episode:26 巨神妖怪ダイダラス
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。
現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
都内某所、深夜2時。
丑三つ時にも消えることはない街の明かりと、まばらに歩く人の影。
昼間よりは静かなオフィス街に突如、文明の塊が崩れ落ちる破壊音が響く。
コンビニの客が飛び出し、タクシー運転手は急ブレーキを踏み、路上で喧嘩していた酔っぱらい2人は仲裁に来た警官も巻き込んで抱き合う。
立ち並ぶオフィスビルの一つが、突然見えない何かに踏み潰されたかのように、最上階から瓦礫とガラス片と鉄屑に変換されていき、粉々のコンクリートに埋め尽くされた1階だけを残すのみの姿となった。
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:26 「巨神妖怪ダイダラス」
翌日。
妖怪女子刑務所、昼食の時間。
グレモリーは相変わらずヌレオンナの監視の下、食堂で臭くない飯を味わう。
グレモリーがジャコばあことジャコツババアと楽しげに話す姿を見た妖怪達の中には、少しずつグレモリーとの会話を試みる者も出てきた。
食堂のテレビで昨夜のビル破壊のニュースが流れている。
深夜、都内2ヶ所のオフィスビルが突如として倒壊。
しかしどちらのビルでも死傷者はゼロ。
大口妖怪クチサケオンナが、大きな口が開くイグアナのような顔をグレモリーに近付ける。
「ねぇねぇ、これ悪魔の仕業でしょ? どんな悪魔がやったの?」
「それさっきロクロクビちゃんにも聞かれましたけど……ビルの破壊なんて悪魔なら誰でもできるから、どんな悪魔がやったのかはワタクシにもわかりませんわ。それよりあなた綺麗ね、大きなお口で!」
「そう? あなたも大きくしたいなら、まず口の両端を指で引っ張って…」
その様を眺めていたジャコツババアが緑茶を一口飲んでふっと息を吐く。
「やめときな、自傷行為と思われて口の前に刑期が延びるよ」
「ふぁらほぉおでふの?」
「ま、あんたもあたしと同じで一生出られないだろうから、刑期が延びるも何も無いかもしれないけど。しかし2つもビルが壊れて、どっちも死傷者無しか。こりゃあ、悪魔の手口じゃないね。悪魔がやったなら、死傷者が出ないと、あんたらの任務に支障が出るんじゃないか?」
「ジャコばあ、『ししょう』で韻を踏んだのね? ベルゼブルみたい。確かに、人間が死んだり怪我したりしたほうが、沢山デビルギーを集められますわ…」
ジャコツババアはまた緑茶を一口。
「さてさて、やったのはヘタクソな悪魔か、どこぞのイカレた人間か、それとも……」
ジャコツババアが眼球の無い目で“遠い目”をしたように見えた。
「ジャコばあって、何してここに入りましの?」
「あ~。昔随分ヤンチャしたんだよ」
「やっだ、ジャコばあったら!」
クチサケオンナが笑いながら肩を押す。
「ヤンチャなんてレベルじゃないでしょ? あのテロリスト妖怪のカリスマ・ガシャドクロの右腕だったんだから!!」
「テロリスト!? ガシャドクロ!? その話、詳しく聞きたいわ!」
「そうだねぇ…」
そうこう話しているうちに刑務作業に行く時間。
移動中、グレモリーが他の受刑者達から離れたタイミングでヌレオンナが一言。
「ジャコばあとはあまり仲良くしないほうがいい」
「あらどうして? って、あなたの声、初めて聞きましたわ!」
ヌレオンナはまた一言も話さなくなった。
「素敵な声ね」
無反応なヌレオンナを気にせず、グレモリーは作業場に向かった。
妖怪の里・ヨーカイジャー秘密基地。
司令室に智和と勝、モニター越しに河童ヶ沼から上半身を出したメガガッパー。
入手できている情報を元に、昨夜のビル破壊事件について話している。
《そうか、グレモリーも何も知らんかったか…》
「奴が簡単に悪魔の情報を話してくれると思ってはいませんが、確かにビルが破壊されたというだけでは、どんな悪魔の仕業か判断できないというのはわかります」
「でも死傷者ゼロっていうのは変じゃね?」
「悪魔の仕業にしては不自然だよな。もしかしたら、破壊自体に大した意味は無くて、その後に起きることがデビルギー回収に繋がるとか……」
「もうネットではいろんな噂が飛び回ってるぞ」
《噂が噂を呼び、尾鰭が付いて…》
「尾鰭? ニンギョのことか?」
《あんな明るく楽しい感じなら良かったんじゃが……憶測が憶測を呼んで、人間同士が互いを信じられなくなって……》
「結果、人間社会は負の感情で一杯になる……」
「悪魔の狙いってそれ!?」
「かもしれないが……」
決め手に欠ける推理が智和の頭を駆け回る中、モニターの向こうから平べったい足でペタペタ歩く独特の足音が聞こえてきた。
「トモカヅキ!?」
潜水妖怪トモカヅキが、わりと整った人間の女性に似た顔を河童ヶ沼のカメラに近付ける。
《あれ? 智和? 見えてるの?》
「おートモカヅキ。この前くれたアルミホイル、あれ使ったら旨いじゃがバターがつくれた」
《じゃがバター!? あれは電磁波対策で頭に巻くやつだって言ったのに、じゃがバター!? まあ、それは後々追及するとして……》
「勘弁してくれ」
《深夜のビル破壊! あの犯人らしき巨大生物が目撃されたの!!》
