はじめましてで章 光のダンジョン
人物紹介 1
スプリング=イライヤ
年齢 20歳
レベル56
職業 上級剣士 レベル95
今までにマスターした職業
ファイター 剣士 ソードマン
装備
武器 戦続きの剣
盾 矛盾無き盾
頭 ダイアヘルム
胴 真紅の鎧
腕 疾風の手甲
足 疾風の足甲
アクセサリー 守りの指輪
身長 175cm
体重 70㌔
とある界隈では有名人、若手の戦闘職の中で一番剣聖に近いといわれている男
本人も剣聖を目指し日々精進を忘れない真面目な男
冒険者、傭兵として各地を飛び回り己の夢と目的を遂げる為に日夜剣の腕を磨いている。
最初で章 光のダンジョン
剣と魔法の力が渦巻く世界ガイアス。
その小さな島国は周囲にある大きな大陸に囲まれるようにして存在している。一年の大半が雪と氷に包まれる極寒の大陸や危険な魔物が生息する大陸、そして殆どが謎に包まれた大陸の中心にポツリと存在する小さな島国『ヒトクイ』。小さな国々から連なる島であったヒトクイは三十年程前に統一され一つとなった国としてはまだ新しい国である。だが小さい島国であるもののその国力や軍事力、繁栄度は大陸にある大国にも匹敵しており他国からも一目置かれている。
そしてもっとも驚かされるのがヒトクイは他国に対して侵略しないさせないという理念を掲げている事。
統一される以前は戦乱で乱れていたヒトクイ。二度と戦乱での苦しみを繰り返さぬようにと他国を侵略しないさせないとう理念を掲げたのは『ヒトクイ』を統一したヒトクイの王が発した言葉からであった。だがもし『ヒトクイ』を侵略しようとしている国があれば『ヒトクイ』は徹底的にその国を潰すと脅しも忘れてはいない。その脅しが効いているお蔭か、『ヒトクイ』に対して侵略しようとする国は統一後数十年一つも無い。
そんな『ヒトクイ』の環境は他大陸に比べ安定しており魔物の驚異度も低めで安心して生活できる国としても有名である。食べ物もおいしく特に島国という環境から海で穫れる魚がうまいと評判で、その他にも温泉やその風土も相まって旅行者は年々ましている。
しかしそんな旅行者が多い国ヒトクイには今、冒険者や戦闘職も多く集まって来ていた。その理由は冒険者、戦闘職の者達の中にある噂が広がっていたからである。
ヒトクイの何処かにあるダンジョンに伝説の武器が隠されている、そんな噂がガイアス中の冒険者と戦闘職の心を捉えていた。その足を『ヒトクイ』へと向けさせていたのである。
そしてそんな冒険者や戦闘職の者達に混じって、ある男も伝説の武器を手にする為、『ヒトクイ』ダンジョンに足を踏み入れようとしていた。
男が攻略しようとしているダンジョンの名は光のダンジョン。その名の由来は、他のダンジョンに比べ光の光度が強く眩しい事であった。その名の通りダンジョンの入口はこれでもかという眩しい光が放たれていた。その光に対して眩しそうに目を細める男は立ち止まると、ダンジョンの入口に設置された看板に目を向けた。その看板にはこう書かれていた。
1 ダンジョン内には一人で入る事
2 召喚などの力は禁止
3 ペット、使い魔なども不可
ある程度攻略されたダンジョンにはこういった注意書きが書かれた看板が立つ事が多く攻略に関する情報やそのダンジョン特有のルールが記されていたりする。先駆者達の助言や優しさからのものであるが中には嘘の情報を流しダンジョンに入ろうとしている者達を混乱させようとする輩がいる為、鵜呑みにしてはいけないというのが常識であった。
本来ダンジョンとは魔物や罠などが多く一人で攻略するには難しい。従いダンジョンに足を踏み入れる場合、仲間とパーティを組み攻略するのが常識である。しかし、光のダンジョンはそれを一切禁止し一人で攻略する事をルールとしていた。明らかに看板に書かれた内容は入る者を試すような内容であった。もし看板に書かれた内容が事実ならばかなりの高難易度ダンジョンである事がわかる。しかし男は看板に書かれた内容の続きを目にすると首を傾げた。
