#1
初投稿です。まだ投稿に不慣れですが、温かく見守っていただければ幸いです。
ある春の日、校舎が太陽の光を反射し白く輝く。
その校舎の、日の当たりにくく、かつ場所も分かりにくいある一室、「オカルト研究部」と書かれた部屋には二年生の男と三年生の女二人きり。
「...そうだ、付き合ってよ。」
「はい?」
その一言は、男の手に持ったシャーペンの芯を折るには十分だった。
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「...え、な、何を言ってるんですか?」
二年生の男───白城圭介が、折れた芯をぱっぱと払い除ける。その手つきはややぎこちない。
「言葉が足りなかったかな?今は春、色んな部活では新入部員で盛り上がっているよね。」
退屈そうに脚をブラブラさせながら三年生の女───水瀬春が言った。
「そうですね。...まあ、うちの部は誰も来ませんけど...」
「それだよ!なんでうちの部活は誰も来ないんだい?!」
水瀬春が突然立ち上がり、机を手のひらで叩く。机が揺れてペン立てが倒れた。
「なんでって、何もしてないからでは?」
ペン立てをきっちりと立て直して問いかける。
「何もしてない事はないよ!私だってね、個人的にポスターを作って廊下の目立つところに貼って、そして生活指導の先生に怒られたりして...」
最初の勢いは徐々に弱まり、やがて机に突っ伏した。
「あの赤メガネめ...毎回毎回ルールルールと私の事を縛りやがる...そんなんだからいつまでも結婚出来ないんだよ...」
ぶつぶつを愚痴を続ける水瀬春を、ペンを机に置いた白城圭介が呆れたように見下ろす。
「そんな事してたんですか?」
「そんなうろんな目で私の事を見てどうしたの。何もしてない先輩、って言う失礼な認識を改めて尊敬の念を持つ気になった?」
「いえ、そんな事はないです。」
「本当に失礼だね。まあそんな目をしてる時点でそんな事ないだろうと思ってたけどさ。」
「まあまあ。それより、これでどうですか?」
白城が先程まで書いていた紙を見せる。大きく薄く[オカルト研究部 新入部員大募集中]と描かれた紙だ。
「おお!良いじゃないか良いじゃないか!」
上に大きく描かれた見出しから、下の方に細々と書かれた部室の場所や活動内容までじっくりと眺め、噛み締めるようにゆっくりと頷きを繰り返す。
「良いじゃないか、良い出来じゃないか。私はこういうのはさっぱりでね。」
「色を塗る伝はあるんですよね?」
「もちろん!それは任せてよ。」
ふふん、と言いたげに控えめな胸を張る。
「じゃあこれで失礼します。僕はもう帰りますね。」
ガサッ、とカバンを持ち上げ
「おっとそうはいかない!」
水瀬春が白城圭介の手を掴む。力量差的に余裕で振り払えるが──振り払うどころか引き摺る事だって可能だが──それはせず、帰ろうとする脚を止めて水瀬春の顔を見ている。
「最初に言ったでしょ?付き合ってよ、って。」
誰が見ても分かるほど白城圭介が動揺を見せる。
「んなっ、えいや、あれは冗談とかじゃ...?」
「そんな訳がないだろう?私は本気さ。」
その言葉に白城圭介が平静を装いながら、しかしその耳は赤くなっている。
「し、新入部員の話ですよね?」
「もちろん、新入部員を増やす為だよ?」
その瞳には恋心であるとか、邪心であるとか言ったものがない。ただし、何も無いかと言えばそうではなく、確かな意思と、少しの好奇心などが入り雑じり深く重層的な光を湛えている。
「え、それってまさか...」
「その通り、学校の七不思議の調査さ!」
「......え?」
ここまでご覧いただきありがとうございます。感想など下さいましたら私が喜びます。