プロローグ
【登場人物】
刀弥 京之助 新たに第5チームに配属された分析技術官
セシル クイーン作業チーム
〔バリヤ第5チーム〕
狐塚 慎 ひげ面の山男のような風貌をしている有能な分析官
十時 景岳 陽気で剛胆な分析官
アーヴィング・クライン すらっとした紳士で、眼鏡をかけている
鷹品 あずさ(たかしな あずさ) 第5チームの女性技術官にして指揮官
* * *
『プロローグ』
「バリヤに行ってみないか?」
そんな言い方をされた。
「また、いかがわしいバーを見つけたんですか? 嫌ですよ。遠慮しておきます」
そんな言い方で断った。
すると世渡り上手だけが取り柄のようなその上司(山波と言う)は、ヒャヒャヒャとおかしな笑い方をして言う。
「またー、刀弥くんはバリヤも知らないのかい? 政府が敵の襲撃から世界を守るために作り上げた戦闘組織だよー」
「そうですか。それはそれは。でも、俺は銃、撃てませんよ」
すると今度は上司が自慢するように言う。
「えー?刀弥くんほどの人が銃も撃ったことないの? ボクはねえーこれでも昔、射撃訓練受けたことあるんだよぉー。あんときはキンチョーしたねえ」
「………」
その後も延々と続く自慢話をBGMがわりにして、京之助は黙々と分析を続ける。
バリヤの名前くらい、分析の仕事で穴蔵の生活をしていても知っている。ただ、この上司の内容のない話を聞きたくなかっただけ。時間のムダだ。たとえその中に、重要な異動の話が入っていたとしても。
京之助は国の機関である技術研究所で、物質成分分析の仕事をしている。今の仕事は、くだんの上司を除けば何の不満もない。とんでもなく忙しいが、たまには休みも取れる。なにより分析の仕事は自分の性に合っている。
何が楽しくて、バリヤなどという戦闘集団に行かなければならないのだ。
「あー、でも戦闘チームじゃなくて技術チームだって言ってたけどなー」
上司がつぶやくのを聞いて、ほんの少し心が動いた。
技術チーム?
バリヤって言うのは戦闘するだけの組織ではないのか。考え込んで手が止まっているのに気づきもしない上司が、京之助のそばを離れようとしたとき、「刀弥さん、来客ですよ」と後輩が部屋へ入って来た。
「来客? 俺に?」
「へえ~、珍しいこともあるもんだね。刀弥くんに来客なんて。だれ?」
上司がさも驚いたように言うと、後輩はもっと驚くことを言った。
「バリヤの総括リーダーの方です」
バリヤ 3 連載始まりました。
今回は、第5チームに配属された刀弥と、
クイーンの絶世の美女?セシルが中心のお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。