episode:27 右ストレートでぶっとばす
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
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9月第1土曜日。
2学期が始まっている結月が無理なく参加できるこの日、ダイダラスの試練が行われる。
カラステングとブルクダンがダイダラスの森に降り立ち、ヨーカイジャー6人がコクピットからビームで転送され腐葉土の積もった土を踏む。
〔今度は足元に気を付けて降りたぜ!〕
〔モォ~!〕
「お疲れお疲れー! で、ここで待ってりゃいいんだっけ?」
「ああ、そう聞いてる」
結月が近くの木に駆け寄る。
「セミの抜け殻! やっぱりまだ『夏』でいいよね? 夏休み終わったとか意味わかんないくらい暑いし」
勝が木に付いていたセミの抜け殻を摘まんで銀のジャケットに掴まらせる。
「確かにずっと8月のターンだけど、ここはちょっとマシじゃね?」
「森の木々が日差しを防いでくれる分、暑さを感じずに済むのでござろう」
気付くと勝のジャケットに付いているセミの抜け殻が6個に増えていた。
拓実が周囲の木々に付いていたセミの抜け殻を集めて掴まらせていたのだった。
「すげえ! オイラ6体合体した! 違うか、オイラも合わせて7体合体か!」
「セミの抜け殻いっぱいあるね!」
「その辺見渡したらいっぱいある。結月って虫大丈夫だっけ?」
「種類による。セミは特に好きでも嫌いでもない」
「バッタは?」
「かわいいから好き」
「さっきそっち跳ねてた」
「どこどこー?」
拓実、結月、勝は虫やセミの抜け殻を探して駆け回り、他メンバー3人と合体巨人達はそれを微笑ましく見守る。
そうして勝が20体合体になったところで、残暑の熱気まで震わせるあの咆哮が響き渡った。
〔ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!〕
「え?」
妖怪語がわかる者達が困惑する中、空からダイダラスの巨体が森の木々を傷つけない絶妙な角度で降りてきて、その巨体と先日見せたパワーからは想像し難い静かな着地音を鳴らした。
「ダイダラス! どういうことだ?」
「第1の試練合格ってよお!」
「えええええええええ!?」
妖怪語がわからない4人がのけ反り、その体勢のまま結月が千影の髪に野草の花を差す。
「千影ちゃん森の妖精さんね?」
「うん。………………………………うんって言っちゃった…」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:27「右ストレートでぶっとばす」
その後のダイダラスからの説明を智和が通訳。
「お前達はこの森で…」
「もうちょっとダイダラスが言ってるっぽく言えよ」
「あ? じゃあ勝やってくれ」
「よしよし、やるぞ!」
勝は空に向かって色々な声を出してみてそれっぽい声に調整する。
「を前達はこの森で、自然と触れ合い楽しく遊ぶことができた。自然を楽しむ心は、自然を愛する心の最初の一歩。よって、第1の試練、合格! ……ダイダラスっぽかった?」
「っぽさを目指す姿勢は伝わった」
「じゃあ、あたし達、ダイダラスにちょっとだけ認めてもらえたってこと?」
〔ガオオオオオオオオオン!!〕
「ほんとにちょっとだけだって」
「ちょっとだけかぁ」
少し萎れて見える結月のツインテールを千影の指がすり抜ける。
「でもその『ちょっと』が大きな一歩になるんだと、森の妖精さんは思います」
「そっか! ありがとう、森の女神様!」
「私、妖精さんから女神様に進化したの!?」
〔ガオオオオオオオン!〕
「次の試練の場に移動だって」
〔ガオガオガオオオオオン!!〕
〔俺達は着いてっちゃいけねえってか?〕
〔モォ~!〕
〔ガオン! ガオガオガオ!〕
〔確かに、着いてったら口出したくなるかもしれねえな〕
〔モォ~…〕
ということで、カラステングとブルクダンは森で待機。
ヨーカイジャーはセミの抜け殻と野草の花を森の土の上に返し、ダイダラスに連れられて森から少し離れた場所にある池に移動。
そこには6人分の釣り竿と、何らかの肉や穀類を丸めて作られたと思われる餌が桑の葉の上に盛られた物が用意されていた。
「こんな団子みたいなの、置いといたら鳥とかに食われるんじゃね?」
〔ガオオオオオオオオオオン!!!〕
「用意した時より減ってるって」
「食われてんじゃねえか」
そしてダイダラスは「ここで釣りをしろ」とだけ告げてどこかへ去っていった。
拓実、結月、千影は釣り未経験。
仲間達に教えられながら池に釣り糸を垂らす。
開始30分辺りで智和の竿が大きく撓る。
智和だけでは引き上げられそうにない手応え。
全員で力を合わせて引っ張ると、1mを超える大きさのブラックバスが青草の茂る地面に打ち上げられた。
「やったー!」
「でけえ!」
「これで第2の試練も合格でござるな!」
しかし、合格を告げるダイダラスの咆哮は聞こえてこない。
「釣っただけでは駄目なのか…?」
「全員釣れなきゃいけないとか?」
「えー!? 何時間掛かるんだろう…」
1m超えのブラックバスは未だ鰓呼吸のできない地面で跳ね続けている。
「ねえ、この子どうするの?」
「キャッチ・アンド・リリースってやつで池に逃がす?」
「いや…」
