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もう少し真面目で章(アキ編)4 自覚

ガイアスの世界


 自我を持つ伝説の武具達、ジョブシリーズに課される禁止事項


 自我を持つ伝説の武具達は、自分の所有者に己が持つ能力、知識を与えることが目的の一つである。しかし知識に関しては、禁止され伝えることが出来ないことがある。それは、自我わ持つ武具達の過去に関することである。

 現状、彼らの記憶が封印ロックされていたり破損していたりしてそもそも聞ける状況ではないが、そこに繋がりのある知識、例えば古代についての詳しい情報などは禁止事項として話す事を禁じられていたりする。

 なぜ彼らが自分達の過去について話すことを禁じられているのか、それに通じる古代という時代について詳しく話すことが出来ないのかは、今の所不明であるが、そこが解明出来た時、自我を持つ伝説の武具達が一体何者なのかという謎が解けるのは間違いない。

 






 もう少し真面目で章(アキ編)4 自覚




 剣と魔法の力渦巻く世界、ガイアス





 太陽が発する熱を全てその身に受けているかのように砂一粒灼熱と化しているムハード砂漠の気温は昼を過ぎ最高潮に達していた。だが同じ場所にも関わらずムハード砂漠に出現した大穴の先に広がる建造物、遺跡の内部は凍える程に気温が下がっていた。

 例え遺跡の場所が太陽の熱を遮断できる地下にあるとしても、この気温の下がり方は異常しか思えない。普通の者ならば急激な温度変化に体がついていかないはずである。しかし外部からのあらゆる刺激に強い耐性を持つ全身防具フルアーマー、自我を持つ伝説の防具クイーンを身に纏い己自身、半死という非常に珍しい状況にあるアキにとっては外の灼熱も遺跡内部の冷気もたいした問題では無かった。あるとすれば、目の前に現れた魔物の群れぐらいである。


「……どんどん増えるな」


 本来、群れというのは同一種の生物の個体多数からなる集団の事を言うが、今アキの目の前に現れたのは、四足歩行で突進してくる鋭い牙を持った魔物や、羽根をはためかせ鋭い爪で襲いかかってくる鳥形の魔物、武器を持って切りかかってくる魔物など多種多様である。だが全くの別種であるはずのそれらの魔物達は、まるで一つの群れであるというように右から左、上から下へと息のあった動きでアキに襲いかかってくるのだ。その数約四十。遺跡、ダンジョンの通路は魔物で埋め尽くされていた。そしてその群れに合流しようと後方から続々と新たな魔物達が向かって来ている。

 このままではその数によって魔物達に押し潰されかねない状況ではあったが、アキの人間離れした驚異的な弓捌きによる連射とその正確無比な命中率によって襲いかかってくる魔物は一瞬のうちに倒されていた。しかし減らせども新たに現れる魔物達の所為で絶対数は増えることも減ることも無い状態を維持していた。


「チィ……チマチマやるのは面倒だ」


倒した先から減った数を補うように現れる様々の種類の魔物達。そんな魔物達を目に不満を口にしながらもその手を休めることは無いアキ。


『マスター面倒になって黒竜ダークドラゴンの力を使うのは絶対に禁止ですからね』


 アキは別に魔物達を相手にすることが面倒な訳では無かった。むしろここ最近、戦う機会が少なかった為に魔物との戦闘は願ってもない状況であった。ただアキが不満を口にした理由はその攻撃手段にあった。

 その気になればアキはこの場にいる魔物達を一瞬で消し炭にすることが出来る力を持っている。しかしその力はアキの精神に大きな負担をかけることになり、下手をすればその力の大本である黒竜ダークドラゴンに意識を乗っ取られるというリスクがあった。それを危惧しているクイーンはその力を使わないよう釘を刺したのである。

 アキとクイーンはこの遺跡、ダンジョンに入っている間、一つの約束を交わしていた。それは黒竜ダークドラゴンの力を使用しないことということ。


「ああ、分かっている」


 忌々しくすら思えるその約束に不満を持ちつつも守るアキは怠そうにそう答えると、他の魔物を犠牲に距離を詰めてきた魔物の攻撃を難なくかわすと右腕の手甲を変化させた剣でその魔物を背後から貫き絶命させる。


