episode:6 燃えよ霧崎一刀流
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
妖怪の里・河童ヶ沼。
長老妖怪メガガッパーが棲むここに、武闘妖怪カラステングがやってきた。
〔長老、カマイタチから何か聞いてないか?〕
〔いや、特には何も聞いておらんのぉ〕
〔最近あいつ変な怪我してるんだよ。悪魔との戦いがあったわけでもないのに。なんで怪我したのか聞いても何も言わねえし〕
〔また無茶な特訓でもしとるんじゃろうか〕
〔前はそういうこともあったけど、悪魔との戦いが始まってからは、無茶して怪我するわけにはいかないってことぐらい、わかんねぇほどバカな奴じゃねえだろ?〕
〔ウーム……それでその変な怪我とは、どんな怪我なんじゃ?〕
〔なんか普通の傷みたいなのと一緒に、焼け焦げた痕みたいなのとか〕
〔焼け焦げた……〕
〔あ、もしかしてあいつ、火を使う妖怪に特訓の相手でもさせたのかな。だとしたら誰だろう? カシャとかかな?〕
〔カシャ……そうかあやつ、そういうことじゃったか……〕
〔何だよ長老? カシャに何かあったのかよ?〕
〔あれはもう、どれくらい前のことじゃったか……〕
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:6 「燃えよ霧崎一刀流」
江戸時代。
当時、人類保護不要論者として活動していた巨骸妖怪ガシャドクロとその賛同者達によるテロ行為を阻止すべく、当時の妖怪治安維持部隊と共に激闘を繰り広げたカシャ。
戦いによる傷は深く、飛ぶこともステルスモードになることもできなくなったカシャは、仲間達を妖怪の里へ返し、洞窟へ身を潜めて傷を癒すことにした。
しかし、洞窟に入るところを近隣の村に住む猟師に目撃され、その晩、村総出の「バケモノ退治」が行われることとなった。
「くらえバケモノめ!」
洞窟に潜んでいたカシャに対する、村人達による投石や猟銃での攻撃が行われた。
傷さえ無ければ痛くも痒くもない攻撃であったが、人々の攻撃は戦いの傷を広げ、しかし飛んで逃げることもできず、下手に追い払おうとすれば人々の命を奪ってしまう恐れがある。
カシャはただ耐えるしかなかった。
そこへ、怒れる人々の背後から聞こえてきた豪快な声。
「これ、やめんか!」
その男、都で評判の豪傑、ひとたび刀を握れば100人の敵をもなぎ倒すという霧崎一刀流の伝承者・霧崎新右衛門その人であった。
「何じゃおぬしら、このようなヤマイヌ一匹ごときに寄ってたかって」
「いやいやいやお侍様、こやつがヤマイヌに見えますか?」
「は? どこからどう見てもただデカいだけのヤマイヌでござろう? のお?」
〔クゥン……〕
「ホレ、今のはヤマイヌが悲しい気持ちのときに出す声じゃ。やはりこやつはただデカいだけのヤマイヌでござる」
「いやいやいやいや、そのデカさが問題なのでございます。もしこのデカさのバケモノが暴れだしたりなどすれば……」
「ならばこのヤマイヌ、拙者が預かろう。もしこやつが悪さをすれば、そのときは拙者がこやつを叩き斬る。それで良かろう?」
こうして、霧崎新右衛門はデカいだけのヤマイヌことカシャの住む洞窟に毎日通い、世話をすることとなった。
食べ物を運び、傷に(妖怪やヤマイヌに効くかどうかはわからない人間用の)薬を塗り、時には都で見聞きした面白い話を聞かせたり、霧崎一刀流の業を見せて楽しませたりと、新右衛門は献身的に、同時に楽しそうにカシャの世話をした。
その甲斐あって傷は数日ですっかり回復し、カシャは元のように動くことができるようになった。
〔バウバウ! バウ!〕
「もうすっかり元気になったのう! ならばそろそろ、別れの時というわけだ」
〔クゥン……〕
「拙者も寂しいが、また村の連中に石など投げられてはかなわんだろう。おぬしはおぬしの住むところへ帰るのがよい」
〔クゥン……バウバウ!〕
「礼はいらぬ。達者でな!!」
〔バウバウバウ!!〕
こうしてカシャは無事妖怪の里へ帰ることができた。
現代。
〔ワシがこの話をカシャから聞いたのは、もう随分前のことじゃったから、今の今まですっかり忘れておったわい〕