大物を釣り上げた智和は、ブラックバスの姿を見た時から表情を曇らせていた。
「こいつは外来種。この大きさになるまで、この池に昔から住んでいた生き物を大量に食ってきたんだろう。大陸に住んでる生き物は、小さな島国である日本に来ても、大陸にいた頃と同じ調子で食い続けて増え続ける。こいつを池に放したら、島国の環境に適応して生きてきた生き物達が、またこいつに大量に食われることになる。この池のルールで禁止されてないなら調理して食べるか、自治体が指定する施設に連れていくか」
「施設に連れていくって、そこで飼うの?」
「いや、こういうの、全部飼おうとしたらキリが無い」
「じゃあ、殺しちゃうの!?」
瞳を揺らす結月の肩に千影がそっと手を置く。
「このブラックバスもかわいそうだけど、外来種に滅ぼされちゃう日本の生き物は、もっとかわいそうだからね…」
拓実がしゃがんでブラックバスと目を合わせる。
「悪意が無い分、悪魔よりはマシな奴なんだけどな」
「本当に悪いのはこいつらじゃなく、こいつらを日本に持ち込んだ人間だ。だからこそ、俺達人間が外来種の命を奪う罪を背負ってでも、環境を元に戻さなきゃいけない」
「そうだね…うん…」
唇を噛む結月を千影が後ろから抱きしめる。
〔ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!〕
「今の…」
「第2の試練……合格!?」
どこかから飛んできたダイダラスが池の上空からヨーカイジャー達を見下ろす。
〔ガオン! ガオガオ! ガオオオオン!! ガオン!!!〕
智和が通訳。
「ブラックバスを逃がしていれば不合格にしていた。お前達は自然を守るために必要な知識と心構え、そして生き物の命を尊ぶ心を備えている。よって、第2の試練、合格!」
ヨーカイジャー達は静かに笑みを交わして合格を喜ぶ。
〔ガオオオオオン!!!〕
「こいつを?」
智和がブラックバスを持ち上げ、ダイダラスに向かって投げようとするが重すぎて途中で腕を下ろす。
「ああ……勝、頼む!」
「あいよー!」
勝がブラックバスを持ち上げ、ダイダラスに向かって投げる。
ダイダラスはブラックバスを口で受け止め、咀嚼して飲み込む。
「クマちゃん美味しそうに食べたー!」
「これなら命が無駄にならないね」
「ん? お前、食えるんだったらここのブラックバス全員食っちまえばいいんじゃね?」
〔ガオン! ガオ…… ガオガオ……ガオガオオオン!〕
「やろうとしたが、池の底に卵が残っていて、それが育ったらまた元通りになってしまった……か。やっぱり人間が何とかするしか無さそうだな。試練が終わったら村の人に話してみる」
〔ガオオオン…〕
「ありがとうって言った?」
「あれ? 結月、妖怪語わかるようになった?」
「ううん、言葉はわかんない」
「そっかー」
〔ガオオオオオン!!!〕
ダイダラスから休憩を挟んで第3の試練を開始する旨が告げられた。
ヨーカイジャー達はその場で結月が持参したニンギョ柄のレジャーシートを敷き、智和が用意した弁当を食べることにした。
妖怪女子刑務所、昼食後の運動の時間。
ジャコツババアが運動場で膝に手を突いて俯いているのに気付いたグレモリーが、肩を支えながら日陰の下のベンチまで連れていき座らせ、監視役のヌレオンナから受け取った水のペットボトルを渡す。
「すまないねえ、年取ると色んなとこにガタが来ちまって…」
「いいのよ、ほら、飲んで?」
「ああ…」
ジャコツババアはペットボトルの水を一口飲んで落ち着いた息を吐く。
「フゥ…あたしもちょっと前まではあんな風に…」
眼球の無い視線の先には、運動場でボールを追いかける若い受刑者妖怪の姿。
「ちょっとではないか」
「ねぇ、ジャコばぁって昔は、すごいテロリスト妖怪ちゃんの右腕だったんでしょ?」
「そうだねえ、あの頃は……若かったね、良くも悪くも」
「そのお話、聞きたいわ」
ジャコツババアはペットボトルの水をまた一口飲み、運動場より遠くを見る。
「妖怪みんなが、人類保護に賛成してるわけじゃないんだよ。あんな弱くてすぐ死ぬ、他の生き物を絶滅させるのが趣味の、バカで野蛮で何の価値も無い生き物、守ってやる必要ないって思ってる妖怪もいるのさ」
「あら、ワタクシと気が合いそうな妖怪ちゃんもいるのね」
「あたしもそうだよ」
「まあ! 嬉しい!」
「そう、今のあんたみたいに、気が合う妖怪と出会えて嬉しかったんだ。巨骸妖怪ガシャドクロ……強くて、頭もいい。あいつの周りに、人間を良く思わない妖怪達が集まった。それでね、あたしはこんなにすごい奴と一緒にいる。他にも仲間が沢山いる。そう思ったんだよ、あの頃はね」
「今は?」
「今も、人間はあんまり好きじゃない。でも……あの頃みたいに、人類保護やめさせよう!なんて頑張ろうって気にはならないね」
「どうして?」
また一口水を飲む。
体内を通る水が骨だけの体を冷やしていく。
「熱……みたいな物に突き動かされてたんだろうね、あの頃は。自分達がやってることは正しいんだと信じて、同じ考えの仲間以外の妖怪があたしから離れていくのにも気付かずに、ただ前だけ見て、前に進んで、で、結局、あたしらには自分を貫き続けられるだけの力は無かったんだってことを思い知らされて、今じゃこのザマだよ」
半分より少し多めに残ったペットボトルの蓋を閉める。
「そう……。もし、若返ることができたら、また昔みたいにやってみたい?」
