マヨラーVSごまあぶラー
「おい、お前食いモンに何てもんかけてんだ」
「えっ?マヨネーズだけど・・・どうかした?」
転校してきて初日の昼休み。
陽子にとってこいつと巡りあうのは宿命だったのかもしれない。
「何でもかんでも、マヨかけたらいいって問題じゃないだろ」
学年一の秀才、日比谷 衛だった。
「ってお前も人のこといえんじゃろ」
隣に居た男子生徒が日比谷を叩く、彼の弁当からは微かに香ばしい香りがしていた。
「もしかして、これって・・」
「ごま油の匂いでしょ」
「うん・・・って理穂ちゃん詳しいね」
「そりゃあもう、日比谷君が生粋のごま油好きだっていうのは暗黙の常識だよ」
陽子は横目で日比谷を見た。
すると彼は白いご飯の上に大量にかかったごま油と一緒におかずを食べている。
いうならば『ごま油かけご飯』みたいな感じになっていた。
「ん、何だ?」
「いやぁ変った食事のスタイルだなぁと思って・・・」
ごま油の匂いのプンプンする日比谷に陽子は口を濁す。
「お前にだけは言われたくないな」
「なっ、そういうアンタだって・・・」
同じ偏食者でも明らかに両者の食べ物に対する解釈は違っていた。というか間違っていた。
「なら、お前はそのマヨネーズにこだわりがあるのか」
「も、もちろんよ!!」
「だったら自分でマヨネーズぐらいは作れるよな」
「マヨを愛するものとしてそれぐらい当然よ!!そういうアンタはどうなのよ」
「俺か?今日の油は特別品だ。見せてやる、ホレ」
と言うと日比谷はバッグからビンを取り出す。
「こ、コレほんとにごま油なの!?色が白い・・・」
「コイツは正真正銘のごま油だ。色気のないものは非常に純度が高く、また香りも一段と香ばしい。
正しくコイツこそ調味料の王者!!一般家庭では使われないこの高貴な輝き!!お前のなんてどうせ
味○素のピュアセレクトかなんかだろ」
「ちがうもん!!私のはちゃんと本家キューピーですぅ!!」
「マヨネーズの味なんて普遍的で変りやしねぇよ」
「なんですって!!」
はぁ・・・とクラスの全員が溜息をつく。
日比谷みたいなのがまた一人増えた。そう思うとなんだかこれから嫌な予感しかしないのが明白だった。
陽子たちの受難はまだ続く。