運命の場所
「それ!! 次陽子だよ」
「分かってるって」
陽子がこの学校に転校してもう2週間。クラスにもそれなりに打ち解けたのか友達も増えた。
最近は昼休みに屋上で大縄をやるのが流行りらしい。
「ふぅ~結構飛んだね」
「私ヘトヘトだよ・・・」
「そろそろ時間だし、戻ろうか理穂ちゃん」
「うん」
予鈴も鳴り、教室に帰ろうとした矢先、陽子はあることに気付いた。
「あちゃ~」
「どうかした陽子ちゃん?」
「アタシ、屋上に忘れ物しちゃった・・・悪いけど、理穂ちゃん先に行ってて」
「うん分かった」
屋上までの階段を猛スピードで駆け上がる陽子。
午後の授業のチャイムは鳴っている。だけど本人はそれには気付いていなかった。
「着いた・・・」
屋上のドアを開ける。いつもより重く感じた。
「お目当てのものは・・・・あ、あった」
幸い忘れ物はすぐに見つかった。それよりも気になるものがあった。
仕切られているフェンスの向こうに人影が見えたのだ。
「ちょっと、あれってまずいんじゃない・・・」
勘のいい陽子は何となく分かってしまった。
フェンスの向こうにいる彼が何をしているのかを。
「何か探し物?」
「うわぁ!」
男の子が驚いた表情でこちらを向いた。
「探し物なら手伝うよ?」
とっさに陽子はフェンスを超える。
「お願いだから・・・邪魔しないでくれ・・・」
「1人より2人の方がいいと思うよ」
「じゃあ僕と死んでくれるのか!!」
少年はいきなり声を荒げた。そこしれぬ迫力を感じた。
「でも、見なかったフリなんて出来ないわ。アタシの目の前で死なれたりしたら気分悪いもん」
「そんな事知るかよ・・・僕はもうここから消えたいんだ!!これ以上近づかないでくれ・・・」
少年はどんどんと外側へ近づいていく。予想外のことに少年もパニックになっているようだ。
「わ、分かった。近づかない・・・近づかないから、アタシの話も聞いて」
「なんだ」
「アタシと勝負しない?勝負」
「勝負・・・・」
「そうそう、アタシとじゃんけんして3回勝ったら、アンタはそこから飛び降りる」
「キミが勝ったら?」
「アタシと一緒におとなしく戻ろう」
「それじゃあ、僕にはメリットが無いじゃないか」
げっ、そこまで考えてなかった、どうしよう・・・・
痛いとこを突かれた。だが、長く考える時間は無かった。
「じゃ、じゃあ・・・アタシの唇でどう?」
「え~」
少年は微妙な顔をして首をかしげた。
「え~い、ならばこれでどうだ!! アンタが勝ったら、アタシのこと好きにしてもいい!!
あんなことや、こんなことやり放題!! これでどう?」
「そこまで言うなら、分かったよ。キミと勝負しよう」
2人は顔を見合せた。
決戦のバトルフィールドは屋上のちょうど中央になった。
「いくわよ」
「ああ」
「最初はグー」
「じゃんけん―」
「グゥゥゥ!!」
「うはっ・・・」
一手、陽子が早かった。
思いっきり少年の腹にグーパンチした。
「ひ、卑怯だぞ・・・」
「世の中はそう甘くないわ」
ぐったりとたおれた少年を抱え、とりあえず保健室に連れて行くことにした。
「どうしたの、一体?」
「いや・・・屋上に寄ったら倒れてて。日射病か貧血じゃないかな・・・・アハハ」
「そ、そう・・・とりあえず、アナタは教室に戻りなさい」
「わ、分かりました」
その後陽子は教室に戻ったが、帰りが遅いとメッキリ怒られた。
彼女が1人の人間を救ったことなど、多分誰も知らない。