「いや……」
自分の骨だけの手首を見つめる。
「またあんなことやってる暇があるなら、飲めるうちに牛乳でも飲んどきたいね」
「牛乳? ウフフ、話してくれてありがとう」
「ありゃ、悪魔もありがとうなんて言えるんだね」
「変かしら?」
「変だよ」
「ウフフフ…」
昼食を終えたヨーカイジャー達はダイダラスに連れられ森の入り口近くの草原に移動。
ダイダラスは地上に降り立ち、語り掛けるように咆哮する。
〔ガオン! ガオガオガオオン!〕
「お前達の自然を守る心は充分見せてもらった。次は『力』を見せてもらう」
〔ガオオオン! ガオガオガオオオオオン! ガオオオオン!〕
「お前達の力を借りなくても、自然を守ることはできる」
〔ガオン! ガオオオオオン! ガオガオン! ガオオガオオン!〕
「実際、森に侵入してきた悪魔を1体、私だけで倒した……っておい! それ妖怪の里に報告してほしかったんだが」
〔ガオオオオオン!〕
「仲間になったらそうする? 確かに絶対の義務ってわけじゃないが…」
ダイダラスの体が光を放ち始める。
〔ガオオオオン! ガオガオン! ガオガオガオガオオオオオン!!!〕
〔だから今ここで力を示せ……って!?〕
地面が激しく揺れ動いたと思うと、周囲の地面が隆起と結合を繰り返し、ヨーカイジャーとダイダラスは巨大な神殿のような建造物の中で向き合う格好になった。
「え、ダイダラスと戦えってこと?」
「さずがに巨大妖怪とじゃ…」
「無茶もヘチマも大いにござる」
〔ガオオオオオオン!!〕
「違うらしいぞ」
「よかった~!」
〔ガオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
ダイダラスの体が再び光を放つと、ダイダラスとヨーカイジャー達の間の空間に深緑色の裂け目が稲妻のようなスパークを伴って現れた。
「えー!? またこのパターン!?」
「悪魔の巨大戦艦に未来妖怪、次は何が出て来やがんだ!?」
空間の裂け目からゆっくりとした足取りで歩み出たのは、渋みのある深緑の戦闘服を身に纏い、左腰のホルダーにはヨーカイジャーのムゲンソードと似たデザインの剣を携え、右腰にはやはりヨーカイジャーの物と似たカードケース、左手首にはムゲンブレスに似たブレスレット、頭にはクマの獰猛さとダイダラボッチの創造性を彷彿とさせる深緑のフルフェイスマスクを装備した……
「誰にも譲らぬ天の道 燃える暁総てを照らし 宇宙の真理を司る 創造の魔術師・ヨーカイカオス!」
「ヨーカイカオス!?」
「何だこいつは!?」
「智和くんも知らないの!?」
「また未来から来たヨーカイジャーでござるか?」
「そんなに未来人ばっか来られたらやってらんないでしょ…」
「でも……かっこいいな!!」
〔ガオガオガオガオオオオオン!!〕
「別の宇宙に住んでいる者をランダムに選び、こちらの宇宙に召喚すると同時に変身させた!? 別の宇宙って…」
「待って待って! 宇宙って、別のもあるの? あたし達がいるこことは別に?」
「えーっと、多次元宇宙論というのがあるにはあるんだが…」
「いや待てそんなコラーゲン哺乳瓶とかより…」
「間違え方のクセ!!」
「こいつと戦えってことか?」
〔ガオオオオン!!!〕
「そうだってー」
「でもこいつ、どっかからランダムに選ばれてきて変身させられてんだろ? そんな奴が戦えるのか?」
〔ガオオオオン!!!〕
ダイダラスの体が三たび光を放つと、空中から「取扱説明書」と書かれた紙の束が降ってきてヨーカイカオスの手に収まる。
「いやそういう問題じゃなくて!!」
ヨーカイカオスはその紙束の中身を全て読み終え、ダイダラスに差し出す。
「読んだのかよ! そんで理解できたのかよ!」
「読むの早いね」
「千影ちゃんそこ気になる!?」
〔ガオオオオオオン! ガオガオガオオオオオン!〕
「殺してしまうほどのダメージを受けそうになった場合、ヨーカイカオスは自動的に元の宇宙に戻されるようにしてある。だから手加減無しで思い切り戦え、と」
「お前はそれでいいのか?」
ヨーカイカオスは食い気味で頷く。
「そうか、だったら…」
ヨーカイジャー初期メンバーはムゲンブレスに、勝はムゲンライザーに変身カードを入れる。
「妖怪変化!」
勝はムゲンライザーを腰のムゲンドライバーにセット。
6人同時変身。
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「誰もオイラを止められねえ! 当たるも八卦の大予言! 爆走疾風ギンギラギン! 閃光の覇者、ヨーカイシルバー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
「いくぞ!」
「オウ!!!!!」
グリーンの合図で一斉に走り出す。
と、ほぼ同時にヨーカイカオスはダイダラスの能力カードをブレスに入れて発動させる。
「大地創造…」
地面が隆起し高い天井近くまで達する巨大な岩の塔のようになり、ヨーカイカオスはその頂点からヨーカイジゃー達を見下ろす。
「ヤロー!!」
レッドはカラステングの、シルバーはイッタンモメンの能力カードを発動させ空中へ。
その時にはヨーカイカオスは「大地創造」により岩の遊歩道を造り塔の頂上から移動し始めていた。
