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episode:9 千影のバチバチ伝説

この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。


オープニングテーマ「your kind!」


https://ncode.syosetu.com/n7284ka/1/

挿絵(By みてみん)

フードデリバリーのアルバイト中、急に千影のバイクの調子が悪くなった。


会社に連絡すると、代わりのバイクを貸し出すので近くの営業所に来て欲しいという。


営業所の職員に案内されてやってきた駐輪場。


「こういう会社ですぐ代わりのバイクを用意して頂けるって、珍しいんじゃないですか?」


「うちは他社より手厚い福利厚生がウリですからね」


「なるほど、さすが智和の一族が経営してるグループ企業」


「それでは、こちらのバイクを使ってください」


「こちらの……バイクを?」


「はい」


「バイク?」


「はい」


「バイク……」


やたらと頑丈そうな黄緑色の車体。

千影には見覚えがあるタイプの光沢。


「これ、どういうバイクですか?」


「どういう? 普通のバイクですが?」


前輪と後輪の左右に、動物の足のようにも見える装飾。


「普通のバイク……ですね、確かに」


職員が普通のバイクと言うそれに対し、千影には色々とツッコみたい部分があったが、何より一番気になったのは、車体前部に付いている立派な角の生えたサイのような顔。


(絶対妖怪だ……)


挿絵(By みてみん)


夢幻(むげん)戦隊ヨーカイジャー」


episode:9 「千影のバチバチ伝説」



千影はサイのような顔の付いたバイクを手で押して営業所を出ると、人気(ひとけ)の無い路地裏に入ってムゲンブレスで智和に状況を報告した。


≪あいつそんな所にいたのか……≫


智和の呆れたような声。


「やっぱり妖怪? このバイク」


≪ああ。電撃妖怪ライジュウ≫


「電撃妖怪……」


ライジュウの車体表面を小さな稲光のような物が走る。


「デリバリーのバイクにしては厳つい名前ね。社員さんには普通のバイクに見えてたみたいだし、妖怪だとかは言わなかったけどそれで良かった?」


≪有難い。うちのグループ企業の職員でも、妖怪のことも悪魔のことも何も知らない人間のほうが多いからな≫


「私もついこの間までそうだったもんね。それでその電撃妖怪ライジュウ?が、なんでタラフクフードの駐輪場にいるの?」


≪うん……≫


智和の話によると、ライジュウはある時期から自分を乗りこなすことができる者を探していた。


妖怪の里の様々な妖怪がライジュウを乗りこなすべく挑戦したが、皆すぐに振り落とされ、ライジュウの気に入る乗り手となることはできなかった。


智和や、妖怪治安維持部隊隊長のネネコガッパも挑戦したが、結果は同じだった。


「智和もバイク乗れたんだ?」


≪そういうのはまあ、一通りはな≫


「この子がもっと大きかったら、カラステングとかなら乗れたかもしれないのにね」


千影がライジュウの頭を撫でる。

またライジュウの表面を小さな稲光のような物が走る。


≪実はそいつ、本来はネコマタンやカマイタチくらいの大きさでな、本来の大きさに戻ってもカラステングや長老が乗るには小さすぎるし、キュービルンには逆に大きすぎるし、ネコマタンは乗るの恐いって言うし、カマイタチは前足が鎌だからハンドルを握れないし≫


