episode:33 ヨーカイジャー宇宙へ
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
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妖怪の里に佇む、敢えてひなびた感じに造られたアパート。
その一室、7体いる妖怪評議員の1体・神筆妖怪ヒルコの部屋。
そこを訪れたユキオンナに、ヒルコは母のような眼差しを向ける。
「ゴッドムゲンオー…。あんた達はまさに、神に等しい力を手に入れた。その力を恐れてもいい。力を恐れることは、力を正しく使おうとする気持ちの第一歩だからね」
「はい。正直まだ、ちょっとだけ怖いです。でもそれ以上に、『世界を守る力』って、大袈裟じゃなく言える力の一部になれたことが、とっても嬉しいです」
「そっかぁ。やっぱりあんたに巨大変化の術を教えてよかった」
「で、何ですかこの有り様は?」
「ファ~~~!?」
押し入れから出てきたらしい色々な物が部屋中、足の踏み場もなく散らかっている。
「いやぁ、たまには磨いてやろうかなって思って、ナナトノカガミ」
「妖怪の里三大秘宝の!?」
「この辺にしまった記憶があったような無かったような…」
ヒルコは押し入れを探り、また色々な物を床の上に増やす。
「どこにしまったか忘れてしまわれるくらいなら、ヤマタノオロチ様のように体の中に入れておかれては?」
「あたしゃあいつと違って常にデカいわけじゃないし、しっぽ生えてないし、ナナトノカガミはイナガキノツルギみたいに細長くないし、丸いし…」
また押し入れを探るヒルコの小さな後ろ姿を見て、ユキオンナは小さな笑いをこぼして探すのを手伝い始めた。
「あー、ユキオンナそれより台所からカップケーキ持ってきて。お盆に乗っけてあるから」
「はいカップケーキ。これですね、美味しそう。お盆に……ヒルコ様ぁ!!!」
「ん?」
「このお盆…」
「え? …………あああああああああああ!!!!!!」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:33 「ヨーカイジャー宇宙へ」
国内某所の洞窟。
中から泣き声が響いている。
アマミノクロウサギのような顔、宇宙服を着ているような体、背中にロケットのような物が付いており、火縄銃のような右手、黒いニワトリのような左手、絡まって捻れたマングローブのような足。
という姿の悪魔が地面に突っ伏して泣き声をあげていた。
「うわああああああああああああ!!!!」
そこへやってきたベルゼブル。
「YO! YO! YO! アスタロト! なに泣いてんだYO!」
「ベルゼブル様! ベルフェゴール様が! ベルフェゴール様が!」
「Oh…俺様のマイメンのために泣いてくれるか。おめぇは“七つの大益”大好きだからな!」
「はい! 七つの大益の皆さんは俺の青春! 俺の魂! なのにまた、いなくなっちまうなんて…」
塞ぎ込むアスタロトを見て、ベルゼブルは髑髏型のマイクを生成する。
「YO! Sageてるブラザー、アスタロト! 顔Age前見ろ明日はそこ! 立派にバトったベルフェゴール! ヤツが開いた道の先にゴール! 復活目指そうぜサタン様! それが悪魔な俺らの生き様! Say! Hooooo?」
「Hooooo!」
「Ho! Ho! Ho! Ho!」
「Ho! Ho! Ho! Ho!」
「チェケラ!!」
向かい合って「チェケラ!!」の指を天に掲げた時には、アスタロトの目には生気が戻っていた。
「ありがとうございますベルゼブル様! Agaってきました!」
「OK! AgeてこうZE! それで、例のヤツは育ってんのかYO?」
「はい。我らが悪魔帝国デモンダイムに生息する有翼生物ワイバーンと、地球のウナギという生物を元にして生み出した巨大合成生物バハムート! 地球の衛星、人間どもが『月』と呼ぶ星にて育て上げ…」