〔長老、もしかしてその霧崎新右衛門って……〕
〔ああ。恐らく武士の先祖。そうでなかったとしても、同じ霧崎一刀流の使い手〕
〔武士にその世話になった侍の面影を感じて…………自分が武士のパートナーになりたいから!?〕
〔それでカマイタチに勝負を挑んでおるのじゃろう〕
〔待て待て待て、そんなんであいつらが戦っても意味ないだろ? それにあのカマイタチが、そう簡単に負けるわけもないし……〕
〔お互い無駄に傷付くだけじゃろうな〕
〔だよなー。……よし、こうなったら!〕
武士の自宅兼「霧崎一刀流」道場。
畳の上で目を閉じ、刀を構える武士。
周囲を囲む試し斬り用の巻藁8本。
静けさを感じ、張り詰めた空気と一つとなる。
外を通る救急車の音。
それを合図に開眼、踏み込みながら一振りで巻藁8本全てを斬り倒す。
「だめだだめだ……」
必殺の剣をレヴィアタンに片手で受け止められた感覚と、投げ捨てられヨーカイピンクに受け止められた痛みが脳裏に甦り、それらを鞘へ押し込むかのように刀を収める。
その時、ムゲンブレスの着信音が鳴った。
智和が妖怪の里まで来てほしい、今カマイタチは行けないので代わりにカラステングを迎えに行かせるという連絡だった。
「あい分かった」
武士は通信を切り、「敢えて手ぬぐいよりこちらでござる」と拓実のアルバイト先である100円ショップで買ったタオルで汗を拭う。
「カマイタチに何が……」
呟いた直後、外にカラステングが到着した。
「カラステング、カマイタチに何があったー!」
カラステングは道場の窓から片目だけで武士を見ながら、メガガッパーから聞いた話を武士に聞かせた。
「霧崎新右衛門霧崎新右衛門……ちと我が家の家系図を確かめてみよう」
〔家系図? まさか巻物みたいなやつが出てくるのか!?〕
「いや、アプリでござる」
武士はスマホをいじりだした。
〔お前そういうのわざとやってるだろ?〕
「『わざと』ではなく、『敢えて』でござる。やや、確かにいるぞ新右衛門! カシャは拙者にその侍の面影を見て、カマイタチに勝って拙者のパートナーになろうとしているのでござるな?」
〔そうだと思う。何とか止めてくれねえかな? カマイタチもカシャも、俺にも長老にもなんにも言わねえし、智和は、最近人間の子供が急に暴れだす事件が続いてて、人間達は集団ストレスとかネットの影響とか言ってるけど実は悪魔が関わってるんじゃないかって、それ調べるので忙しいんだ〕
「その事件とやらも気になるが、まずはカシャでござるな。いつもの転送ビームは片目だけでもいけるのでござるか?」
〔その辺よくわかんないからとりあえず出てきてくれ。そろそろ首とかが疲れてきた〕
「首だけでなく首『とか』でござるか。それは気付けず済まなんだ。行こう」
武士は道場の外に出て両目からの転送ビームでカラステングのコクピットに転送された。
「ほう、これが拓実の見ておる景色か……と、真ん中の席に座って言おうと思っておったが、おぬしもおったのか」
「うん、そんで俺もなぜか首とかが疲れてきてる」
武士と拓実はカラステングに乗って妖怪の里に向かった。
妖怪の里・試し斬りの竹林。
武士と拓実がカラステングから降りた途端、巨大な火球が二人の頭上の空気を抉り取った。
撃ち出した元は口を開いたカシャ、撃ち出された先は上空のカマイタチ。
カマイタチはこれをかわして旋回で勢いを付け、頭突きの体制でカシャに向かって頭から突っ込んでいく。
「それまで!!」
武士の声に急停止するカマイタチ。頭突きは届かず。
構えを解き武士を見るカシャ。
「カシャ、事情はだいたい聞いた。おぬし、拙者のパートナーになるために、カマイタチに挑戦しておるのだな?」
〔バウ……〕
「ならばとことんまでやれい!!!」
〔バウ!!?〕
「いやいやいや止めてもらうために連れてきたのに!」
「カマイタチ、おぬしがそうやって、カシャを里の仲間だと思って手加減して掛かるから、カシャが納得できずに何度も挑戦してくるのだ」
〔ビビ……ッ〕
「わかるのか?」
「カマイタチの動きを見ておればな。カマイタチ、仲間なら、仲間であればこそ、信じて全力でぶつかれ!」
