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episode:2 最強JKすーぱーばとる!

この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。


オープニングテーマ「your kind!」

https://ncode.syosetu.com/n7284ka/1/

「遅刻遅刻~!」


挿絵(By みてみん)


食パンを咥えて家を飛び出した黒髪ツインテールの小柄なセーラー服。


二ノ宮結月にのみや ゆづき・高校2年生。


実は彼女は遅刻などしていない。

遅刻の心配が一切無いくらい、前日は早く寝て今朝は早く起き、余裕を持って支度をして家を出た。


つまり結月は、「パンを咥えて遅刻遅刻~」をやりたいからやっている。


曲がり角でツンデレ男子とぶつかって物語が始まることを期待しているわけでもない。


ただ「パンを咥えて遅刻遅刻~!」をやりたくてやっている。


そんな結月、走りながら横目に見えた何かに気付いて停止。


走り抜けたフォームそのままで巻き戻しのように後退、狭い空き地の奥に置かれた段ボールの中から自分を覗いている「ソレ」にダッシュで近付き、口の食パンを外して、


「かわいい~!!」


と叫ぶ。


「どうしたのネコちゃん、捨てられちゃったの?」


そう言いながら結月は、ピンク色のソレを抱き上げた。


「こんなにかわいいネコちゃんなのにね~」


そう言いながら結月は、しっぽが二股に分かれたソレの頭を優しく撫でる。



夢幻(むげん)戦隊ヨーカイジャー」


episode:2 「最強JKすーぱーばとる!」


挿絵(By みてみん)


時を少し遡り、前回の戦いの後、カラステングに乗って初めて妖怪の里へやってきたヨーカイレッドのことを見てみよう。


色形大きさ様々な妖怪達が、ヨーカイレッドに興味を持って集まってくる。

そんな妖怪達に興味を持って、ヨーカイレッドもくるくる回転しながら興奮気味で里を見て回る。


「おい拓実ー! ムゲンブレスから変身(チェンジ)カードを抜いて変身解除しろー! その姿で回転するからちょいちょいシャレにならない突風起こしてるぞー!」


智和が後ろから声をかけた。


「あーそっかー!」


ヨーカイレッドはカードを引き抜いて変身を解除した。


「戦うための強い力だからな、普段からあの姿でいないほうがいい」


「だな。次から戦いが終わったらすぐ変身解除する。ところで、あのコアラみたいな奴なんていうんだ?」


「あれは石化妖怪コナキジジイ。体を石にすることが得意な妖怪だ」


「すげえ、自分の硬さ利用してクルミ割ってる! じゃあじゃあ、あっちのフードファイターみたいなことやってるウミウシかクラゲかよくわかんない奴は?」


「あいつは大食妖怪ガキ。常に腹が減って食べ物を求めてる。この里には食べ物が豊富にあるから、ああいう奴がいても誰も困らないどころか、ガキの食べる姿を見るのがある種のエンターテイメントみたいになってて、みんな喜んで食べ物を持ってくる。一度あいつの写真をネットで似た画像を検索できるやつに掛けてみたら、メリベウミウシとかいう生き物がヒットした。だから拓実がウミウシかクラゲかよくわかんないって言ったのも、あながち間違っちゃいないのかもな」


「そっか、俺も何か食いもん持ってきてやりゃよかったな。ってかコナキジジイがさっきのクルミをガキにお裾分けしてる!! じゃあじゃあじゃあ、さっきから俺の足にゆっくりゆっくりスリスリしてるこのなんかあったかい奴は?」


「こいつは愛玩妖怪スネコスリ。癒されるだろ?」


「あー癒されるーって、もう行っちゃうの? 行っちゃうのかー。ふーん。……遅いな。……遅いな動きが。でもお前はそのペースで生きていくのがいいと思う。……え? いや、別に大したことは言ってないから自分の行きたいとこ行っていいよ。うん、バイバイ。うん。で、あのでっかいカニみたいな奴は?」