「そっか……それで里を飛び出して、あんな所にいた、と。なるほどね。にしても、妖怪になんで車輪が付いてるの?」


≪人間だって、背が高い人や低い人、髪が黒い人や茶色い人……≫


「妖怪にも車輪がある妖怪もいれば無い妖怪もいる、ってことか。多様性ってやつね。社員さんからキーを渡されたんだけど、これ差さないと動かない?」


≪どっちでもいい。そいつのキーは、そいつの趣味で器用な妖怪に作ってもらった物だから≫


千影はライジュウにキーを差して回す。


〔ブンブン!〕


「エンジン音が鳴ったんだけど?」


≪それそいつの鳴き声≫


「鳴き声……」


〔ブンブンブン!〕


≪待て、何考えてる?≫


「今日はあと1件お届けしたら終わりにするつもりだから」


≪話聞いてたのか? 妖怪でも乗りこなせなかったって……≫


「血が騒ぐって、こういうことを言うんだな……」


≪いやいやいや妖怪に乗って何をお届けする気だ?≫


「麻婆豆腐」


≪豆腐が豆腐かどうかわからないくらい粉々になって謎の挽き肉料理が完成するぞ?≫


「血が騒ぐって、こういうことを言うんだな……」


≪それはもう聞いた!!≫


「私この前、智和に『拓実に似てきたんじゃない?』って言ったけど、私もかも」


千影は通信を切り、ヘルメットを被る。

ライジュウに股がりハンドルを握る、と同時に急速発進。

しかし制限速度はギリギリ守っている。


「お行儀いいのか悪いのか」


〔ブンブン!〕


広い車道を走る。

想像していたほど騒々しくもなく乗り心地は悪くない。


「振り落とさないでくれるの?」


〔ブン!〕


その時、後ろを走っていたトラックが対向車線にはみ出しながら無理矢理千影を追い抜いて前を走りだした。


「あー! ああいうの真似しちゃダメだからね」


〔ブンブンブンブンブン!!〕


ライジュウは一瞬加速して大ジャンプ、車体全体から稲妻のような光を放ちながらトラックを飛び越え、トラックの前方2車体分ほど距離を空けて安全に着地。


「いやいやいやいや何してんの! 確かにトラックの真似はしてないけど!」


トラックは後ろから激しくクラクションを鳴らし、また対向車線にはみ出しながら追い抜いてきた。


「もうだめだからね? 絶対だからね? フリじゃないからね?」


〔ブンブンブンブン!!〕


「待って待って待ってもうすぐ着くから! 急がなくていいから! 待ってああああああああああああああ!!!!」


ライジュウはまた一瞬加速して大ジャンプ、車体全体から稲妻のような光を放ちながらトラックを飛び越え、その更に先へ飛んでいく。



教室の窓際の席で授業を受ける結月。

先生の話はしゃべれない妖怪のジェスチャーより難しい。

でもちゃんと聞かなきゃ憧れのお姉さんみたいになれないぞ、と自分に言い聞かせてもつい窓の外を見てしまう。


暖かな日差し、優しい風に揺れる木々、名前も知らない小さくて丸っこい鳥、激しい光を放ちながらグラウンドを飛び越えていくバイク、掃き掃除を始める事務員さん、体育館から聞こえるホイッスルの音……


高3の春。

こんな景色を見ていられるのもあと1年くらい。

一瞬一瞬を大切にしたいと思いながら、結月は難しい話を淀みなく続ける先生のほうに視線を戻す。


(…………待って、今おかしな部分があったよね?)


結月の脳内に存在する「yudutube」の、右上にネコマタンの顔が付いた再生ウインドウでライブ配信されている映像。

その脳内シークバーの、現在より少し前の所を脳内タップする。と、映ったのは先生の姿。


「二ノ宮、教科書の織田信長の絵にリボンを付けるのはやめなさい!」


(ごめんなさい次から豊臣秀吉にしますじゃなくて戻しすぎた。もうちょっとだけ後……)


もうちょっとだけ後の所をタップして0.25倍速再生。

映ったのは激しい光を放ちながらグラウンドを飛び越えていくバイク、見覚えがあるヘルメット、見覚えがあるフードデリバリーの鞄、そして見覚えがあっても1億回再生ぐらいして脳裏に焼き付けたい曲線美。


(千影ちゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!)