〔ビビビーッ!!〕
カマイタチは両手の鎌を研ぐ仕草をする。
「さあ、ここからは正式な果たし合いだ。拙者が見届けよう!」
〔ビビッ!〕
〔バウバウ!〕
互いに一礼、そしてカマイタチは再び上空高く飛び上がり、カシャは火球を連射。
カマイタチはそれらをかわした勢いのまま鎌を光らせ斬りかかるがカシャはギリギリでかわし至近距離で火球を放つ。
カマイタチは顔の前で鎌を交差させ火球を受け止め、ダメージを最小限に抑えながら、旋回、鎌を振り上げカシャに向かって急降下する。
カシャは迫るカマイタチに火球を連射。
カマイタチはそれらを避けずに鎌を振るい、切り裂いた火の球炎を纏った鎌で変わらぬ勢いの急降下からカシャの体を一直線に斬り抜けた。
「んっ…………!?」
カマイタチが鎌に纏う炎を振り払うと、カシャは静かに倒れた。
「それまで!!」
カシャはふら付きながらも立ち上がり、その正面にカマイタチが着陸し、互いに一礼。
「パートナー交代ならずかー。でもやっぱり武士には切れ味するどいカマイタチのほうが似合うぜ」
「うむ。双方ともよくやった!」
〔ビビーッ!〕
〔バウバウバウ!〕
2つの鳴き声に爽やかな風が混じったその時、カシャの体から光が放たれ、凝縮し2枚のカードとなって武士の元へ降りてきた。
「ほう、召喚カード! パートナー以外の妖怪も召喚できるのでござるか!」
「そりゃすげえ! 嬉しいかカシャー?」
〔バウーッ!〕
「それとこのカードは……何でござろう?」
「見たこと無い種類のカードだな。ま、使ってみりゃわかるんじゃね?」
「そう……でござるな。カマイタチ! 見事な鎌捌きであったぞ!」
〔ビビビーッ!〕
「カシャ! おぬしのことも、必要とあれば呼び出そう! そのとき怪我をされていては困るからな! もう無茶はするでないぞ!」
〔バウバウバウッ!〕
「じゃ、俺達も子供が暴れだす事件のこと調べるのに加わるか」
拓実はムゲンブレスの通話ボタンを押す。
一方その頃、某所にある保育園。
「あ、ロボットだ!!」
園庭で遊ぶ子供達の目に映ったそれは、全体的にブロンズ像のような質感の体、獅子舞のような顔、両腕に獅子舞のような手、自動車を思わせるタイヤの付いた下半身。
異様な姿ではあるがロボットと言われてみればそう見えなくもないそれの到来に子供達は盛り上がる。
「あなたたちはそんなに嬉しそうじゃいけないんだなあ、人間だもの」
そう言ってロボットのような何かは口を大きく開き、口腔内にある液晶画面のような器官を露出させ、子供達に向けて光を放った。
すると子供達はロボットに輝かせていた目を血走らせ、奇声を上げながら手足を振り回し近くの子供同士で殴る蹴る殴る蹴る。
「やめなさい!」
「どうしたの!?」
「みんな落ち着いて!」
「うるさい!!!!!」
「こっちは夜勤明けなんだ!!!!」
「だから保育園建設なんて反対したんだ!!!!!!」
ロボットのような何かは自動車を思わせる下半身の前方に付いている小窓のような物を開き、そこからウリ科植物の果実を思わせる物を飛び出させ獅子舞状の手で掴み、人々のほうへ翳す。
すると右往左往する保育士達と怒れる地域住民達の頭からどす黒い煙状のデビルギーが立ち上り、ウリ科植物の果実を思わせる物に吸収されていく。
「やっぱり子供が暴れると、大人はデビルギーを出すんだなあ」
「そこまでだ!」
駆け付けたヨーカイグリーン、ピンク、イエロー。
「カラフルな奴ら……おれの名前はモロク。あなた達は多分、ヨーカイジャーとかいう奴らだけど、聞いてたのより少ないんだなあ」
「ひどい……」
「この子達、アカナメちゃんの力で治せるかな?」
「この前の塩みたいに何かが付着してこうなってるわけでもなさそうだしな……」
「だったらあの、癒し系の力が使えるんじゃない?」
「そっか!」
ピンクはムゲンブレスに愛玩妖怪スネコスリの能力カードを差し込む。
するとムゲンブレスからピンク色のオーラのような物が放出され、子供達と大人達を包み込むように広がっていく。
「はぁ~、癒される~」
「ほぁ~、さっきはごめんね~」
「いいよいいよ~」
