにも見える。
(……これにて、ジョブアイズとその所有者の第一試練を終了とする、次は小さな島国で会おう……)
その言葉を最後に初老の男の前から一切の気配が無くなる創造主。真っ白な世界に一人佇む初老の男は、創造主が残した言葉に静かに頷くのだった。
― ムハード国 港 宿屋 ―
「……捕縛できたのは港の輩を合わせて95人……その内一人が死亡……」
呪武器カースウェポンを所持したベンドットを倒して数時間が経ちムハードの空に太陽が昇り始めた頃、港唯一の酒場にして、現在サイデリー王国の盾士達が拠点の一つとしているその場所には隊長クラスの盾士達が集められていた。その中に紛れアキやピーランの姿もあり、ピーランの膝を枕にして眠っているブリザラの姿もあり、そんな彼らの前で今回の騒動の報告をしているのが、サイデリー王国最上級盾士ティディであった。
「……奴の強襲によって、上位精霊であるウルディネ殿が負傷、現在はこの宿の二階にある部屋で自ら手当てをしている」
「あの美女上位精霊だったのか……今度声かけてみようかな」
「俺精霊事体初めて見たよ」
ウルディネの存在自体知らない者が多く、更には上位精霊であることが輪をかけて隊長盾士達を驚かせる。
「報告中だ私語は慎め……」
少し気が立っているのか、ティディは凍ったような冷たい視線で私語をしていた盾士達を睨みつけた。
「……」「……」
まるで凍りついたように体が固まる盾士達。
最上級盾士の中で一番厳しいとされているのは当然、長を務めるガリデウスだが、怒った時に一番怖いのは眼鏡をかけた知的美人として見られているティディである。その美しい容姿から他の最上級盾士の部下達からも人気が高いティディ。普段のティディの人柄は優しさと厳しさのバランスを上手く兼ね備えた理想の上司といえる。勿論、ティディの直属の部下達も彼女の事は慕っているし中には恋心を抱いている者も何人かいる。
だがティディの直属の部下達は彼女が怒った時、機嫌を損ねている時の恐ろしさを知っている。故にティディの部下達はティディの機嫌が現在どういう状況であるかを常に把握している。その為現在機嫌が悪いティディの前で軽口を叩くような部下はいない。今私語をした者達は、一番風紀や規律が緩いとされるランギューニュの部隊から派遣された盾士達であった。
「アキ殿、精霊であるウルディネ殿に人間の治癒魔法が効かないというのは本当か?」
凍りつかせたランギューニュの部下達から視線を離したティディはその視線をアキに向け、人間が扱う治癒魔法は精霊には効かないのかと尋ねた。
「……ああ、そもそも今の彼奴は霊体に近い、本人かが言うように人間の治癒魔法は効果がない」
面倒そうにティディの問に答えるアキ。
肉体を持つ人間と霊体である精霊ではそもそものつくりが違う。よって人間には効果がある治癒魔法も精霊には効果が無い。そもそも未だその生態がよく分かっていないとされる精霊という存在には謎が多く、傷を負うこと事体知る者は少ない。ティディもこの事実は知らなかったようだ。
「そうか……色々と話を聞きたかったのだが、直ぐに部屋に籠られてしまって話が聞けなかったが、これはウルディネ殿の傷が癒えてからにしよう……」
状況的に最初にベンドットと遭遇したのはウルディネでありその時の状況を聞いておきたかったティディは少し残念そうな表情でそう呟いた。
「さて次に小屋にいたテイチとレイドだが、彼女達は小屋があった場所から少し離れた林で意識を失った状態で発見した、命に別状は無く、目立った外傷も無い現在は二人とも二階の部屋で眠っている……しかしこの二人にも色々と聞きたいことがあったのだがな……」
現在はまだ明け方、本来なら大人でもまだ眠っている時間帯に子供である二人を起こすのは中々に忍びないとかんがえるティディ。何よりウルディネとベンドットの戦闘を間近で見ていたのだ、大きな緊張と疲労が二人の体力と精神を削っていてもおかしくは無い。そのことを配慮しティディは二人から話を聞くのも後に回すことにしていた。
「そして次に遭遇したのが、我らが王であるブリザラ様なのだが……キング殿、現在のブリザラ様の様子はどうなっている?」
そう言いながら視線をピーランの膝を枕にして眠っているブリザラに向けるティディ。