「先生! お腹がすっごく痛いので保健室のほうに行ってきます!!!」


先生はあまりの勢いに思わず許可を出した。

結月は教室を出て保健室「のほう」へ走り、周りに人目が無いことを確認して階段の踊り場の端でムゲンブレスの通話ボタンを押す。



千影を乗せたライジュウはグラウンドを飛び越えた先にある民家の前でほとんど音も無く着地。

千影は鞄の中の麻婆豆腐を確認する。

デリバリーの料理は簡単には零れたり漏れたりしないように梱包されているものだが、それにしても大胆なハイジャンプを繰り返した割に全くの無傷。


「あんた、すごいね!」


〔ブンブンブン!〕


「しかもブンブン言ってるけど全然排気ガス出ないし、エコなバイクだったりする?」


〔ブンブブーン!〕


千影はヘルメットを外して振り乱した髪を整え、ライジュウの頭を一撫でして届け先の民家のインターホンを押す。


「こんにちはー、タラフクフードでーす!」


千影は麻婆豆腐を受け取りに来たマダムに笑顔と声とスタイルを褒められ、家に入っていくマダムをより一層明るい笑顔と声で見送り、ライジュウの傍へ戻る。

そこでムゲンブレスの着信音が鳴った。


≪千影ちゃん! なんかすごいことになっちゃってるのが見えちゃったんだけど!?≫


「見えちゃった、って、そっかここが結月の学校……。うん、私は大丈夫だから、しっかり勉強してきなさい。学校終わったらまたお話しよう」


≪うん……わかった。怪我しないでね≫


「うん」


≪…………先に切るね≫


「うん」


結月が通信を切る。

千影も通信を切り、深呼吸と軽いストレッチをしてヘルメットを被る。


「ねえ、本気出しちゃえる場所知ってるんだけど、付き合わない?」


〔ブンブン!!〕


千影はライジュウの声が少しだけ軽快になったような気がした。




バッグを千影の自宅に置いて、先日巨大悪魔ベヒモスと戦った採石所に移動。

ここまでの道のり全て安全運転。


千影はムゲンブレスにキュービルンの変身(チェンジ)カードを差し込む。


「妖怪変化!」


そう叫びムゲンブレスを天に掲げた千影は、一瞬にして色鮮やかな黄色い戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはムゲンソード、そして頭にはキツネの器用さと九尾の狐の幻惑能力を彷彿とさせる黄色いフルフェイスマスクを装備した。


「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー! ……ってね。ここなら思いっきり走れるし、この姿の私なら、多少振り落とされたりしても大丈夫」