子供達は穏やかに談笑し始め、大人達のデビルギー放出も止まった。
「さっすが結月、私以外も癒しちゃうんだね!」
「えー? もうっ! やめてっ!」
ピンクがイエローに抱き付く。
「面倒になった。面倒なときは逃げてもいい。面倒な奴らはほっといてもいい。こいつら所詮、人間だもの」
モロクはデビルギーを吸収した物体を再び下半身の小窓の中へ仕舞い、方向転換して見た目通りの自動車並みの速さで走り出した。
「おい待て!!」
追い掛けるヨーカイジャー3人。
当然常人より速く走れるが、モロクは加速して自動車の速度を遥かに越えていく。
追う3人は息を切らしスタミナを削られながらもなんとかモロクを視界から消さずに着いていく。
気付けば辺りは平日昼間の多目的ホール周辺。
ヨーカイジャーとしては人気の無いここらで決着を着けたいと思われたその時、上空のカラステングから飛び降りてきたレッドとブルーがモロクの頭にムゲンソードを振り下ろした。
が、モロクの頑丈な頭は甲高い金属音を鳴らしただけで傷ひとつ付かず、モロクは上半身だけを回転させてレッドとブルーを弾き飛ばし、ようやく走りを止めた。
「痛っててて、なんて硬い奴なんだ!」
「おのれ、また斬れぬ悪魔がいるとは……」
「おい大丈夫かー!?」
「かっこよかったのにー!」
「惜しかった!」
「惜しくねえよ、あいつ硬すぎる!」
「アバドンの繭並みかそれ以上……」
「面倒なら逃げてもいい。でも逃げてばかりじゃデビルギーは集められないよ。だから面倒な奴らは始末すればいいんだなあ。だってあいつら、人間だもの」
モロクは下半身の小窓から、今度は餃子のような物を飛び出させ、獅子舞状の手で掴み、
「かたすけろ、ジャミリアー!!」
と叫びながら放り投げた。
餃子のような物は空中で弾け、中から人間サイズの使い魔、ジャミリアーが5体現れた。
「ジャミジャミ!」
ジャミリアー達は棍棒を振り上げリズミカルに足を鳴らし、ヨーカイジャーに向かって走り出した。
「よし……いくぞ!」
「オウ!」
レッドはフェザーガントレットを装備、迫り来るジャミリアーの鳩尾に連続パンチを叩き込み、アッパーカットで空中に打ち上げ、そのままムゲンシューターの狙撃により爆散させる。
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
グリーンはメガガッパーに仕込まれたがっぷり四つの構え、迫ってきたジャミリアーを掴み地面に叩きつけ、ガチコンハンマーを装備してボディに一発振り下ろして爆散させる。
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!」
ピンクはスキャットクロウによる連続引っ掻きでジャミリアーを圧倒、最後に肩全体を使ったフルスイングで吹っ飛ばし、爆散させる。
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK2 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
ブルーはブライブレードを装備、居合いの構えを取りジャミリアーを引き付け、そこから一歩踏み込むと同時に一刀の元に切り捨て、爆散させる。
その瞳は既にその先のモロク、更にその先のレヴィアタンを見据えていた。
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
イエローは足を滑らせ転倒、ジャミリアーは喜んで棍棒を振り下ろすが聞こえたのは地面のコンクリートが砕ける音。
首を傾げているところに後ろからコンコンボーによる連続攻撃。
転倒したイエローはキュービルンの能力カードにより生み出された軽めの幻覚。
本物のイエローはジャグリングの要領でコンコンボーを何度もジャミリアーに投げ当て爆散させる。
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
「ジャミリアーでは歯が立たないんだなあ。だったらこれを食らうといいんだなあ」