黒竜ダークドラゴンの力がなくても私の援護サポートがあればマスターは強い、それはムハード城を綺麗に解体した時に証明しているはずです!』


黒竜ダークドラゴンの力が自分の身に害を及ぼすものである事を理解しているのにも関わらず未だ納得した様子が無いアキの態度に、クイーンは数日前にアキがムハード城を破壊した事を例に挙げた。

 確かにアキは数日前ムハード城を綺麗に破壊することに成功していた。しかも前ムハード王の悪趣味の一つであった城内の装飾として飾られていたムハードの人々の遺体には傷一つつけないという離れ業までやってのけていた。これは上位弓士ハイアーチャーで培われたアキの攻撃の命中精度とクイーンが持つ予測計算による賜物であった。


「確かにお前に予測計算してもらえば一キロや二キロ先の獲物でも確実に仕留めることができるし放った矢が周囲にどういう影響を及ぼすかも瞬時に理解できることは分かった……だが地味だ」


 クイーンは自分が持つ能力とアキが持つ戦闘職の経験を掛け合わせれば黒竜ダークドラゴンの力を使わずとも十分に戦えると言いたかった。だがそんなクイーンの想いを叩き潰すかのようにアキは地味だと言い放った。

 確かに放った攻撃が百発百中、矢が周囲にどういう影響を与えるのかを瞬時に理解できることは凄いことではある。しかし何者も寄せ付けない圧倒的な力を欲するアキにはどうしても地味に思え、例え自分に害が及ぶとしても目に見えて圧倒的な力を生み出せる黒竜ダークドラゴンの力の方が魅力的に見えていた。


『くぅ……確かに派手さはありませんが、黒竜ダークドラゴンの力だって命中しなければ意味はありません』


地味と言われたことを根に持ったクイーンは、命中精度を例に挙げ自分の優位性を主張する。


「……いや、大半を燃やし尽くす黒竜ダークドラゴンの力に命中もヘッタクレも無いと思うんだが」


 黒竜ダークドラゴンの力が圧倒的である事を示すのはその火力と共に攻広範囲に影響を与えることであった。放たれたが最後、周囲を巻き込み燃やし尽くし消し炭にするその圧倒的な攻撃範囲は確かに命中率など関係が無い。


『うぅぅ……ですが、こういった狭い場所で黒竜ダークドラゴンの力を使うのは危険です、周囲を破壊しマスター自身にも被害が及ぶ可能性があります!』


 ある意味正論を突きつけるアキに対して何とか自分という存在が優位であることを証明したいクイーンは、黒竜ダークドラゴンの力はその攻撃範囲によって関係無い周囲にまで被害が及ぶ危険があることを挙げた。


『ですが私ならば、こういった狭い場所でも周囲に被害を与えること無く戦うことが出来ます!』


「……確かに、こういった場所ではお前の能力を使ったほうが戦いやすい……」


『でしょう!』


自分を認める発言をしたアキの言葉に思わず声を弾ませるクイーン。


「だが、俺はダンジョンに潜る冒険者じゃない、戦いを求め戦場を行き来する傭兵だ、正確な命中率よりも大多数を殲滅できる圧倒的な力が必要なんだよ」


 ダンジョンに潜ることを生業としている冒険者と戦場を駆け回るような傭兵では当然戦い方が変わってくる。狭い空間で戦う事が多くなるダンジョンではコンパクトな戦い方が求められる、それとは逆に大多数を相手にする状況が多くなる戦場では、圧倒的な殲滅力を持った攻撃、もしくは安全な場所から一方的な攻撃を与えることが出来る攻撃方法が求められてくる。

 前者のような圧倒的な力を欲しながらもその才が自分に無い事を自覚していたクイーンや黒竜ダークドラゴンに出会う前のアキは、やむなく安全な場所から一方的な攻撃方法をとることが出来る弓士アーチャーになった。それでも弓士アーチャーという戦闘職の魅力に気付き、のめり込んでいくうちに気付けば上位弓士ハイアーチャーとしてその才能を開花させていたアキ。