〔ブンブンブンブンブン!!!!〕


ますます元気な鳴き声。

イエローはライジュウに跨りアクセルを入れる。


〔ブン!〕


先程までの安全運転とは打って変わって急発進からの猛スピード。

イエローは風圧と重力に耐えながらハンドルを握りしめるが、ウイリーからの高速回転で吹っ飛ばされ地面に叩きつけられる。


「痛……ったぁ! これ変身してなかったら死んでたな」


〔ブンブン!〕


ライジュウは自走して倒れているイエローに近付き、車体前方のサイのような目で見降ろす。


「これくらい……」


イエローは力を込めた両手で地面を押して起き上がり、体の砂埃を払ってまたライジュウに跨る。


「さあいくよ!!」


今度はいきなり高速回転。

ハンドルを強く握り、車体を両足で挟み締め付ける。

そこから急停止したライジュウが余らせた勢いによりイエローは空中へ放り出された。


甦る記憶。

18歳の頃、両親に反対されながらもバイト代を貯めて取りに行ったバイクの免許証。

証明写真の表情の暗さ以外はピカピカに光る宝物に見えた。


19歳の頃、貯金して買った愛用のバイク。

値下げシールが貼られたツナマヨおにぎりを主食にした日々は、風を感じながら駆け抜けるその一瞬一瞬を輝かせるためにあった。


20歳の今、バイクに乗った自分の姿を、澄んだ目を輝かせながら褒めてくれる女の子に出会えた。



空中で体を捻り足を前後に開き腰を下げて衝撃を最小限に抑える体勢で着地。

すぐさま走りライジュウに飛び乗る。


ライジュウは急速発進、激しい光を放ちながら坂を駆け上がり大ジャンプ。

3回宙返りの後、坂の頂上にゆっくりと着地。


〔ブン……〕


ライジュウの車体が先程までの激しい光とは違う穏やかな光に包まれ、やがてその光は一つに集中して舞い上がり、3枚のカードとなって息を整えるイエローの元へ降りてきた。


「これって……」


イエローは3枚のカードを掴み天高く掲げて叫ぶ。


「勝ったああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


イエローが胸いっぱいの思いと共に3枚のカードを右腰のホルダーに仕舞ったその時、ムゲンブレスの着信音が鳴り響いた。


通話ボタンを押すと聞こえてきたのは智和の声。


≪今どこだ!?≫


「え? 前にベヒモスと戦った採石所だけど?」


≪そうか!≫


慌てた様子で通信が切れた。


「何なんだろうね?」


ライジュウの隣に座り、坂の上からの景色を見渡してみる。

自分達が走り回った跡が、ここに至るまでの激走の様を語り継ごうとするかのように幾重にも重なり合っている。


少し視線を上げると、目に入ったのはグリーンとピンクを抱えてふらつきながらこちらへ飛んでくるレッド。


「ゑ?」


また視線を下げると、レッドの少し後ろから走って着いてくるブルー。


「だ……誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今うわーっとっとっと参上! 空の勇者、ヨーカイレッド……」


「ゼエ……ゼエ……誰が……言ったか……ある意味今まさに川流れ…… 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せないアガラ 水の戦士、ヨーカイグリーン……」


「にゃれが言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK2……じゃなかった、1? なわけなくて3…… 嘘はいらない夢見る乙女…… 獣のにゃイドル、ヨーカイピンク……」


「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」


「千影~!」


「私はさっきもう言っちゃった!」


「そうか、じゃあ、夢も現も守るが仏 夢幻(むげん)戦隊……」


「ヨーカイジャー……!!!!」


レッドはイエローの近くに不時着、投げ出されたグリーン、ピンクと共に坂の頂上で俯せ状態。

イエローは3人に色々な角度からの視線を走らせる。


「何何何!? なんでそんなに疲れてるの!?」


続いて平然と坂を駆け上がってきたブルー。


「おぬしらもっと体力を付けたらどうだ?」


「お侍様とオラ達庶民はちげェますダヨ……」


「俺も最近頭ばっか使ってたから……」


「あたし体育はダンスだけ得意……」


「何があったの!?」


俯せの3人が指差す先を見ると、こちらへ向かって走ってくる7台のバイク。

そのうち6台に乗っているのは使い魔ジャミリアー。


「ジャミジャミ!」


そして隊列先頭中央を走るのは――――――――印籠のような顔、暴走族を思わせる特攻服、右腰にハマグリのような物、左腰にガマガエルのような物が付いており、乗っているバイクにはジャミリアー達の物とは違い車体前部に半分に切られたレンコンのような物が付いている。


「パラリラパラリラ!! あたいは暴走上等悪魔タローマティ! 人間ども()が高いぞパラリラパラリラ!!」


声と体型からして女悪魔らしい。


「パラリラパラリラって口で言ってる!!」


「拙者達はあやつらと戦闘になったのでござるが、あの機動力に苦戦を強いられ……」


「俺一人だけならバ……バイクの攻撃も飛んで避け……られたんだけど……」


「すまない……」


「いいよ、今度……海鮮丼奢ってくれ……」


「また丼物か……まあいいけど……」


「あたしもー」


「奢るより……俺が作ろうか……」


「あ、そっちのほうがいい……」


「あたしもー」


「おぬしらそろそろ起き上がろうか?」


「おっけー、だいたい状況わかった」


イエローは背筋と肩を伸ばすストレッチをしてライジュウに跨る。


「私達の出番ってことでしょ?」


〔ブンブン!〕


「状況把握早くて助かる」


「あ、千影ちゃんそれさっきのバイク」


「そ!」


「乗りこなせたんだな?」


「そう思ったから、あいつらここにおびき寄せたんでしょ?」


「全部言わなくてもわかってくれる。ほんと助かる」


迫り来る悪魔のバイクを見つめ、


「いくよ、ライジュウ!」


〔ブンブブブン!〕


アクセル全開で坂を駆け下りた勢いのままジャンプ、前輪を軸に車体を回し隊列端のジャミリアーの頭を後輪で殴り飛ばし、隣のジャミリアーも巻き込んでクラッシュさせ2体撃破。