4 当ダンジョン内で起こった事は他言無用
5 ダンジョン内で何が起ころうとも当ダンジョンは責任をもちません
明らかに胡散臭さが増す内容か書かれていた。ダンジョン内で起こった事は他言無用までは分からなくも無いが、最後の一文、ダンジョン内で何が起ころうとも当ダンジョンは責任をもたないという一文はまるでダンジョンに入らせる事を拒んでいるようにも受け取れ男に違和感しか抱かせない。
「……」
初心者ならば全く気にする事無く入って行く可能性はある。しかし男は入るべきか入らざるべきか悩んだ。明らかにこのダンジョン自体が罠である可能性が高い。だが男は今までの経験、そして上位剣士という戦闘職としての勘が、この先に進めと叫んでいる事を感じていた。何の確証も無い自分の勘に引きずられるようにして男は警戒しながらも光のダンジョンへと足を踏み入れる事にしたのであった。
剣と魔法の力が渦巻く世界ガイアスでは戦闘職という戦闘に特化した職業がある。数百年前までは一握りの力を持った者、もしくは国に属する兵士にしか戦闘職という職業は許されていなかったが、数百年前にあった大きな大戦を皮切りにその敷居は下がり、今は誰でも転職場という場所へ行き審査が通れば戦闘職に就けるようになった。
戦闘職とは武器屋や防具屋、道具屋が物を売って生活するように魔物を倒したり冒険で手に入れた素材やアイテムなどを売ったり、魔物に襲われる村や町を守ったりして生計を立てている。有名な職業で言えば剣士や魔法使いなどがこの戦闘職というものに該当し光のダンジョンへ足を踏み入れた男の戦闘職は剣士の上位に位置する上位剣士。多彩な剣技を得意とする職業であった。
男には夢があった。剣技を極めた戦闘職、『剣聖』になりたいという夢が。『剣聖』とはあらゆる剣とその技を使いこなす剣にまつわる戦闘職の頂点の戦闘職であった。
大きな夢を持つ男の実力は、若い戦闘職の者達の中でもずば抜けており、巷では一番『剣聖』に近い若手と噂されているほどであった。
自身でも自分が『剣聖』に近い所まで来ている事を自覚している男。それ故に男はもう自分が『剣聖』になったつもりで『剣聖』に相応しい武器、剣を探し求めていた。剣にまつわる戦闘職の頂点『剣聖』に相応しいのは伝説と名の付く剣であると。そんな事を考えている男の耳に伝説の武器についての噂が流れてきたのはまるで運命のようであった。
「……」
下り坂になっている光のダンジョンの道中を歩きながら光のダンジョンの入口に立てかけられていた看板の内容を思いだす男。看板の内容が偽りである可能性を考えつつも、もしその内容が真実だとしたらと可能性を模索し始める男。
まず魔法使いなどの中衛や僧侶のような後衛の戦闘職が一人でダンジョンに入る事は基本的には不可能。攻撃魔法を詠唱している隙に魔物に攻撃され詠唱を中断、最悪の場合その隙か命を落とす原因となる。召喚士などの戦闘職も魔法使いと同様に詠唱している隙に攻撃される可能性は高い。だがそもそも看板の内容に召喚などの力は禁止と書かれている時点で、召喚士という戦闘職で光のダンジョンに入る事は許されない。
調教師も同様に看板に書かれたペットなど禁止に該当する為、入る事は出来ない。
それらの内容から導き出される答え、光のダンジョンを攻略する上で最も重要な戦闘職、それは前衛を得意とする戦闘職であった。ファイターや剣士などの前衛で素早く攻撃が出来る戦闘職が光のダンジョンの攻略の上では必須であると感じる男。そして男の戦闘職は上位剣士、光のダンジョン攻略には申し分ない職業であった。
それに加え男は看板に書かれた内容からもう一つの答えを導きだした。光のダンジョンの入口にあった看板に書かれていた内容が前衛に執着したものになっているという事は、最下層に隠されているという伝説の武器とは、前衛が使用する武器ではないかといものであった。それに気付いた男の目が輝く。
