episode:4 立ち上がれ合体巨人!
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
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どこかの時空の秘密の場所に存在する、悪魔帝国デモンダイム。
その中心にそびえ立つのが“サタンパレス”。
その主人・悪魔帝王サタンは500年前、己の肉体の限界を迎え、配下達に復活の方法を見付け出すことを命じて眠りに就いた。
そして現代、知的生命体の負の感情から生まれるエネルギー・デビルギーがサタン復活に有効であることと、最も高品質なデビルギーを生み出すことの出来る精神構造を持つ知的生命体が、とある次元のとある宇宙の地球と呼ばれる惑星に住む、ヒト──俗に「人間」と呼ばれる生物であり、悪魔達にとって最も効率的に負の感情を発生させることのできる人間は、「日本人」と呼ばれる種族であることが判明した。
デビルギー回収作業の指揮を執る任務に就いていたデモンダイム幹部の1体・レヴィアタンは、地球より一時的に帰還。
デビルパレスより北へ数十キロ、通称「破壊の谷」と呼ばれる場所を訪れていた。
「相変わらず酷いところだ。何もかもがひび割れ、何もかもが焼け爛れ、生きとし生けるもの全てが死の恐怖に怯えている。それもこれも全てあいつのせいだ。ベヒモス!!」
「ブブォオオオオオ!!!!!!」
谷全体を震え上がらせるその咆哮の発生源──カバのような大口の開く顔、青みがかった巨大な山を思わせる身体、両肩にバイクのマフラーのような突起物を左右それぞれ3本ずつ生やし、大岩をも握り潰すその手に備わる黒と白に色分けされた指。
「ブブォオオオオオ!!!!!!」
「まあ落ち着けベヒモス、破壊と殺戮を好む貴様にいい話を持ってきた。偉大なる我らが支配者サタン様の……」
「ブブォ! ブブォ! ブブォオオオオオ!!!!」
「そうだ、その貴様が大好きなサタン様だ。そのサタン様復活に必要なデビルギー集めを邪魔する小賢しい連中がいて……」
「ブブォオオオオオ!!!!!!!!!!」
「そうだその通りだ、そんな奴らは存在するべきではない。私も全く同じ意見だ。ならばベヒモス、私と共に地球へ赴き、その邪魔な奴らを……」
「ブブォブブォブブォブブォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「そうだそうだまさに貴様の言う通りだ。ならば話は早い、今から私と共にサタンパレスの……」
「ゲートをお使いになるおつもりですの?」
そこへ現れたのは、砂漠の王国のプリンセスのような出で立ちの美しい人間の女性に似た姿、腰に宝石が散りばめられた冠を結びつけ、悪魔的な技術により開発されたラクダ型のメカに乗ったデモンダイム幹部の1体……
「グレモリーか。何をしに来た?」
「あなたが地球からお帰りになって早々、お休みもお食事もなさらずにお出かけになるものですから、ワタクシ気になって」
「それでそのガラクタに乗って後を着けてきたのか、趣味が悪いな」
「あらガラクタだなんて、あなたも乗り物はお好きでしょう?」
「私の軍艦をそんなガラクタと一緒にするな。それよりこのベヒモスを地球へ連れていくことに何か文句があるとでも言うのか?」
「ワタクシ達が大勢で地球へ攻め込めない理由、お忘れになって?」
「忘れるわけがない。転送ゲートを使うにはデビルギーを消費する。だから一度にゲートを使う悪魔は基本的に1体、頭数が必要な場合はカプセルに収まる習性を持つジャミリアーどもを使う」
「お忘れでないなら、そんな大きな悪魔にゲートを通らせるには、どれだけのデビルギーを消費して、サタン様復活をどれだけ遅らせるか…………考える頭を地球に置いてきてしまわれましたの?」
グレモリーはラクダ型メカの頭にもたれかかってレヴィアタンを横目で見る。
「消費した分また地球で集めればいい。地球には、ベヒモスを連れていってでも叩き潰さなければならない連中がいる」
「ブブォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「あら、ベヒモスちゃんもそんなことおっしゃるの?」
「ちゃん!?」
「その叩き潰さなければならない連中って、どんな方々ですの?」
「妖怪の力を使って戦う人間どもだ」
「妖怪!?」
グレモリーは声を弾ませる。
「貴様は興味があるんだったな。あんな化け物どものどこがいいんだ」
