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もう少し真面目で章(ブリザラ編)7 呪武器

ガイアスの世界


ダンジョン内で生きる魔物達の食料。


 外で生きる魔物と違い、ダンジョン内に生きる魔物は常に飢えた状態にある。その為ダンジョンの魔物達は常に食料を求めている。しかしただ飢えているからという目的だけでダンジョンの魔物は食料を探している訳では無い。

 外の魔物と違い、ダンジョン内の魔物は食料の質によって戦闘力が増す性質を持っている為、ダンジョンという小さな生態系で生き残る為、魔物達は食料を求めるのだ。

 だがダンジョン内に食料は殆ど無い。その為ダンジョン内の魔物達は、同じダンジョン内に居る他の種族の魔物を捕食することが多い。ダンジョン内の生存競争に勝利し続けた魔物がダンジョンの支配者、ボとなるのだ。

 だがダンジョン内の魔物達は、他の種類の魔物を捕食するだけでは無い。ダンジョンに入りこんだ冒険者や戦闘職も餌として狙うのだ。しかし基本的に集団でダンジョンに潜ることが多い冒険者や戦闘職を捕食することは難しく返り討ちにあうことが多い。

 しかし人間を捕食することが出来た魔物は、他の種類の魔物を捕食した時よりも戦闘力の成長率が高く、時には突然変異を起こすこともあるという。

 高難易度のダンジョン内にいる魔物が強いのは、冒険者や戦闘職を捕食することに成功した魔物が多いからとされている。

 




もう少し真面目で章(ブリザラ編)7 呪武器




剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス




 夜とはいえ風の音すら聞こえない静けさと月明りすら霞む程に放たれた暗さがムハード国を包み込んでいた。その静けさと暗さに紛れるような黒いマントを纏った男達が倒れている姿を目的地へ向かう道すがら何度か見かけていたブリザラの胸はざわつきその足は、ムハード城跡地近くにある小屋へと急がせる。


「……」


 ムハード城跡地近くにある小屋へと到着したブリザラは、視界に映った光景に言葉を失った。ブリザラの視線の先に映ったのは、倒れている黒いマントの男達が数人。しかしそれは先程から何度か見かけた光景でブリザラが言葉を失った理由はそこには無い。

 ブリザラが言葉を失った理由、それは恐怖と不安でムハード国を支配していた王を討ったブリザラに対しての感謝の気持ちとしてムハードの人々が贈った小屋が跡形もなく消え大きな窪みだけが残っていたからであった。


「レイド君! テイチちゃん!」


しかしその理由も正確に言えば正しくはない。確かにムハードの人々から贈られた小屋が消失したことはブリザラの心に衝撃と驚きを与えたがそれ以上にその小屋で一緒に生活していた者達のことを考えていたからだった。

 跡形も無くなった小屋の光景を前に、自分と一緒に暮らしていた少年少女の生存が絶望的である事を想像してしまったブリザラは取り乱したようにその小屋に居ただろうレイドとテイチの名を叫んでいた。

 喉から痛々しい程に発せられた悲痛な叫びは、ブリザラを絶望へと誘うように周囲に響き渡る。


『大丈夫だ王よ!』


その絶望を断つようにキングは強い口調でブリザラ呼びかける。


『冷静になって周囲をよくみろ、水浸しだ。雨が滅多に降らないムハードでこの光景は異常だ。そして倒れている男達の姿を見ろ、ずぶ濡れだ……』


 大陸の半分が砂漠であり、年間に数度程しか雨が降らないムハードにとって水は貴重な資源、生命線とも言える。そんな貴重な資源である水を何の意味も無く大量にばら撒くような愚かな行為をする者は例え悪人であってもムハードにはいない。


『こんなことができるのは……』


しかし水の入手が困難であるはずの砂漠の大陸で惜しげも無く貴重な水をばら撒くことが出来る存在を、キングは知っていた。


「ウルディネさん!」


キングがその存在の名を口にしようとした瞬間、その答えを奪いとるようにブリザラはその存在の名を叫ぶ。


『ああ、その通り、水を司る上位精霊であるウルディネならば、この状況を作りだすことが出来る、間違いなくウルディネはこの場に駆け付けたはずだ……だとすればあの小屋に居ただろうあの二人は無事なはずだ』