モロクは口腔内にある液晶画面のような器官を露出させ、子供達に向けて放った光をヨーカイジャー達にも放った。
「うわああああああああああ…………って、何ともない???」
「子供達を豹変させた光……」
「……………………」
「何ともないでござる」
「子供にしか効かないの?」
モロクは口を閉じる。
「そうかあ、あなた達の中に子供はいないんだなあ。あなた達はたった18年しか生きてないのに大人になっちゃうんだもんなあ、人間だもの」
「18年?」
「18年生きたら……大人……?」
「……………………」
「18歳未満は……子供…………?」
「みんな結月から離れて!!」
「フシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
17歳のピンクがスキャットクロウを振り回しレッドに襲い掛かる。
「おいおいおいおい落ち着け落ち着け!」
レッドはフェザーガントレットで防ぐが防戦一方のまま後退していく。
グリーンはガチコンハンマーを投げ捨てピンクに掴み掛かるが加減を知らない大振りの引っ掻きに吹っ飛ばされる。
「うわあああああああああああっ!!!!!」
その間、モロクはまた逃走を開始。
「やむを得ん、峰打……」
構えに入ったブルーの脳裏にレヴィアタンに投げ捨てられピンクに受け止められたときの記憶が駆け込み、振り抜きを遅らされたところにピンク大振りの引っ掻きが………………入るかと思われたところでピンクはイエローのコンコンボーによる一撃で真横に吹っ飛んだ。
「結月に手加減はいらない。それがわからない人達は、あの悪魔を追い掛けて」
ピンクはイエローに威嚇の姿勢を見せる。
「そんな姿も素敵だけど、笑ってるほうがかわいいよ」
「よし……ここは任せた。行くぞ!」
レッド、グリーン、ブルーはモロクを追い掛ける。
「拙者もカマイタチのことは言っておられんでござるな……」
追い掛けながら3人で銃撃。
しかしモロクの硬い体には全く効果がない。
「どうする? あいつ硬いし、精神攻撃系ができる奴2人ともいないぜ?」
「おまけに結月が正気に戻らないとムゲンバズーカも使えない……」
「拙者に策がある。奴の動きが止まるか、奴がこちらに向かって来るか、せめてもう少しくらい動きが遅くなれば……」
「動きを遅く……それならできるかも!」
レッドはムゲンブレスに武闘妖怪カラステングの能力カードを差し込む。
するとレッドの背中にカラステングのそれに似た翼が生え、レッドは走るより遥かに速い速度で空を飛びモロクを追う。
「まだ追い着けないか、あいつどんだけ速いんだよ。だったら……」
レッドはムゲンブレスに手技妖怪テナガの能力カードを差し込む。
「名付けて、テングロングアーム!!!」
飛びながらレッドの両腕は長く伸び、走るモロクの胴体を後ろから抱え込んだ。
「!!!?」
モロクは転倒、慣性の法則とやらに無理矢理あちこちぶつけながらの3連続前転をやらされながらもなんとかタイヤを地に着ける。
レッドは1回目の前転と同時に前方へ大きく吹っ飛ばされたが翼で勢いを殺しなんとか着地。
「かたじけない!」
ブルーは走り出し、ムゲンブレスに炎熱妖怪カシャの能力カードを差し込む。
「さあ我が剣よ、炎を纏え!」
その言葉に応えるかのように、ブライブレードの刃が妖力の炎を纏う。
カシャの火球の炎を纏ったカマイタチの鎌のように。
更にブルーはムゲンブレスに斬空妖怪カマイタチの必殺カードを差し込む。
「必殺妖技・斬空……いや、業火一閃!」
走り抜けると同時にモロクの胴体へ振り抜く。
炎を纏ったブライブレードはその切れ味に加わった高熱と妖力によりブロンズ像のようなモロクの胴体を横一文字に斬り裂いた。
「これぞ、霧崎一刀流の妙技なり」
「……それでもあなた達は、デモンダイムには勝てない。人間だもの」
爆散。
カシャの炎とカマイタチの必殺妖技の組み合わせはかなりの負担が掛かったが、ブルーは気力を振り絞り背筋を伸ばし声を張り上げる。
「さあどこからでも来いレヴィアタン! もう巨大化などさせはせんぞ!!」
3人でモロクの残骸を囲み、レッドは前回のような「地中からダンクシュート」を警戒するため内向きに、他2人は広範囲を警戒するため外向きに顔を向けて立った。