「あら面白いじゃない、あの子達」
「子!?」
「妖怪の力を使う人間……一度見て見たいわ」
「そんなに暇なら貴様も行くか?」
「面白そうね……」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
「episode:4 立ち上がれ合体巨人!」
関東某所、人々が行き交う交差点。
その上空を黒い稲妻のようなエネルギーが走り、空に亀裂が入る。
人々が見上げたり、写真や動画を撮ったりしている中、亀裂が大きくなり中から巨大な悪魔・ベヒモスが降ってきた。
「ブブォオオオオオオオオオオ!!!!」
着地しただけで地を揺らす衝撃、破壊。
歩き出し、高速道路をかち割りビルを崩す。
「いいぞベヒモス……」
その様子を近くのショッピングモールの屋上駐車場から見ていたレヴィアタンが左腰に付いているバッグのような物から、片手に収まる大きさの、長方形で全体的に黄色っぽく、上部と下部に茶色い部分があるスポンジ状の物を取り出した。
それを空へ掲げると、ベヒモスによる破壊から逃げ惑う人々の頭から黒い煙状のデビルギーが立ち上ぼり、スポンジ状の物に吸い寄せられ吸収されていく。
「さあ出てこいヨーカイジャー! 出てこないならこないで、デビルギー取り放題だからこちらは何も困らないがな!!」
「ブブォオオ?」
「グレモリーか。奴は『人間どもが逃げて居なくなった街を見て回りたいので妖怪が来たら呼んでくださいませ、ウフッ』などとほざいてどこかへ行きおった」
「ブブッ?」
「そうだ、『ウフッ』だ。あんな奴は放っておこう。妖怪が来ても呼んではやらん」
「こらーレヴィアタン!!」
「こっちはもう来たか」
レヴィアタンがいる屋上に駆け付けた変身後のヨーカイジャー。
「このデカい奴何だよ!? 俺達こんな奴やっつけてねえぞ!?」
「当たり前だ、こいつは元々この大きさだからな」
「えー!? 最初っからおっきい悪魔もいるの!?」
「考えてみれば、妖怪だって、長老やカラステングみたいな大きさの妖怪もいれば、人間大や、人間より小さい妖怪もいる。悪魔にも色々サイズがいたところで不自然じゃない」
「じゃあなんでこういう大きいのが何匹も襲ってこないの?」
「巨大な悪魔はみんな忙しくてな、貴様らごとき下等生物の相手をするためにこんなところまで来られるほど暇な者はめったにいない。このベヒモスには、貴様らに悪魔には絶対に勝てないという現実を教えてやるために、無理を言って来てもらったのだ」
「ブブブォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」
「があああ、すっげえ声!」
「除夜の鐘が騒音などと言っている輩がこれを聞けば、2秒で耳が吹っ飛んでいくでござろう」
「でもどうする? あんなのと戦ったらすごい被害が出そうだし、妖怪呼んだら街の人達に見られちゃう」
グリーンがムゲンブレスでどこかに連絡する。
「妖怪の里に連絡して、パートナー妖怪に召喚されたらステルスモードで来てくれるように伝えてもらえるようにした。パートナー妖怪が来たら、ステルスモードのまま被害を最小限に抑えらえれる場所へベヒモスを誘導しよう」
「でもその間、レヴィアたんはほっといていいの?」
「だからレヴィアタンだ!」
「そうだな、3人がベヒモス、2人がレヴィアタンだ」
「とりまカラステングは要るよな?」
「だな、あのデカブツ相手なら長老にもいてほしい」
「小回りが利く子も欲しいよね。 結月、武士と二人で頑張れる?」
「れる!」
「決まりでござるな!」
ピンク、ブルーはレヴィアタンと向き合い身構え、レッド、グリーン、イエローはムゲンブレスに召喚カードを差し込む。
「サモン、パートナーズ!!!!」
妖怪の里。
「修行の森」から武闘妖怪カラステングが腕組みをしながら飛び立ち、赤い光になって高速移動を開始。
「河童ヶ沼」の底から長老妖怪メガガッパーが水飛沫を上げながら浮かび上がり、緑の光になって高速移動を開始。
「妖怪稲荷神社」の神殿の扉が開き、奥から幻惑妖怪キュービルンが「お座り」のポーズのまま前進、その足元から機械的なカタパルトが伸び、どこかから響いてきた「five,four,three,two,one,zero!」というカウントダウンでキュービルンが「お座り」のポーズのまま空高く射出され、黄色い光になって高速移動を開始。
破壊された街に3体のパートナー妖怪が、普通の人間には見えない姿で降臨。
目からそれぞれの色のビームを出してパートナーをコクピットに乗せる。
