#2
二作品目となります。
「最初に言った通り、我が部には新入部員はおろか見学者すら来ない。」
もう逃げないと判断したのか、水瀬春が掴んでいた手を話し、机の方へゆっくりと歩みを進める。
「ポスターも描いてもらいはしたけど、色塗りも含め完成には時間がかかる。その頃にはまだ所属する部活に悩んでいる浮遊層も既にほとんどいなくなってしまうだろう。」
下書きの済んだポスターを持ち上げ広げ、光に当てる。
早々に帰宅するのを諦めた白城圭介はカバンを下ろし、椅子へ腰かける。
「それでね、オカルト研究部として宣伝するには、やはりオカルトを研究、則ちこの学校のの七不思議を調査して大々的な結果を出せば良いと思うんだよ!」
「あぁ...ですが、あれって大体眉唾物じゃないですか?今までの先輩が悪ふざけで作ったような内容もありますし...」
「確かに七不思議その三、『校長に就任した人は皆ハゲる』なんかはごく一部の校長の特徴を取った学生の悪ふざけだろうね。女性が校長になった時も不幸な事故で髪が無くなった事も少なからず影響を与えているだろう。でも、その一部は確かに本物だと思うんだよ。オカルト研究部として七不思議は言えるね?」
「はぁ...その一、『人食い中庭』その二、『屋上から飛び降り続ける人影』その三、『校長に就任した人は皆ハゲる』その四、『更衣室のハナコさん』その五、『校庭に埋蔵金』その六、『呪われた物置小屋』その七、『誰も知らない幽霊生徒』、ですよね?」
「その通り!その一、『人食い中庭』について私は調査しようと思ってるんだよ。」
「調査って言ったって、どうやって?実際に見に行くんですか?」
「それもするさ。けど調査と言えばまずは聞き込みからだろう?」
「...それに付き合うんですか?」
「物分かりが良いじゃないか、放課後の今は生徒は部活で忙しいだろうし、他も帰っているのがほとんどだろうから先生から聞いていこうか。」
「今からですか?」
「今から以外にあると思うのかい、時間は有限な上、時間が掛かれば掛かるほど浮遊層の数は減っていくんだよ。」
「...はぁ。」
「どうしたんだい溜め息なんて吐いて。じゃあ私は美術部の知り合いにポスターを渡してくるから、先生に聞き込み頼んだよ。」
「えっ、先輩はやらないんですかっ?」
「やらない訳ではないよ。ただ、優先すべき事を先にしているだけさ。それとも、君が私の代わりにお願いしてくれるのかい?」
「...ぐっ、はぁ...」
「また溜め息だ。幸せが逃げるって聞いた覚えはないのかい?」
「吐いてなきゃやってられない事もあると思うんですよ...」
「はは。ま、部員数を増やす為に頑張ってね。」
ガララ、と戸を引いて水瀬春がポスターを抱えたまま外へ出る。その後ろを追って、白城圭介はペンと小さなメモ帳を持って外へ出る。
お互い無言のまま同じ道を辿り、途中で一人は美術室、もう一人は職員室に繋がる道に別れてそのまま歩き出す。
読んで下さり誠にありがとうございます。#1も見てくださった方がいらっしゃいましたら格別の感謝を。この作品から#1を読もうと思ってくださっている方には多大な感謝を。これからもチマチマと頑張らせていただきます。