episode:30 令和の子連れ侍
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
https://ncode.syosetu.com/n7284ka/1/
9月下旬、妖怪の里・試し斬りの竹林。
座禅を組み瞑想するヨーカイジャー6人。
若干勘違いして西洋風RPGの女僧侶の衣装を着たニンギョが棒を持って後ろを歩く。
それらを見守る巨大妖怪達。
風に乗ってきた笹が鼻を掠めたのに反応し、結月が僅かに体を揺らしたのを見逃さず、ニンギョが奇声を発しながら棒で肩を叩く。
「かああああああああああつ!」
「びゃあ!」
武士以外の4人が「びゃあ!」に噴き出してしまい叩かれる。
「かつかつかつかつ丼!」
「お、俺だけ丼にしてくれてありがとう」
「もう一回遊べる丼!」
結月は崩れた姿勢を直そうとするが、武士に教えられた座禅の正式な足の組み方を再現しようとしても上手くできない。
「武士くん、これやっぱり難しいよ~!」
「うーむ、やはり慣れるまでは難しいか。拙者も初めから上手くはできなかった」
拓実もいつの間にか崩れていた足を戻そうとするが攣りかけてやめる。
「座禅に慣れるより別の方法で心を一つにするほうが早いんじゃね?」
グダグダになってきても智和と千影は座禅を崩していない。
「そうだな、今日はもうこの辺にしとくか」
「だね。これ武士は毎日やってるの?」
「時間が無い時以外はほぼ毎日やっておる。カマイタチもそうでござろう?」
〔ビビーッ!〕
カマイタチは空中で座禅の姿勢をやってみせる。
ゲキリンダーも後ろ足を組もうとしてみるが曲げたい方向に曲がらない。
〔俺は足の構造上できない。足が無いヌリカベはもっとできないだろう〕
ヌリカベは触角をそれっぽい形に組んでみようとする。
「オイラも巨大変化の術を練習してた頃は、集中力高めようとしてやってたんだ。でも全然巨大変化できないからやめちゃった」
「どんな妖術にも向き不向きはある。しかも巨大変化の術は超高等妖術だ。ユキオンナが出来てることにいまだに驚いてる」
「だよねー。ユキオンナちゃんかわいい上におっきくなれるのすごい。そんでおっきくなってもかわいいし!」
ユキオンナ妖獣形態はウサギに似た4本足をばたつかせる。
〔そんなそんなそんな! 結月さんのほうがかわいいです! それに私が巨大変化の術を使えるのは、ヒルコ様の教え方が良かったからで…〕
「じゃあオイラも、ヒルコ様に教わればおっきくなれる……?」
〔やめとけ、どんな条件を付けられるかわかったもんじゃない。放送禁止レベルのコスプレをさせられるかもしれん〕
〔長老、ヒルコ様を何だと思ってます?〕
「そうそう!そういえば!」
結月が勢いよく立ち上がる。
「おじーちゃんとヒルコちゃん、どんな関係なのか聞いてなかった!!」
〔今日の特訓は、これでお開きとする!〕
「あーごまかしたー!」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:30 「令和の子連れ侍」
夕方、妖怪の里に住んでいる智和と勝以外のメンバーは、それぞれパートナー妖怪のコクピットに乗って帰路に就く。
武士の自宅近くの公営マンションの裏にある公道。
武士はいつもそこへ目からビームによりコクピットから降ろしてもらうのだが、公営マンションが見えた辺りでステルスモードのカマイタチが何かの気配を感じ取った。
〔ビビッ!?〕
「どうしたカマイタチ?」
〔ビ……〕
カマイタチはマンション裏の公道上空に慎重に近付き、気配や匂いを確認した上でまた慎重に目からビームを出して武士を降ろす。
「お主、そんなビームの出し方もできたのか」
〔ビビッ!〕
「ん?」
カマイタチがマンションの傍の植え込みを鎌で指す。
人間で言う指を指すのと同じ行動。
鎌が示す方を見ると、植え込みの中から2本の鳥の足のような物が突き出ている。
「これは…」
武士がそれらを掴んで引っ張ると、植え込みからカモメの雛を中型犬ほどの大きさにした生物が出てきた。