「あれ悪魔も普通に『月』って呼んでるけどな」
「そうでしたっけ? まあいいや。とにかく、バハムートは既に作戦実行に相応しい姿に育て上げております! 人間どものそこそこ使える天気予報によりますと、天候、風向き、気温、気圧その他諸々踏まえまして……明日の午後0時38分! それこそ最適な作戦実行のタイミング!!」
「OK! おめぇとバハムートで、デビルギーしこたま生み出しちまってくれYO!」
「もちろんです! それでは明日に備えて、今からバハムートの所に行ってきます!」
「Oh! 行ってこい! 期待してるぜブラザー!」
「ありがとうございます!」
アスタロトは元気よく洞窟を飛び出し、背中のロケットから魔力を噴射して宇宙へと飛び立った。
翌日、結月の高校、昼休み。
結月は学食で、お気に入りのピンクのネコ型かまぼこが入ったうどんを食べる。
授業で溜まった疲れが出汁の味とネコちゃんかまぼこの視線に溶かされていたその時、遠くから響いた落雷のような音に学生達は窓を向き、結月は零れかけたネコちゃんかまぼこを死守した。
学食の窓からは見慣れた校舎とざわつく学生や教職員達しか見えない。
結月はうどんとネコちゃんを急いで食べ終わり、廊下と階段を駆け抜け、4階の廊下の窓から外を見る。
すると、遠目に見てもよく目立つオフィス街の高層ビルの一つが、真上から落ちてきた何かによって抉られたように崩れ、黒煙と砂埃が周囲の空気を澱ませている様が目に映った。
周りの学生達がテロだ隕石だガス爆発だとそれぞれの憶測を語り合う中、結月はこの破壊が悪魔の仕業だと直感し、ムゲンブレスで智和と連絡を取るべくトイレに走る。
「よっ!」
「よっ!」
女子トイレ入り口近くにいた結月に挨拶を返し、結月は個室に駆け込もうとしたところで立ち止まる。
「ん?」
「ん?」
結月は「よっ!」のポーズのまま棒立ちしている結月を上から下まで舐めるように眺める。
「ここが違う…」
「あそっか!」
胸を指差された結月は、さっと手を振って胸を小さくする。
「いや、誰!?」
「あたし!」
もう一人の結月が顔の前でさっと手を振ると、黒髪ツインテールが一瞬で鈴付き赤髪ハーフツインに変わった。
「ヒルコちゃん!?」
「そ。ここにいたら会えると思ったけど大正解だったね。今大変なことになってて」
「さっきの爆発?」
「うん。あたしが身代わりになっとくから、どっかでネコマタン呼んで妖怪の里に行きな。30分くらい普通の人間には見えなくしたげる」
制服姿のヒルコが両手を合わせ、「喝っ!」と気合いを入れる。
「ありがとう! 制服似合ってるよ!」
「全然違和感無いでしょー?」
手を振り合い、結月は学校の外へ、ヒルコはまた結月の顔になって通りすがりの女子生徒に声を掛ける。
「ねえ君! あたしって3年何組だっけ?」
「ゑ………?」
妖怪の里・ヨーカイジャー秘密基地中央司令室。
既に集合場所していた5人に結月が加わる。
「おまたせー! ヒルコちゃんが学校で代役してくれてるー!」
「今頼める妖怪の中で一番変化が上手いのがヒルコ様だったんだ。さて…」
智和がモニターを操作すると、妖怪市街地監視事務局が仕掛けたカメラにより録画された映像が映し出される。
上空から赤い光弾がビルに落下。
爆発音と共に映像が上下左右に激しく揺れる。
煙が上がり、飛び散った瓦礫が降り注ぎ、真昼のオフィス街は無数の悲鳴とけたたましいサイレン音に埋め尽くされる。
カメラが切り替わり、逃げ惑う人々の群れが映し出される。
足音と土煙の向こう側、歩道の隅で瓢箪のような物体を掲げるサングラスに全身シルバーコーデの大男。
阿鼻叫喚の人々の頭上から黒い煙のようなデビルギーが立ち上ぼり、瓢箪のような物体に吸収されていく。
その大男はヨーカイジャーには見覚えがある、人間の姿に変身したベルゼブル。
「あー! あいつ!」