 しかし今は違う。クイーンという伝説の防具を手に入れ更に自分が欲していた圧倒的な力を持つ黒竜ダークドラゴンの力までも手に入れた今のアキにとっては、上位弓士ハイアーチャーとしての戦い方は物足りなくなっていた。

 強力な殲滅力を持った今、自ら前に出て目の前に立ちはだかる敵を圧倒的な力でねじ伏せる、圧倒的な力を欲したアキが追い求め欲した姿がそこにあったからだ。


『……マスター……』


「……なんだ?」


先程まで騒がしいかったクイーンの様子が突然変わったことに少し戸惑いを見せるアキ。


『……もし……その戦場にウルディネやテイチ……ブリザラがいても躊躇い無く黒竜ダークドラゴンの力を使うことができますか?』


圧倒的な力を追い求めるアキに対してクイーンは静かにそう問を口にした。

 今までアキが話していたことはあくまで自分一人の状況を想定したものであり、周囲に仲間がいることは想定していない。その僅かな隙を突くようにクイーンは、禁じ手とも言える問をアキに向けたのである。


「……し、知らねぇよ、この話はあくまで俺一人の時を想定したものだろう」


傭兵時代から一人で戦うことが多かったアキ。それはアキが誰も信用できなかったからだ。

 ムハード国で幼少を過ごしたアキはその過酷な環境から常に大人に搾取される側であったことが影響しているのは言うまでも無く特に信頼していた者からの裏切りがアキの心が閉ざされた大きな理由となっていた。それ以降、アキは仲間を作ろうとはしなかった。

 しかしクイーンの問にアキは動揺を見せた。クイーンの問は仲間を作らず人を信用していない者ならば一切の躊躇を見せずに即答できるものであったはずだ。だがアキはクイーンの問にはっきりと答えることは出来なかった。そう、アキは自分も気付かないうちに仲間という存在を意識していたのだ。罪を償う為に自分と共に旅立った精霊を、その精霊と共に自分を信頼してくれた少女を、そして一国の王でありながら分け隔てなく接してくる少女にアキは仲間という感情を抱いていたのである。


「……」


 クイーンの問ではっきりと自分の心を自覚したアキは戦闘中だというのに攻撃の手を止める程に動揺していた。


『……その態度だけで十分です』


攻撃の手を止めてしまったアキを感じながらクイーンは嬉しそうにそう答える。


「チィ……」


 嬉しそうなクイーンの言葉に我に返ったアキは自分の感情が信じられないというように舌打ちを響かせると目の前に迫る魔物に弓を強く引き放った。


「お前は俺に何を伝えたいんだ!」


動揺が収まらない中でもアキの放った攻撃は魔物の脳天を貫く。アキは自分に迫る魔物を一掃しながら、クイーンが何を企んでいるのか聞いた。


『いえ特に意味はありませんよ』


そう言って笑うクイーン。


『私、今気分がとてもいいです、なのでマスターにとっておきの攻撃方法をお教えします』


「はぁ?」


突然のクイーンの申し出に動揺が困惑へと変わるアキ。


『マスター矢を五本用意してください』


アキの心を確認することが出来たことがよほど嬉しかったのかクイーンの声は弾んでいる。


「あ? 五本だと?」


クイーンの態度が気に喰わないアキではあったが、素直にクイーンの言葉に従い矢を五本、右の掌から出現させる。


『それでは構えてください』


「……まさかとは思うが五本同時に放てとか言わないような」


クイーンが自分に何をさせようとしているのか予想がついたアキはそれを言葉にする。


『はい、その通りです』


「まてまて、凄腕の上位弓士ハイアーチャーでも同時に矢を放つことが出来るのは三本までだ、それに三本になることで命中精度が……」


そこまで口にして何かに気付くアキ。


『はい、マスターが言った通り、本来ならば命中精度が下がりろくな攻撃にはなりません……ですがそれは一般的な凄腕の上位弓士ハイアーチャーならばの話……私の所有者であるマスターならばどうですか?』