《トモカヅキめ、またどこぞで新しい都市伝説を仕入れてきおって。ネットも雑誌も禁止されたじゃろ?》
《ネットも雑誌も見てないわ! ゲームのチャットで人間が言ってたの!!》
「それネットに繋がってんだよ」
《ゑ!? ってことはもしかして、ネットゲームのネットってインターネットのこと!?》
「他にどんなネットがある?」
《みんなで底引き網を引いて魚を獲るゲームだから…》
「どんなゲームだよ!!」
《だから底引き網のゲーム=ネットゲームと思ってた……》
「覚えとけ、底引き網も虫取り網も使わないゲームでも、インターネットに繋がってたらネットゲームだ」
《そうだったのね! 勉強になったわ!》
トモカヅキはまたペタペタ歩いて帰ろうとするが戻ってきた。
《いやいやじゃなくてじゃなくて! その目撃された巨大生物っていうのは、巨大な熊の幽霊みたいな怪物だったんですって!!》
「巨大な熊の幽霊?」
《そう! 巨大な熊みたいに見えるけど、ぼんやり向こう側が透けて見える感じのおっきいのが、壊れたビルの上からどこかへ飛んで行くのが一瞬だけ見えた人間がいるって!》
《巨大な熊……》
メガガッパーが腕組みをして唸り始めた。
「長老、心当たりが?」
《ウム……死傷者ゼロで、壊されたビルは確か……》
「どちらも再生可能エネルギー、特にメガソーラーの開発に関わる会社です」
「再生可能エネルギーって、環境にいいエネルギーのことだよな?」
「ああ、そのはずなんだが、その再生可能エネルギーを作るために、逆に自然を壊してしまうこともあって、それが今問題になってる」
「自然に優しいことしようとして、逆に自然を壊してるのか?」
「例えばメガソーラー。太陽の光を利用して電気を作る施設を建設するために、森を切り開いたり、土壌を汚染したりして、逆に環境に悪影響を与えてしまう」
「太陽の光から電気が作れても、森が無くなったり土が汚れたりしたら全然環境に良くないじゃん!」
「だから人間達の間で、メガソーラーを造ることについて意見が分かれている」
《それじゃああああああああああ!!!!!!》
メガガッパーの突然の大絶叫に、モニターは震え、トモカヅキは反射的に沼に飛び込んだ。
「……智和、オイラの耳、まだ付いてる?」
「付いてない」
「えっ!?」
勝は自分の耳を触ってみる。
「いや付いてる!」
「良かったな。どうしたんですか長老?」
《自然破壊は止めたい、じゃが人間は殺さない、そして巨大な熊に似た姿……まさかあやつが、人間の街まで出てくるとは……》
「長老、もしかしてそれは……」
《思い当たる妖怪がおる》
「妖怪がやったのか!?」
《まだはっきりとはわからんが、不幸な出来事から人間を恨んでしまったヌラリヒョンや、勘違いから人間を憎んだ、さっきからワシの足にしがみついとるアホのような妖怪もおる》
《ほえ?》
トモカヅキが首を傾げながら顔を出す。
《あやつも、自然を守りたいがために、人間の街を壊してしまったんじゃろうか……》
「でも、妖怪だったら人間に見られるのおかしくね? ステルスモードになれば、ヨーカイジャーみたいに妖怪の力が使える人間とか、智和の一族の人達みたいな修行してる人間にしか見えないはずだろ?」
「ごく稀にいる、極端に感覚が鋭い人間かもしれない」
「あー! 『霊感が強い』とかいうやつか! たまにいるらしいな、修行しなくてもちょっとだけ見える人間が」
「トモカヅキ、その情報をくれた人間、どんな奴だ?」
《さぁ……チャットでしか話したことないし、熊っぽいのを目撃したのも、その人間の弟の友達らしいし……》
「都市伝説でよくあるやつだな、知り合いの知り合いが見たとか」
《じゃが無視はできん情報じゃ》
《私の情報が役立ったってこと!? じゃあ、ネット解禁…》
《しない》
《……じゃあネットゲームは……》
《構わんが、チャットだけ禁止じゃ》
《うぅ…》
召集されたヨーカイジャー。
初期メンバー5人はカラステング、勝はブルクダンのコクピットに乗り、空を飛んでメガガッパーの心当たりの妖怪が棲む森の上空までやって来た。
「長老の話ではこの辺りのはずなんだが…」
カラステングとブルクダンは、木々の香りに混じったそれらしい気配を感じ取る。
〔間違いねぇ。すげぇ強い奴がいる。ズシンと重たい気配がビンビンくるぜ〕
〔モォ~!〕
カラステングが広範囲に感覚を向けながら高度を下げ地面に降り立とうとしたその時、突然視界が深緑一色になると同時に巨大な衝撃により吹っ飛ばされ、カラステングに続いて高度を下げ始めていたブルクダンを巻き込み乱回転しながら空高く打ち上げられる。
コクピット内も混乱に陥る中、勝が全力で操縦捍を引き、空中で四肢を広がるだけ広げたブルクダンがカラステングを受け止める形で踏みとどまった。
〔モォ~!!〕
〔……サンキュー、もう少しでヨーカイジャーのみんなを宇宙旅行にご招待するとこだった〕
コクピット内の拓実がモニター越しの青空を確認して胸を撫で下ろす。
「宇宙かぁ、いつか行きたいけど今じゃねえや」
千影が自分と結月の髪を整えながら、一瞬視界を埋め尽くした深緑を脳裏に甦らせる。
「何今の?」
カラステングとブルクダンが体勢を立て直し、数百メートル下からぶつかってくる威圧感に目を向ける。
コクピット内のヨーカイジャー達にも、カラステングより二回り以上大きな、メタリックな深緑の熊のような妖怪が、森の木々より少し高い位置に浮かびながら鋭い視線を向けてきているのが確認できる。