「この破壊はベルゼブルの仕業……にしてはこやつ、随分落ち着いておるな」
「火の玉みたいなのは上から落ちてきたし、別の悪魔が上にいて、蝿男はデビルギーだけ取りに来たのかな?」
「そう、赤い光弾を撃った奴は上にいる」
「どこどこー?」
天井を見上げる結月を、千影がそっと抱き寄せ頭をなでる。
「宇宙だ」
「は?」
結月を撫でていた手が止まる。
結月は驚きながらも、千影の手を掴んで動かし頭を撫でさせる。
「妖怪市街地監視事務局が、日本が打ち上げた人工衛星に人間には発見できないカメラを密かに取り付けていたんだが…」
「何してんだよ!!」
「そのカメラから送られてきた映像がこれだ」
モニターに映る大気圏外の映像。
そこに巨大なウナギにドラゴンの手足と翼を附けたような怪物が現れ、青く輝く地球に向かって口を開き、ビルを破壊したあの赤い光弾を発射した。
「こいつか!」
「なんかすっげーバケモンだな! 悪魔?」
「こいつが悪魔かどうかわからないが…」
映像を拡大すると、巨大な怪物の額の一部が開き、中から宇宙服を着た黒いウサギのような悪魔が出てきて、怪物の攻撃を褒めちぎるような動きをしているのが確認できた。
「こいつは悪魔だろう」
「かわいいウサちゃん! でもあんな酷いことするならやっつけなきゃ!」
千影の手がまた結月の頭を撫でる。
「で、今からこいつらをブッ叩きに行くんだな? どうやって行くんだ? アミキリなら宇宙も飛べそうだけど」
「それはな…」
智和が言いかけたその時、モニターに「緊急速報」の文字とアラート音。
映像が切り替わり、先程とは別のビルが光弾により破壊される様が映し出される。
「また…」
「早く行かなきゃ! 世界中めちゃくちゃにされちゃう!」
思わず足が動いた結月を千影がまた抱き寄せる。
「そうするつもりなら、もっといっぱい次々に撃ってくるはず。多分あいつら、人間みんな殺さない程度に、デビルギーを集めやすい場所とタイミングを狙って撃ってきてる。めちゃくちゃ撃ってくるよりタチ悪いね…」
「さすが千影、説明の手間がはぶけて助かる。奴らは悪魔にとってより効果的なタイミングで攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。できる限り被害が少ないうちに、大気圏外で奴らを倒す」
「で、どうやって行く?」
「ゴッドムゲンオーなら宇宙まで飛べるはずだ」
「宇宙キター!」
勝が両腕を上げて体を伸ばす。
「……って、もっと楽しく行ける時に行きたかった」
「悪魔との戦いが終わって平和を取り戻したら、みんなで宇宙でピクニックとかもできなくはないかもな」
「そんときは智和、宇宙食作ってくれよ」
「宇宙食か。作ったことないけど挑戦してみよう」
「千影ちゃんのはあたしが作ってあげる!」
「うん! …………え、宇宙食を!?」
「よし、楽しく手作り宇宙食を食える平和な日を取り戻すために……いくぞ!」
「オウ!」
ヨーカイジャー達は秘密基地を出て同時変身。
「妖怪変化!」
そしてレッドがムゲンブレスに召喚カードを入れ、全員で叫ぶ。
「サモン、オールフレンズ!!」
秘密基地の周りに巨大妖怪達が集合。
グリーンが作戦を説明する。
〔宇宙かぁ。呼吸できるのか?〕
「行ってみたらわかるんじゃね?」
〔なるほど、そりゃそうだ!〕
〔ウーム、普通の呼吸ができんかったとしても、ワシら16体の妖力を合わせれば何とかなるじゃろう〕
「悪魔がああして宇宙で活動してるんです。妖怪にできないはずがありません」
〔ウム! 頼もしくなったのう智和!〕
「ネコマタン、世界デビューの前に宇宙デビューだね!」
〔ニャ…?〕
〔新婚旅行は宇宙……悪くないだろう〕
そう言うゲキリンダーに目もくれず、キュービルンはブルクダンのしっぽを引っ張って占い能力を楽しんでいる。
ブルクダンの目の中がスロットのように回転し、「末吉」の文字が表情された。