 一度死を迎えたことがあるアキはクイーンの能力によってその命をこの現世に繋ぎ止めることができた。しかし一度肉体から離れた魂が再びその肉体に定着するのには個人差はあるが時間がかかる。その間眠り続けていたアキに睡眠学習を通して自分の使用方法を学ばせていたクイーン。その知識が再び頭を高速で過って行くアキ。


「くそ、何で今までそれに気付かなかった!」


自分が見落としていた事実に気付いたアキは、悔しそうにしながらも五本の矢を目の前の魔物達に向ける。


『……私が持つ予測計算と上位弓士ハイアーチャーが持つ命中精度、更には私を纏うことで身体能力が大幅に高まっている今のマスターならば、凄腕の上位弓士ハイアーチャーが出来ない事も可能……行きますよマスター!』


「チィ……ああ!」


 上手く誘導されたことが癪に触りはしたがクイーンの掛け声に答えたアキは、限界まで引き絞った弓の弦を離す。すると一斉に放たれた五本の矢は、それぞれが軌道を変えてまるで吸い込まれるように五体の魔物の脳天へと突き刺さった。


五連複数射撃ファイブマルチショット……私の能力を引き出せればこんな芸当も可能なんですよマスター』


「なるほどな……」


自分が放った五本の矢の行方を見つめながら納得するアキ。

 これまで似たような芸当の攻撃は幾つもの戦いの中で試して来たアキ。その一つが先程まで魔物達に使っていた高速で弓を放つ連射であった。だが今アキが放ったのは同時に五体の魔物に矢を放つという一度で複数の対象に攻撃する範囲攻撃と呼べる代物であった。

 複数の対象に同時に攻撃を行う技、複数射撃マルチショット上位弓士ハイアーチャーが生み出した技であるが、実際に戦いの中で使うとなると難易度の高い技で、凄腕の上位弓士ハイアーチャーであっても三本が限界であると言われている。しかもその精度はどんなに卓越した命中精度を持つ上位弓士ハイアーチャーであっても一本の時よりも格段に落ちる為に、どんなに戦い慣れしている者であってもけん制程度に使うだけで対象を倒そうとは考えない。しかも矢を使い切れば攻撃手段が殆ど無くなる弓士アーチャーにとっては迂闊には扱えない技でもあった。

 しかし難易度が高く、矢の消費に対しての対価があまりにも小さい複数射撃マルチショットをアキはクイーンの能力を使うことで、敵を倒すことを目的とした攻撃手段に昇華させたのである。しかも現在存在している上位弓士ハイアーチャーにはできる者はいない五連複数射撃ファイブマルチショットを成功させたのだ。

 だがそれは人間を超える身体能力とクイーンの予測計算がある今のアキだから出来ることである。今のアキならば五連複数射撃ファイブマルチショットを何度放ったとしても驚異的な命中精度で敵を確実に倒すことができるだろう。それに加えクイーンによって供給される力を具現化して矢に変えることができる今のアキならば、矢の消費を心配する必要もない。


「……お前や黒竜ダークドラゴンという常識的な考えから一番かけ離れた存在を手にしていたっていうのにその俺が常識的な考えに捕らわれていた……」


 常識外れなクイーンや黒竜ダークドラゴンの力を手に入れ常識からかけ離れた存在に自分がなっていたというのに、その自分が一番常識に捕らわれていた事を再確認したアキは、自分が人間以上の力を持った存在である事を改めて認識すると、その事を噛みしめるように目の前に現れ向かって来る魔物達を次々と複数射撃マルチショットで射抜いていく。

 最初は五本だった矢がやがて六本七本となり、最終的には十本の矢で魔物達を射抜き倒すようになっていくアキ。すると気付けば通路に魔物達の姿は無くなっていた。


「ふぅ……これで終わりか」


 目の前の魔物が一掃された事を確認したアキは、黒竜ダークドラゴンの力を使用した時に感じる絶対的な強者になったような感覚とは違う、別の充実感を抱いていた。


『どうですかマスター私の能力は?』


「ああ、今更だが少しだけ見直した」


『す、少しだけですか』


「ああ、少しだけだ」


 どんなに強力な力を手に入れてもそれを扱う者の技能が伴わなければただのナマクラになる、自分がクイーンの力を今まで引きだせていなかった事を痛感したアキは、その事を素直にクイーンには伝えず意地悪な言い方で茶化した。