「んナロー!」


悪魔一団はタローマティを先頭に方向転換、イエローとライジュウの周りを輪になって走る。

イエローは動じずライジュウを走らせその輪に入り、数秒他のバイクと同じ速さで走った後突如減速。


「ジャミ!?」


後ろのジャミリアーが動揺したところで加速して輪から飛び出す。

急ブレーキを掛けたジャミリアーとそれに玉突き激突した合計3体を撃破。


「食らいやがれパラリラパラリラ!!!!」


タローマティのバイクのレンコンのような物がガトリング砲のように回転し弾丸を連射。


イエローはハンドルを切りそれを避けながらジャミリアーの後ろに回る。


「ジャジャジャジャミ!?」


「邪魔だああああ!!!!!」


「ジャミーーーーー!!!!!」


弾丸は止まらずジャミリアー1体がハチの巣にされて撃破。


「テメエもやられたくなきゃあ着いて来い!」


「ジャ……ジャミ!!!!!」


タローマティがガトリング砲を連射しながらイエローを追い、残り1体のジャミリアーが着いてくる。


イエローは後ろの気配を察しながらハンドルを切り、左右に振れながら飛んでくる弾丸をかわしていく。

かわしながらムゲンブレスに美脚妖怪アシナガの能力(スキル)カードを差し込む。

加速しながらのUターンでジャミリアーの真横に来て伸びる足でバイクを狙ってキック。

ジャミリアーは横転からバイクごと転がりクラッシュ。

ジャミリアー全撃破。


ここで乾いた音が鳴り弾丸が止まる。


「弾切れパラリラ。こうなりゃタイマンパラリラ!!」


「それ口癖!?」


互いに真正面から突っ込む大勢、からの大ジャンプ、僅かに勝った高さからイエローが急降下、と同時にライジュウの車体が電撃に包まれ、激しい稲光を四方八方に飛び散らす前輪でタローマティを空中で踏みつけ、その落雷の如き勢いでタローマティをバイクごと地面に叩き込む。


「あたいもまだ、ひよっこだったのかああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


大爆発。

イエローは爆風をすり抜け緩やかに減速、停車して振り返り、


「フゥ」


と軽く息を吐き、坂の上の仲間達に向けて親指を立てる。


「ヤバいあたししばらく変身解除できない多分鼻血出てる」


「うよっしゃあああああああああああ!!!!!!!!!」


「やれやれ全く、すごい奴らだ」


「で、ござる!」


イエローはフルフェイスマスクのまま、髪を爽やかに靡かせる仕草を見せる。


「はぉ~、ライジュウちゃんマジ神…… マジ天使……」


その声の主はラクダ型メカに乗った女幹部グレモリー。


「何? そのラクダで私達と勝負する?」


「ライジュウちゃんと勝負!? それもステキだけど……。デビル デビレバ デビルトキ カモンデーモン デビデビレ 最後の一花、咲かせてごらんなさい」


グレモリーが投げキッスすると唇型のエネルギー体が発生しタローマティの残骸のほうへ飛んでいく。

それが当たった残骸は一つに集まり、バイクごと再生されて巨大なタローマティの姿となりヨーカイジャー達を見下ろす。


「巨大化パラリラー!」


「やっぱりアレ口癖なんだ……」


イエローの傍にヨーカイジャー達が集まってくる。


「さあ早く! 呼んで! 妖怪ちゃん達いっぱい!」


グレモリーは血走った目でヨーカイジャー達を見る。


「言われなくても呼ぶけど、お前妖怪好きなのか?」


「大好きですわ!!!!」


「だったらデモンダイム抜けて俺らの仲間にならねえ?」


「それは嫌ですわ。だって! 一番萌えるのは! 妖怪ちゃん達が! 傷付いて! 苦しみ悶える姿ですもの!!!!!! だから! 敵でありたいんですの! 妖怪ちゃん達の! おわかりいただけます!? いただけますわよねえ!?」


「あーわかったわかった」


「ライジュウ、後でまた一緒に走ろうね」


〔ブンブン!〕


「サモン、パートナーズ!!!!」



妖怪の里。


「修行の森」から武闘妖怪カラステングが腕組みをしながら飛び立ち、赤い光になって高速移動を開始。


「河童ヶ沼」の底から長老妖怪メガガッパーが水飛沫を上げながら浮かび上がり、緑の光になって高速移動を開始。


「妖怪電気街」のステージのモニターに「きんきゅーしゅつどー」の文字が表示され、ステージ上の偶像妖怪ネコマタンがそれを見て敬礼、客席の妖怪達が振るサイリウムに見送られながらピンクの光になって高速移動を開始。