 水を司る上位精霊ウルディネはただ水をばら撒くだけの存在では無い。自由自在に操ることが出来る水は、強力な武器でもある。例え何者かがこの小屋を襲撃したとしてもウルディネの力ならば滅多なことが無い限り人間に遅れをとることは無いと考えたキングは、ウルディネが小屋にいたレイドとテイチを守ったはずだと断定していた。


「そ、そうか……よかった……」


二人は無事であると断定するキングの言葉に、冷静さを取り戻したブリザラは安堵の息と共に胸をなで下ろした。


《だが……なぜだ……レイドとテイチの生体反応が感じ取れない……》


 周囲の状況からウルディネがこの場に駆け付けたことは明白である。しかしならば近くにレイドとテイチの気配があってもおかしくはないはずなのだが、キングは二人の気配を感じ取ることが出来ないでいた。

 生物とは少し違う存在であるウルディネは別として人間であるレイドとテイチの気配を感じ取れないというのは、索敵に特化したキングにとってはおかしな状況でありそこから導きだされる答えは、絶望的な可能性しかなかった。

 当然その可能性を素直にブリザラに言える訳も無く咄嗟に二人は無事だと希望的な言葉を口にしてしまったキングは、二人が無事である事を願うしかなかった。


「とりあえず、三人を探そう……キン……ッ!」


キングに三人の探索の指示を出そうとした瞬間、ブリザラの言葉が詰まる。何かが自分の背筋を這いずる感覚が走ったからだ。ブリザラはその感覚の持ち主を探すように周囲を見渡した。


『どうした王よ?』


ブリザラが感じた気配を感じ取れないキングは、周囲を見渡すブリザラに尋ねた。


「……」


しかし言葉は返ってこない。しかしそれだけでキングは察した。今自分が感じ取れない何かがこの場に現れた事をブリザラの行動から察したキングは、いつでも戦えるように戦闘態勢に入る。


「……」


 それは気配というにはあまりにも猛々しく邪悪であった。そしてその気配はまるで自分がそこにいると主張している。ブリザラは、その気配を発している存在が現在ムハード中に広がっている嫌な感覚、悪意の正体であると確信していた。


「また……誰か……いる」


「ッ!」『ッ!』


反射的に声が聞こえた方向へ視線を向けるブリザラ。そこには悪意を垂れ流す大男が立っていた。


「お前……俺と戦う」


 明らかに正気を失っているように見える大男は、片言で自分を見つめるブリザラにそう告げると邪悪な笑みを浮かべた。

 大男は周囲で倒れている男達と同様に黒いマント、闇外套ダークマントを身に纏っていた。外套マントに付いているフードを被ることによって周囲の者達から姿を消すことが出来る闇外套ダークマント。大男も他の男達と同様にフードを被っていた。だがそれにもかかわらず大男からは悪意が漏れ出していた。

 闇外套ダークマントでも隠すことが出来ない大男の悪意、それは黒竜ダークドラゴンの力を纏ったアキが発する『闇』に酷似していると感じるブリザラ。


「……?」


大男に向けられていたブリザラの視線に何かがチラつく。そしてその視線は大男の手元に向かいゆっくりと下りていく。


「はッ!」


 最初大男が手にしているものが何であるか理解できなかったブリザラは、その正体が分かると息を呑んだ。大男は長い糸のようなものを大量に掴んでいた。だがそれは糸では無く髪。水色の長い髪であり、その髪の先にはボロボロになったウルディネの姿があった。




― ブリザラが小屋へと到着する数分前 ―




 闇外套ダークマントを纏った男達はウルディネの周囲を囲むように立つとフードを被り己の姿を消した。

 男達は存在すら感じられなくなる闇外套ダークマントを利用した一方的な強襲を企んでいた。存在すら感じられなくなるのだから、気配を掴むことすらできずやられた側は普通ならば対処のしようがない。