「ピー!」
「ほう、ピー! とな?」
「ピー!」
「ほれ、ピー!」
そっと地面に立たせてやると、その生物は武士の周りを嬉しそうに跳ね回る。
「ピーピピピー!」
「いやあ、我々が通りかかって良かったのう。ところでお主は何者でござるか? ダチョウの雛か何かであろうか?」
〔ビビビーッ!〕
「ん……? もしやこやつ、妖怪か!?」
「ピピピー!!」
ふわふわの羽毛を押し当ててくるその生物を抱き上げ、武士は再びカマイタチのコクピットに乗り妖怪の里に戻る。
妖怪の里・ヨーカイジャー秘密基地中央指令室。
武士は腕の中で翼を上下させる生物を智和に見せる。
「こいつはウブメの雛だな」
「やはり妖怪でござるか」
「ああ。大人は人間サイズのカモメみたいな妖怪なんだが……妙だな、ウブメの母親は子供が飛べるようになるまで常に傍にいるはず。はぐれたんだろうか」
「ピピピピピー!」
「こやつは何と?」
「残念だが、アミキリと同じく赤ちゃん妖怪の言葉はわからない」
「そうか。アミキリよりは赤子らしい大きさだったのは不幸中の幸いでござったな」
「デカいと目立つし、赤ちゃんだとステルスモードは使えないしな」
「こやつに話を聞くことができないなら、我々で母親を探してやるしかあるまい」
「ピピー!」
「ところが大人のウバメはステルスモードが他の妖怪よりも上手い。ステルスモードになられると、俺達ヨーカイジャーや妖怪でも姿を見ることができないし、気配を感じ取ることも難しい」
「ピピッピピー!!」
ウブメの雛は武士にふわふわの頭を擦り付ける。
「ところでなんでそんなに懐かれてる?」
「赤ん坊なりに、助けられた恩義を感じておるのでござろう」
「ピーピピー!」
「ウブメの雛が母親以外にそんなに懐いてるのは興味深い事例だが……そうだ、そいつなら母親の気配を感じ取れるし、ステルスモードでも見えるはず。同族な上に、親子だから波長が合うはずだ」
「ならば一緒に母親を探すか?」
「ピピッピピー!」
ウブメの雛は激しく翼をばたつかせる。
「じゃ、そいつはひとまずここで預かる。明日から捜索を開始しよう」
「うむ。必ず母親を見つけてやるからのう」
「ピピー!」
武士がテーブルに座っているウブメの雛の頭を撫でて退室しようとすると、ウブメの雛はテーブルを飛び降りヨチヨチ歩きで武士に着いていく。
「ん?」
ウブメの雛をテーブルに戻し、また退室しようとしても同じように着いていく。
「お主、拙者といたいのか?」
「ピー!」
智和がふわふわの体を持ち上げようとしても、ウバメの雛は体を捩って抜け出し武士に駆け寄る。
「マジか」
「仕方がない、母親が見つかるまで拙者が面倒を見よう」
「まあ…この様子ならそうするしかないか…」
「ピピピー!!!」
「しかし、妖怪の赤ん坊を預かるには、拙者はまだまだ妖怪のことを知らなすぎる。智和、教えてくれぬか?」
「そうだな……今から約38億年前、生き物がいなかった地球に2つの細胞が生まれた」
「そこまで根本的な話を聞こうとしたわけではござらぬが、面白そうなので聞かせてくれ」
今から約38億年前、生き物がいなかった地球に2つの細胞が生まれた。
1つは短い寿命とそれなりの力で沢山殖える生き物に、もう1つは長い寿命と強い力で控えめに殖える生き物に進化していった。
どちらの生き物も世界中に広まったが、短い寿命で沢山殖える生き物のほうが数の上では多くなった。
長い寿命で控えめに殖える生き物は、強い力を持つ自分達と沢山殖える生き物達が争えばどちらも滅びてしまうと考え、沢山殖える生き物達となるべく出会うことがないように生きていくことにした。
やがて、沢山殖える生き物達の中から「ヒト」または「人間」と呼ばれる生き物が生まれた。
人間は手先が器用で頭も良く、言葉や色々な道具を作り出し、文明を築き上げていった。
長い寿命の生き物達は人間が作った物を面白がり、言葉や道具、建物といった役に立ちそうな物は自分達の生活に取り入れていった。