『……うむ、先程一時的に意識を取り戻した、その時確認した限りでは問題は無い』
「問題ないだと? ブリザラ様の意識を失わせておいてよく言えたものだな」
キングの言葉にあからさまに棘のある言葉を吐くピーラン。
『……うぅ、そ、それに関しては本当に申し訳ないと思っている』
先程のピーランの言葉が堪えているのか、普段の貫禄が形を潜めるキングは少し怯んだようにブリザラの意識を失ったことをピーランやティディ達に謝罪した。
「……また、その話をぶり返すのか……チィくだらない、俺は抜けるぞ」
先程ピーランとやりあっているアキは、呆れた表情を浮かべそのまま宿屋の外へと足を向け出て行こうとした。
『マ、マスター……今は互いの情報を共有しなければならない時です』
外へ出て行こうとするアキを止めに入るクイーン。
「情報の共有? そんなのお前が後でキングと話せば済むことだろう」
自我を持つ伝説の武具達には独自の会話手段が存在する。それを使えばここでの話を後で聞くことも出来ると主張するアキ。
「ああ、ああ! そうだったな、お前は自分勝手な奴だった……こんな奴を心配していたブリザラ様が不憫でならないよ……さっさと何処へでも行ってしまえ!」
「ああ? ……自分の行いを棚に上げてペラペラと……チィ言われるまでも無い」
売り言葉に買い言葉。ピーランの言葉に頷いたアキは宿屋の扉へ向かって歩き出した。
『待て、小僧……』
「今度はあんたか盾野郎、何だ?」
ピーランの言葉でイラつくアキはクイーンの次はキングかというように面倒くさい表情を浮かべる。
『……何を焦っている……』
「……焦って何かいねぇよ」
キングの問に少し間を開けたアキは、吐き捨てるようにそう呟くと扉に手をかけた。
『小僧……次の試練は小さな島国……ヒトクイだそうだ……』
扉をあけ外に出て行こうとするアキの背に向かってそう言葉を残すキング。
「……そうか……」
一言、そう言い残してアキはその場から立ち去った。
「チィ……」
去っていったアキに対しこれでもかという程大きな舌打ちするピーラン。
「はぁ……」
明らかにアキとピーランの所為で場の空気は悪くなっていた。しかしそんな中、呆れたからというのとは違う何処か生々しい深いため息を吐くティディ。その表情は心ここにあらずといった状態であった。
「よし、それでは報告を終了する、各自休息をとった後、自分の持ち回りにもどってくれ、以上」
ティディの解散の号令と共に、盾士達は各自の休息場へと向かい宿屋を出て行った。
「ブリザラ様はまだ起きませんか?」
報告の進行役を終え、周囲から部下達が居なくなったことを確認したティディは肩の力を抜いたように普段の喋り方でピーランに話しかけた。
「ん? ……ああ、まあキングが大丈夫って言っているから問題はないと思う」
最上級盾士という肩書きでは無く一人の女性として自分に話しかけてきたティディに対し、少し戸惑いを見せるピーラン。だが相手に合わせないのも悪いと思ったピーランはブリザラのお付兼護衛としてでは無く、一人の女性としてティディの問に答えた。
「……」「……」
しかしその後の会話が続かない。二人の間に、特にティディから妙な空気が漂っている。その妙な空気感に戸惑うピーランはどうしたものかと内心悩んだ。
「ああ、そうだ! この短時間でよく95人にも捕縛出来たな、流石盾士だよ」
ティディから発せられる空気感に耐えきれずとりあえず近場の話題、砂漠デザードの殺戮者スレイヤーを捕縛の件を挙げ盾士の実力を褒めた。
「いえ……我々かムハードに駆け付けた時には砂漠デザードの殺戮者スレイヤーの大半はアキ殿が捕縛していました……」
「なッ! ……あいつが?」
ティディの言葉に顔を引きつらせるピーラン。
「……盾士としてこの結果には考えるものがあります、正直言って私は少し悔しいのです」
盾士は相手を殺傷するよりも捕縛することに長けた戦闘職である。そんな盾士が、少しでも力を振えば命の一つや二つ簡単に狩ることが出来る力を持ったアキに捕縛数で負けたのが悔しいと自分の感情を素直に吐露するティディ。
「いやいや、悔しがる必要はない、あいつはただの戦闘狂なだけだ」
ダンジョン内でアキの戦闘を目撃してから、いやそれよりも以前からアキが戦いに対しどういった感情を抱いているか知っているピーランは、捕縛数で負けたと悔しがるティディにその必要は無いと顔を横に振った。