「あいつが?」
「ああ。俺も初めて見るが間違いない。あれが巨神妖怪ダイダラス!」
〔ガオオオオオン!!〕
ダイダラスの咆哮が数百メートル上空の空気まで震わせる。
「ダイダラス……あやつ見るからに只者ではござらん」
「クマちゃん、とかそんなかわいい感じじゃないよね……」
〔ガオオオオオオオオオン!!!〕
〔なんかすっげえ怒ってるけど、行かないわけにはいかねえよな?〕
「とにかく話はしないとな」
〔オッケー…〕
〔モォ~…〕
カラステングとブルクダンは慎重に高度を下げ、ダイダラスと同じくらいの位置で空中停止する。
〔よォ! 俺はカラステング!〕
〔モォ~~~〕
〔ガオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
〔え、下?〕
カラステングとブルクダンはダイダラスに言われて下を見る。
カラステングが降り立とうとしていた地面で、1頭の鹿が震えながら空を見上げていた。
〔あー、悪ぃ、気配探るのに集中しすぎてちゃんと下見てなかった〕
カラステングが頭を掻く様子を見ると、ダイダラスは鹿に目線を移し、軽く首を振って森の奥へ行くように促す。
震えていた鹿の瞳から怯えの色は消え、腐葉土の積もる地面を軽い足取りで駆けていった。
〔ありがとな、お前のお陰であいつ踏んづけちまわずに済んだぜ〕
〔ガオン…〕
ダイダラスは小さく鳴いて、鹿が駆けていった森の奥へと向きを変える。
〔ちょっと待った!〕
〔ガオン?〕
〔ビルを壊したのはお前か?〕
ダイダラスは何も答えず、木々を真下に宙を歩くように動き出す。
〔違うなら違うって言ってくれ! 違わないなら、訳を話してくれ!〕
〔ガオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
晩夏の日差しまで震わせるかのような激しい咆哮。
「何て?」
〔俺の中から人間の臭いがするって。人間と一緒にここから立ち去れって…〕
「クマちゃん、人間が嫌いなの?」
〔ガオン! ガオガオ、ガオガオオオオオン!!〕
〔人間が森を殺そうとしていた、だから止めた、それだけだ、ってよ〕
「いや、森を守るにしてもやり方ってもんがあるだろ?」
〔ガオオオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
〔だめだ、立ち去ればっかで話にならねぇ〕
「人間と仲良くしてるオイラ達のことも、良く思ってないみたいだ」
〔モォ~…〕
智和が腕組みをしながら溜め息をつく。
「仕方ない、一旦引くぞ」
「うむ、頭を冷やす時間は必要でござろう」
ヨーカイジャーを乗せた巨大妖怪達は森の外れにある草原に移動。
ビームでヨーカイジャーを降ろしてステルスモードで待機。
カラステングがブルクダンの尻尾を引っ張って占い能力を発動。
ブルクダンの目に「末吉」と表示された。
〔微妙だな〕
〔モォ~…〕
「なあ智和、あいつもヌラリヒョンみたいに刑務所行きなのか?」
「実は妖怪による破壊行為は、死人や重傷者を出さなければ理由によっては罪にならないこともある。昔から言うだろ? 『悪いことをしたらバチが当たる』って」
「まさか、妖怪がバチ当ててた!?」
「全部のバチがそうじゃないけどな。ダイダラスが破壊したのは、どっちもメガソーラーを造るために森を壊そうとしてた会社だし、死傷者0なら厳重注意で済むか、悪くてトモカヅキみたいに妖怪の里で保護観察処分か」
「拙者と拓実にアワビを食わせて眠らせたトモカヅキは、妖怪の里でわりと自由に暮らしておるな」
「最近は底引き網のゲームをやってるらしい」
「あー、あたしそれ知ってる! マニアックなゲームだけどハマる人はハマるらしいよ」
「そう聞いたら若干興味が湧かなくもない。人間が動物を保護するために動物の体に多少負担を与えるようなことはするみたいに、妖怪が人間の行動を正すために加減して手を出すことは昔からやられてきた。今回ダイダラスがやったこともこの類と判断されるだろう。他にやり方あっただろと言われたら、そうかもしれないが。千影どうしたー?」
「んー? これー……」
千影は森の入り口に建っている祠の石に刻まれた文字を見つめている。
「大……太羅……しゅ? いや、大……太羅……主…………大太羅主……ダイダラス!?」
「何だって!?」
全員祠に駆け寄る。
「千影ちゃん、これダイダラスって書いてあるの?」
「じゃない?」
漢字に強い武士が文字列を目線でなぞる。
「確かにこれは、ダイダラスと読める…」
「あいつ祀られてたのか?」
「祀られるほど、人間に知られてるってこと?」
「そういや、オイラが前に住んでた所にもこういうのあったな。オイラみたいにご利益があると思われてこういうの作られてるとか?」
「福を招くという座敷童伝説のように、この地には大太羅主伝説があるということでござるか……?」
智和を中心に全員で首を捻っていると、村がある方角から野菜が入った籠を担いだ老婆が歩いてきた。
「あれ珍しい、こんなとこに若い人達が。あんたらもダイダラス様にお参りかね?」
「ダイダラス様!?」
「おばあちゃん、知ってるの?」
「あら、あんたらダイダラス様のこと知らずに来たんかい?」
「えっと……、俺達そういうの調べてるチームなんです!」
拓実の口八丁、嘘をつかずに怪しまれない言い訳ができる。
