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三題噺もどき4

買い物へ

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくはち。

 




 月の浮かぶ夜道を歩いている。

 雲がうっすらとかかっているが、今日は昨日に比べて天気がいい。

 おかげで風も暑くて仕方ないが、昼間に比べればまだましな方だろう。

 この熱風に合わせて太陽の熱まであるのだから。

「……」

 これでも一応、多少涼しめの服を着ているのだけど。

 ノースリーブTシャツの上に、薄手の生地のシャツ。今日は財布と買い物袋を持ってきたので、斜め掛けの鞄を掛けている。

 下はピッタリ目のパンツではあるが、裾の方は少し広がっている。足さばきが悪くなるのが好きではないので基本的に下は四季関係なくシルエットはたいして変わらないな。上はこう……冬はもこもこする。

 靴は履き慣れたスニーカーだ。もちろん全て色は黒だ。

「……、」

 しかし、溶けるような暑さとはよく言ったものだな。

 この夜中でもこれだけ暑いのだから、昼間なんてそれはもう暑いのだろう。私の想像にも及ばないほどに暑いのだろう。陽に焼かれているような感覚だろうに……。吸血鬼ではあるから、その辺の恐ろしさは分からなくもない。

「……」

 私なんて、ここ最近は陽の沈みかけているあの時間ですら、太陽は容赦なく肌を刺してくると感じるのに。

 私が熟睡している昼間なんて……考えるだけでも溶けてしまいそうだ。

 外で食べて居たらかき氷とかアイスなんてあっという間に液体になってしまうんじゃないか?昨年あたりから、不要な外出は控ええるようにと言われるほどの暑さになりつつあるのに、その中で外に仕事にでる人間は心配になる。

 生きるために必要とは言えなぁ……。

「……」

 私自身は夜に家で出来る仕事をするくらいで、こうして比較的暑さの緩い、夜にしか行動しないからなぁ。

 これが世間の当たり前になったらそれはそれで……ちょっと困るけれど。

 アイツが一生家からでなくなる。人間嫌いとまではいかないが、人見知りがすごいので。

「……」

 まぁ、今日は。そのアイツに頼まれて買い物に向かっている。

 というか、いつも常備しているはずの飴玉がなくなっていたので、散歩ついでに買いに行っているのだ。その他諸々も頼まれたので、今日は少々大荷物になるかもしれない。とは言え、二人分なのでたかが量は知れているかもしれないが。

「……」

 歩きなれたスーパーへの道を歩いていく。

 道中は基本的に住宅街なので、様々な家や庭がよく見られる。

 今日もあの薔薇の咲いていた家は、1つだけ部屋に明かりがついていた。

 タイミングが合っているだけなのか、それとも毎夜なのか……夜起きていてもいいことはないと思うが。案外私と同じような生活をしている人間かもしれないな。

「……」

 そういえば、この時期になれば聞こえてくる虫の声はあまり聞こえない。

 夏と言えばというあれは、どこにでもいるものだと思っていたが……この辺には居ないのだろうか。昨年はそれなりに聞こえていて、うるさいと思った記憶があるようなないような。

「……」

 その代わりと言うように。

 少し先の道を、一匹の蝶々が飛んでいった。

 この時期には珍しいような気がする……モンシロチョウだった。

 ふわふわと飛んでいくその様は、どこかから来た魂が目的もなく漂っているだけのように見えた。

「……」

 なんとなく。

 嫌な予感がして、その蝶がいた道は通らないでスーパーに向かうことにした。

 これ以上面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ……。ようやく終わって、アイツの監視も落ち着いてきたんだから……過保護にも程があると思う。アイツは。

 ありがたいことに、この辺の道は大抵つながっているので、どこで曲がっても大通りには出る。住宅街特有なのかどうかは分からないがな。

「……」

 後ろ髪を引かれるが……勘弁願いたいのも本音だ。

 さっさと買い物を済ませて帰るとしよう。

 何に巻き込まれるかわかったものではない。





「おかえりなさい」

「ただいま」











 お題:蝶々・溶ける・飴玉


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