今回も、そしてこれからも、妖怪の声は「」表記ではなく〔〕表記とさせていただく。
「カバ野郎をどこに誘導する?」
「北の方角に今は使われていない採石場があるからそこにしよう。適正なルートは北へ……」
「待った待った、北とか南とかじゃなくて、右とか左とかで言ってくれよ。空間に方角なんか書いてないんだからわかりにくいぜ」
「あー私そういうのわかる」
「悪い、じゃあ、拓実からというよりカラステングから見て右へあいつを動かしてくれ」
「OK!」
〔いっくぜー!〕
カラステングは助走を付けてジャンプからの顔面パンチ、しかしベヒモスは微動だにしない。
〔効かない……!?〕
「ブブォオオオオオオオオオオ!!!!」
ベヒモスの両肩のバイクのマフラーような物から煙が吹き出し、身体をのけ反らせてからの頭突き。
カラステングは両腕をクロスさせてガードするが勢いは殺せず後ろへ吹っ飛び、ビルにぶつかる直前に足でブレーキをかけて踏み留まる。
「だったら押し流す!」
〔水に流してやろう!!!!〕
メガガッパーが口から水流を放出。
「ブブォオオオオオオオオオオ!!!!」
ベヒモスの両肩のマフラーのような物から更に激しい煙を吹き出しながら、口から赤く煮えたぎるマグマのようなエネルギーを放出。
マグマのようなエネルギーが水流を蒸発させながらメガガッパーに迫り、命中。
頑丈な体でもこの熱攻撃には平気では済まない。
〔うぐあっ!! ……少しは年寄りを労らんかい!〕
「だったら私達の出番ね!」
〔コーン!〕
キュービルンはベヒモスの周りの建物の上を軽やかに跳び回る。
繊細な体重移動により、キュービルンが乗っても建物は一切傷付かない。
「ブォッ! ブォッ! ブォッ! ブォッ……!」
キュービルンを目で追うベヒモスの声に苛立ちが混じり始めたその時、ベヒモスの眼前に2体のキュービルンが現れた。
右を見てもキュービルン、左を見てもキュービルン。
ベヒモスを囲むキュービルン達が、しっぽを振ったり舌を出したりDJ風やサーファー風の動きをしてベヒモスを挑発。
やがてキュービルン達は一斉に採石場の方向へ走り出す。
「ブブォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
ベヒモスもキュービルン達を追って走る。
しかし、それらのキュービルン達は全て幻影であり、本物のキュービルンとイエローはベヒモスの背中を見ている。
〔さすがだぜキュービルン!〕
〔コンコーン!〕
〔だけど、俺のパンチが全然効かなかった……〕
〔ワシの水責めも……。じゃが追うしかあるまい!〕
〔コンココン!〕
妖怪達はベヒモスの後を追う。
一方その頃、ショッピングモール屋上駐車場では……
「必殺妖技・肉球謝肉祭!」
レヴィアタンの上空から無数の肉球型エネルギー弾が降り注ぐ。
レヴィアタンは手から無数の蝶のようなエネルギー体を放出し、肉球を全て相殺。
「ええええ!?」
「ならば拙者の出番!」
ブルーはムゲンブレスに必殺カードを差し込む。
「必殺妖技・斬空一閃!」
ブルーは居合いの構えからブライブレードを振りぬくと共に走り抜け、レヴィアタンに斬撃を食らわそうとするが、ブライブレードの刃を片手で受け止められ、そのままピンクのいる方へ投げ捨てられた。
「避けろ!」
「ダメ!」
ピンクは投げ捨てられたブルーの体を受け止め両足で踏ん張るが足元から火花を散らしながら後退、屋上の端ギリギリで止まる。
「最強JK二ノ宮結月ちゃんを……ナメないでよね……」
「最強の名は……伊達ではないでござるな……」
しかし気付くと、レヴィアタンの姿は無かった。
「見失った……」
「仕方がない、我々もベヒモスの方へ急ごう!」
ピンクとブルーもムゲンブレスに召喚カードを差し込む。
「サモン、パートナーズ!!!!」
妖怪の里。
「妖怪電気街」のステージのモニターに「きんきゅーしゅつどー」の文字が表示され、ステージ上の偶像妖怪ネコマタンがそれを見て敬礼、客席の妖怪達が振るサイリウムに見送られながらピンクの光になって高速移動を開始。
「試し斬りの竹林」で瞑想していた青い体に鋭い鎌が付いた斬空妖怪カマイタチが空を見上げ、青い光になって高速移動を開始。
ピンクとブルーの眼前に2体のパートナー妖怪が、普通の人間には見えない姿で降臨。
目からそれぞれの色のビームを出してパートナーをコクピットに乗せる。
〔ニャニャーン!〕
〔ビビーッ!〕
2体は仲間達やベヒモスが向かった先へ移動を開始。