〔コン…〕
「運勢は微妙だけど、合体すりゃあなんとかなる! 行こうぜ宇宙!」
パートナー妖怪達が目からビームを出してヨーカイジャーをコクピットに転送。
「いくぜ!」
「究極夢幻合体!!!!」
6人で叫び、レッドがムゲンブレスに合体カードを入れると、巨大妖怪達が浮き上がり変形を始める。
ダイダラスが頭部、左前足、右前足、左後ろ足、右後ろ足、胴体左前部、胴体右前部、胴体左後部、胴体右後部の9つのパーツに分離する。
カラステングの両腕がスライドして背中に回り、両足は折り畳まれる。
メガガッパーの両腕が引っ込み、甲羅が上にスライドして体の下半分が2本の足の形状になったところでカラステングの体の下に合体する。
ゲキリンダーの両前足と尾が分離し、後ろ足と首が背中側へ折り畳まれ、体全体が垂直に起き上がり、メガガッパーが形成している左足の下に合体、その下にダイダラスの右後部パーツが合体して「左足」となる。
キュービルンの体が前部と後部で半分に分離し、前部はダイダラスの左後部パーツの前面に合体、後部は背面に合体。
アミキリの尻尾が外れ、体全体が垂直の姿勢になり、体の前方4分の1程の部分が前に倒れ、180°回転し、外れていた尻尾が背面上部に付いて、メガガッパーが形成している左足の下に合体、その下にダイダラスの右後部パーツが合体して「右足」となる。
ユキオンナの体が前部と後部で半分に分離、前部はダイダラスの右後部パーツの前面に合体、後部は背面に合体。
ダイダラスの右前足と右後ろ足が合体した物がカラステングの右肩部分に合体、先端部のジョイントに剣の付いた腕に変形したカマイタチが合体、上腕部にイッタンモメンが合体。
ダイダラスの左前足と左後ろ足が合体した物がカラステングの左肩部分に合体、先端部のジョイントに大型の拳が付いた腕に変形したユキオトコが合体、上腕部にヌリカベが合体。
ブルクダンの四肢と尻尾が折り畳まれながら体全体が直立、カラステングと背中合わせになる形で合体。
ダイダラスの左後部パーツがブルクダンの左のジョイント部分に、右のジョイント部分に右後部パーツが合体。
銃が付いた腕に変形したカシャを外側、爪が付いた腕の形に変形したネコマタンを内側にしてダイダラスの右後部パーツの上に合体。
ガトリング砲の付いた腕に変形したオボログルマを外側、槍の付いた腕に変形したライジュウを内側にしてダイダラスの左後部パーツの上に合体。
ダイダラスの頭部の後ろから1つパーツが分離し、頭部はカラステングの胸部分に合体。
カラステングの口が大きく開いて中から人型の顔が現れ、ダイダラスの頭部から分離したパーツを兜のように被り、兜の左右にゲキリンダーの両前足、中央上部にゲキリンダーの尾が合体。
カラステングのコクピットに6つ目の座席が現れ、レッド以外の5人も転送されてきて全員が揃う。
「完成、究極合体巨人ゴッドムゲンオー!!!!!!」
6人が声を揃えて叫ぶと、ゴッドムゲンオーは全身に纏う輝きと共に右腕の剣を天に掲げてポーズを決める。
「うよっしゃあ! いくぜ宇宙!!」
「待って!」
ピンクが立ち上がる。
「宇宙に行くロケットってなんか、下のほうから切り離されて、一番上の小さいのだけ飛んでかない?」
「あー、そういえば…」
〔すると、まず足になっている俺達が切り離されるということか!?〕
〔コン……?〕
〔ピポポパポパピ?〕
〔どうなんでしょう智和君?〕
「そうだな……ロケットが下のほうから切り離されていくのは、地球の重力から脱出できる速度で一気に飛んだら中にいる人達が潰されるからで……」
コクピット内がざわつき始める。
「いや、それは普通の人間が普通のロケットで宇宙に行く時の話だから、妖怪の力で変身して16体の妖怪が合体した巨人に乗って行く俺達は大丈夫だ」
「ほんとに?」
「ゴッドムゲンオーの妖力で守られる。そこも計算済みだから安心してくれ」