 しかし男達は自分達が対峙している彼女がどういった存在なのか見誤っていた。男達が今強襲を仕掛けようとしているのは、人間では無く、精霊。しかも上位が付く圧倒的強者である、当然普通では無い。それを男達は知らない。その姿、容姿がほぼ人間に近いウルディネは男達の目から見れば無詠唱魔法が扱える厄介な魔法使い程度にしか映っていなかった。それが男達の見誤りであった。


「ふん、姿を消してさぞ余裕ぶっているんだろうな」


「ハッ! お前らこの場から離れ……!」


 男達の中でリーダー的存在である男は、ウルディネが何をしようとしているのかを察し、すぐさま他の男達にこの場から離れるように叫ぶ。


「遅い!」


しかし男の声は間に合わなかった。地面に両手をつけるウルディネ。すると突然男達が立つ地面から柱のような水が噴き出す。柱のように噴き出した水はまるで鞭のようにしなると周囲を無差別に打ち付け始めた。


「ガァ!」「うごっ!」「ゲヘッ!」


鈍い音共に所々から男達の呻く声が響く。


「お前達がその得体の知れない能力を過信してくれたお蔭で、位置を掴むのは簡単だった……」


 ウルディネが言うように男達は、自分達が纏う闇外套ダークマントの能力を過信していた。確かに姿を消し気配や存在自体を感じられなくなるのは厄介だが、自分達が本当にその場から姿を消した訳では無い。しかし男達は相手から認識されないという絶対的有利という状況に優越感を感じそれに浸りたいが為にその場から動くことをしなかったのだ。  

 そんな男達の性格、行動を見抜いていたウルディネは、男達が立つ場所を全て把握しその場所に向けて攻撃を放ったのだった。

 本来ならば鞭のようにしなるような動きなどするはずがない水。だが水を自由に操ることが出来るウルディネならば水を鞭のように扱うことなど容易であった。

 ウルディネの放った攻撃は見事姿を消した男達を捕らえ鞭のようにしなる水は容赦なく骨を砕いていく。折れた骨が体内を傷つけ男達は吐血すると意識を失いその場に姿を現し次々と倒れていった。それは殆ど一瞬の出来事であった。