レッドとシルバーが遊歩道のヨーカイカオスに角度を定めた瞬間、ヨーカイカオスは足場に手を翳して粉々の岩石に変換、その落下に紛れて自身も自由落下しながら剣を抜き銃に変形させ地上の4人に向けて連射。
地上の4人は予想外の攻撃をギリギリかわし、着地したヨーカイカオスから距離を保ったままそれぞれ武器を装備。
4人が走り出す直前、ヨーカイカオスは先程とは別の能力カードを発動。
ヨーカイカオスの背中から巨大な8本のヘビの首を思わせる形の妖力が伸び上がり、ランダムな動きで地上の4人と空中の2人に同時に襲い掛かる。
グリーンはこれをまたギリギリでかわしながら、8本のヘビの首に覚えた既視感の正体に気付く。
「まさかあれは……ヤマタノオロチ様のカード!?」
「ヤマタノオロチ?」
「妖怪評議員のメンバーだ」
〔ガオオオオオオオオン!!!! ガオガオガオオオン!!!!〕
「試練に協力してくれそうな妖怪に声を掛けてカードを作ってもらったって! オイラ達だけカードいっぱいあったら有利になりすぎるから!」
「しかしヤマタノオロチ様…」
グリーンが考えている間にヘビの妖力は消え、攻撃により立ち上っていた砂埃も止み、ヨーカイカオスの姿も見えなくなっていた。
空中の2人が下りてきて4人に合流。
「あいつどこ行った…」
6人で背中合わせに輪になって周囲を警戒する。
「どこから来る……」
「油断するな、上からとか、下からとかの可能性もある」
「どこから来ても…」
「拙者達6人で…」
「五感を研ぎ澄ませていれば…」
「絶対に…」
「うわあああああああああ!!!!!!」
グリーンの叫び声、散る火花。
ヨーカイカオスは自分と近い色のスーツを着ているグリーンの後ろにぴったり張り付き、薄暗い神殿の中でグリーンにも他のメンバーにも気付かれないよう、グリーンの動きに合わせて動いて輪の内側、グリーンの背後に潜み、今このタイミングで剣を抜きグリーンの背中を切り付けたのだった。
「おのれ!!」
ブルーが振るったブライブレードを、ヨーカイカオスはしゃがんで避けると同時に地面に手を付け、「大地創造」の効果で穴を開けて潜り、地面を進んで数十m先の地面から飛び出す。
そこへ音を頼りに先回りしていたピンクとイエローが左右から同時に専用武器での攻撃を仕掛ける。
ヨーカイカオスは左右に手を翳し、隆起させた地面の形と色を変え、ピンク側には千影、イエロー側には結月そっくりの土人形を出現させた。
それにより左右からの攻撃を一瞬躊躇わせた隙に、「大地創造」により岩の歩道橋のような物を造り出し駆け上がっていく。
「逃がすかあああ!!!」
レッドが再び空を飛び、歩道橋の上のヨーカイカオスに連続パンチを繰り出す。
ヨーカイカオスは連続パンチを全てギリギリ剣で受け止める。
レッドは諦めずにパンチを打ち続けるが、少しずつ拳の感覚が失われていくのに気付き、後ろに飛んで距離を取る。
両拳を見ると霜が付き、開こうとしても開かなくなっていた。
ヨーカイカオスの剣は、発動していた能力カードの効果で冷気を纏っていた。
それを目にしたグリーンはマスクの奥で顔を顰める。
「氷の剣……まさかオオタケマル様? また評議員か……」
レッドがブルーの近くに降りてきた。
「武士! 炎で俺の手ー溶かしてくれ!」
「待った! その状態の手を急激に熱したら細胞が死ぬ。普通はまず氷水からだが、ヨーカイレッドの姿なら、水でいけるだろう」
グリーンはメガガッパーの能力カードを発動させ、手から緩めに調整した水流を出しレッドの両拳に掛ける。
「それ初めて使うんじゃね?」
「意外と使う機会が無かったからな」
手を溶かし終え、レッドはグーチョキパーの動きができることを確認して歩道橋の上のヨーカイカオスに目を向ける。
「強ぇなあいつ、説明書読んだだけなのに」
「説明書読んだだけ……しかもさっき千影が言ったように、読むのが早すぎた」
「それにあやつ、あちらから仕掛けてくる時も、こちらが仕掛ける時も、まるで拙者達の動きを先読みしているかのように能力を使ってくる」
「ブルクダンの予言の、もっとすごいやつ?」
「未来を先読みする能力…?」
「えー、そんなの……クマちゃん! 未来がわかる能力なんてチートすぎるよぉ!」
〔ガオオオオオオオン!!!〕
「なんだと!?」
「どうした?」
「ダイダラスは、そんな能力も、そんな能力を使えるカードも与えていないと…」
「ってことはまさか、あいつが元々持ってる能力?」
イエローのコンコンボーを握る手に汗が滲む。
その横でグリーンは更に頭を捻っている。
「未来予測……本当にそうなのか?」
「違うの? だったら、私達の心を読んでるとか?」
「そういうのとも違うような…」
話しているうちにヨーカイカオスは歩道橋をバラバラの岩石に変換し、その一つに乗って自然落下しながら腕を振り、他の岩石全てをヨーカイジャーに飛ばしてきた。
ヨーカイジャー達は四方に散ってそれをかわし、直後にイエローが着地したヨーカイカオスに向かって正面から走る。
ヨーカイカオスはそのイエローに目もくれず、背後に回ろうとしていた本物のイエローを含むヨーカイジャー達に銃を連射。
ピンクがヌリカベの能力カードでバリアを張りそれを防ぐ。
イエローはキュービルンの能力カードで出した幻の自分を消す。
「私の幻が通じない…」
「やっぱり心が読めるから、千影ちゃんが幻を出すってわかっちゃったのかな?」
「あるいは未来予測で幻を見破ったか…」