それを物陰から見ていたレヴィアタン。
(これでピンクと青も死にに行ってくれる……)
人気の無い採石場。
ベヒモスが幻影のキュービルンを追いかけてやって来た。
「この辺でいいかな? キュービルンが疲れてきた」
〔コンコン……〕
「充分だ」
〔キュービルン、ようやった〕
〔後は俺達に任せて、そっちでちょっと休んでな!〕
〔コンコン!〕
キュービルンは幻影を消し、少し離れたところでお座りした。
「ブブォオオオオオ!?」
ベヒモスは幻影キュービルン達が突然いなくなったことに驚き大頭を振り回す。
〔探し物は俺ですか?〕
〔見つけにくいもののけですか?〕
「お前らよくそんな歌知ってるな!」
そこへネコマタンとカマイタチが到着。
「おーーーーーーい!」
「そっちは終わったのか?」
「倒せてはおらぬがレヴィアタンはいなくなった」
「だからこっち優先かなーって」
「正しい判断だろう」
「えらいえらい!」
「えへへ、千影ちゃんに会いにきたよー!」
「よし、全員でいくぞ!」
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
カラステングはベヒモスの頭上へ飛び上がり、拳を構えて急降下を始める。
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
メガガッパーは四股を踏み、摺り足でベヒモスに向かっていく。
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK2 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
ネコマタンはベヒモスに跳ねるように駆け寄り、ジャンプして両手の爪を構える。
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
カマイタチは旋回して勢いを付け、鎌を光らせベヒモスに突進する。
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
キュービルンは全身を震わせて気合いを入れ直し、宙に浮いて独楽のように横回転しながらベヒモスに向かって飛んでいく。
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
四方と真上から5体の同時攻撃が直撃。
しかしベヒモスはマフラーのような物から猛烈な煙を吹き出し、全身を広げて大の字になり妖怪達を吹っ飛ばした。
妖怪達は地面に叩き付けられ、中のヨーカイジャーにも衝撃が伝わる。
〔お、起こしてくれ~!〕
カラステングは近くにあった岩と体と鎌の付いた腕を伸ばして一直線になったカマイタチを使い、テコの原理でメガガッパーを起こした。
「よーしこうなったら……」
〔アレしかねぇ!〕
レッドはムゲンブレスに必殺カードを差し込む。
カラステングの体は赤く光り輝き、ベヒモスに向かって拳を突き出し体全体でドリル状に回転しながら超高速で突進する。
「必殺妖技・飛翔回転拳!!!!!!!!!!」
パンチはベヒモスの体に刺さらず、回転する拳がベヒモスの体表で火花を散らす。
「ブブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
ベヒモスはマフラーのような物からこれまでで一番激しい煙を出しながら両手でカラステングを掴み、逆回転を加えながら投げ飛ばす。
「うわあああああ!」
〔うわあああああ!〕
また地面に叩き付けられたダメージと、必殺妖技を破られた精神的ダメージで、しばしカラステングは空を見上げて動かなくなる。
「あれが効かないとなると……」
「厳しいね。幻術で動きを止めるのも、ずっとできるわけじゃないし……」
〔コン……〕
「あーあ、この前のムゲンバズーカみたいに……いや、それは無いか」
「拓実! 今何て言った!?」
「だああごめんなさい!!」
「怒ったんじゃない怒ったんじゃない大事なことだから2回言った。今何て言った?」
「いや、だからこの前のムゲンバズーカみたいに妖怪達も……って、それはさすがに無……」
「あるかもしれないぞ!」
「そうなのか?」
「ああ、カラステングのコクピットはどうして他より広いと思う?」
「みんなで入れるように…………!? そうか!」
〔そういえば、こんな言い伝えがあったのう。『この世を終わりへ導く災いありしとき、広きコクピットを持つ勇ましき者……』〕