「……これで全員か?」


 自分の周囲を見渡し、意識を失い倒れている男達を数えるウルディネ。


「これで全員……」


 自分の記憶にある男達の数と今この場に倒れている男達の人数が同じである事を確認したウルディネ。だがウルディネは途中で言葉を止めた。


「……何だ、この気持ち悪い感じは?」


 何かに見られているような、そんな感覚。それだけならばまだいいが、その感覚には気分を害するだけの何かが混じっており、ウルディネは露骨に嫌な表情を浮かべた。


「おうおう、やってくれたな女」


周囲には倒れた男達だけで声を発せる者は居ないはずだった。しかし男の声が聞こえる。


「……」


姿を見せない男の声に自分の周囲で倒れている男達の仲間が現れたのだと悟ったウルディネは一度解いた警戒を再び高める。


「こそこそ隠れて無いで姿を現せこの腰抜けが」


今攻撃を仕掛けられればウルディネに成す術は無い。だがウルディネは姿を現さない相手に対し強気を見せ挑発する。


「へへへ、見た目の割に口が悪いな女、だが強気な女は嫌いじゃねぇ……俺の女になれよ」


姿を現さない男は、ウルディネの強気の姿勢を気にいったのか、自分の女になれと下品に笑う。


「ふん、お前も私と水遊びがしたいのか? ならそれなりの覚悟をしろ、腰抜け」


周囲で倒れている男達にも再三似たようなことを言われたウルディネは少し呆れながら、再び姿を現さない男を挑発する。


「ふふふふ、その気の強さますます気にいった……だが、ベッドの上でその気の強さはいらねぇな!」


何かが翻る音と共に突如として現れる太い腕。姿を見せない男の腕であろうそれはウルディネの腹部にめがけ重い一撃を放った。


「どうだ、俺の一発は効くだろう? これに懲りたら俺にナメた口をきいてないで……なっ!」


太い腕から繰り出される重さの乗った拳の一撃。それは普通の女性が受ければ下手をすれば死んでもおかしくない威力であった。


「ん? 何かしたか?」


 確かに姿を現さない男が放った拳はウルディネの腹部を捉えたはずであった。しかしウルディネは殴られたことにすら気付いていないと言ったような表情で男に首を傾げる。


「ど、どういうことだ?」


拳の一撃に全く反応を示さないウルディネに露骨な動揺を見せる姿を見せない男。


「ああ、私の腹を殴ったのか、それならその太い腕にお返しをしなければな」


そう言いながら指を鳴らすウルディネ。その音に反応するようにウルディネの指から飛び水。その水はまるで蛇のように姿を見せない男の腕に絡みついた。


「な、何だこれは!」


蛇のように腕に絡みつく水に焦りを見せる姿を見せない男。


「締め落せ」


「ぐぅああああああああああ!」


ウルディネの言葉に反応して姿を見せない男の腕を締め上げる水。その激痛に耐えられず叫び声をあげ転げまわる姿を見せない男。


「ほう、そんな面をしていたか腰抜け」


転げ回った反動で被っていたフードが脱げ姿を現した男。


「でかい割に、たいしたことないな」


姿を現した男、いや大男の姿に冷たい笑みを浮かべるウルディネ。


「がぁああああああ! お、お前、一体何者だぁぁぁぁ!」



既に骨が折れているというのにまだその腕を締め上げる水をもう片方の腕で必至に払いのけながら姿を現した大男はウルディネに何者かと尋ねた。


「……お前に名乗る必要など微塵も無いな」


そう言いながらウルディネは足元に出した水に器用に乗るとの高さを利用して大男の下顎に向け強烈な膝による一撃を放った。


「ガフゥ!」


ウルディネの膝による一撃によって下顎が上を向き前歯が全て折れた大男は、そのまま空を見上げながら大の字の形で地面に倒れ込んだ。


「ふぅ……全く人前に……特にガラの悪い男の前に姿を現すと必ず面倒な事が起るな……」


 数百年という長い年月を生きる上位精霊ウルディネは、今のような事が過去にもあったのか男の思考は下半身に集約されていると再確認し呆れた表情を浮かべた。


「しかし……この腰抜けの視線……あれは何だったんだ?」


 倒れた大男に背を向け思考を巡らせるウルディネ。大男が自分に向けていた視線に気分を害したウルディネはその視線に疑問を浮かべていた。単に生理的に大男の視線が受け付けないと片付けるのは簡単ではあるが、何かそれだけではないようにも感じるウルディネ。


「……ぐぅ!」


すると背筋に再び大男が向けていた視線と同じ物を感じたウルディネは肩を跳ね上げ振り返る。


「……!」


 大男は確かに膝の一撃で倒したはずであった。しかし大男は外れ開いたままとなった下顎をぶら下げながらウルディネを見下ろしていた。


「なっ!」


その瞬間、より一層気分が悪くなるウルディネ。まるで毒のような物が自分を目がけて刺さってくるような大男の視線にウルディネはたまらず距離をとった。


「ああああああ……」


 喉を鳴らすような声。大男から発せられるその声は活動死体ゾンビが発する独特な声に似たものがある。しかし大男を倒しはしたが殺す程の力を使った覚えが無いウルディネは大男のその様子に困惑する。そもそも死んだ直後の新鮮な肉体が活動死体ゾンビになるなんて事、ウルディネは聞いたことがなかった。