「ヨーカイカオス、一体何者なんだ……」
ヨーカイカオスはヤマタノオロチの能力カードを発動。
ヨーカイジャー達が暴れまわる8本のヘビの首型の妖力をかわしながら走ってくる間に、ヨーカイカオスはダイダラスの装備カードを発動。
深緑の斧・マサカリバーを接近してきたレッドに振るう。
レッドがこれをフェザーガントレットで受け止め、ヨーカイカオスが自分の腰の剣を地面に転がす。
シルバーが地面に転がった剣に躓いている隙にヨーカイカオスはピンクのスキャットクロウをかわしながらレッドから距離を取り、斜めに振り下ろされたブルーのブライブレードをマサカリバーで受け止める。
ブルーが連撃を仕掛けるがヨーカイカオスは全てギリギリで受け止め、ブルーが深く踏み込んだ一瞬に地面に手を翳し岩石の塔を生成して転がっている剣と共に天井近くへ逃れた。
「ああああ! また逃げられた!」
「あやつ、全く戦い慣れておらぬ」
「そうなのか?」
「うむ。拓実の連続パンチを受けているのを遠目に見ていてもしやと思ったのだが、打ち合ってみてよくわかった。あやつは戦いに関して全くの素人。得物の使い方の基本的なことができておらぬ。もしも拙者があやつの師匠であれば、素振りからやり直させるだろう」
それを聞いたグリーンとイエローはまた頭を捻る。
「確かに、未来を見るか心を読むかできる奴なら、もっと余裕で俺達の攻撃を避けられそうなものだが…」
「だいたいギリギリで避けるよね? それにすぐああやって距離取ろうとするし」
「戦いに関しては素人。能力は異様なほど使いこなしてるが…」
レッドが塔の上のヨーカイカオスを見上げながら一歩前に出る。
「つまりあいつ、俺達の動きは先読みできるけど、その能力にあいつ自身の動きが着いてきてないってことか」
「スーツの性能と能力の使い方でカバーしてるみたいだけどな。だがそう考えてみると、悪魔との戦いで経験を積んだ俺達と比べて、あいつはまるで、戦い自体が初めてみたいな…」
「まあ、ランダムに選ばれた人だしね。私達みたいに、妖怪が考えてパートナー選んだわけでもないし」
「だったら、ああいう奴の倒し方は昔から決まってる」
レッドが右拳と左手の平でパンと鳴らす。
「右ストレートでぶっとばす」
「おい、待てそれ…」
「何それ?」
「千影ちゃん知らない?」
「昔のバトルアニメの台詞でござる。結月はアニメが好きだから知っておるのだな?」
「うん!」
「オイラもそれ見たことあるけど、それ心を読めるだけの敵と戦うときのやつだろ?」
「奴の先読みは未来予測の可能性もある。それにカードの能力も使ってくる」
「でも、他に方法は思いつかない。だから、右ストレートでぶっとばす!」
「仕方ない……みんなで拓実を援護するぞ!」
「オウ!!!!」
またしても発動されたヤマタノオロチの能力。
レッドとシルバーは空中へ、他の4人は地上からの銃撃で蛇の首の攻撃を阻む。
牙を剥き向かってきた蛇をシルバーがモメンカッターで薙ぎ払い、出来た隙間を抜けてレッドが塔の上のヨーカイカオスに接近。
ヨーカイカオスは学校妖怪ハナコの能力カードを発動。
ヨーカイカオスの姿は隠れ、学校のトイレの個室のような物が3つ現れた。
地上からの銃撃により右端の個室を破壊。
ヨーカイカオスはいない。
シルバーがブルブラスターによる砲撃で真ん中の個室を破壊。
ヨーカイカオスはいない。
「ってことは…」
レッドが右拳を強く握りしめて加速。
「こっちだああああああああああああ!!!!!」
左端の個室に突撃すると見せかけて旋回、地下を通って塔の裏から出てきたヨーカイカオスの顔面に急降下からの右ストレートを叩き込む。
「!!!!!!!!」
ヨーカイカオスはぶっ飛んで壁に激突。
岩石の砕ける衝撃が神殿全体を激しく揺らす。
壁にめり込んだヨーカイカオスは、両手で壁を押してふらつきながら脱出。
震える手を翳して大きな白い旗を生成してピンクを指さす。
「あたし?」
「結月……ヨーカイピンク……花も恥じらうJK3……高3……あ、降参ってことか!」
「うん」
「しゃべれるなら普通に言え!!」
ヨーカイカオスは白旗と塔を土に戻し、最初に空間の裂け目から出てきた位置に移動。
〔ガオオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
「第3の試練、合格だって!」
「うよっしゃああああああああ!!!!!!」
〔ガオオオオオオン!!!〕
ダイダラスの体が光を放ち、ヨーカイカオスの後ろに深緑色の空間の裂け目が稲妻のようなスパークを伴って現れた。
「もう帰っちゃうの?」
ヨーカイカオスはダイダラスとヨーカイジャー達の姿を瞳の奥に深く焼き付けようとするように、マスクの奥から強い視線でこの場所の景色を噛みしめる。
空間の裂け目のスパークに照らされ、グリーンの足が自然に前へ踏み出す。
「ヨーカイカオス、お前は一体…」
ヨーカイカオスは少し俯いた後、落ち着いた声で語りだす。
「お前らに約束された未来は無い。わかってない奴らが何と言おうと、お前らの未来は、自分達の手で掴み取る結果なんだ。俺から言えることはそれだけ!」
振り返り、人差し指を一本、天に掲げながら時空の裂け目に入っていく。
ヨーカイカオスの背中が見えなくなり、時空の裂け目も静かに消えた。
「奴が何者かは最後までわからなかった。もしまた会うことがあったら、その時は味方であってくれることを願う」