「試し斬りの竹林」で瞑想していた斬空妖怪カマイタチが空を見上げ、青い光になって高速移動を開始。


「妖怪稲荷神社」の神殿の扉が開き、奥から幻惑妖怪キュービルンが「お座り」のポーズのまま前進、その足元から機械的なカタパルトが伸び、どこかから響いてきた「five,four,three,two,one,zero!」というカウントダウンでキュービルンが「お座り」のポーズのまま空高く射出され、黄色い光になって高速移動を開始。


ヨーカイジャー達の前に5つの光が降り立つと同時に巨大な妖怪の姿を表し、5体のパートナー妖怪達が並び立った。


5体の妖怪達は目からビームを出しそれぞれのパートナー人間をコクピットに転送。


「合体いくぜ!」


「待った!」


「え?」


「奴のさっきまでの戦い方から考えると、合体して一つになってしまうと、奴の走りに翻弄されて不利になるだろう。まずは合体せずに、奴をバイクから引きずり降ろそう」


「わかった! 合体は後で!」


「して、引きずり下ろすとはどのように?」


「パラリラー!」


巨大タローマティがバイクに跨り突進してくる。

カラステング、カマイタチは空中へ、ネコマタン、キュービルンは左右に分かれて避ける。


重鈍なメガガッパーは腰を据えて受け止める大勢に入る。


〔勝負じゃ!〕


「どきやがれ!」


巨大タローマティはジャンプしてメガガッパーの顔面を前輪で蹴り飛ばし、その背後に着地してまた走り出す。


〔お年寄りに優しい運転を心掛けましょう!!〕


〔長老、仇は打つぜ!〕


〔ビビーッ!〕


カラステングのキック、切りかかるカマイタチ、それらの連続攻撃をスピードとハンドル裁きでかわし、キュービルンが生み出した幻の赤信号を無視してネコマタンを撥ね飛ばす。


