越後の山々は、いつも雪と野心を抱いている。
長尾為景はその山の申し子だった。
守護・上杉氏の威光はすでに色褪せていた。名ばかりの主君に仕え、国人どもに侮られることを、彼はよしとしなかった。
為景は兵を挙げ、ついに主君を追い払う。
それは下剋上と呼ばれた。だが彼にとっては当然の理であった。
「最も強き者が後継者となる‥。アレクサンドロス大王もそんなことを言っていた‥」
越後守護だの関東管領だの‥肩書きで戦争には勝てない。
以来為景は越後を血で固める。
椎名、神保、一向一揆、果ては信濃の豪族までも、彼の矛先を避けることはできなかった。
幾度も春日山に炎が映り、幾度も雪が屍を覆った。