「俺と同じで丼もの好きそう」
「ME:Iの村上璃杏ちゃんとか好きそう」
「何を根拠に…」
「好きな戦国武将は伊達政宗でござろう」
「バイクの免許は持ってなさそう」
「オイラと同じでカードゲームとか好きそう。智和も何か言っとけば?」
「あ? ……じゃあ、時事ネタ擦りまくる小説書いてそう。もちろん根拠は無い」
ダイダラスの体が光を放ち、神殿が土に戻って消滅する。
〔ガオオオオ…〕
「次の試練は…」
「って、まだあるのかよ!!」
「あたし疲れたー! 休みたーい!」
その時、グリーンのムゲンブレスの着信音が鳴り響いた。
妖怪治安維持部隊から、都内某所の小学校に10m級の悪魔が現れたとの通信。
「でかいな、巨大化した悪魔ほどじゃないが」
「えー? もう! 休みたいのに!」
「でも行くしかないよね?」
「ダイダラス、悪ぃけど待っててくれ!」
〔ガオン…〕
ヨーカイジャー達はカラステングとブルクダンのコクピットに乗り移動、連絡のあった小学校の校庭に降りる。
巨大妖怪達はステルスモードで空中待機。
そこにいたのはベルゼブルと、ボロ布を被ったような姿の、ぎこちない動きの10mほどの怪物。
「YO! 湧いてきやがったなハエどもめ!」
「ハエはお前だ!」
怯えて走り回る子供達を安全に逃がすには妖怪治安部隊だけでは手が足りない。
ピンクとイエローも避難誘導を手伝う。
「お姉さん達何歳ー?」
「17歳だよー」
「21歳だよー」
レッド、グリーン、ブルー、シルバー、が走り出し、ベルゼブルと10mの怪物は迎え撃つ体勢。
グリーンがムゲンシューターで銃撃。
それを受けた10mの怪物が被っていたボロ布が剥がれ、中から現れたのは肩車等で積み重なった30体のジャミリアー。
「ジャミジャミ!」
「何の真似だ?」
その時、またグリーンのムゲンブレスの着信音が鳴り響く。
ダイダラスの森で火災、巨大な重機が暴れ回っているとの通信。
「やられた……。みんな、これは陽動だ! ダイダラスの森が焼かれてる!!」
「何だって!?」
「HA! 今更気付いてももう遅い! あいつの森は大火災! だけどお前ら助けに行けない! 人間のガキども捨て置けない! チェケラ!!」
「くッ…」
「でもほんとに、子供達ほっとけないよ!」
「俺があっち行く」
レッドが左手にクロノスマッシャーを装備、ジャミリアー達の攻撃をかわしながらダイヤルを回す。
「行かせねえYO!」
ベルゼブルがレッドに急接近、拳を放つがレッドは右手のフェザーガントレットで受け止める。
ベルゼブルは体を捻り、回し蹴りでレッドを吹っ飛ばす。
吹っ飛ばされたレッドをブルーが受け止め、シルバーがオボロバルカンでベルゼブルを銃撃。
「拓実! 行け!」
「ここは拙者達に任せろ!」
「オッケー、いくぜ!」
クロノスマッシャーのボタンを押す。
ここから体感3秒、レッドには全てがスローモーションに見える。
カラステングの能力カードで空を飛び、空中で待機しているカラステングの肩に乗ったところでデジタル表示の数字が「0」になる。
「カラステング! 行ってくれ!」
〔拓実!? どこだ!?〕
〔モォ~!〕
〔あ、そこか。じゃあ行くぜ!〕
カラステングは至近距離からの目からビームでレッドをコクピットに転送し、ダイダラスの森に向け飛んでいく。
銃撃を拳で弾き空中へ逃れたベルゼブルはカラステングの軌道を遠目に複眼に映す。
「まあいい。チェケラ!」
拳を構えながら地上の戦場へ降下する。
それは、ヨーカイジャーがダイダラスと出会う一週間前。
ダイダラスの森に1体の悪魔が現れた。
ゴムマスクのような真っ白い顔、黒い和風の城のような胴体、両肩が赤い金属質のリンゴ型肩パットのようで、束ねた蕎麦のような両腕、檜製に見える両足の足首より下は藁で編まれた丸い籠のように見える。
右腰には人形劇の人形のような物体、左腰にはブドウの房のような物体が付いている。
その悪魔の名はベリアル。
人間の負の感情を高める方法を調べた結果、森を破壊すれば人間を癒す自然が無くなり、作物の質にも影響を与えることができるという結論に至り、ここへやってきた。
森へ踏み込み、ここらで魔力を発動しようと思ったところで不意に現れたダイダラスに一撃を食らわされ大ダメージ。
更に森中追い回され、追い付かれてまた一撃、殴り飛ばされ崖から転落して動けなくなった。
ダイダラスが去った後、右腰の人形劇の人形のような物体を外し、
「い……いってけ、ジャミリアー……」
と言いながら弱弱しく手近な小石に打ち付けると、人形のような物体は弾け、中から15体のジャミリアーが姿を現した。
「ジャミジャ……ジャミ!?」
「ベ……ベ……ベルゼブル様に連絡……」
「ジャミーーーー!?!?!?」
そしてベリアルはベルゼブルに救助され、街に潜んで傷を癒し、復讐を果たすべく今また森を訪れ、一週間前には不意を突かれたため生成できなかった巨大重機に乗り込み森を蹂躙し始めたのだった。
炎に包まれた重機は機体前部に備えた巨大チェーンソーで木々を切り倒し炎を燃え広がらせながら走り回る。
「ハハハハハハハハハ!!! さあさあ!! 焼き尽くしてやりますよ!!!!!!!」
〔ガオオオオオン!!!〕
「来ましたね大きいの! 今度は前のようにいきませんよ!!」
巨大悪魔に匹敵する大きさの重機が、チェーンソーを回転させながらダイダラスに突進。