その時、どこからか甲高い女性の悲鳴が響いてきた。
「キャーーーーーーーーーー!!!!!」
見ると、砂漠のプリンセスを思わせる緑色のドレスを着た女性が、機械的なラクダのような何かに文字通り「踏んだり蹴ったり」の暴行を加えられていた。
「やべえ!」
3人は機械的なラクダへ走る。
そこへイエローと正気に戻ったピンクも合流。
身構える様子のラクダに5人で対峙する。
「デビル デビレバ デビルトキ」
物陰からの小さな声に誰も気付かない。
「カモンデーモン デビデビレ 最後のチャンスだ、全てを尽くせ……」
レヴィアタンが物陰からモロクの残骸にカプセルを投げ入れると、残骸は一つになり、巨大なモロクの姿となってヨーカイジャー達を見下ろす。
「あなた達は小さい、人間だもの」
「今胸が小さいって言った!?」
「言ってないんだなあ」
「レヴィアタン!!」
「青いの、確か貴様、もう巨大化などさせはせんなどとほざいていなかったか?」
「くっ……」
「それはあの人を助けるために……ってあれ? どこ?」
襲われていた女性ことグレモリーは、ラクダ型メカに乗ってかなり小さく見える位置まで離れていた。
「レヴィアターン! ひとつ貸しですわよー!!」
「ああ、こいつらを倒して赤い鳥野郎のクチバシひとつでもくれてやるわ!」
「え……グルだった? てかあの姉ちゃんも悪魔だった!?」
「卑怯者ー!!」
「卑怯もラッキョウもございませんことよー!!」
グレモリーを乗せたラクダ型メカは一気に見えなくなる位置まで走り去った。
「色々言いたいことはあるが、とにかくいくぞ!」
ヨーカイジャー達はムゲンブレスにそれぞれのパートナー妖怪の召喚カードを差し込む。
「サモン、パートナーズ!!!!」
妖怪の里。
「修行の森」から武闘妖怪カラステングが腕組みをしながら飛び立ち、赤い光になって高速移動を開始。
「河童ヶ沼」の底から長老妖怪メガガッパーが水飛沫を上げながら浮かび上がり、緑の光になって高速移動を開始。
「妖怪電気街」のステージのモニターに「きんきゅーしゅつどー」の文字が表示され、ステージ上の偶像妖怪ネコマタンがそれを見て敬礼、客席の妖怪達が振るサイリウムに見送られながらピンクの光になって高速移動を開始。
「試し斬りの竹林」近くの温泉でカシャと共に疲れを癒していた斬空妖怪カマイタチが空を見上げ、青い光になって高速移動を開始。
〔バウバウバウーッ!〕
見送るカシャの声が青空に響く。
「妖怪稲荷神社」の神殿の扉が開き、奥から幻惑妖怪キュービルンが「お座り」のポーズのまま前進、その足元から機械的なカタパルトが伸び、どこかから響いてきた「five,four,three,two,one,zero!」というカウントダウンでキュービルンが「お座り」のポーズのまま空高く射出され、黄色い光になって高速移動を開始。
降臨した5体の妖怪達は目からビームを出しそれぞれのパートナー人間をコクピットに転送。
「結月、もう大丈夫か?」
「うん、あたしは……」
少しだけ時を遡り、モロクが炎の剣で切り捨てられる少し前。
ピンクとイエローは互いの専用武器を激しくぶつけ合い火花を散らす。
「フシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
威嚇音と共に大振りの引っ掻き、その脇腹にできた隙を見逃さずイエローがコンコンボーの突きを食らわす。
「フギャッ!!!!」
怯んだピンクをそのまま地面に仰向けで押し倒し両手両足を押さえ込む。
「フシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
もがくピンクの腕を押さえる指に力を込め、自分の胸の奥と一緒に締め付ける。
「怖くない、怖くない。怖くない、怖くない」
「フシャアアアアアアア……」
モロクの力の影響が消え、もがいていた手足が動きを止める。
「千影ちゃん、あたし……みんなに酷いこと……」
イエローは力を緩め、寝転んだままのピンクをそっと抱きしめる。