人間に見つからないように生きていた寿命の長い生き物達だったが、たまの偶然により見つかってしまうこともあった。
人間は自分達の周りにいるようないないような、どちらかわからない不思議な者達のことを「妖怪」と呼ぶようになった。
寿命の長い生き物達はその呼び方を気に入り、自分達のことを「妖怪」と呼ぶことにした。
文明を発展させ、自然を作り替える力を手に入れた人間達は、下手をすれば地球を滅ぼしてしまいかねない存在になっていった。
妖怪達の中には人間を危険視する者もいたが、人間達の他者を想う心を信じる妖怪、人間の文明から恩恵を受けてきたことに恩義を感じる妖怪、人間という生き物をただ魅力的に思う妖怪等が、人間達がその力の使い方を誤り地球や人間達自身を滅ぼしてしまうことがないよう監視し、外敵が来れば保護してやる活動の必要性を主張した。
こうして妖怪による人類保護活動の歴史が始まった。
「なるほど、人間も妖怪も、同じ地球に生まれた仲間なのでござったか」
「ピピッピー!」
「死んだ生き物が妖怪になったとか、長く使ってる道具が妖怪になるとか、そういうのは妖怪の存在に気付いた人間が未知の存在を自分なりに解釈しようとして考え出した説で、本当の妖怪は俺達とは別の進化を遂げた生物なんだ」
「つまり妖怪も人間も命ある生き物! 互いにリスペクトを持って接しなければならんのう」
「ピッピピピー!」
智和が妖怪の里の長であるメガガッパーに連絡して許可を取り、ウブメの雛は武士の自宅で預かることになった。
道場付きの一軒家なので「ペット禁止」等の制約は無い。
もしご近所の人に見られても、ウブメの雛はダチョウか七面鳥の雛とでも言っておけばギリギリ誤魔化せる容姿をしている。
「よーし、お主の名前は……お!」
武士が結月の真似をして手を「ポン!」と叩く。
「ウブ太郎!」
「ピピッピピッピー!」
ウブメの雛は今までで一番元気に跳び跳ねる。
「おお気に入ったか! お主は今日からウブ太郎でござる!」
「ピピー!」
「そいつ雌だけどな」
一方その頃、都内某所の人通りの多いスクランブル交差点。
青信号で一斉に歩き出す人々の中にいた帰宅途中のサラリーマンが、突然首の後ろに強い痛みを感じて立ち止まる。
本人には見えていないが、首の後ろにモミジの葉のような形の痣ができている。
人々の流れは止まらず、後ろからスカジャンを着たガタイのいい男がサラリーマンにぶつかった。
「痛って……! てめえ! 何止まってやが……」
「うわああああああああああああ!!!!!!」
サラリーマンは焦点の合わない目を血走らせながら鞄を振り回す。
「な…なんだこいつ……」
その勢いにガタイのいい男は思わず仰け反り、後ろから歩いてくる人々が次々に玉突き衝突。
「ぎゃああああああああああ!!!!!!」
他方に叫びながら両腕を振り回す中年女性。
首の後ろにはやはりモミジの葉のような痣。
赤信号に変わっても混乱は収まらず、足止めを食らう車のクラクションが鳴り響き、スクランブル交差点は混沌の渦に巻き込まれる。
そして悲鳴と怒号を上げる人々の頭上から、どす黒いデビルギーが上空のある一点に向かって立ち上ぼっていく。
武士の自宅。
武士は冷蔵庫に入っていた鯵ですり身を作り、スプーンでウブ太郎の口元に近付ける。
ウブ太郎は翼を振りながら美味しそうに飲み込む。
「旨いか?」
「ピー!」
「そうかそうか、たんと食って大きくなれ」
「ピピー!」
食事の後は一緒にお風呂。
抜けた羽根だらけになった浴室の掃除は明日に回すことにして、畳の寝室に布団を敷いて就寝。
ウブ太郎は武士の隣で気持ち良さそうに寝息を立てていたが、深夜2時…
「ピピピー!!!!!」
武士がウブ太郎の大声に目を覚まして明かりを点けると、ウブ太郎は天井に向かって震えながら声を絞り上げていた。
「ピピピピピー!!!」
「どうした? 母親が恋しいのか?」
「ピーーー!!!!」
武士はウブ太郎を抱き寄せ、ふわふわの体をそっと撫でる。
「大丈夫、明日きっと母親に会える。一緒に見つけよう。な?」
「ピ……」
