#3
三作品目となります。
「そんな訳で、何か知っている事はありませんか?」
職員室では数人の教師が机に向かいパソコンを叩いていた。
「いやあ、私は知らないね...」
「そうでしたか...」
「ちょっと、白城圭介さん?」
二人目に話しかけるも何の情報も得られなかったところで後ろから声がかかる。
「はい、なんでしょうか?」
「オカルト研究部よね?」
生活指導の先生だ。
「あ、はい。そうですが、何か御存知ですか?」
口ではそう言ったものの、白城圭介、ひいてはオカルト研究部に利をもたらしそうな雰囲気ではない。むしろ向こうからこちらへ相談しに来た、と言った雰囲気だ。
「いえ、そうではなくて。白城圭介さんの先輩の話なのだけど。」
「あぁ、水瀬先輩の...ポスターの話ですか?」
口から短く息を吐き出す。
「知ってるなら話が早いわ。後輩の貴方にお願いするのも気が引けるけど、もう少し目を付けてもらえる?」
「すみません、四六時中一緒にいるわけではないので...いる時は止めたりしているんですが...」
「えぇ、そうよね。それは分かってはいるんだけど、他の子にお願いしてもいつの間にかいなくなるみたいで...今のところ貴方が一番お目付け役に最適なのよ。」
「はい。こちらの方でも善処します。」
「お願いするわね。あぁそれから、ちょっと話が聞こえてたんだけど、私は怪談について何も知らないから。」
懇願するような、それでいて半ば諦めたような目を白城圭介に向けながらそう言って踵を返す。
他にいるのは三人。時期に終わるだろうと一人一人、近くの教師から話しかけて
いく。
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「いやぁ、知らないね。」
「そうでしたか。ありがとうございます。」
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「聞いたことはあるけど、眉唾物じゃないのかい?」
「それを調べるのが今回の活動なので...」
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「私は知らないけど...」
「けど?」
半ば諦め、成果なしで戻ったときに水瀬春が何を言うか、を考え始めていたその時、最後の一人が何かありげな話の切り方をした。
「中庭の植物の手入れをしている人と知り合いだから、その人に聞いてみると良いよ。もし君さえ良ければ、今から連絡してみようか?」
「是非お願いします。」
「じゃあちょっと待っててくれる?」
スマホを操作しどこかに電話をかける。
「もしもし。うん。今中庭について聞きたいって子が来ててね、空いてる日を教えて欲しいんだけど...うん。今から?分かった。...うん、うん。はい。じゃあありがとう。また今度飲みにでも行こう。」
通話を切ったらしく、改めてこちらに向き直る。
「多分聞こえてただろうけど、今から大丈夫だって。中庭の南側で待ってくれるそうだから、部員と合流して行くと良いよ。」
「分かりました。本当にありがとうございます。」
「いやいや、折角の部活だからね。頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます。」
スライド式のドアを開け、「ありがとうございました。」と一礼して職員室を去る。
「お、やっと出てきたかい白城君。」
待ち構えてた水瀬春と相対する。その手には別れるまであったポスターが無くなっていた。
「先輩。美術部の知り合いにはもう渡せたんですね。」
「うん。ジュース一本で手を打ったよ。そっちはどうだった?」
「こっちも、中庭に詳しい...多分用務員さん?に会えることになりました。中庭の南側で待ってくれてるそうです。」
「上々。流石だよ。それは明日かい?」
「いえ、今だそうです。」
「じゃあ早速向かおうか。時間は───」
「時間は有限、なんですよね。」
「分かってるじゃないかぁ。」
ニヤリと笑みを浮かべ、早足で歩く水瀬春の後ろを白城圭介がゆっくりとついていく。
続けて見てくださっている方へ、展開も見せ方も下手以外の何者でもないですが見てくださり誠にありがとうございます。
これを初めて見てくださった方も、数多の作品の中からこの小説を選んでいただきありがとうございます。
もしよろしければ、今後も見てくださると幸いです。