「大丈夫、そんな結月もかわいいんだから」
「千影ちゃん、そういうのずるい……」
ピンクもイエローの背中に腕をまわす。
時は戻り現在のコクピット。
「もふらいにょぉぷらひょぉぉぉ~」
ピンクは揺れながらグリーンに答えた。
「大丈夫なのか?」
「ようし、大丈夫そうだから合体いくぜ!!」
レッドはムゲンオーの合体カードを取り出す。
「大丈夫そうなのか!?」
「いくぜ、夢幻合体!!」
レッドがムゲンブレスにカードを差し込むと、5体の妖怪達の体が宙に浮き、変形を始める。
カラステングの両腕がスライドして背中に回り、両足は折り畳まれる。
メガガッパーの両腕が引っ込み、甲羅が上にスライドして体の下半分が2本の足の形状になったところでカラステングの体の下に合体して「下半身」となる。
ネコマタンの尾と後ろ足が折り畳まれ、前足は爪が出た状態で頭に被さるようにスライドし、全体的に鋭い爪の付いたた腕といった形状になりカラステングの左腕部分に合体。
カマイタチの刃物状の尾が外れ、後ろ足が折り畳まれ、鎌の付いた前足は頭に被さるようにスライドし、鎌の間に刃物状の尾が収まり全体的に鋭い剣の付いた腕といった形状になりカラステングの右腕部分に合体。
キュービルンの体が前部と後部で半分に分離、前部は中心にキツネの顔が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの胸に合体、後部は九本のキツネの尾が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの背中に合体。
最後にカラステングの下顎が大きく開き、中から人型の顔が姿を表した。
レッド以外の4人もカラステングのコクピットに転送され、ヨーカイジャー達から見て左から、ピンク、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの順に席に着いた。
「完成、合体巨人・ムゲンオー!!」
5人声を揃えてその名を叫ぶ。
ムゲンオーは右手の夢幻斬空剣を斜めに掲げてポーズを決める。
「合体しなくてもいいじゃない、妖怪だもの」
「『だもの』言いたいだけか?」
巨大モロクは両手の獅子舞の口を開閉させながら突進、振り下ろされたムゲンオーの両手の剣と爪をそれぞれ獅子舞の口で受け止める。
そのまま両者押し合い、力ではムゲンオーが勝り押し込んだところで右手の拘束を脱出、巨大モロクの体に剣を振り下ろすがやはり傷一つ付かない。
「大きくなっても硬いおれは、綿飴とは違うんだなあ」
「何言ってんだこいつ!?」
「しゃべりはゆるふわなのに硬い……」
「さっきの武士みたいに、ムゲンオーも炎の技が使えたらいいのになぁ」
「それでござる!!!!」
「どれ!?」
「また拙者に策がある。やってもいいか?」
「おう、やってくれ! さっきみたいに!」
「任せる!」
「あたし達はさっき何があったかわかんないけど、」
「やっちゃってー!」
ブルーはムゲンブレスに炎熱妖怪カシャの召喚カードを差し込む。
「えー、結月、パートナー以外の妖怪を召喚するときは何と叫ぼう?」
「パートナー以外? えーっとじゃあ、『サモン、サポーターズ!』で!」
「うむ。サモン、サポーターズ!!」
妖怪の里。
温泉から上がったカシャは全身を震わせて水分を飛ばし、空を見上げる。
かつて自分を救ってくれた江戸の世の侍、そして今自分を必要としてくれている現代の侍。
二人の武士道に呼ばれるかの如く紅色の光になって高速移動を開始。
「何をする気か知らないけど、今またピンクの奴が暴れたら……」
巨大モロクは口を開き液晶画面のような器官を露出させる。
それに反応したコクピット内のイエローがピンクの顔を抱え込み押し倒そうとしたその時、紅色の光がムゲンオーと巨大モロクの間に降り立つと同時にカシャがその姿を現し、口から火球を連射。
それらは巨大モロクの液晶画面を直撃、高熱と爆風が光の発射を阻止し巨大モロクを後退させる。
「よく来てくれたなカシャ!」
〔ビビーッ!〕
〔バウバウバウ!〕
「あれ? カマイタチとカシャってケンカしてるって聞いたけど?」