男が欲しているのは『剣聖』に相応しい剣である。伝説と名の付く代物である以上、その代物が剣である可能性は多いに高い。
光のダンジョンを攻略すれば自分の手に伝説の剣が手に入ると男の胸は高鳴った。しかし興奮する男は忘れていた。あの看板に書かれた内容自体が嘘である可能性を。
胸を高鳴らせまだ手に入ってもいない伝説の武器の想像を膨らませる男の名は、スプリング=イライヤ。若干二十歳にして若手の戦闘職の者達の中で一番『剣聖』に近いと言われる男であった。
「想像よりもあっけないな……」
ダンジョン自体が罠という可能性が頭の中から抜け落ちてしまっているスプリングは、光のダンジョン内に出てきた魔物を切り捨てると素直に感想を口にした。光のダンジョン内に出現した魔物は決して弱くは無い。それこそスリーマンセルぐらいのパーティは必要な魔物達がゴロゴロいる。しかし高難易度と考えていたスプリングの想定を超える事は無く、肩透かしをくらった感じであった。
「それにしてもどこが光のダンジョンなんだ?」
光のダンジョンとは名ばかりで僅かに光る鉱石の光しかない光のダンジョン内は薄暗い。その暗がりから奇襲とばかりに襲って来る魔物を息も乱さず返り討ちにするスプリングは、何もかもが想定を下回っている事に一種の不安を抱き始め、ようやくこのダンジョン自体が罠である可能性を思い出した。
「どこかの盗賊の罠にはまったか……?」
転職場に許可されていない戦闘職、外道職とも呼ばれる職業。その筆頭である盗賊を口にするスプリング。盗賊は金品を奪い、場合によっては人の命を奪う職業であるが、ここ最近その盗賊が新たな稼ぎを覚えた事が巷で噂になっていた。その噂とは盗賊がダンジョンを作っているのではないかというものであった。全容は盗賊が作ったダンジョンに騙されて入ってきた戦闘職は張り巡らされた罠に引っかかり身動きが取れなくなった所を盗賊に襲われ金品や身に着けていた装備を奪われるというものであった。
ダンジョンを作る労力とそれで得られる報酬があまりにも少なすぎはしないかと盗賊のダンジョンの噂を否定する者もいるが、よくよく考えれば盗賊にとっては理にかなった方法である事も事実であった。
一度ダンジョンを作り上げてしまえば、そこは盗賊のアジト兼仕事場となり入ってきた戦闘職の命を奪えば噂が立つ事も無く金品が奪える。盗賊にとっては安全に仕事ができるのだからダンジョン作りの労力などすぐに帰って来るのではないだろうか。ただこれらはあくまで噂の域を出ない。
そんな噂を思い出したスプリングは盗賊の術中にまんまとはまってしまったのかと落胆する。しかしそこに怯えの色は一切無い。たとえ盗賊の術中にはまったとしてもスプリングにはそれを打破するだけの実力と自信があったからだ。
「しょうがない……だったら盗賊を一つ潰して稼ぐか……」
ため息をつきながら目的を変更しようと歯ごたえの無いダンジョンを突き進んでいくスプリング。
「ん?」
しかしその矢先、スプリングの視線の先に光輝く派手な装飾を施された宝箱が姿を現した。
「これ見よがしに宝箱か……怪しい」
先程までの胸の高鳴りは消え失せ、今は悶々とした疑いが渦巻くスプリングは、これ見よがしにお宝が入っているぞと主張する宝箱を見つめながら近づいていく。
一度周囲を見渡しながら警戒するスプリング。しかし罠が発動する気配も、宝を守るボス級の魔物が襲って来る気配も感じないまま、宝箱が手に届く距離まで近づけてしまうスプリング。
「……だとすれば……この宝箱自体が罠か……」
罠にしては古典すぎると考えつつも警戒を怠らないスプリングは、背中に背負っていた盾を宝箱に向ける。
「……」
警戒しつつもあまりにもお粗末なダンジョンの状況にスプリングの心に油断が生まれていた。
