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ママの作ったきらきらのプリン
冷蔵庫を開けると、いちばん上の棚で、プリンがきらきら光っていた。
透明なガラスの器に入っていて、上には黄金色のカラメル。まるで小さな宝石みたいだ。
「それ、あとでね」
ママは笑って言った。
その声は少し疲れているけれど、やさしい。
ぼくは学校でうまくいかない日が多い。友だちの言葉に傷ついた日も、テストでまちがえた日も、ママは何も聞かずに、台所でプリンを作る。卵を割る音、牛乳をあたためる音、鍋を混ぜるスプーンの音。それだけで、家の中が安心で満たされる。
夜。
プリンはちょうどよく冷えていた。
「今日もがんばったね」
ママはそう言って、スプーンを差し出す。
一口食べると、甘さがゆっくり広がった。苦いカラメルも、あとからちゃんと追いかけてくる。
きらきらして見えたのは、砂糖じゃない。
ママが毎日、ぼくを思ってくれる気持ちだったのかもしれない。
空になった器を見て、ぼくは思う。
明日もきっと、大丈夫だ。