「そうかい。この森にはダイダラス様っちゅうお方がおっての。ダイダラス様が森を守ってくださっとるお陰で、村の畑にゃ毎年美味しい野菜が出来るんじゃ」
老婆は籠から出したトウモロコシを祠に供えて手を合わせる。
智和は供えられたトウモロコシの瑞々しさと、森の木々の鮮やかな緑を見比べる。
「そうか、この森が水や空気を浄化するから、近くの村で質のいい野菜が育つ…」
「しかし、ダイダラスが祀られるほど人間に恩恵を与えてきたのであれば、それを妖怪をよく知る智和が知らぬのは不自然ではござらぬか?」
「それは恐らく…………お婆さん、ダイダラスのことを村の外の人に話すことはありますか?」
「いんや。こんななーんも無ぇ所にゃ他所の人は滅多に来んからの。ダイダラス様のことは別に隠しちゃいねえが、わざわざ言いふらすもんでもねえ」
「やっぱり、この土地独自の土着信仰みたいなものか」
「なるほど、ならば他所の者達にまで情報が届かないのも仕方あるまい」
その時、智和のムゲンブレスの着信音が鳴り響いた。
少し離れた所で通話ボタンを押す。
また街でビルが破壊され、今度は死傷者が出たというネネコガッパからの通信だった。
仲間達の元に戻ると、新鮮な野菜を大量に渡されるという「田舎のお婆ちゃんあるある」が行われていた。
ヨーカイジャー達は老婆に情報と野菜のお礼を言い、智和の指示で目立たない場所へ移動してから巨大妖怪達に搭乗、空から破壊された現場へ向かう。
ヨーカイジャーは現場近くの人気の無い路地裏に降りて、巨大妖怪達はステルスモードで空中待機。
そこから移動して現場に着いてみると、破壊されたビルの周囲は既に警察や報道機関や野次馬で溢れかえっていた。
へし折れたビルが隣のビルに倒れ掛かり、抉れたコンクリートの欠片が四方に散乱、砂埃とサイレンの音が青空を曇らせる。
ヨーカイジャーは手分けして捜索を開始。
その最中、拓実は視界の端に見覚えのある巨大な陰を感じ取る。
見ると、ビルとビルの間にステルスモードで普通の人間には見えない状態のダイダラスがいた。
拓実はムゲンブレスで智和に連絡する。
「どうしよう、ダイダラスが着いてきちまってる」
≪えー? なんとか説得して帰らせることはできるか?≫
「俺の話が通じるか以前に、あいつの言葉が俺に通じないから何ともかんとも」
≪あー、じゃあそっち行くわ≫
場所を伝えて通信を切る。
〔ガオオオオオオン!〕
「いや、別に腹は減ってない」
〔ガオガオオオオン?〕
「その件については俺も気になってた」
〔ガオ……ガオオ?〕
「そう、普通の人間なら幼稚園ぐらいまでに気付くことなんだよ」
〔ガオオオオオオオオ……〕
「だよな! 総理大臣の容姿をいじって喜んでる奴らが二度と人権とかほざくなって感じだよな!」
「テキトーにも程があんだよ!!」
背後から智和にツッコまれた。
「そういうのにも積極的に時事ネタをねじ込んでいく姿勢は評価に値するけども! で、ダイダラス! 近くに悪魔がいる可能性が高い。妖怪は悪魔にとって、デビルギー集めを邪魔する敵だ。見つかれば攻撃されるだろう。早く森にかえるんだ」
〔ガオオオオ……?〕
「は?」
〔ガオオオオオオオ…〕
「いや、お前ならビルの中に人間がいない時間にやるだろ? こんな真っ昼間から、死人を出して、他のビルまで巻き込むようなやり方、悪魔の仕業と考えるのが自然だろ?」
〔ガオ…〕
「ハナから俺らお前のこと疑ってねえから。ってか何しに来た?」
〔ガオ……ガオガオガオ…〕
「カラステングとブルクダンがすっ飛んでくのが見えたから、気になって距離を取りながら着いて来たんだってよ」
「はぁ。とにかく、ここは俺らに任せて、お前は帰って森を守っててくれ!」
〔ガオン…〕
その時、勝から悪魔を発見して追跡中との連絡が入る。
「よし、行くぞ」
「ああ。じゃ、街はヨーカイジャーが守るから!」
拓実はダイダラスに手を振り、智和と共に走り出す。
〔ガオン…〕
「妖怪変化!!」
拓実と智和、走りながら同時変身。
レッドがカラステングの能力カードで赤い翼を生やし、グリーンを抱えて飛び上がる。
一方、シルバーに追われる悪魔は廃材がいくつも置かれた人気の無い空き地に逃げ込んだ。
一般人に被害が出る心配は無さそうだが、その代わりここには隠れる場所が豊富にある。
シャチのような模様の体が土管に飛び込んだかと思えば、反対方向にある木材の山からネズミのような頭部が顔を出す。
そこを狙ってブルーがブライブレードを振るうが頭部は引っ込み、同時に背後から40㎝ほどの飛行機が突進してきた。
ブルーは素早く反応して飛行機を弾く。
悪魔はブルーから数十m離れたところにある鉄パイプの山を足場にジャンプしてプレハブ小屋の屋根に飛び乗り、飛ばしていた飛行機を右腕の位置に戻す。
音も無く背後に迫っていたピンクのスキャットクロウを左腕の飛行機で受け止め、屋根から飛び降り鯛のような両足で着地、ピンクブルーシルバーの追跡をかわし廃倉庫に駆け込む。
しかし廃倉庫は悪魔が駆け込むと同時に消滅。
そこはイエローがキュービルンの能力カードで作り出した幻だった。
戸惑う悪魔の上空から、レッドが放り投げたグリーンが落下の勢いを乗せたガチコンハンマーを振り下ろす。
悪魔がこれをギリギリでかわすと、ガチコンハンマーが直撃したコンクリートの地面に広範囲に渡るヒビが入った。
ピンクは自分の足元まで伸びてきたヒビを地団駄を踏んで踏みつける!