「あいつは有鋏妖怪バケガニ。あいつはまあ要するに、でっかいカニだ」


「なるほど、でっかいカニか。確かに、でっかいカニだ」


そうこう言いながら二人は長老妖怪メガガッパーの棲家である「河童ヶ沼」にたどり着いた。


「何だよこの捻りの無いネーミングは!?」


「長老は『それが逆にチャーミングじゃろ?』と言っていた。長老!」


メガガッパーは沼の底から咆哮と共に姿を現した。


「ちゃあああああああああああああみいいいいいいいいいいいいいいいいいいんぐ!!!!!!」


「聞こえてたんですか長老」


「すげえ! でけえ! カラステングと同じくらい? いや、もうちょっとだけデカいかな?」


「こら失礼だぞ」


「フォッフォッフォッフォッ、よいよい。こやつがヨーカイレッドじゃな?」


「はい、カラステングが選んだヨーカイレッド、初めての戦いで悪魔を撃破しました」


「いえーい!」


拓実はメガガッパーに向かってダブルピースする。


「おい!」


「あ、ちょっとポーズ古かった?」


拓実はメガガッパーに向かって口を尖らせながらギャルピースする。


「いやそっちのほうがなんか古い。じゃなくて!」


「フォッフォッフォッフォッ、よいよい。どうじゃ智和、お主もこの際、ワシに対してもっとフレンドリーに話すようにしたらどうじゃ? ワシとお主は今やパートナーなんじゃから」


「そう……だな。俺もこれからはもっと、フレンドリーに話すことにするよ」


「フォッフォッフォッフォッフォッ」


「ところで長老、先程倒した悪魔が巨大化した件についてですが……」


「癖が抜けんか。まー無理にとは言わんがの。ワシも沼の底のモニターで見ておったが……」


「えっ!?」


拓実が沼を覗いてみる。


「落ちるなよ、ブラジルまで届くかと思うくらい深いからな」


「智和は小学生の頃に2回ほど落ちたのう」


「初めての時はサンバのリズムの幻聴が聞こえました」


「悪魔の巨大化……モニターから見ておっても、原因はわからなんだ」


「もしかしたら何者かが、何らかの技術によって悪魔を巨大再生……」


「可能性はあるのぉ……」


「大丈夫だぜ!!」


風を巻き上げ木々を揺らしながら2回宙返りしてからカラステングが着陸。


「悪魔がデカくなっても、俺と拓実がまたビューン! ぐるぐるぐるぐるドッカーン! ってやっつけちまうからさ!」


「カラステング! お主のそのすぐ調子に乗るところさえ無ければ、ワシも安心してお主を次期長老候補として妖怪評議会に推薦できようものを。……やっぱり次期長老には、カマイタチのほうがいいのかもしれんのぅ……」