「よかったー!」
ピンクが席に着く。
「んじゃあ改めて、行くぜ宇宙!!」
光り輝く妖力に包まれたゴッドムゲンオーが轟音と共に離陸。
青空を越え、真っ白な雲を越え、安全とはいえコクピット内のヨーカイジャーはジェットコースター並みのGを感じながら大気圏を抜け、モニターには都会の夜空の何十倍も大きく見える星々の世界が広がった。
「綺麗…」
「結月のほうが綺麗だよ」
「もう! 千影ちゃん一番言ってほしいこと言ってくれる!」
「ここが宇宙…。確かに誰も潰されずに来られたようでござるな」
「宇宙キター!!」
シルバーが両腕を上げて叫ぶ。
「敵もキター!!」
レッドが両腕を上げて叫ぶ。
モニターには例の翼と手足が生えた巨大ウナギが宇宙空間を泳ぐような動きで近付いてくる様が映る。
間近で見ると、ゴッドムゲンオーと同等の巨体であることがわかる。
「来たな、ヨーカイジャー!!」
「お前が宇宙から撃ってきやがった奴だな!!」
「そう、俺の名はアスタロト! そしてこれは俺が育てた巨大合成生物バハムート!!」
「バギャアアアアアアアア!!!!」
「巨大合成生物? あなた、悪魔に無理矢理酷いことさせられてるの?」
「バギャアアアアアアアア!!!!!!」
バハムートは無重力空間で軽快な3回宙返りを見せる。
「そんな様子じゃねえな」
「あのウナギ、ノリノリでござる」
「そうだノリノリで人間どもを恐怖のどん底に陥れてやるんだ! そうだろバハムート?」
「バギャギャギャギャアアアアア!!!!!!」
バハムートは無重力空間でトリプルアクセルのような動きを見せる。
そんな中、グリーンは一つのことが頭に引っ掛かって首を傾げていた。
「宇宙空間には空気が無いから音が伝わらないはず。なぜ会話できるんだ?」
「ハァ~ア、人間は視野が狭くて困る」
頭の中でしゃべるアスタロトの声に合わせて、バハムートが「やれやれ」と言いたげなジェスチャーをする。
「お前ら、宇宙は初めてか?」
「ああ…」
「この広い宇宙において、お前の常識だけがどこでも通用すると思うなよ?」
「そりゃまあ、言う通りかもしれないが…」
「俺や俺が育てたバハムートは、お前ら下等生物と違って空気が無くても声を聞かせることができる」
「バギャギャギャギャアアアアア!!!!!!」
「お前もその、ゴッドムゲンオーだったか? そいつのお陰で俺達と話せてるんじゃないのか?」
「そうなのかカラステング?」
〔言われてみれば、なんかちょっとだけ妖力使ってるなーって思ってたけど、それだったのか〕
〔ウーム、この程度の妖力なら、使っても戦闘に支障は出んじゃろう〕
「そっか。じゃあ謎が解けたところで、いくぜ!!」
レッドが操縦桿を引くと、ゴッドムゲンオーは右手の剣を構えて進行を開始。
そこへバハムートが赤い光弾を発射。
ゴッドムゲンオーは素早くかわしたが、かわされた光弾が地球に向かって飛んでいった。
「しまった!」
〔さすがにこれは、時を戻そう〕
左足のゲキリンダーが光を放ち、光弾とバハムートの時間を戻す。
ヨーカイジャー達の目にはバハムートの口に戻っていったように見えた光弾が再び放たれる。
ゴッドムゲンオー上部で砲台になっている妖怪達の飛び道具を一斉発射。
光弾は相殺され消滅した。
「ゲキリンダー、それ疲れるんだろ?」
〔平気ではないが、これまでと比べて疲労感が少ない。16体合体のお陰だろう〕
バハムートが光弾を連射。
連射可能なことに驚きながらも、ゴッドムゲンオーは左腕のヌリカベの盾を中心にバリアを張りながらバハムートに接近。
光弾はバリアに阻まれゴッドムゲンオーに届かない。
至近距離まで近付いたゴッドムゲンオーは右手の剣を振るう。
バハムートは剣に噛み付いて受け止め、そのまま長い体をゴッドムゲンオーに巻き付け締め付ける。
「どうだ! バハムートは接近戦もこなせるんだ!」
