かわいいのは見た目だけ
「お母さん、行ってきます!!」
暑さも身に沁みてきた6月、とある少女は母の仕事の都合で私立中学に転校することになった。
新しい学校はどんなところなのかな・・・うーん、楽しみ!!
といった具合に彼女はとても前向きで明るい。まるで燦々と輝く太陽のようだった。
陽子というのは彼女の名前であるが、名前をそのままにしたような人間であった。
「おはようございます!!」
彼女は担任の先生に挨拶をしに学校の職員室に立ち寄った。
「お、キミが今日から転校してきた子だね」
「はい。野田陽子といいます、お世話になります」
「私は担任の早川だ。また改めてよろしく頼むよ」
「よろしくお願いします!!」
「ハハッ、元気があってよろしい。それじゃ皆に紹介するから付いてきてよ」
「はい」
職員室の1つ上にある2年2組の教室。ここが陽子のクラスだ。
次は2時間目だったが、ちょうどその時間は早川が授業を持っていたからこの機に紹介しようという考えであった。
「おい、早川の奴遅くないか?」
「もしかしたら自習かもな」
「マジでか!!」
「残念ながらそうじゃないんだな~」
早川が教室のドアを開く。ざわついていたクラスが一瞬静かになった。
「今日は皆に紹介したい人がいるから、よく聞いておくように!!
それじゃ自己紹介お願い」
「都立東山中学校から来ました、野田陽子です。よろしくお願いします!!」
「はい拍手!」
パチパチ・・・と一斉にクラスが沸きあがる。一番盛り上がったのは思春期真っ盛りな男子たちだった。
「おい、あの子超かわいいじゃん!!」
「び、美少女転校生って存在したんだな、衛!!」
「ん?・・・あ、そうだな」
あ、アタシって歓迎されてる!?
まぁこの方が暗いよりかはマシか。さぁて、まずは友達作らなくっちゃな・・・・
コレに関して、陽子自身は自分が『美少女』だという自覚は無かった。
そして彼らはまだ彼女の本当の姿を知らない。