「んにゃー! ネズミはおとなしくネコのあたしに捕まりなさい!!」
「ネコ? ネズミ? 何のこと? 僕はニバス。なんにも悪いことしてないのにいじめないでよ!!」
「とぼけるな! 先ほどビルを破壊したのはお主でござろう?」
「違うよ! あれはでっかい緑っぽい妖怪がやったんだよ!」
イエローは遠目に見える破壊されたビルに巻き込まれて抉れたビルを指さす。
「あの妖怪とは明らかにやり方が違う。死人も出てる。あんたの前歯、硬い物齧った後みたいにちょっと欠けてる」
「は? あんなヤワな建物齧っただけで僕の前歯が欠けるわけ……ハッ!?」
「マヌケは見つかったようだな! 誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「誰もオイラを止められねえ! 当たるも八卦の大予言! 爆走疾風ギンギラギン! 閃光の覇者、ヨーカイシルバー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
「おのれ…」
ニバスの右腰には手の平サイズの落花生のような物体が、左腰にはカブのような物体が付いている。
その落花生のような物体を取り外し、
「ぼっこせ、ジャミリアー!」
と叫びながら放り投げると、落花生のような物体は空中で弾け、8体の使い魔ジャミリアーが姿を現した。
「ジャミジャミ!」
ジャミリアー達は剣を振りながらリズミカルに足を踏み鳴らす。
「いくぞ!」
「オウ!」
グリーンの合図でヨーカイジャー達が走り出す。
シルバーがオボログルマの能力カードとイッタンモメンの武装カードをムゲンライザーに入れて同時発動。
ローラースケートのようになった足で駆け抜け、ジャミリアー2体をモメンカッターで切り裂きニバスに向かう。
レッドとピンクも切り裂かれたジャミリアーにそれぞれの個人武器でとどめを刺しシルバーに続いて走る。
「ジャミ!」
ジャミリアーの剣がイエローを切り裂き火花を散らす……と思いきや、そのイエローは本物のイエローが作り出した幻。
切り裂かれたのは幻の後ろにいた別のジャミリアー。
「ジャミ!?」
本物のイエローが背後からライジュウの能力カードで電撃を纏わせたコンコンボーを新体操のバトンのように回転させて連撃を叩き込む。
味方の攻撃に弱らされたジャミリアーも纏めて2体同時に爆散。
グリーンがガチコンハンマーをフルスイング。
それを鳩尾に食らったジャミリアーが派手に吹っ飛び地面に叩き付けられ爆散。
そのジャミリアーが持っていた剣を別のジャミリアーが拾い、ブルーと向き合い二刀流の構え。
「ほぅ……。ならば拙者も、新しいことに挑戦してみるか」
ブルーも腰のホルダーからムゲンソードを抜き、ブライブレードと合わせて二刀流の構え。
前方に二刀流1体、左右斜め後方に一刀流1体ずつ、計3体のジャミリアーに意識を集中させる。
「ジャミ!!」
ジャミリアー3体が同時に襲い掛かる。
前方からの二刀を二刀で受け止め、鍛え上げられた足腰に支えられた腕力でそれを押し返す勢いのまま踏み込み振り返りながらの斬撃で二刀ジャミリアーを切り捨て、両手でブライブレードを強く握り後方のジャミリアー1体を斬り上げ、また一歩踏み込みながらもう1体に向けて斜めに振り下ろす。
斬撃を受けた3体のジャミリアーは「無念…」とばかりに倒れて爆散。
爆炎に重なる青き風の剣士。
イエローが近くに転がっていたブルーのムゲンソードを拾い上げる。
「新しいことに挑戦は?」
「……つい、癖でな、途中からいつも通りになってしまった」
ニバスが両腕の飛行機を同時に飛ばし、シルバーを掴んで空高く持ち上げる。
「必殺・地獄覗かせ!!」
上空で両腕を離すとシルバーは自然落下、と思いきやイッタンモメンの能力カードを発動して空中浮遊。
「飛べるオイラには意味ねえよ!」
「ああああああああ!!!!!!」
絶叫しながら飛行機を両腕の位置に戻そうとするが、胴体に辿り着く直前にレッドとピンクが飛行機を1機ずつかっ拐って別々の方向に走っていった。
「おい返せ!!」
飛行機のパワーを上げて引き戻そうとするも、レッドはグリーン、ピンクはイエローに支えられながら踏ん張り、帰還を許さない。
「返せってんだよ!!」
ニバスが飛行機の出力を上げる。
踏ん張っていたレッドとピンクの足が少しずつ後退し始める。
ニバスが飛行機に集中しているその隙にブルーがブライブレードでシャチのような体を横一文字に切り裂き、飛び散る火花が地に落ちない刹那にシルバーが空中から飛び蹴りを繰り出す。
「ぐびゃあああっ!?」
飛び蹴りを顔面に食らい吹っ飛び転がりながらも、飛行機2機をもがきにもがいて帰還させ、ふらつく足で立ち上がりながら両腕を元に戻す。