ウブ太郎の震えが少しずつ小さくなる。
「よしよし、拙者がご本を読んでやろう。だから明日に備えて、ゆっくり休むのだぞ」
「ピピ……」
武士は棚から1冊取り出し、布団に寝転びページを開く。
ウブ太郎は武士の横顔をしばらく見つめた後、その隣に腰を下ろして丸くなる。
「時は永禄三年、尾張の国桶狭間にて…」
「ピ…………?」
翌日。
午前中から動ける千影と勝が公園で待機。
そこへウブ太郎をベビーカーに乗せた武士が悠々と歩いてきた。
「なんか見たことある気がする構図!!」
「本物は見たことないけど懐かしい気がしてしまうやつ!!」
「やあやあ、お主らウブ太郎の愛くるしさに存在しない記憶を刺激されておるな?」
「いや、あんたも含めたその構図全体!! ってかウブ太郎って言うの?」
「ピピー!」
ベビーカーの上で翼を広げてアピール。
「かわいいねぇ。結月が見たら大騒ぎしそう」
「武士、ベビーカー持ってたのか?」
「今朝、智和の一族の人が持ってきてくれた。ウブ太郎のサイズにジャストフィットでござる」
ウブ太郎が千影の黄色いキツネ型のポーチを見て首を傾げる。
「これ? これはポーチに化けた私のパートナーのキュービルン」
〔コンコン!〕
「探すのは気配を探りにくい妖怪って聞いてるけど、出来るだけでも探ってもらおうって」
〔コン!〕
「オイラは自分で気配探れるけど、ウブメは難しいな。でもふわふわのために頑張って見つけよう!」
「ピッピピピー!」
それぞれ別の方向へ捜索開始。
武士がベビーカーを押していると、マダムや子供が「かわいいねぇ~」と言いながら近付いてくる。
皆、七面鳥の子供だと言えば納得してくれたので妖怪とバレることはなかった。
マダムの何人かはパンやお菓子をくれた。
「得したのう」
「ピッピピピー!」
ウブ太郎はベビーカーの上で機嫌よくパンを啄んでいたが、人通りの多い駅前大通りが見えたところで嘴を止めた。
「ピ?」
「どうした?」
「ピピピピー!」
「いたのか!?」
「ピー!」
「よし!」
武士は駅前大通り向かってベビーカーを走らせる。
と、突然、通行人の一人が奇声を発しながら両手足を振り回すのが見えたので足を止める。
「何事だ!?」
「ピーピピピピー!!!!」
ウブ太郎が空に向かって叫びだした。
「いるのか? 母親が!」
「ピピピピピー!!!!」
ウブ太郎の視線の先に、突然暴れだした通行人に混乱する人々の頭から立ち上ぼった大量のデビルギーが収束し消えていくのが見える。
「あれはまさか……!」
更に視線の先を追うと、ビルの隣に立っている街路樹が一瞬揺れた。
「あそこか!」
「ピー!」
街路樹の方向へベビーカーを走らせ、ウブ太郎が嘴で指す路地裏へ入る。
何もいないように見える路地裏。
神経を張り詰めながら懐から変身カードを取り出す。
「ピ!」
ウブ太郎の声と同時に背後に迫る風を切る声を聞き振り向きながら変身と同時に腰のムゲンソードを抜き見えない攻撃を受け止める。
「ヨーカイジャー……」
見えない何かが発した声。
「ウブメの母親がヒト語を話せるとは聞いていない。それに先程のデビルギー。お主、悪魔だな!?」
「どうかな?」
受け止めていた何かがムゲンソードから離れた。
ブルーは一歩踏み込み見えない何かの位置を計算しムゲンソードを振り抜こうとする。
「ピー!!」
ウブ太郎の声に攻撃を止めたその刹那、ブルーは空中の何かに蹴り飛ばされたような感覚と共にビルの壁に叩きつけられる。
「ウブ太郎……ここにいるのか!? お主の…」
「ピ!」
「さっきからうるさいチビだね…」
ウブ太郎を乗せたベビーカーに向かい風を切る音。
「ピー!!」
ウブ太郎はベビーカーを飛び降りヨタヨタ歩きで走り出す。
「いかん!!」
武士は立ち上がりウブ太郎の方へ走る。
しかし見えない何かの加速には追い付けず、ウブ太郎に正体不明の攻撃が加えられようとしたその時、突然風を切る音が止まった。
見ると、ヨタヨタ走るウブ太郎は2体いた。
「ウブ太郎? それはお主の……弟か妹でござるか?」