〔ニャニャ!?〕


ネコマタンは空中三回転して着地。

受け身を取ってダメージを最小限に抑える。

その近くでライジュウが本来の大きさに戻り、ネコマタンに何かを訴えるがネコマタンは首を激しく横に振って拒否する。


「乗れって言われてる?」


〔ニャ!〕


「この中ではネコマタンくらいしかいないからな」


〔ワシがもう少し若ければのう……〕


「いや若さではなく大きさの問題です。……そうだ、あいつなら!」


グリーンはユキオトコの召喚(サモン)カードをムゲンブレスに差し込む。


「サモン、サポーターズ!!」



妖怪の里。


「春夏秋冬山・北エリア」の雪の中で駆け回っていた冷凍妖怪ユキオトコが空を見上げ、水色の光になって高速移動を開始。



ネコマタンに拒否されるライジュウの傍に水色の光が降り立ち、ユキオトコの姿に戻る。


「元気になったんだ!」


「ああ、すっかり良くなって、これからは妖怪の里に住むことにしたそうだ。ライジュウ、そいつなら乗れそうか?」


〔ブン?〕


「いいよ、私のバイク貸してあげる!」


〔ウホ?〕


ユキオトコがライジュウに跨りハンドルを握る。


「バイクに乗るゴリラ!?」


「なんか、千影ちゃんの次くらいにしっくりくる!」


〔ウホー!〕


〔ブンブン!〕


アクセル全開、巨大タローマティに向かって走り出す。


互いに正面から突撃、と思われたがユキオトコがハンドルを切って横に逸れ、間合いを取って胸を「グー」ではなく「パー」の形の手で叩きながら口から冷気を放出。


巨大タローマティはそれをかわしながら手から納豆のような粘着質の糸を引く粒を放つ。


〔ウホー!?〕


手放し運転だったユキオトコは糸に絡みつかれバランスを崩しライジュウから落ちる。

しかし巨大タローマティもユキオトコの冷気で凍っていた地面に気付かずスリップして横転、バイクから投げ出される。


「うわああああああああ!!」


〔ウホホー!〕


その隙にユキオトコが起き上がり、凍った地面をスケートのように滑ってバイクに近付きフライングボディプレスで破壊。


「あーあたいのバイク!!!」


「よくやったユキオトコ!」


「それじゃあ合体いくぜ!」


レッドがムゲンブレスに合体(ユナイト)カードを差し込むと、5体の妖怪達の体が宙に浮き、変形を始める。


カラステングの両腕がスライドして背中に回り、両足は折り畳まれる。


メガガッパーの両腕が引っ込み、甲羅が上にスライドして体の下半分が2本の足の形状になったところでカラステングの体の下に合体して「下半身」となる。


ネコマタンの尾と後ろ足が折り畳まれ、前足は爪が出た状態で頭に被さるようにスライドし、全体的に鋭い爪の付いたた腕といった形状になりカラステングの左腕部分に合体。


カマイタチの刃物状の尾が外れ、後ろ足が折り畳まれ、鎌の付いた前足は頭に被さるようにスライドし、鎌の間に刃物状の尾が収まり全体的に鋭い剣の付いた腕といった形状になりカラステングの右腕部分に合体。


キュービルンの体が前部と後部で半分に分離、前部は中心にキツネの顔が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの胸に合体、後部は九本のキツネの尾が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの背中に合体。


最後にカラステングの下顎が大きく開き、中から人型の顔が姿を表した。


レッド以外の4人もカラステングのコクピットに転送され、ヨーカイジャー達から見て左から、ピンク、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの順に席に着いた。