かわせばまた森を傷つけられるため、ダイダラスは炎に包まれた重機を体で受け止める。
〔ガオオオオオオオオン!!!!!!〕
炎の高熱がダイダラスを襲い、チェーンソーの刃が火花を飛び散らせ深緑のボディを抉る。
〔ガオオオオオオオオオオオオン!!!!!!〕
「ハーハハハハハハハ!!!! 愚かなケダモノめ、そのまま灰になってしまいなさい!!!!」
〔やめろおおおおおお!!!!!〕
空から駆け付けたカラステングが重機に真上から拳を叩き込む。
が、重機はびくともせず、逆にカラステングがダメージを受けて上空へ後退する。
〔あーぢぢぢぢぢ! なんて硬さだコレ!〕
「また大きいのが来ましたね。2匹纏めて消し炭に変えてあげましょう!!!」
重機を包んでいた炎が火力を上げ、森とダイダラスを焦がす炎は更に勢いを増す。
「ハーハハハハハ!!!」
「何がそんなにおかしいんだよ!!」
「いい質問です。我々悪魔は偉大なる悪魔帝王サタン様にお目覚め頂くために活動していますが、私の場合それだけではなくて、すごく楽しいんですよ! 弱い者達が強大な力に抗えず死んでいく様を見るのが!!!!!」
「てめえ……許さねえ!!」
「許してくれなくて結構!!! あなたもケダモノの中で蒸し焼きになりなさい!」
さらに火力が上がり、炎は竜巻のように渦を巻き空中のカラステングにも襲い掛かる。
〔うわああああああああああああああ!!!!!〕
「うわああああああああああああああ!!!!!」
ダイダラスは炎とチェーンソーに耐えながら、カラステングとコクピットのレッドに向かって叫ぶ。
〔ガオオオオオオオオオン!!!〕
〔は? 誰が逃げるかよ!〕
「森で遊んで楽しかった! 森が育てた野菜は旨かった! 何より、ここで生きてる命が、こんなアホに殺されるなんて我慢できねえ!」
「誰がアホですか! 言葉を慎みなさい!」
〔ガオ……ガオオオオオオオオオン!!!〕
その時、ダイダラスの体が光に包まれ、その光は1つに集まって上空のカラステングのコクピットに飛び込み、レッドの目の前で1枚のカードになった。
「これは…」
レッドがカードを手に取って見てみると、それはダイダラスの召喚カード。
「ダイダラスのカード!!」
〔ガオオオオン!!!〕
〔何っ、頭が痛い……!? 拓実! 今からお前を外に出すから、ダイダラスに向かって飛べ! 多分あいつの頭の中に、コクピットができてる!〕
「何だって!?」
〔ダイダラス! 目からビームだ! 拓実をお前の中に入れろ! お前なら、やろうと思えばできるはずだ!!〕
〔ガオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
〔よし…………。いけえ拓実!!〕
「オウ!!!!!!」
カラステングは上を向いて目からビーム。
レッドはカラステングの能力カードで翼を生やし、高熱に耐え炎を潜り抜けてダイダラスの真上へ。
〔ガオガオオオオオオオオン!!!!!〕
ダイダラスが目からビームを発射。
それによりレッドは転送され、ダイダラスのコクピットに着席。
「すげえ…ほんとにダイダラスに入れた!」
〔ガオオオオオオオオン!!!!〕
その時、ダイダラスの体が再び光に包まれ、コクピット内で集合して1枚のカードになった。
レッドが手に取って見てみると、それはこれまで見たことのない種類のカード。
「これは…………よし、やってやるぜ!!」
〔ガオオオオオオオオオオン!!!!〕
レッドがムゲンブレスに変形カードを入れると、ダイダラスの体が宙に浮き変形を始める。
ダイダラスの体が頭、胴体前部、胴体後部、左前足、左後ろ足、右前足、右後ろ脚の7つのパーツに分離し、胴体後部が断面を下にして直立し下4分の3の部分がスライドして二股に別れ足の形状になって「下半身」となり、胴体前部が断面を上にして「下半身」に合体して「上半身」となり、左前足と左後ろ足が合体した物が「左腕」として合体、右前足と右後ろ足が合体した物が「右腕」として合体、頭が上半身の上から合体し口が大きく開き下顎が奥へ収納されると同時に人型の「顔」が現れる。
変形を完了した巨人が大地に降り立つ。
〔すげええええええ!!!〕
「何ですかこれは!?!?」
カラステングとベリアルがそれぞれに驚愕する。
すぐにでも動き出し凶悪な火炎攻撃を終わらせたいところだが、巨人からはダイダラスのような威圧感は感じられず、レッドが操縦桿を動かしても反応が無い。
「え、これも名前要るのか?」
イエローとのダブルキックでジャミリアーを蹴り飛ばしたピンクのムゲンブレスの着信音が鳴る。
≪結月ー! ダイダラスが巨人に変形したから名前考えてくれー!≫
「え、クマちゃんが!? 待って、えーっと…………お!」
ピンクが「ポン!」と手を叩く。
「で、クマちゃん1体で変形したんだったら合体巨人じゃなくて……」
「……よし、それでいくぜ!!」
通信を切り、レッドはピンクが提案した名前を叫ぶ。
「完成、創世巨人・ムゲンタイタン!!」
巨人の目に光が宿り、巨人は両腕を広げ天地を揺るがす凄まじい咆哮を上げる。
〔ムゲンタイタン……かっこいいじゃねえか!!〕
「おのれ……タイタンだか炊いたんだか知りませんが、切り刻んで焼き尽くして差し上げます!!!」
ベリアルの重機が火力を上げチェーンソーを回転させながら前進を再開。
レッドは深呼吸して操縦桿を握り直す。