「いえ、ピーラン、ただの戦闘狂がわざわざ捕縛と言う回りくどいことをするでしょうか? ただの戦闘狂ならば相手の命などお構いなしに殺すのではないでしょうか?」
「な、何が言いたい?」
何を言いたいのか理解できない、理解したくないというようにピーランはティディに問いかける。
「……彼は不器用なだけで、本当は優しい心を持った人なのだと私は思います……」
「……はぁ?」
あの男の何処を見て優しいという単語が出てくるのか理解に苦しむピーラン。
「きっと彼は、今まで様々な苦労をしてきたのでしよう……彼の表情にたまに陰る暗い影……ふ、ふふ……ふふふふ……」
「お、おう?」
何故かアキのことを語り少し気味悪くも感じる笑みを浮かべるティディにピーランは再び顔を引きつらせる。口では悔しいと言いつつも目の前のティディの表情は何か別の意味を含んでいるように感じるピーラン。
「お前……まさか……」
それはまるで想い人を見つけたかのような時の表情、そう今ティディの表情は女の顔になっていることにピーランは気付いたのだ。
「いやいや、あれは止めておけ、破滅するだけだ!」
思わず忠告してしまうピーラン。
「ふふふ、私負けませんから……」
「な、な……」
ティディの言葉に混乱するピーラン。
(何だ、私負けませんからって何だ? 私はけん制されたのか? 私が狙っているから手を出さないでくださいとけん制されたのか?)
「じょ、冗談じゃない! 私は奴の事など……」
既に自分にはブリザラという心を決めた人物が存在するピーランは心外だと言うように抗議の声をあげた。
「ふふふ、それでは」
しかしピーランの抗議は届いていないのかティディは少し浮かれたような笑みを浮かべながらその場を去って行った。
「くぅ……何と言う屈辱、どうして私があんな男を好きだと勘違いされなければならないんだ……」
初めて会った時から、ピーランはアキを男として意識したことは一度も無い。そもそも一緒に行動は愚か、殆ど会話もしたことが無い相手をどうして恋仲と勘違い出来るのかティディの思考が理解できないピーラン。
「……ふふふ、それは喧嘩する程仲がいいって言葉があるからじゃない」
「へ?」
一瞬誰の声か理解できなかったピーランは視線を自分の膝に向ける。するとそこにはクリッとした目を自分に向けるブリザラの顔があった。
「ブリザラ!」
混乱と怒りが支配していたピーランの表情は一瞬にして安堵と嬉しさに塗り替えられた。
「そうか……ティディさんはアキさんが好きになったんだね」
何処か嬉しそうにピーランの膝の上で頭をモジモジするブリザラ。
「……て、お前、いつから起きていたんだ?」
自分とアキが言い合っていたことは寝ているはずのブリザラは知らないはずだと思ったピーランは思わず尋ねた。
「えっと、割と最初の方から……ティディさんの報告が始まった頃かな……」
少し気まずそうな表情を浮かべながらブリザラはピーランに尋ねられたことを口にした。
「な……何だと……」
「その……だから、何でピーランとアキさんが喧嘩をしていたのかとか……キングに対してピーランが怒っていたのかとか……その……全部聞いていました」
申し訳なさそうにピーランにそう告げるブリザラ。
「私の事、色々考えてくれてありがとうピーラン」
そして笑顔で感謝を口にするブリザラ。
「ああ、何て日だ……」
本来ならば、地団駄を踏みたい程に恥ずかしい所であったピーラン。しかしブリザラの感謝の言葉と自分だけに向けられた笑顔によって恥ずかしいという感情は一瞬にして消えていく。ブリザラの言葉と笑顔だけで今までの苦労が報われ溢れだす愛しさと嬉しさがピーランを包み込むのだった。
ガイアスの世界
ティディの春。
比喩抜きで周囲を凍りつかせることができる魔性の女性ティディ。年齢が年齢だけに、結婚を考えるお年頃であるのだが、それは突然やってきた。
黒い王子様が目の前に現れたのだ。だか黒い王子様ににはライバルも多くそう簡単に想いが届く訳も無い。しかし一度火が付いてしまったが最後、ティディは自分がその炎によって溶かされていくこともお構いなく、一直線にその想いの成就を願い突き進むのだ! 突き進むのだ、突き進むのだ……