「まあ、とりあえずこれで先に進めるようになった訳だ」


 地上とは違い倒されると消えて無くなるダンジョンの魔物。今まで戦闘が繰り広げられていたことが嘘だと思えてくる程綺麗な通路の先を見つめていたアキはそのまま歩き出した。


『幸いにも今出てきた魔物達は弱かったです当然この先に待ち受ける魔物達は今よりも強くなります、注意していきましょう』


ダンジョンは奥に進めば進むほど、階層を下りれば下りる程に出くわす魔物は強力な力を持った者が多くなっていく。警戒するように今一度アキにその事を伝えるクイーン。


「ああ、分かってるよ」


 しかし警戒するクイーンとは対照的に上位弓士ハイアーチャーとしての戦闘の幅が広がった事が嬉しいのかアキはどこか楽観的な様子であった。




「……あの群れのように現れた魔物が……弱い……だと……」


 ダンジョンの先ヘと進んで行くアキの後ろ姿を少し離れた場所から体を震わせ見つめていた女性、本来ならばサイデリーの王のお付兼護衛としてその役目を果たす為にブリザラから一切離れてはならないはずのピーランがそう呟きながら顔を引きつらせた。


「今あの男が戦った魔物達は地上で言えば上位の戦闘職でもてこずる相手だぞ……」


 複数射撃マルチショットを使う前から軽々とダンジョンの魔物を、しかも複数を相手に戦っていたアキ。複数射撃マルチショットを使うようになってからは驚異的な殲滅速度で魔物を次々と倒していったアキを目の当たりにしたピーランは驚きを隠せない。

 アキが強者であることは以前から知っていたし実際にその目でも確認していたピーラン。だがそれは全部、黒竜ダークドラゴンの力によるものだと思っていたピーラン。だがクイーンという自我を持つ伝説の武具を纏っている事を抜きにしてもアキという存在が持つ戦闘センスにピーランは驚愕していた。


「……まずい……確実に私は場違いな場所にいる……」


 経験を積む為としてや忍としての任務などでダンジョンには何度か足を運んだことがあるピーラン。しかし自分が経験したダンジョンとは明らかに違う強さを持つ魔物の出現に自分の力では場違いである事を認識する。


「それにこの気温……私の装備が暑さや寒さに対応した物だったからいいものの……この寒さは異常だ……」


その寒さが異常である事を感じとると同時にその寒さに嫌な予感を抱くピーラン。


「うん、あの男から離れすぎれば確実に私は危険な状況になる……ここは奴からつかず離れずの距離を維持しなければ」


 このダンジョンで自分の力が通用しない事を自覚するピーランは、極力目立つことを避けアキについて行くことを決めるのだった。



ガイアスの世界


 複数射撃マルチショット



剣士や魔法使いに続き、古い戦闘職である弓士アーチャーはその名の通り弓を使った他の戦闘職には無い長い射程からの攻撃が特徴である。そんな弓士アーチャー上位弓士ハイアーチャーは更に長い射程からの攻撃と多彩な技が特徴である。多彩な技が特徴ではあるが、多彩過ぎる為にあまり使えない、使わない技も多い。

 その一つが複数射撃マルチショットである。と言っても二本の矢を同時に放つ通常の複数射撃マルチショットは、上位弓士ハイアーチャーにとっては必須な技である。問題なのは、三連複数射撃スリーマルチショットで、複数射撃マルチショットからは考えられない程に難易度が高い為に、上位弓士ハイアーチャーでも使える者は多くない。しかも難易度が上がるのに対して、命中精度が極端に下がるという欠点から、上位弓士ハイアーチャーが覚えなくてもいい技の代名詞として有名な技になっている。理論上、強力な技ではあるのだが現在の人間の身体能力では三連複数射撃スリーマルチショットをうまく扱えないようである。

 ちなみに人間よりも遥かに身体能力が高い獣人族の上位弓士ハイアーチャーは、五連複数射撃ファイブマルチショットまでは正確な命中率を保ったまま使用できるようだ。


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