「広きコクピットって、そんな言葉本当に言い伝えにあるのかよ?」
〔共に歩む猛々しき者どもを束ね、この世の終わりをドーン!としてバーン!ってしてズギャギャギャギャーン!〕
「いっぺんその言い伝え考えた奴連れてきてくれ」
「『共に歩む猛々しき者どもを束ね』……ということはやはり……」
「ああ、その後のバーン!とかは無視しよう!」
その時、5体のパートナー妖怪達からそれぞれの体色と同じ色の光が放たれ、それらが一つに集約されカラステングのコクピットの中へ飛び込み、1枚のカードになった。
「これはまた……思いが妖力を形にしたってやつか!」
レッドはカードを手に取る。
「でもこのカード…………ま、いいや、とにかくやってみる!」
レッドがその新しいカードをムゲンブレスに差し込むと、5体の妖怪達の体が宙に浮き、変形を始める。
カラステングの両腕がスライドして背中に回り、両足は折り畳まれる。
メガガッパーの両腕が引っ込み、甲羅が上にスライドして体の下半分が2本の足の形状になったところでカラステングの体の下に合体して「下半身」となる。
ネコマタンの尾と後ろ足が折り畳まれ、前足は爪が出た状態で頭に被さるようにスライドし、全体的に鋭い爪の付いたた腕といった形状になりカラステングの左腕部分に合体。
カマイタチの刃物状の尾が外れ、後ろ足が折り畳まれ、鎌の付いた前足は頭に被さるようにスライドし、鎌の間に刃物状の尾が収まり全体的に鋭い剣の付いた腕といった形状になりカラステングの右腕部分に合体。
キュービルンの体が前部と後部で半分に分離、前部は中心にキツネの顔が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの胸に合体、後部は九本のキツネの尾が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの背中に合体。
最後にカラステングの下顎が大きく開き、中から人型の顔が姿を表した。
レッド以外の4人もカラステングのコクピットに転送され、ヨーカイジャー達から見て左から、ピンク、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの順に席に着いた。
「うよっしゃあああああああああ!!!!!! 合体できたああああああああ!!!!!!」
「はやりこのコクピットの広さは、ここへヨーカイジャーみんなで集まるためだったか……」
「すごいすごいすごーい!」
「今までで一番面妖な!!」
「キュービルン、あなた真っ二つになっちゃったけど大丈夫? ねぇキュービルン? ……キュービルン!? 返事が無いんだけど!?」
「おいカラステング! キュービルン大丈夫なのか!? おい! カラステング……」
「長老! 長老!」
「ネコマタン! ……って、あいつ……ベヒモス、すっごいヤル気なんだけど! こっちが強そうになったからかな? 相手にとって不足は無いみたいな顔してるんだけど!」
「カマイタチ! 駄目だ、操縦桿を押せども引けども何の反応も無い……」
「カラステング! 返事してくれ!」
「何か足りない物があるのか……?」
「足りない物っていや、そうだ、合体に使ったカード、名前が書いてなかった!」
「名前でござるか?」
「他の妖怪カードにはみんな名前が書いてあるのにね」
「もしかして、この巨人に名前を付けないと動かない……?」
「名前名前名前……」
ピンクが腕を組み頭を捻り始めた。
「妖怪が合体……強くなって……妖怪の王様……妖怪王……いや……お!」
ピンクが何かを思い付いた時の手を「ポン!」とするアレをやる。
「ムゲンオー! 合体巨人ムゲンオー!」
「ムゲンオー……いいんじゃないか?」
「うむ、シンプルで言いやすい!」
「ムゲンオーか……やるじゃん結月!」
イエローがピンクの頭を撫でる。
ピンクは両手で顔を覆って足をばたつかせる。
「よーし……! 完成、合体巨人・ムゲンオー!!」
ムゲンオーの目に光が宿り、剣の付いた手を前に突き出しポーズを決める。
〔うおおおおおお!! なんか力が漲ってきたあああああああ!!!!〕
「カラステング!!」
〔コンコンコーン!!〕
「キュービルン! 元気そうでよかった!」
「ネコマタン、かわいいネコちゃんがかっこいい腕になったね!」
〔ニャニャニャニャニャーン!!〕
「カマイタチ、まさに我らの、『腕の見せどころ』でござるな!」
「ビビーッ!!」
「長老、こんな奇跡、許されていいんでしょうか」
〔世界を守るためじゃ、いいに決まっておろう!〕