「いくぜ、ムゲンタイタン!!」
〔ガオオオオオオオオオン!!!!!〕
ムゲンタイタン前進、手を翳すと地面が少し盛り上がり、そこに乗り上げた重機がバランスを崩したところを両腕で掴み、高熱をものともせずチェーンソーが当たらない角度で持ち上げ、そのまま真上へ放り投げる。
「ななななななんてことを!!!」
ムゲンタイタンが一歩下がって手を翳すと、地面が隆起して巨大な岩の槍のようになり自由落下してくる重機に向かって伸びていく。
「負けませんよお!!!」
真下に向いたチェーンソーで岩の槍を削り飛ばし、操縦席のベリアルがハンドルを引っ張り強引に角度を変え、鋭角を失った岩を足場にしてキャタピラでジャンプ、ムゲンタイタンに飛び掛かる。
レッドが操縦桿を引き、ムゲンタイタンが大きく振りかぶって右ストレートを繰り出す。
チェーンソーを超えた破壊力のチェーンソーと頑強巨大な拳による右ストレート。
両者がぶつかり合い、チェーンソーがへし折れ拳が重機本体にめり込み、重機は宙を転がる勢いのまま地面に激突。
天板が地面に埋まりキャタピラが空を掻く。
その時、ムゲンタイタンの体が光に包まれ、コクピット内で集合して新たなカードになった。
「よしゃあ必殺技!!」
レッドがその必殺カードをムゲンブレスに入れると、ムゲンタイタンの全身を深緑の光が駆け巡り始める。
「よくも……よくもよくもよくもおおおおおおおお!!!!!」
ベリアルの重機は人間の重機では有り得ない動きで反動を付けて起き上がり、操縦するベリアルの感情を反映するかのような高火力の炎を纏いながらムゲンタイタンに突進。
「必殺大妖技・創世魔潰巌!!!!!」
地面に拳を突き立てると深緑の光が周囲に広がり、重機の下から巨大な岩の槍が連続で飛び出しダメージを与えながら空中へ打ち上げていく。
纏っていた炎は次第に勢いを失い、僅かな残り火が揺れるのみとなった重機。
その真上で周囲から浮き上がった岩石が合体し隕石の如き塊となり落下。
「ぎゃああああああああああああああ!!!!!」
直撃を受けた重機は爆散。
ベリアルは爆風に飛ばされ頭から池に落下。
両足が独特な角度で水面から出た状態で数秒間思考停止した後、脱出して宙に浮き、ムゲンタイタンとカラステングを遠目に見やり、
「次こそは必ず! か な ら ず!」
と、大きめに呟いてどこかへと飛び去った。
空中で腕組みをするカラステングの視界からベリアルが消えていく。
〔追うか?〕
「いや、それよりも…」
ベリアルの脅威は取り合えず去った。
だが木々を燃やす炎は消えず、既に森の一部は命の色を失っていた。
「これは……」
〔ひでえな〕
〔ガオオオオオオオオオオン!!!!!〕
ムゲンタイタンが咆哮と共に光を放つ。
すると炎は消え、灰の積もった地面から植物の芽が生え瞬く間に成長し、森は緑の木々を取り戻した。
「すげえな。隕石みたいなのもすごかったけど、これはもっとすげえな!!」
〔ガオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!〕
〔最後の試練合格! ……だってよ〕
最後のジャミリアーをガチコンハンマーで爆散させたグリーンのムゲンブレスにレッドからの通信。
「ベルゼブル! あっちにいた悪魔は逃げたらしいぞ!」
「そうか…………ブラザー、今は生き延びろ。そしてリベンジに備えろ。ここで言っても聞こえるわきゃねえけど」
そう言ってベルゼブルはどこかへと飛び去り、連戦を終えたヨーカイジャー達は校庭の思い思いの場所に座り込む。
夕焼けが緑に重なる時間、変身解除したヨーカイジャーとカラステング、ブルクダンは改めてダイダラスの森を訪れる。
「見たかったなぁ、クマちゃんの変形!」
〔すっげえ個性的な変形だったぜ。いっぺんバラバラになってさ〕
「へぇ~、面白そう!」
〔ガオン!〕
「炎の重機を操る悪魔か。そいつのことは気になるが、今はひとまず、頼もしい仲間ができたことを喜ぼう」
〔ガオオオオオオオン!!!!〕
「ああ、妖怪の里に住まなくても、必要な時に来てくれればそれでいい。この森の守りも続けてくれ」
〔ガオガオオオオオン!!!!〕
拓実は空に手を伸ばし、夕日の赤を掌で受け止めてみる。
「でも確かに、この光で電気が作れたらいいなとは思う」
「太陽光発電全部が悪いわけじゃないからな。自然を壊してまでやることじゃないって話で」
「本当に自然に優しいエネルギーを見つけて使っていくのが、私達人類が掴み取る未来。……ヨーカイカオスみたいなこと言っちゃった」
「ヨーカイカオスかぁ。あいつもどっかで牛丼とか食いながら夕焼け見てんのかな~」
「なんで牛丼? かりんとうでしょ」
「木綿ごし豆腐でござろう」
「ツナマヨおにぎりじゃない?」
「照り焼きハンバーガーじゃね?」
「だから何を根拠に…………チキン南蛮だろ」
〔ガオオオオオオオオオオオオン!!!〕
【to be continue…】
本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!
https://ncode.syosetu.com/n9246jz/27
デジタルイラスト集公開中!
その他の情報は作者Instagram「 @satoruyoukaidaisuki 」とX(旧Twitter)「@shousetuyokai」をご覧ください