「えええ!? あいつも確かに強いしイイ奴だけどさー、やっぱり長老っていうくらいならさ! ホラ! 俺みたいに!」


「そういうところじゃカラステング!!!!!!!!」


「長老また血圧上がりますよ!!」


「上がってもかまわん! キュウリさえ食っときゃ何とかなる!」


「さすがカッパ! キュウリへの信頼感ハンパねえ!!」


「……とにかくじゃ、お主らヨーカイジャー」


拓実と智和が頷く。


「そしてワシらパートナー妖怪」


「長老、俺と長老を合わせて『ワシら』って言ってくれたことが嬉しいぜ……」


「うむ。どんなに敵が大きかろうと、皆で力を合わせ、必ず平和を取り戻すのじゃ!!」


「オーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」



さてさて時は進んで二ノ宮結月がピンク色でしっぽが二股に分かれた何かを発見した日の午後。

学校が終わり、結月は再び件の空き地へ。

登校前に空き地の奥の端へ移動させていたダンボールの所へ、結月は少ないお小遣いで買ったネコ用のチューブ入りのおやつを持ってきた。


「よかったネコちゃん、待っててくれた。ちゅーぶちゅーぶにゃおちゅーぶー」


これはそのチューブ入りのおやつのCMソングである。


ここで言っておかねばなるまい。

発見した野良ネコにエサをやりたくなることは、人生において少なからずあるものかもしれない。

しかしそのような行為は、そのネコを自分が責任を持って飼い、最後まで面倒を見る覚悟が無い限り行うべきではない。

そう、最後まで、面倒を見る覚悟が無い限り。


尤も、結月にはその覚悟があるようだが。


しっぽが二股に分かれたそれは、結月が差し出したチューブ入りのおやつを、意外にも普通な色をした舌で器用においしそうに舐める。


「食べてくれたー! うちのお母さんね、動物飼いたいなら保護猫とか保護犬とかにしなさいっていつも言ってるの。動物飼うこと自体は反対じゃないみたいだから、きっと予防注射とかも受けさせてくれるよ。だってこーんなにかわいいんだし!」


結月はチューブ入りのおやつを気に入ったらしいそれを抱き上げ青空に重ねる。


「ニャー!」


明るい鳴き声。

家族が増える。

結月はそのときめきで胸がいっぱいになった。


「抹殺……」


幸せな時間に似合わない、物騒な声。

結月が振り向くと、そこには紙幣のような柄のパーカーを着てフードを深く被った男?が立っていた。


「俺達の邪魔するお前ら、抹殺。ついでに人間苦しめて、デビルギー」


男?は一歩一歩、結月に近づいてくる。


「フーーーーーーーーーッ!!!!」


結月に抱かれたそれは声と表情で激しい威嚇の意思を表す。


「ネコちゃん……逃げるよ!」


結月はそれを抱きしめ走り出した。


抱きしめて、走る。

熱い、体。

だけど、抱きしめた命、暖かい。

だから、止まれない。

走る、結月!


どこをどう走っただろう。

知らない場所。

工場地帯。


少しずつ、息を整える。

整えて、振り返る。

いない。

良かった。

だけど、胸の中でぬくもりをくれたそれは、牙を向き激しい威嚇の声を出している。


どうして?


前をみる。


「抹殺……」


「!!!!!!!!!!!!!!!」


妙な柄のパーカーを着たそいつは、既に結月より前にいた。


「……あなたの目は、どうしてそんなに鋭いの?」


「それは、ここの環境に適応するため」


「……あなたのパーカーは、どうしてそんなお札みたいな柄なの?」


「それも、ここの環境に適応するため」


「……じゃあ、これが一番気になってたんだけど、あなたの口は……口は、どうしてそんなに、ワニみたいに大きいの?」


「それは……俺達のボス、復活させて、絶望する人間どもを見て大口開けて笑ってやるためだウワーッハハハハハハハハハハハハ!!!!」


フードが捲れ、露になったその顔はワニそのもの。

ワニのようなそいつが地面に手を当てると、そいつを中心にして周りの地面に煮えたぎる赤い液体が広がり始めた。


「!!!!!!!!!!」


結月はまた、ぬくもりを抱きしめながら走り出す。


「ニャ! ニャ! ニャ!」


短く刻むような声を上げるそれは、結月の腕から抜け出そうとするかのように足をバタつかせる。

結月はそれをそっと、そっと強く、抱きしめ走る。


「ネコちゃん、大丈夫。絶対守るから」


走る。

走る。


知らない場所。

知らない景色。


だけど、きっと。

帰れる、一緒に。


あいつさえ、いなければ。

あいつにさえ、追い付かれなければ。


走る。

走る。


工場と工場の間。

狭い道。

薄暗い。

どこだろう。

わからない。

だけど、走らなきゃ。

走らなきゃ。

帰らなきゃ。

一緒に。

新しい、家族……!