頑強な体でも締め付けを長く受けていればダメージは蓄積する。
「どうする!?」
「回ろう!」
「うむ、日本には『回れば何とかなる』ということわざがある!」
レッドグリーンブルーの話し合いにより、ゴッドムゲンオーは高速回転。
バハムートはその勢いに振り飛ばされ、数百メートル飛ばされたところで体にブレーキを掛ける。
しばらく目が回っていたが気合いで治し、飛ばされた軌道を戻るとゴッドムゲンオーも目を回してふらついていた。
「バギャアアアアア!?」
「おいちゃんとしろ!!」
〔いやすまんすまん〕
ゴッドムゲンオーも目が回るのを気合いで治し、バハムートもズッこけていた体勢を立て直す。
再び剣を構えてバハムートに接近するゴッドムゲンオー。
バハムートは全身から粘液を染み出させる。
締め付け攻撃の時には無かった粘液。
普通のウナギと違い、必要な時にだけ粘液を出すことができるようだ。
染み出した粘液は無重力空間で球状となり、バハムートはそれを尻尾で叩いてゴッドムゲンオーに飛ばす。
ゴッドムゲンオーは左腕の盾とバリアで防ごうとするが、粘液はバリアごとゴッドムゲンオーを飲み込み、16体合体の巨体を半透明の巨体の中に閉じ込めた。
〔ヘッ、こんなモン余裕で……あれ?〕
ぬるぬると掴み所のない粘液に包まれ、ゴッドムゲンオーは上手く身動きが取れない。
「一生そうしてろ! さあバハムート、爆撃作業再開だ!」
「バギャアアアアアアアア!!!!」
パワーでは脱出できない粘液球に、コクピット内のヨーカイジャー達にも動揺が走る。
「どうする!?」
「またゲキリンダーに時を戻してもらえば?」
〔時を戻しても、また同じ攻撃をされれば同じことの繰り返しだ。対策を考えるべきだろう〕
「智和どうしよう?」
「うーん……そうだ! ゴッドムゲンオー、カシャに妖力を集めるんだ!」
〔そうか! よーし……〕
背部に並ぶ砲台の一つと化しているカシャに妖力が集まり、赤い光と共に高熱を発し始める。
〔バウバウバウ……バウウウウウッ!!!〕
高熱が粘液を蒸発させ、ゴッドムゲンオーは体表にべたつきが残ったものの自由を取り戻し進行を再開。
バハムートは再び粘液球を飛ばすがグリーンの脳内には既に対処法が完成していた。
「冷気を込めての左フック!」
〔ウホウホホー!!〕
ユキオトコが変形している右拳が冷気を纏いながら粘液球を殴りつけ、氷の塊となった粘液球がバハムートに打ち返される。
「バッギャアアアアアアアアアアア!?」
打ち返された氷の塊をボディに受けたバハムートは無重力空間を数百メートル吹っ飛び、頭の中のアスタロトにもその衝撃が伝わり全身を揺さぶり回される。
「うわあああああああ!!!」
「今だ!」
レッドがムゲンブレスに必殺カードを入れると、ゴッドムゲンオーの全身を16色の妖力が駆け巡り、凄まじい力と輝きが暗黒の宇宙を眩しく照らす。
「必殺大妖技・夢幻魔終光!!!!!!」
6人で声を揃えて叫ぶと、ゴッドムゲンオーの全身から16色が混ざりあった光線が轟音と共に放たれ、真空のはずの宇宙空間を震わせ、吹っ飛ぶバハムートに追い付くどころかその巨体全てを飲み込んでも尚止まらず無限に進み続ける勢いで直撃。
「バギャギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「∞」の形の閃光と共に爆散。
投げ出されたアスタロトは地球の重力に捕らえられ、大気との摩擦に体を焦がされながら落下していく。
絶命し消し炭のようになりながら落下するアスタロトの体に、いつも以上に大音響の羽音を立てながらベルゼブルが高速接近。
アスタロトの落下に合わせて高度を下げながらマイクを生成し呪文を唱える。
「デビル デビレバ デビルトキ カモンデーモン デビデビレ 最後のバイブス、ageてこうZE!」
ベルゼブルの目から放たれたビームにより、アスタロトは巨大な姿となり再生され、背中のロケットに点火し再び大気圏を飛び出し宇宙空間に舞い戻る。
「イエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!!!!」
「中身だけ巨大化してきた!!」
「バハムートは悪魔ではないからベルゼブル様の巨大化魔法でも巨大再生できない。手塩にかけて育て上げたバハムートをよくも…」
「そっかぁ。どうせやっつけるなら鰻丼にでもしてやればよかった」
「はァ!? 何なんだお前ら!」
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「誰もオイラを止められねえ! 当たるも八卦の大予言! 爆走疾風ギンギラギン! 閃光の覇者、ヨーカイシルバー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
「いや、そういうの聞きたかったわけじゃ…」
「いくぞ!」
「オウ!!!!!」
ゴッドムゲンオーが巨大アスタロトに向かって進行を開始。
剣の間合いに入る直前に巨大アスタロトは背中のロケット噴射でゴッドムゲンオーの頭上へ逃れ、右腕の銃を連射。
ゴッドムゲンオーにとって1発1発は対したダメージにならないものの、バハムートの締め付けと同じく食らい続ければ危ない。
頭上に向けて砲台となっている妖怪達の飛び道具を一斉発射するが、巨大アスタロトは縦横斜めに飛び回りそれをかわす。
グリーンは巨大なはずのアスタロトの虫のような動きを見て腕組みをする。
「無重力空間では大きさが不利に働くか…」
「地上では巨大化した悪魔を圧倒できたが、ここでは小回りが利くほうが有利でござるか…」
「誰か1体分離して飛べねえの?」
〔ウーム、体の作りからして、アミキリなら宇宙を飛べそうじゃが…〕
〔ピポパポパパピピピ?〕
「アミキリが離れたら、くっついてるユキオンナちゃんどうするの? 月でお餅つくの?」
〔えーっと、お餅は好きですけど…〕
イエローがピンクの真似をして手を「ポン!」と叩く。
「コクピットに乗っちゃえば?」
〔あ、やってみます~〕
ゴッドムゲンオーは頭上で銃を連射する巨大アスタロトに向かって右足を振り抜く。
勢いに乗って分離したアミキリとユキオンナが飛びながら合体前の形態に戻り、同時にアミキリがユキオンナに向けて目からビーム。
ユキオンナはコクピットに転送されながらウサギの耳が生えた少女の姿に戻って席に着く。
「できました!」
〔ピポパポピピパ!!〕
ユキオンナを乗せたアミキリは振り抜かれた勢いのまま、付属肢のマシンガンを連射しながら巨大アスタロトに突進。
「何ッ!?」
アミキリは体当たりと同時に両手のハサミで巨大アスタロトの頭を掴む。
「やめろやめろ!」
「やめません!」
〔ピパポピパピポ!!〕
巨大アスタロトは混乱とマシンガンのダメージにもがきながらも、左手のニワトリの嘴による突きで応戦。
アミキリの体表で火花が散るが、アミキリは怯まずハサミに力を込め続ける。
そこへ真下から右手の剣を突き出したゴッドムゲンオーが接近。
「いっけええええええええ!!!!!!」
アミキリはエビが後ろ向きに跳ねるような動きで後退。
ハサミが離れ広い視野を取り戻した巨大アスタロトの目にゴッドムゲンオーが映った時にはもう、突き出された剣で腹部を貫かれていた。
「ぐっふぁああああっ!?」
ユキオンナは目からビームでコクピット外へ出されると同時に巨大な妖獣形態に変身。
改めて変形合体しアミキリと共にゴッドムゲンオーの右足に戻る。
「おかえり!」
〔ただいま!〕
〔ピパパポ!〕
巨大アスタロトは腹部を貫かれたまま、左手のニワトリでゴッドムゲンオーの右腕をつつき続ける
「まだ…終わらねぇ……」
〔ビビーッ!!〕
〔ブォォォォォォォン!!〕
「こっからどうする? また夢幻魔終光?」
〔そこまで妖力残ってねえ…〕