「ピ?」
「ピ?」
「ピ!」
「ピ!」
「ピ!」
「ピ!」
「ピー!」
「ピー!」
2体のウブ太郎が鏡に映ったように同じ動きをしてみる。
ブルーは物陰に黄色い陰を見つけて全てを察し、風の音が止まった辺りを狙ってムゲンソードを振り抜く。
「うぎゃあああああ!!!!!!」
見えない何かがブルーが叩きつけられたのとは逆方向の壁に叩きつけられ、人間サイズのカモメのような姿を現す。
「ピー!」
1体に戻っていたウブ太郎が物陰から出てきたイエローに抱き抱えられる。
「やはり千影!」
「うん! 監視カメラに暴れてる人が映ったって情報もらったから。みんなももうすぐ来る!」
「かたじけない!」
ブルーはムゲンソードを収め、より強力なブライブレードを装備する。
ウブ太郎がイエローの腕から飛び出し、カモメのような何かの前に立つ。
「ピー!ピピッピー!」
「ウブ太郎!! 攻撃するな、ということか?」
「ピー!」
「クックックッ……坊や、こっちへおいで」
「ピ……?」
「坊や?」
「おいで、私の坊や……」
「そやつは雌だが……」
「は? いやそいつ雄っぽいじゃん!!」
「ピー!!!」
ウブ太郎はブルーの方へ走り、ブルーも走り出し、両者がすれ違うと同時にウブ太郎に翼を伸ばすカモメのような何かにブライブレードの一撃を食らわす。
「安心せい、峰打ちじゃ」
カモメのような何かは気を失って倒れ、その体の中から全く違う姿をした者が抜け出てきた。
ロバのような顔、ウサギのような体、お好み焼きのような襟巻き、潜水艦のような両手、右腰には牡蠣のような物体、左腰にはレモンのような物体が付いていて、足首から下はモミジの葉のような形の悪魔。
失いかけた意識を押し留め、ブルーに殺意の目を向ける。
「私はラマシュトゥ。これは使える体だったが、もういらん!」
ブルーがラマシュトゥに斬り掛かる。
一撃目を潜水艦のような手で防がれるが、連撃を繰り出しラマシュトゥを倒れているウブメやそれに駆け寄るウブ太郎から遠ざける。
イエローがラマシュトゥの注意がブルーに集中していることを確認し、物陰に隠れているマスコットサイズのキュービルンに呼び掛ける。
「キュービルン、あの子達コクピットに匿って!」
〔コンコン!〕
キュービルンが元の大きさに戻ると同時にステルスモードになり、目からビームを出してウブメ親子をコクピットに転送しビルの屋上へ飛び上がる。
「ウブ太郎! 安心しろ! その巨大妖怪は味方でござる!」
「ピーピー!」
ウブ太郎がモニター越しの武士に返事する。
「おのれ人間!」
ラマシュトゥは首のお好み焼きを回転ノコギリのように高速回転させる。
危険を察したブルーが距離を取ったところで口から無数のモミジ型カッターを発射。
ブライブレードによる防御では防ぎきれず、青いスーツの各部で火花が散る。
更にラマシュトゥは両手の潜水艦から魚雷を発射。
モミジ型カッターに動きを封じられたブルーは避けきれず大爆発……かと思われたが直撃寸前に割り込んだピンクのヌリカベの能力カードによるバリアによって防がれた。
「学校から直行したからこの下セーラー服!」
「かたじけない!」
続いて上空のカラステングから目からビームでレッドとグリーンが降ろされる。
「バイト先から直行したからこの下100円ショップの制服!」
「俺が紹介したバイト、順調で何より!」
イエローとシルバーも駆け付け、ヨーカイジャー6人が揃った。
そこは平日のイベントホール前。
ブルーが上手く人気のない広い場所に誘導したので思い切り戦える。
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「誰もオイラを止められねえ! 当たるも八卦の大予言! 爆走疾風ギンギラギン! 閃光の覇者、ヨーカイシルバー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
「罪も無い妖怪を利用しての悪事、許せぬ!」
「フン! 利用されるほうが悪いんだよ!」