「完成、合体巨人・ムゲンオー!!」


5人声を揃えてその名を叫ぶ。


ムゲンオーは右手の夢幻斬空剣むげんざんくうけんを斜めに掲げてポーズを決める。


「次はこれ!」


イエローがライジュウの換装(ジョイント)カードをムゲンブレスに差し込む。


するとライジュウの姿が浮き上がり、タイヤが胴体の中に格納され、角が伸びて真っ直ぐ前に倒れて槍のようになる。


ムゲンオーの右腕のカマイタチが外れ、槍の付いた腕の形になったライジュウが代わりに右腕に合体する。


「すげえ、ライジュウって腕にもなれるのか!!」


「結月、名前は?」


「はい~!」


「どこぞの自衛官か!」


「はい~! 実は最近名前考えるためにいろんな武器の英語を調べてて……」


「プロの仕事になってきたな」


「槍は英語で…………お!」


ピンクは「ポン!」と手を叩く。


「ムゲンオースピアー!!」


〔ブンブン!〕


槍の根本から先端にかけて軽い電光が走る。


「気に入ったみたい」


「完成、ムゲンオースピアー!!」


5人全員で叫ぶ声と共に、電光がほとばしる槍を掲げてポーズを決める。


「テメエら許さねェパラリラ!」


巨大タローマティはムゲンオースピアーに向かって糸を引く粒を放つ。

ムゲンオースピアーは槍を振るって放った電撃でそれらを焼き尽くし、そのまま巨大タローマティに突きを一発。

巨大タローマティは鋭い突きと同時に流れ込んできた電撃に火花を散らされながら大きく後退。


その時、ムゲンオースピアーのコクピット内全体が光り輝き、その光はレッドの目の前に凝縮し、1枚のカードになった。


「よっしゃ必殺技!!」


レッドがムゲンブレスにそのカードを差し込むと、ムゲンオースピアーの全身の妖力が右腕の槍に集中し、凄まじい電光を放ち始める。


必殺大妖技(ひっさつだいようぎ)電撃魔貫雷(ライトニングアクセル)!!!!!」


電撃を纏った槍を突き出し超加速、稲妻の如きスピードで巨大タローマティを貫く。

貫かれた穴を中心に巨大タローマティの全身を電撃が駆け巡る。


「納豆食って……血液サラサラパラリラ!!」


爆散。


「うよっしゃああああああああああ!!!!!!」


ムゲンオースピアーは槍を翳して、空中のカマイタチは鎌を光らせて、ユキオトコはボディビルのサイドチェストでポーズを決める。



戦いが終わった採石場。

変身解除したヨーカイジャー達とムゲンオー、ユキオトコが見守る中、千影がライジュウに乗ってライディングテクニックを見せる。


坂を駆け上がり頂点でジャンプ、ネコマタンばりの背面3回宙返りで仲間達の正面に戻り、着地。


拍手と結月のピンクの……いや黄色い悲鳴が青空に響く。


「あーもうカッコイイ!」


「ありがと。でもやっぱり、配達はいつものバイクでやりたいから、ライジュウは戦いでバイクか槍が必要なときによろしくね」


〔ブンブン!〕


「よかったな、いい乗り手が2人もできて」


「いえい!」


〔ウホホー!〕


「あれ? もしかしなくても……召喚(サモン)カード1枚しか持ってないの俺だけになった?」


〔いいじゃねえか、拓実には最高最強最カッコイイパートナー妖怪がいるんだからよォ!〕


〔これカラステング、あまり調子に乗るでない!〕


合体形態の上半身と下半身で交わされるやり取りを聞き、物陰のグレモリーが呟く。


「尊い……」



数日後。

デモンダイム幹部レヴィアタンが、地球とは別の次元に存在する悪魔の本拠地サタンパレスの地下格納庫を訪れる。


「よもや、下等生物ども相手にこれを使う日が来ようとは……」


レヴィアタンが立つ出入口から差し込む光が、暗闇の格納庫に横たわる巨大で無機質な影を浮かび上がらせる。


「待っているがいい、ヨーカイジャー…………!!」


【to be continue…】

公開中のデジタルコンテンツ、その他の情報は作者Instagram「 @satoruyoukaidaisuki 」とX(旧Twitter)「@shousetuyokai」をご覧ください


「特捜戦隊デカレンジャー」のWヒロインエンディングみたいなことがやりたくて作った歌詞を掲載します!


タイトル「最強究極ヒロインズ」


挿絵(By みてみん)


(結月)猫の手借りたい 毎日ジェットコースター


(千影)狐につままれ 変顔ポッシブル


(結月)青春時代は短い なんてゼッタイ認めない!


(千影)二人揃えば無敵にステキ


(結月)王子様に会えなくたって


(千影)お姫様……いてくれるから……


(結月)「どうしたの?」


(千影)「なんでもなーい!」




(二人)ピンキーファンキー謝肉祭カーニバル


(結月)最高最強にゃんだほー!


(二人)イエローモンロー幻燈会ファンタジー


(千影)ピカソに負けないキュービズム


(二人)二人合わせて究極ヒロイン!


(二人)強い! 負けない! とーぜんカワイイ♥️


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー




(千影)狐の嫁入り まさかの雨模様


(結月)猫のおでこくらい? 激狭ハート……


(千影)ケンカしたっていいじゃない いつも最後は仲良し


(結月)一緒にいればキラキラハッピー


(千影)お姫様になれなくたって


(結月)変身チェンジカードで 華麗に変身!


(結月)「でも千影ちゃんは、あたしのお姫様だよ♥️」


(千影)「あ、ありがと……」




(二人)ピンキーファンキー謝肉祭カーニバル


(結月)肉球 直球 ばたんきゅ~


(二人)イエローモンロー幻燈会ファンタジー


(千影)ピカソも描けないビューティフル


(二人)二人いるから究極エンジェル


(二人)速い! 賢い? やっぱりカワイイ♥️


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー




(結月)運命の人はいつか 現れるとかいうけど もしかして側にいちゃう?


(千影)「え?」


(結月)「え?」


(千影)「え? え?」


(結月)「ええええええええええええ!?」




(二人)ピンキーファンキー謝肉祭カーニバル


(結月)最高最強にゃんだほー!


(二人)イエローモンロー幻燈会ファンタジー


(千影)ピカソに負けないキュービズム


(二人)二人合わせて究極ヒロイン!


(二人)強い! 負けない! とーぜんカワイイ♥️


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー




(結月)カワイイ♥️ プリティ♥️ ここテストに


(千影)出ません!


(二人)夢幻戦隊ヨーカイジャー


挿絵(By みてみん)


本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!


ncode.syosetu.com/n9246jz/11/


この作品に使われているイラストはxAIのGrokによって生成されました

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