「おかしい……」


上から聞こえた。

見上げると、ワニのようなそいつが、廃工場の非常階段の上から、結月の方に緑の小さな柑橘類のような球体を向けていた。


「もう充分、苦しめてるはず。なぜ出ない、デビルギー……」


「……何? 何が出ないって?」


「なぜ……お前には無いのか? 負の感情……」


「フノ? カンジョー……? それって、環状線みたいなこと……?」


「わかった! お前頭悪い! バカだから何も考えてない! だから負の感情無い!」


「……ええ、そうですとも。あたし頭悪いよ。数学赤点だったよ。だけどねえ、頭悪くても、何も考えてなくても、せっかく出会えた、かわいいネコちゃん、守りたい! そのためなら、あんたがどんなに強くても、怖くても、変な力使っても、絶対逃げきってみせる! それがあたし……最強JK・二ノ宮結月なんだから!!!!」


震える体、涙いっぱいの目。

だけどその奥には、強い、熱い、思い。


「……最強……JK……よくわからないけど、お前名乗った。俺も名乗る。俺、ザエボス」


「ザエボス……」


「うん。あ、でも無駄か。お前ら今から死ぬもんな。邪魔な奴らは、抹殺。人間は、苦しめなきゃいけないけど、それで死んでも別にいいよなー。人間なんて、100匹くらいまでなら、死んでも死ななくてもあんまり変わらないよなー。いっぱいいるもんなー。だから抹殺、優先。お前ら、殺す」


ザエボスは非常階段から飛び上がり、絶望する人間達を笑ってやるためにあると言ったその大口を開け結月に飛び掛かる。


小さな命を抱きしめ目を瞑る結月に凶悪な牙が襲い掛からんとしたその時、真横から突き刺さる真っ赤なキックがザエボスを蹴り飛ばした。


「ブッ……!?」


ザエボスは吹っ飛び、近くの建物に激突。


その音と空気の変化に気付いた結月が目を開けると、そこにいたのは色鮮やかな赤い戦闘服と鳥のようなデザインの赤いフルフェイスマスクを見に付けた……


「ヒーロー……?」


「…………え? ヒー……ロー……? ……おーい智和ー! 俺ってヒーローなのー?」


ヨーカイレッドは走ってくるヨーカイグリーンに叫ぶ。


「まあ、そう見えるのかもなー!」


ヨーカイグリーンが答える。


「とにかく、赤いヒーローくんは、あいつの相手してやってて。俺はその間に大事な仕事するから」


「OK、任しとけ! 俺この前カラスがトカゲ食ってるとこ見たんだ。だから絶対負けねぇ!」


レッドは建物の壁に八つ当たりするザエボスに向かって走り出した。


「拓実にはアレがトカゲに見えるのか。まあ自信持って戦ってくれるならいいけど。それより君、その大事そうに抱き抱えてるピンクのやつ、何だかわかってる?」


「この子? ネコちゃんでしょ?」


「ネコちゃんといえばネコちゃんだけど、そいつの名前はネコマタン」


「ネコマたん!? あなたネコマたんって言うのね!?」


「ニャ………………???」


「そのイントネーションは多分、そいつの名前が『ネコマ』で、俺が敬称の『たん』を付けてると思ってるんだろうけど、ネコマタン」


「ネコマたん……」


「ネコマタン」


「ネコマっタン」


「ネコマタン」


「備長炭……」


「急に焼き鳥焼くなネコマタン」


「ネコマタン……?」


「ニャ!」


「あなたネコマタンって言うのね!!」


「そっか、こっち系の人が増えちゃうのか…………カマイタチとキュービルンはもうちょっと難易度低い人選んでくれたら助かるんだけどそれはそれとして!」


グリーンは結月にムゲンブレスとネコマタンの変身(チェンジ)カードを差し出した。


「かわいい! ネコちゃ……ネコマタンのカードだね!」


「ニャニャ!」


「君は偶像妖怪ネコマタンに選ばれた。これを腕に付けて、このかわいいカードを入れると、君も俺達のように、ネコマタンの力で戦う姿に変身することができるんだ」


「そっか、ネコマタンって妖怪だったんだね」


「ニャニャー!」


「ってことはこれは、妖怪の力を使える腕時計だから妖怪ウォ……」


「それ以上言うな。これはムゲンブレス。ブレスレットであって腕時計じゃない。これ作るとき時計機能も付けようって案も出たんだが、なんか絶対駄目な気がして俺が反対したんだ」