その隙にピンクがムゲンブレスに必殺カードを入れると、北海道から召喚されたコロボックルが愛らしい雄叫びと共に「yokaiger」というロゴが入った白いボールに変身し、高く掲げられたピンクの手に収まる。
「いくわよっ、ヨーカイジャータイフーン!!」
ピンクが妖力を注ぎ込むと、ボールは爽やかで愛らしいピンクに染まる。
「勝くん!」
投げられたボールをシルバーが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは力強く輝く銀色に染まる。
「千影!」
投げられたボールをイエローが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは妖しく魅惑的な黄色に染まる。
「武士!」
「させるか!!」
ボールが自分にとって危険な物と察したニバスは投げられた黄色いボールに向けて飛行機を飛ばすが、飛行機はシルバーのオボロバルカンによる銃撃に阻まれ、ボールは無事ブルーの手に収まる。
そのまま妖力を注ぎ込むと、ボールは鋭く吹き抜ける風のような青に染まる。
「智和!」
真っ直ぐに飛んできたボールをグリーンが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは知性の奥に秘められた情熱を思わせる緑に染まる。
「拓実!」
再び妨害しに飛んでくる飛行機を股下パスによりスルー。
低い位置に飛んできたボールをレッドが受け取り、妖力を注ぎ込むと、ボールは勇気と正義を象徴する赤に染まる。
「やっぱりこいつを倒すのは……」
レッドはニバスの後方にいるシルバーに向かって大きく振りかぶり、ニバスが背後を警戒しながら腕を戻した瞬間に隣にいるピンクにボールを手渡しする。
「はい」
「はい!」
「はい!?」
ピンクが受け取ったボールに妖力を込めると、ボールは再びピンク色に染まり、ネコマタンの猫耳と2本の尻尾を思わせる装飾が現れる。
「必殺妖技・猫々遊々球!!」
ピンクがいわゆる「女の子投げ」で投げたボールはピンク色の光に包まれながら放物線を描き、ニバスの足元に落ちる。
「は? ……ハハッ、攻撃失敗か?」
次の瞬間、ピンクのボールが高速で飛び上がり笑っていたニバスの顔面を直撃。
「あばっ!?」
その後、ピンクのボールはニバスの顔面で高速バウンドを繰り返し、妖力が込められた細かい物理攻撃を22連打。
「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!!!!」
ニバスは耐えきれず後ろ向きに倒れる。
「夢の国に……行きたかった……」
爆散。
「うよっしゃあああああああああああ!!!!!!」
ボールは再びピンクの手に収まってコロボックルの姿に戻り、北海道に転送される。
「やっぱりネズミをやっつけるのは、ネコちゃんだにゃにゃん!」
そこへ羽音を立てながらベルゼブルが飛来。
微かにどこかへ視線を向けた後、魔力で髑髏型のマイクを生成して呪文を唱える。
「YO!デビル デビレバ デビルトキ カモンデーモン デビデビレ 最後のバイブス、AGEてこうZE!」
ベルゼブルが目から放ったビームにより、ニバスの残骸が巨大なニバスの姿となりヨーカイジャー達を見下ろす。
「ニバス・イン・ワンダーランド!!」
「頼むぜブラザー…」
ベルゼブルは「チェケラ!」の手の形で巨大ニバスの背中を指さす。
「よーし、カラステングは近くにいるから俺はポーズだけで…」
ヨーカイジャー達はムゲンブレスとムゲンライザーに召喚カードを入れる。
「サモン、パートナーズ!!」
妖怪の里。
「河童ヶ沼」の底から長老妖怪メガガッパーが水飛沫を上げながら浮かび上がり、緑の光になって高速移動を開始。
「妖怪電気街」のステージのモニターに「きんきゅーしゅつどー」の文字が表示され、ステージ上の偶像妖怪ネコマタンがそれを見て敬礼、客席の妖怪達が振るサイリウムに見送られながらピンクの光になって高速移動を開始。
「試し斬りの竹林」で瞑想していた斬空妖怪カマイタチが空を見上げ、青い光になって高速移動を開始。
「妖怪稲荷神社」の神殿の扉が開き、奥から幻惑妖怪キュービルンが「お座り」のポーズのまま前進、その足元から機械的なカタパルトが伸び、どこかから響いてきた「five,four,three,two,one,zero!」というカウントダウンでキュービルンが「お座り」のポーズのまま空高く射出され、黄色い光になって高速移動を開始。
「さわやか草原」を走る爆走妖怪オボログルマ、上空に疾風妖怪イッタンモメン、2体同時に高く飛び上がりオレンジ色と紺色の光になって高速移動を開始。
ヨーカイジャーの前に6つの光が降り立つと同時に巨大な妖怪の姿を表し、待機していたカラステングとブルクダンも合わせて6体のパートナー妖怪とその仲間2体が並び立った。
パートナー妖怪達は目からビームを放ちヨーカイジャーをコクピットに転送。