ラマシュトゥは右腰に付いている牡蠣のような物体を取り外し、
「行きや、ジャミリアー!!」
と叫びながら放り投げる。
牡蠣のような物体は空中で弾け、中から8体のジャミリアーが姿を現した。
ジャミリアー達は剣を振りながらリズミカルに足を鳴らす。
「いくぞ!」
「オウ!」
グリーンの合図でヨーカイジャー達が走りだす。
「ニャニャニャニャニャニャニャニャニャ!!」
ピンクがジャミリアーにスキャットクロウによる連撃を浴びせ、
「ニャー!」
大振りの一撃でぶっ飛ばし爆散させる。
その隙を突いて別のジャミリアーが背後から剣を振り下ろすが、イエローの電撃を纏わせたコンコンボーの打撃により痺れながら横転する。
「千影ちゃん!」
ピンクがイエローに抱き付き、イエローが強めに抱き締め返す。
「千影ちゃん……」
「…………」
「えっと……」
「…………」
「嬉しいけど長い……」
「あ、うん…」
イエローがピンクを解放、と同時に起き上がってきたジャミリアーをスキャットクロウとコンコンボーの同時攻撃で吹っ飛ばす。
シルバーがオボロバルカンを連射。
連射を受けたジャミリアーを盾にして別のジャミリアーが突進。
「えー!? 何だそれ!?」
更に連射を浴びせると戦闘のジャミリアーが爆散。
後ろにいたジャミリアーが連射を浴び、また別のジャミリアーがそれを盾にして突進してくる。
「だから何だそれ!?」
2体目のジャミリアーがシルバーの間近で爆散すると同時に後ろにいたジャミリアーが剣を振り上げ飛び掛かる。
「何だそれー!?」
しかし横から来たレッドに殴り飛ばされ地面に転がる。
「ジャミー!!」
そこへシルバーがまたオボロバルカンの連射を浴びせて爆散。
「発想は悪くなかったけどな」
「チームプレーならオイラ達の勝ちだ!」
ラマシュトゥが再び無数のモミジカッターを連射。
ブルーはブライブレードで防ぐがやはり広範囲に発射されるカッター全てを防げずダメージが蓄積される。
ラマシュトゥの潜水艦型の両手が魚雷を構える。
「またあの攻撃が…」
「食らえ!」
その時…
「クエー!」
「ピー!」
頭上から聞こえた声に両者空を見る。
ラマシュトゥには何も見えなかったが、ブルーには空から降ってくる1枚のカードが見えた。
「これは…」
そのカードのイラストを見て、それがウブメ親子からの贈り物だということを察し、ブルーはそれをムゲンブレスに入れる。
「ゆくぞ!」
ムゲンブレスからカッターのような羽根が無数に放出され、モミジ型カッターを相殺していく。
「小癪な真似を!」
発射された魚雷もブルーに到達する前に羽根カッターが大量に接触し爆発。
ブルーが爆炎を突っ切り、至近距離からのモミジカッターを弾き飛ばしラマシュトゥにブライブレードの一撃を食らわす。
「うぎゃあああああ!!!!」
ラマシュトゥは斬撃を食らい、モミジ型カッターを宙に舞わせながら3回転して倒れる。
「やったぞー!」
「ピピー!」
ブルーが手を振ったのと逆方向の空で、ウブ太郎が母親の背中で嬉しそうに翼をばたつかせる。
グリーンによるガチコンハンマーの大振りで吹っ飛んだジャミリアーが別のジャミリアーに激突。
そこへレッドの連続パンチとシルバーのオボロバルカンでとどめを刺し、他のメンバーもブルーの戦場に駆け付ける。
ラマシュトゥが地面を殴り立ち上がり始めたところで、ピンクが必殺カードを発動する。
北海道から召喚されたコロボックルが愛らしい雄叫びと共に「yokaiger」というロゴが入った白いボールに変身し、高く掲げられたピンクの手に収まる。
その隙にピンクがムゲンブレスに必殺フィニッシュカードを入れると、北海道から召喚されたコロボックルが愛らしい雄叫びと共に「yokaiger」というロゴが入った白いボールに変身し、高く掲げられたピンクの手に収まり、他メンバー達は散り散りに走り出す。
「いくわよっ、ヨーカイジャータイフーン!!」
ピンクが妖力を注ぎ込むと、ボールは爽やかで愛らしいピンクに染まる。
「勝くん!」