〔あれは1発撃つだけでかなり消耗するからのぅ〕
〔その上俺の時間戻しもやったから、今できるのは普通の攻撃を連発するくらいか…〕
「じゃ、普通の攻撃を連発!!」
右腕を振り上げて巨大アスタロトを真上に飛ばし、砲台となっている妖怪達の飛び道具を一斉発射。
巨大アスタロトをカシャの火球が燃やし、ネコマタンの光線が貫き、ライジュウの電撃が痺れさせ、オボログルマの弾丸が蜂の巣にする。
「俺は七つの大益を愛し! 七つの大益に愛された悪魔! イエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!」
爆散。
「うよっしゃあああああああああああ!!!!!」
太陽の光を浴びるゴッドムゲンオーの輝きが宇宙空間をバックに映える。
大気圏内のベルゼブルは遥か上空に見えた一瞬の光と爆発音に勝敗の行方を知らされ、光が消えた空に「チェケラ!」の手を向けどこかへ飛び去っていった。
戦いが終わり、ゴッドムゲンオーとヨーカイジャーは青く輝く地球を改めてその目に焼き付ける。
「美しいのお。青というのがとても良い!」
「惑星規模の自画自賛にも聞こえるが、確かに綺麗だな」
「千影ちゃんのほうが綺麗だよ!」
「絶対言ってくれると思った!」
イエローがピンクの顔を胸いっぱいに抱きしめる。
「オイラ達、ここで生まれたんだよな!」
「おう! 妖怪も人間も、みんなみんなここで生まれた。守んなきゃな!」
ゴッドムゲンオーが両腕を上げ、ヨーカイジャーと妖怪達が声を揃えて叫ぶ。
「宇宙キターーーーーー!!!!!!」
翌日。
結月が学校に行くと見知らぬ男子生徒5人が校門の前で背筋を真っ直ぐに伸ばした姿勢で立っていた。
「姐さん、おはようございます!!!!!!」
男子生徒達が完璧に揃った角度とタイミングでお辞儀する。
「何!? 誰!?」
見覚えが無いと思った男子生徒達。
近くで見ると似たような顔を見た記憶が無くはない。
「あ! D組の不良5人衆! 黒髪だからわかんなかった!」
「はい! 俺達、昨日姐さんに言われて染め直しました!」
よく見ると5人衆の顔や腕など数ヶ所に絆創膏が貼ってある。
「これからは心を入れ替えて真面目に生きていきます!」
「はぁ、そう。がんばれ~ (ヒルコちゃん何したの……?)」
結月がお辞儀する5人衆の間を抜けて校舎に向かおうとすると、十数人の女子生徒が怒涛の如き勢いで走り寄ってきた。
「二ノ宮先輩! 是非とも我がテニス部にご指導お願いします!」
「ゑ……?」
「本当は入部して頂きたいのですが、3年生の二ノ宮先輩にそれは無理が過ぎると思い……だからせめて! ご指導頂きたいんです!」
「バレーボール部もお願いします!」
「水泳部も!」
「合唱部も!」
「書道部も!」
「茶道部も!」
「人力発電部も!」
(ヒルコちゃん何したの………? ってか初めて聞く部活があったんだけど……)
その時、十数人の男子生徒達が怒涛の如き勢いで走り寄ってきた。
「二ノ宮さん、付き合ってください!!」
「え、無理…」
「あああああああああああああああ!!!!!!」
男子生徒達が一斉に倒れる。
(ヒルコちゃん何したの…………?)
その日、体育館で臨時の全校集会が行われ、結月はそこで校長から表彰状を渡された。
(ヒルコちゃん何したのおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?)
【to be continue…】
本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!
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今回登場した悪魔の情報は後程公開!
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