「いくぜ!」
「夢幻合体!!」
「夢幻合体!!」
レッドとシルバーが合体カードを発動。
巨大妖怪達が宙に浮き上がり変形を始める。
カラステングの両腕がスライドして背中に回り、両足は折り畳まれる。
メガガッパーの両腕が引っ込み、甲羅が上にスライドして体の下半分が2本の足の形状になったところでカラステングの体の下に合体して「下半身」となる。
ネコマタンの尾と後ろ足が折り畳まれ、前足は爪が出た状態で頭に被さるようにスライドし、全体的に鋭い爪の付いた腕といった形状になりカラステングの左腕部分に合体。
カマイタチの刃物状の尾が外れ、後ろ足が折り畳まれ、鎌の付いた前足は頭に被さるようにスライドし、鎌の間に刃物状の尾が収まり全体的に鋭い剣の付いた腕といった形状になりカラステングの右腕部分に合体。
キュービルンの体が前部と後部で半分に分離、前部は中心にキツネの顔が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの胸に合体、後部は九本のキツネの尾が付いたプロテクターといった形状に変形しカラステングの背中に合体。
最後にカラステングの下顎が大きく開き、中から人型の顔が姿を表した。
レッド以外の4人もカラステングのコクピットに転送され、ヨーカイジャー達から見て左から、ピンク、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの順に席に着いた。
「完成、合体巨人・ムゲンオー!!」
5人声を揃えてその名を叫ぶ。
ムゲンオーは右手の夢幻斬空剣を斜めに掲げてポーズを決める。
ブルクダンの四肢と尻尾が折り畳まれながら体全体が直立、胴体下半分がスライドして2本に分かれて「足」になり、首から上の頭部が真っ直ぐに前を向く。
オボログルマの胴体前部が伸び、全体的にタイヤとガトリング砲の付いた腕といった形状になりブルクダンの左腕部分に合体。
イッタンモメンの尾が折りたたまれ、胴体前部が伸び、全体的に左右両側に鋭いカッターの付いた腕といった形状になりブルクダンの右腕部分に合体。
最後にブルクダンの首が回転扉のように回転、中から人型の顔が姿を表した。
「完成、合体巨人・ムゲンショーグン!!」
シルバーがその名を叫ぶ。
ムゲンショーグンは両腕の武器を交互に力強く前に突き出し、銀色の光を放ちながら腕を組んでポーズを決める。
並び立つムゲンオーとムゲンショーグン。
「やってやる! 必殺・地獄覗かせ・改!」
「改?」
巨大ニバスは両腕の飛行機を飛ばし、合体巨人達の周囲を飛び回らせた後、急旋回してムゲンショーグンを掴み上げ空高く急上昇。
「うわうわうわあああああ! って、ムゲンショーグンも飛べるからさっきと一緒だぞ?」
「ハハッ、ここからが改!」
上空500m程の所で飛行機はムゲンショーグンを掴んだままUターン、そのまま放さず地上のムゲンオーに向かって一直線に急降下を始める。
「それは一緒じゃない!!」
シルバーが操縦桿を四方八方に動かし、ムゲンショーグンが全身でもがいても飛行機は離れない。
地上のムゲンオーとコクピット内のヨーカイジャー達は迫りくる危機に右往左往。
「どうしよう! 普通に避けりゃあ俺達は助かるけど…」
「ムゲンショーグンと勝くんは助からない!」
「大丈夫! きっと何かいい手を考えてくれる智和が!!」
「また丸投げか! 考えてるけども!」
「何かこちらにも、あやつの腕のように飛ばせる物があれば…」
〔ビビーッ!!〕
〔ニャニャーッ!!〕
5人声を揃えて
「あった!!!!!」
「ゆけカマイタチ!!」
「おねがいネコマタン!!」
ムゲンオーは体を捻って振りかぶり、勢いをつけて両腕のカマイタチとネコマタンを分離させる。
〔ビビビビビーッ!!〕
〔ニャニャニャニャニャーッ!!〕
カマイタチとネコマタンは勢いそのまま上空のムゲンショーグンを掴んでいる2機の飛行機にすれ違い様の鎌と爪による切り裂き攻撃。
切り裂かれた飛行機はムゲンショーグンから力なく剥がれ、ムゲンショーグンは空中で自由を取り戻し体勢を立て直す。
「ありがと助かった!」
〔ビビーッ!〕
〔ニャンニャーン!〕
カマイタチとネコマタンは華麗に風を切りながらムゲンオーの両腕に戻る。
一方、2機の飛行機は傷口から煙を出しながらヨロヨロ飛行で巨大ニバスの両腕に戻る。
「痛でででででででで!!!!!」
本体に付いている時だけ傷の痛みを感じるシステムらしい。
〔モォ~!!〕
「今度はこっちの番だ!!」
ムゲンショーグンが上空から左腕のガトリングを連射。
巨大化したニバスには隠れる場所も無く全弾命中。
「くっそ……相手が動かなきゃビルみたいに齧り倒してやるのに…」
「今だ!」
レッドがムゲンブレスに必殺カードを入れると、ムゲンオーの全身を5色の光が駆け巡り始める。