通常のスプリングの精神状態ならばこのような状況化の時絶対に油断しない。それは剣を扱うようになって十数年でスプリングがもっとも学んだ事だ。どんなことも油断すれば、そこから死に繋がる。油断して戦場で死んでいった者を何人も見てきたスプリングは、細心の注意と油断をしないよう心掛けていた。しかし油断しないよう心掛けていたスプリングでさえ油断させてしまう程に、この光のダンジョンお粗末で歯ごたえが無い。
スプリングが盾を構えながらそっと宝箱の蓋に触れ手に力を入れると宝箱は軋む音を立てながらゆっくりと開いた。開けた途端に大爆発、もしくは宝箱自体が魔物であり頭から食われるなど色々と想定される状況はあったがそのどれにも当てはまらず宝箱はただ軋む音を立てて普通に口を開いた。
「何も……おこらない」
このダンジョンを設計した盗賊はある意味で天才かもしれないと驚きを通りこして呆れるスプリング。
「はぁ……で中身はなんだ?」
すでに期待は消え失せ後始末のような気分のスプリングは、宝箱の中を覗き込んだ。
「ッ!」
スプリングは宝箱の中身を見て唖然とした。大した物は入っていないだろうと思い込んでいたスプリングの目の前に現れた物、それはたしかに伝説級の代物であった。スプリングの目でもはっきりとわかる程に宝箱の中に入っていたものからは凄まじい力を感じる。
「う、うそだろ!」
それが伝説級の代物であると確信したスプリングは一瞬喜びの声をあげた。しかし次の瞬間、その代物の形を再確認してその喜びの声は暗いものへと変わって行く。残念そうな表情を浮かべ肩を落としながらその代物を手に取るスプリング。
結果から言えば、この光のダンジョンは盗賊が作り出したダンジョンでは無く、正真正銘の伝説の武器が隠されていたダンジョンであった。しかしスプリングの表情は浮かない。伝説の武器を前にしているというのに微塵たりともその表情は喜びに震える事は無い。それはなぜか、その理由は簡単で宝箱の中に入っていた代物がスプリングが望んでいた物では無かったからだ。
「……ロッド……」
理解できないという表情でその代物が何であるかつぶやくスプリングの手には、上位剣士であるスプリングとは全く必要の無い魔法使いなどが扱うロッドが握られていた。
「お……おい本当かこれ?」
だったらあの看板の内容は何だったのだと看板に書かれていた内容を深読みしすぎていた事に気付いたスプリングは力無くその場に崩れ込む。
「あ……よくよく考えれば……そうだよな」
煌びやかな装飾が施された宝箱を背もたれ替わりに自分の手に握られた伝説のロッドを見つめるスプリングは自分が勘違いをしていた事に気付いた。
伝説の武器があると言われていたが、誰もそれが剣だとは言っていない。伝説の武器という言葉を勝手に伝説の剣と変換していたスプリングは自分の考えの至らなさに頭を抱えた。
「あああ! とりあえず俺には過ぎた代物だな……武器屋にでも行って高く売ろう」
自分の手に握られているものが剣では無い以上、スプリングにとってそれはお金に変わる以外の意味を持たない。短い雄叫びを上げたスプリングは気分を切り替え光のダンジョンを後にしようと背もたれ替わりにしていた宝箱から背中を離し立ち上がる。
その瞬間スプリングが手に持っていたロッドが眩い光を放った。
「な、なんだ?」
『……「な、なんだ?」……声帯認証を確認、マスターに確定、スキルが不適合、周囲をスキャン……スキャン完了、適合スキルを強制発動』
自分の手元で光るロッドから発せられる言葉が理解できないスプリング。何が起こったのかそしてロッドから発せられた言葉が何を意味しているのか考える暇もないままロッドから放たれる光は大きくなりスプリングの体を包み込んでいった。
人物紹介 2
人物紹介?
伝説のロッド (名前不明)
とにかく何もかもが不明。しかし魔法使いでは無いスプリングですらはっきりと分かる程、強力な力を放っている。