「うよーーーーし、いくぜムゲンオー!」
ムゲンオーは腕を振って歩き出す。
「ブブォオオオオオオオオオオ!!!!」
ベヒモスはまたマフラーのような物から煙を出しながら走り出し、ムゲンオーに体当たりを仕掛ける。
「やっちゃえー!」
ムゲンオーは左手の爪で向かってきたベヒモスの顔面を切り裂く。
「ブブォオオオオオオオ!?!?」
ベヒモスは激痛にもがき数歩後退。
「殿中でござる!」
ムゲンオーは右手の剣を振るいベヒモスの胴体に斬撃を食らわす。
「ブブォブブォブォオオオオオ!?!?!?!?」
ベヒモスはまたも激痛にもがき数歩後退。
「切れ味抜群でござる」
ここでまたピンクが頭を捻りだす。
「ムゲンオーが使うカマイタチの剣……ムゲンカマイタチ剣……いやそれだと鎌なのか剣なのかワケわかんないから…………お!」
ピンクはまた手を「ポン!」とやる。
「夢幻斬空剣!」
「おおおおおおおおおお!!!!」
「結月すごい!」
イエローはピンクの顔を抱きしめる。
「はわわわわわわわわわわわわわーーーーーっ!!!!!」
「ブブブブブブブブォオオオオオオオオオオオッ!!!!」
ベヒモスは怒りの形相で口から赤く煮えたぎるマグマのようなエネルギーを放出。
ムゲンオーは見た目はカラステングのそれと同じだが背中の九尾による自然エネルギーの循環により飛行能力が向上した翼で飛び上がって回避。
空中のムゲンオーを撃ち落とさんと、ベヒモスはまたマグマのようなエネルギーを放出するが、ムゲンオーはこれを夢幻斬空剣で斬り飛ばす。
その時、また新たなカードがコクピットのレッドの前に現れた。
「これは……すごそうなカードだ!」
レッドはそのカードをムゲンブレスに差し込む。
するとムゲンオーの全身を5色の光が駆け巡り始める。
地上で吠えるベヒモスに狙いを定め、夢幻斬空剣を構える。
「いくぜ!」
レッドが叫ぶ。
そして技の名前は全員で叫ぶ。
「必殺大妖技 夢幻斬空剣・無限魔斬撃!!!!!」
高速移動からベヒモスの体を∞型に切り裂き駆け抜ける。
その剣の軌道は凄まじい光を放つ。
「ブ……ブ……ブ……ブブォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
爆散。
恐るべき巨獣の脅威が去った世界へ向けて、ムゲンオーは剣を振りかざし勇ましいポーズを決める。
物陰にいたレヴィアタンは舌打ちをして立ち去る。
元々巨大な悪魔を巨大化させるには膨大な量のカプセルと魔力を要するため、ベヒモスの巨大化は実質不可能。
レヴィアタンにできることは、立ち去る以外には何も無い。
戦い終わって帰り道。
今日は合体巨人で空の旅。
「すっげえよ……! これからよろしくなムゲンオー!」
〔おう! って返事したけど、俺達の意識は相変わらず合体前の妖怪のままなんだよな〕
〔ニャニャニャン!〕
「しかし今回、巨大な悪魔が見られてしまった、というレベルでは済まなかったでござるな」
「ああ、もう情報は拡散される。それにあの規模の破壊が行われたら、被害にあった人の数も……」
コクピット内に重い空気が流れる。
「が! 今は、新しい戦力の誕生と、結月の新しい才能の発見を喜ぼう!」
「ね! すごかったね!」
「夢幻斬空剣を思い付いたとき、自分でも鳥肌立ってたと思う。スーツでわかんなかったけど」
「なあ智和、今日はこのままみんなで、妖怪の里まで飛んじまわないか?」
「妖怪の里!? 行きたい行きたい!」
「拙者も一度、カマイタチが修行している場所を見てみたいのう」
〔ビビーッ!〕
「どうですか長老?」
〔いいに決まっておろう!〕
コクピット内は「やったやった!」「やったでござる!」の大合唱。
「あ、でも結月宿題出てるって言ってなかったっけ?」
「あ……」
「次の週末にしとくか?」
「うん……」
かくして今日は、ヨーカイジャーメンバーはステルスモードのムゲンオーにより家まで送り届けられることとなった。
そんなムゲンオーを地上から見つめる、ラクダ型メカに乗ったデモンダイム幹部・グレモリー。
「ムゲンオーちゃん…………激萌えですわぁ~!」
【to be continue…】
本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!
今回も2体掲載!!
この作品に使われているイラストはxAIのGrokによって生成されました
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