 見るからに理性の無い目でウルディネを見つめる大男。


「何だ……この人間……」


「……お、れ……俺の名……俺の名は! べ、べんべんべん、ベンドット! 砂漠デザード殺戮者スレイヤーの団長、不死身のベンドット様だぁああああああああ!」


活動死体ゾンビのような唸り声をあげたかと思えば、今度は壊れたからくり人形のように自分の名を名乗る大男ベンドット。


「なっ!」


 ベンドットの理性は未だ戻っていない。それは理性を失い深淵の底のように暗い目を見れば一目瞭然でである。しかし理性が無いはずのベンドットはたどたどしくはあるが自分の名を名乗った。

 異様な雰囲気を醸し始めるベンドットにさすがのウルディネも今まで以上に警戒心を高める。


「お前……精霊……今の俺じゃ攻撃あたらない」


頭部を左右に不気味に揺らしながら片言でそう口にするベンドットは黒いマントの裏側から何かをとりだした。


「なっ!」


先程までウルディネが精霊であることを知らなかったはずのたベンドット。しかし今はっきりと精霊と口にしたベンドットに更に困惑するウルディネ。


「だから……これで……お前……殺す」


そう言いながらベンドットが手にしたのは自分の身の丈程はある特大剣であった。


「そ、それは!」


ベンドットが手にした特大剣を目にした瞬間、ウルディネは今まで気分が悪くなった理由を理解した。

 その特大剣の造形は禍々しくそこにあるだけで不幸を呼び込みそうな程におぞましい。そして最大の特徴は刀身から柄に至るまで人の目玉のような物が幾つもついていた。

 そう、ウルディネの気分を害していたのは、ベンドットの視線では無くこの特大剣に付いている目玉達の所為だったのだ。


「……何で……お前がそんなものを……」


思わず口を塞ぐウルディネ。どうやらウルディネはその特大剣の正体を知っているようだった。


 普通の人間には持つことが出来ない武器がガイアスには存在する。いや、正確に言えば持つことも使うことも出来るだろう。しかしその武器を使った者は後に命を落とすことになる。運よく命を落とさなかったとしても、その後に待つのは、死ぬまで続く生き地獄である。 

その名は呪武器カースウェポン。人の負の想いを吸い続け変貌した呪われた武器である。

しかしベンドットが持つ呪武器カースウェポンは巷で言われるただの呪武器カースウェポンとは少し異なっている。

 普通、呪武器カースウェポンは人が持つ悪意、嫌悪、憎悪と言った負の感情が呪いとなり何の変哲もない武器に宿ることで完成するものである。しかしベンドットが持つ呪武器カースウェポンはその成り立ちが他とは違う。

 そのおぞましい造形、幾つもの人のような眼玉。ベンドットが持つ呪武器カースウェポンに使われている材料は、既に呪われた人間の血肉や骨。そうベンドットが持つ呪武器カースウェポンは、誕生した瞬間から呪われているのである。

 そんなおぞましい武器を持つベンドットが当然理性を保てるはずも無い。既に生ける屍と化したベンドットは手に持つ特大剣、呪武器カースウェポンの操り人形と化していると言っても過言では無い。


「ガッハっ!」


 吐き気が最高潮に達しウルディネは血を吐きだすかのように口から水を吐く。呪武器カースウェポンが放つ人間の悪意、嫌悪、憎悪と言った負の感情に当てられ、その場にいることすら辛いウルディネは、膝を折った。


「精霊、負の感情に弱い……だから……お前……死ぬ」


 ニタリと邪悪な笑みを浮かべながら片言でそう口にする操り人形となったベンドットは、膝を折り苦しそうな表情を浮かべるウルディネにそのおぞましい刃を向けるのだった。




ガイアスの世界


呪武器カーズウェポン


 武器は命を狩り取るものである。故に命を狩り続けた武器は狩られた者達の悪意、嫌悪、憎悪という負の感情が呪いに変わり所有者を呪う。

 呪われた武器は使用者の精神を犯し様々な負の効果を与え、命尽きるまで所有者に戦いを強要する。

 しかし所有者が死んでも尚、呪いは止まることなく残った肉体は腐っても戦うことを止めることは無いという。

 時々、武装した活動死体ゾンビが居るが、それは呪われ死んだ所有者の成れの果てだと言われている。

 

 

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