投げられたボールをシルバーが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは力強く輝く銀色に染まる。
「千影!」
投げられたボールをイエローが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは妖しく魅惑的な黄色に染まる。
「武士!」
受け取ったボールに妖力を注ぎ込むと、ボールは鋭く吹き抜ける風のような青に染まる。
「智和!」
真っ直ぐに飛んできたボールをグリーンが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは知性の奥に秘められた情熱を思わせる緑に染まる。
「拓実!」
飛んできたボールをレッドが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは勇気と正義を象徴する赤に染まる。
「この私が……人間ごときに……妖怪ごときに……」
ラマシュトゥが力を振り絞り、レッドに向けてモミジ型カッターを連射。
レッドはそれを真横に転がってかわしながらボールをブルーに投げる。
ブルーが受け取ったボールに更なる妖力を込めると、ボールは再び青く染まり、側面にカマイタチの鎌を思わせる2本の刃が現れる。
「必殺妖技・武士道魂球!!」
ボールを真上に放り投げ、落下し始めたところをブライブレードによる全力の峰打ちで弾き飛ばすと、超回転しながらラマシュトゥを直撃。
回転するボールの2本の刃がボディを切り刻む。
「ん~~~~~~もみじまんじゅう!!」
爆散。
「うよっしゃあああああああああああ!!!!!!」
ボールは再びピンクの手に収まってコロボックルの姿に戻り、北海道に転送される。
「クエー!」
「ピピッピー!」
ステルスモードを解除したウブメと、その背中に乗ったウブ太郎が空から降りてきた。
「きゃああああああああ!!!! ふわふわ鳥さんかわいいいいいいいいいい!!!!!!」
ピンクの予想通りの反応。
「お主らのお陰で勝てた。だが、これまでのパターンから言えば、戦いはまだ終わってはおらぬ。離れておってくれ」
「ピ?」
「クエ?」
首を傾げながらもウブメ親子は少し離れた位置まで飛んでいく。
そして今回もやはりこれで終わるわけではなく、大きな羽音を立ててベルゼブルが飛んで来る。
ヨーカイジャーは地上から一斉銃撃するが、ベルゼブルは器用に避けながら魔力で髑髏型のマイクを生成し呪文を唱える。
「そんなの当たらねえYO! デビル デビレバ デビルトキ カモンデーモン デビデビレ 最後のバイブス、AGEてこうZE!」
ベルゼブルが目から放ったビームにより、ラマシュトゥの残骸が巨大なラマシュトゥの姿となりヨーカイジャーを見下ろす。
「ラマシュトゥ、カンゲキ!」
「今一度成敗してくれる!」
「サモン、パートナーズ!」
召喚カードを発動し、待機していたカラステングとキュービルンを合わせて8体の巨大妖怪が揃った。
「夢幻合体!」
巨大妖怪達が5体と3体で合体し、ムゲンオーとムゲンショーグン、2体の合体巨人が並び立つ。
「いくぞ!」
巨大ラマシュトゥに向かって進撃を開始。
しかし巨大ラマシュトゥの口から放たれた無数のモミジ型カッターに阻まれる。
〔これはきつい…〕
〔モォ~!〕
「だったら…ヌリカベちゃん!」
「カシャも来てくれ!」
ピンクとブルーが召喚カードを発動し、鉄壁妖怪ヌリカベと炎熱妖怪カシャが召喚される。
ヌリカベは合体巨人達の前に立ってバリアを張り、カシャは空中から巨大ラマシュトゥの脳天目掛けて火球を放つ。
「あーづづづづづづ!!! お前ら! 私にこんなことしていいのか! 人間の男は女の子を守ってあげるものだと聞いたぞ!!」
「……女の子を?」
「守る……?」
ヨーカイジャー男性メンバー達の頭の中に、バリアで仲間を守るピンクやライジュウに乗って敵を蹴散らすイエローの映像が流れる。
「なんで?」
「なんで?」
「なんで?」
「なんで?」
「ゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!?」
「えーっと私達、守ってもらうとかそういうのやってないんで」
「あたしなんてバリアで守る側なんで。ってかあなた女の子だったの?」
「そうだよわかりにくいかもしれないけど!!」
とにかくモミジ型カッターは止まった。
ムゲンショーグンが左手のガトリングを連射しながら前進、右手の鋭いチョップで2連撃を繰り出す。
巨大ラマシュトゥが火花を散らされながらふらついた隙にブルーが換装カードを発動。
ムゲンオーの右腕のカマイタチが分離し、代わりに銃の付いた腕に変形したカシャが合体する。
「完成、ムゲンオーマグナム!」
銃を斜めに掲げてポーズを決め、巨大ラマシュトゥに火球を連射。
ムゲンショーグンのガトリングとの挟み撃ち状態にますます足元が覚束なくなりながらも、左右の合体巨人に向けて両手の魚雷を構える。
「やらせねえよ!」
レッドがムゲンブレスにカシャの必殺カードを差し込むと、ムゲンオーマグナムの全身の妖力が右腕の銃に集中し、超高温の攻撃力へと変換されていく。
「必殺大妖技・炎熱魔燃弾!!!!!」
銃口に通常の5倍以上の大きさの火球が生成され、魚雷発射寸前の巨大ラマシュトゥに向かって超高速で連続発射。
「くやしいのうwwwくやしいのうwww」
爆散。
「うよっしゃああああああああ!!!!!!」
2体の合体巨人は空に腕をクロスさせて勝利の余韻を分かち合う。
カマイタチは座禅のポーズで空を通り過ぎ、ヌリカベは触角を振ってアピールする。
「ラマシュトゥ、おめぇは間違いなくいい女だったYO!」
ベルゼブルは巨大ラマシュトゥがいた空間に「チェケラ!」の指を向け、どこかへ飛び去っていった。
戦いが終わり、コクピットから降りて変身解除したヨーカイジャーと、見守る合体巨人達と巨大妖怪達。
「ピー!」
ウブ太郎がヨチヨチ走りで武士に駆け寄ってきた。
「おーウブ太郎! 助けてやるつもりが、助けられてしまったのう」
武士はウブ太郎を抱き上げ、ふわふわな顔に付いた円らな瞳を見つめる。
「これからは母上と一緒に幸せに暮らすのだぞ」
「ピ…? ピー!!」
ウブ太郎は後ろに立っている母親を振り向くが、武士に振り返り翼で抱き付き鳴き声を上げる。
「ピーピピピー!」
「ウブ太郎……拙者はお主に戦国武将の本を読んでやることはできても、飛び方を教えてやることはできぬ。妖怪として強く逞しく、そして何より楽しく生きていくために、お主には母上が必要なのだ。そして母上にも、お主が必要なのだ」
「ピ…………?」
ウブ太郎はまたウブメを振り返り、武士の細めた目を見つめた後、そっと地面に飛び降り、母親に駆け寄りその背中に飛び乗った。
「クエー!!」
「ピー!!」
ウブ太郎を乗せ、ウブメが空高く飛び上がる。
都会の空を飛び越え、どこまでも飛んでいくウブメの親子。
その背中に手を振り続ける武士。
「飛べるようになったら、また遊びに来るのだぞー!」
「ピーーーー!」
ウブ太郎の声。
そのとき武士に、妖怪語の通訳は必要無かったようだ。
「……ってか妖怪の子供になんちゅう本読んでやってんだよ?」
「ん? 拓実にも読んでやろうか?」
「あー、じゃ、眠れないときに頼むわ」
数日後。
妖怪の里・ヨーカイジャー秘密基地。
智和が中央司令室で映像資料の確認等をしていると、千影が開いた自動ドアの前で立ち止まり、長く息を吐いてから入ってきた。
「どうした?」
「究極夢幻合体ができないの、私のせいかもしれない」
【to be continue…】
本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!
https://ncode.syosetu.com/n9246jz/29
公開中のデジタルコンテンツ、その他の情報は作者Instagram「 @satoruyoukaidaisuki 」とX(旧Twitter)「@shousetuyokai」をご覧ください