「雨降って地固まり、炎纏って技強まる。そこで恐らく、このカードが役に立つ!」
ブルーはムゲンブレスにカシャの換装カードを差し込む。
するとカシャの体が宙に浮き、前後全ての足が折り畳まれ、下顎が大きく開いて首の下に付いた状態でロックされ、喉の奥から銃身のような物が伸びて出てくる。
ムゲンオーの右腕のカマイタチが外れ、銃の付いた腕の形になったカシャが代わりに右腕に合体する。
「すげえ! 銃になった!」
「侍的にはいいの?」
「うむ、戦に銃を使った武将もいるというからな! しかしまさか、ここまでのことが起こるとは……」
「よーし、撃ちまくれー!!」
ムゲンオーは巨大モロクに銃口を向ける。
「銃は剣よりも強しって言うらしいんだなあ」
巨大モロクは撃たれれば避けきれないと判断、獅子舞の付いた両腕を交差させて銃撃に備える。
「いっけええええええ!!」
レッドが気合いと共に操縦桿を押し込む。が、何も起きない。
「いっけええええええ!!」
レッドが気合いと共に操縦桿を引っ張る。が、何も起きない。
「えーっと、カラステングさーん?」
〔右腕の銃から何の力も、それどころかカシャの意思すら感じられないぜ?〕
「どういうことだ……」
「もしかしてこれも名前付けなきゃいけないとか?」
「名前といえば……ハイ結月!」
「ハイあたし!」
「あいつまた逃げようとしてるから早めに頼む」
「え、巨大化してるのに逃げる気なの? 小さいのはどっちなのまったく! えっと、銃……ガン……ムゲンオーガン? だと文字数が寂しい感じするし…………お!」
ピンクは手を「ポン!」とやる。
「ムゲンオーマグナム!!」
その瞬間、右腕の銃に熱い炎の妖気が巡り始める。
〔バウバウ!〕
「おおカシャ! 気に入ったか!」
〔バウ!〕
空中に待機しているカマイタチも大きく頷く。
〔ビビーッ!!〕
「そうか、おぬしも良いと思うか! しからば!」
「完成、ムゲンオーマグナム!!」
5人全員で叫ぶ声と共に、銃を翳してポーズを決める。
「撃つべし!」
右腕の銃から火球を発射、逃げようとしていた巨大モロクの背中に命中。
「あーっつっつっつ! 結局撃ってくるんだなあ」
巨大モロクは上半身を180度回転させ、そのまま獅子舞を構えて突進してくる。
「撃つべし! 撃つべし! 撃つべし! 撃つべし!」
火球を連射。
巨大モロクは2発までは獅子舞で噛み千切るもその後は顔面や胴体等に直撃、高熱と衝撃で動きを鈍らせる。
その時、コクピット内全体が光り輝き、その光はレッドの目の前に凝縮し、1枚のカードになった。
「これは……新しい必殺技!!」
レッドがムゲンブレスに新しいカードを差し込むと、ムゲンオーマグナムの全身の妖力が右腕の銃に集中し、超高温の攻撃力へと変換されていく。
「必殺大妖技・炎熱魔燃弾!!!!!」
銃口に通常の5倍以上の大きさの火球が生成され、巨大モロクに向かって超高速で連続発射。
巨大モロクの強固な体も耐え切れず、ゆっくりと真横に倒れていく。
「やっぱりあなた達、火を使うんだなあ。人間だもの」
爆散。
「うよっしゃああああああああああ!!!!!!」
ムゲンオーマグナムは銃を翳して、空中のカマイタチは鎌を光らせて勇ましいポーズを決める。
「これにて一件落着!」
〔ビビーッ!!〕
〔バウバウ!〕
戦い終わって自宅兼道場へ帰宅した武士。
「切れ味、火力、そして……」
武士は刃物を握り、3種類の硬い物を切り刻み炎の力で熱を帯びた水の中へ。
「今宵のカレーは……」
武士は冷蔵庫から地方のイベント会場で貰った鯨肉を取り出す。
「シーフード……」
鯨肉を包丁で程よい大きさに切り、ニンジン、ジャガイモ、タマネギの煮える鍋に入れる。
鍋の表面に現れては消える泡を見つめながら、遠い祖先から繋がった縁の強さに思いを巡らせ、剣と誇りに懸けた誓いを声に出す。
「レヴィアタン、必ず斬る。必ず悪を…………いや、灰汁を掬わねば」
霧崎武士、今宵は刀をおたまに持ち替える。
【to be continue…】
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