「必殺大妖技・夢幻魔削爪!!!!!」
技の名前を5人で叫ぶ。
ダメージで動きが鈍った巨大ニバスに急接近、左手の爪による高速の連続引っ搔き。
一撃、二撃、三撃、四撃五撃とダメージを蓄積させ、巨大ニバスのボディに光り輝く∞型の爪痕を刻み付けながら駆け抜ける。
「僕のことは嫌いになっても、デモンダイムのことは嫌いにならないでくだぎゃっ!!!」
爆散。
「うよっしゃああああああああああああ!!!!!」
合体巨人達は腕を空にクロスさせて健闘を称えあう。
いつものように戦いが終わり、ヨーカイジャーと合体巨人達がいつものように緊張を解こうとしたその時、鼓膜と緩みかけた空気を震わせる聞き覚えのある咆哮。
〔ガオオオオオオオオオオン!!!〕
「ダイダラス!?」
「行くぞ!!」
合体巨人達は空を飛び声のした方へ向かう。
その頃、先程の場所に留まっていたダイダラスは立ち上がり、巨大ベルゼブルと両手を組み合い押し合っていた。
逃げ惑う人間達の目には巨大ベルゼブルの姿だけが見えている。
「テメェはほっとくとヨーカイジャーより厄介になりそうだからな…」
「ガオオオオオオオオオオオン!!!!!!」
力を込める巨大ベルゼブルは後方から聞こえた2つの飛行音に反応して手を放し、空中へ飛びあがる。
ムゲンショーグンは構えていたガトリングの照準を空中に移す。
「HA! お前らが来たってことは、ニバスはやられちまったか」
「ベルゼブルてめえ、派手にやりやがって!」
「俺様は人間どもに見られようと気にしねえからな。が、今日は出直そう。お前らを纏めてブッ殺すなら、もっと派手なステージでやりてぇ」
「とか言って、3体1じゃ不利だから逃げる気じゃないの?」
「AH? 黄色、3体1って、こいつのブラザー、いやシスター? にでもなったつもりかYO?」
「うーん、これからなりたいとは思ってる。ブラザー? シスター? 何て言うんだろ…………あ、マイメンか!」
〔ガオン…〕
「HA! じゃ、勝手にしろYO!」
巨大ベルゼブルは首を回しながら目から破壊光線をまき散らす。
辺りに火花が飛び散り、合体巨人達とダイダラスが防御に集中している間に、巨大ベルゼブルはどこかへ飛び去っていた。
ヨーカイジャーと合体巨人達、そしてダイダラスは、ダイダラスの住む森の外れの草原に移動。
ヨーカイジャーはコクピットを降りて変身解除。
智和が妖怪治安維持部隊と情報統括部への事後処理に関する連絡を済ませる。
「やれやれ、ベルゼブルのせいで情報操作が大変になりそうだ」
「情報統括部の妖怪……いつも大変そうだしカツ丼でも食わせてやりてえな」
「まぁそのうち会えることもあるだろう。で……」
智和は真っ直ぐにヨーカイジャーを見つめるダイダラスに視線を返す。
「お前はビルを破壊したが、死傷者は出さなかったし、動機も…」
「なあ!」
拓実が智和の肩を押して前に出る。
「俺達と一緒に戦わないか?」
「え?」
〔ガオン……〕
「お前、カラステングぶっ飛ばしたり、ベルゼブルと組み合って一歩も引かなかったり、すっげえ強そうじゃん!」
〔ああ、そいつは強い。ぶっ飛ばされた俺が言うんだから間違いない〕
〔モォ~!〕
「そうね、マイメンになるってハエ男に啖呵切っちゃったし」
「オイラは賛成!」
「あたしも!」
「うむ。森を守る強く優しい妖怪がいれば、拙者達はまさに千人力でござる」
「どうですか長老?」
〔ウーム……ビルを壊した件については、自然を守るためという動機があり、死傷者を出さなかったということで、ワシらの掟で言えば厳重注意で済むことじゃ。罪を償うために悪魔と戦えとか、そんなことを言うつもりは無い。お主が人間を信用できんことはわかっとる。無理にとは言わん。お主の気持ち次第じゃ〕
ダイダラスは暫く空を見上げた後、ヨーカイジャー達に向かって一際力を込めた咆哮を放つ。
〔ガオオオオオオオオオン! ガオガオガガオオオオオオン!!〕
「何て?」
「お前達の言うことはわかった。だがやはり人間は信用できない」
〔ガオガオガガオオオオオオン!!〕
「だから試させてもらう……って、え!?」
〔ガオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
〔私が与える試練に合格すれば力を貸してやってもいいってよ〕
「こいつ一人称『私』なんだ」
〔人間で言えばそんな感じ。ちなみに雄だぜ〕
「そっか。じゃあ…」
拓実は仲間達の顔を見渡す。
全員、決意を秘めた眼差しで頷く。
「やってやろうじゃねえか!!!」
〔ガオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
【to be continue…】
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