「なんかよくわかんないけど、とにかくこれ使えばあたしも変身してあのワニやっつけられるってことだよね?」


「そういうことだ」


「ネコマタンは? 一緒に戦うの?」


「一緒に戦わなきゃいけなくなる可能性もあるっちゃあるが……今はここで待機させとけばいいだろう」


「わかった。待っててねネコマタン!」


「ニャニャニャン!」


「よーし、いくぞぉー!」


結月はカードを持った右手とムゲンブレスが付いた左腕でバンザイしながら走りだす。


が、すぐにUターンして戻ってきた。


「変身するときの掛け声は?」


「別に何も言わなくても変身できるけど、何か言いたいなら『妖怪変化』で」


「要塞変形?」


「そこまで強そうにならなくていい。『妖怪変化』」


「わかったありがとー!」


結月はまた走り出した。


「よおおおおおおおおおおおおおおおかああああああああああああいへええええええええええええええええええええええええ」


「……ネコマタン、まあこれから頑張りなさいよみたいな感じで肉球当ててくんな」



廃工場の中。

レッドがパンチを繰り出していくがザエボスはのらりくらりとそれらをかわし、床に手を当てると床から高熱の蒸気が噴き出しレッドを直撃する。


「うわああああっつ!」


「これはもっと熱いぞ……」


ザエボスがまた床に手を当てると、ザエボスを中心に周りの床に煮えたぎる赤い液体が広がり始めた。


「うわああああああああっと、フェザーガントレット!」


レッドは赤い液体から逃げながらフェザーガントレットを装備、床を殴って穴を開け、赤い液体を穴に流し落として難を逃れた。


「これじゃヘタに近づけねえ……」


「んげええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」


結月が叫びながら走ってきた。


「さっきの小さいやつ」


「今胸が小さいって言った!?」


「言ってない!」


「ワニ! えーっと、えーっと、ワニ!」


「名前忘れたなら素直に言えばいいのに。俺、ザエボス」


「ザエボス! あんた絶対許さない!」


結月はネコマタンの変身(チェンジ)カードをムゲンブレスのスロットに差し込んだ。


「妖怪変化!」


そう叫びムゲンブレスを天に掲げた結月は、一瞬にして色鮮やかなピンクの戦闘服を身に纏い、右腰にはカードケース、左腰のホルダーにはムゲンソード、そして頭にはネコの愛らしさと猫又の柔軟性を彷彿とさせるピンクのフルフェイスマスクを装備した。


「ああああすっごおおおおおい!!!!」


ピンクは自分の戦闘服の色々な部分を見回しながら飛び跳ねる。


「ピンクのが増えた……うっとおしい……」


そこへグリーンも駆け付けた。


「え、緑の人ネコマタンおいてきちゃったの?」


「大丈夫、ぶっちゃけあいつは俺達より強い」


「そっかー。え、じゃあなんで今ネコマタンに戦ってもらわないの?」


「あいつがここで戦うと余計な被害が出すぎる」


「そんなに強いんだ。あんなにかわいいのに」


「あいつにはあいつの出番が……なるべく来てほしくはないな。とにかくいくぞ!」



「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」


「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」


「何そのかっこいいの! えーっとえっとえっと、そうだ!」


ピンクは元気よく一歩前へ。


「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK2 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」


「夢も現も守るが仏 夢幻(むげん)戦隊!」


「ヨーカイジャー!!!!」


「うっっっとおしい。これ使うか」


ザエボスはパーカーのポケットから大漁旗や万国旗等が付いた船の模型のような物を取り出した。


「ジャミリアー、奴らにバッテン付けてやれ」


ザエボスが船の模型のような物を放り投げると、空中で弾け、中から人間サイズの使い魔・ジャミリアーが6体現れた。


「ジャミジャミ!」


ジャミリアー達はヨーカイジャーにライフルのような銃を向ける。


「え、この前は棍棒だったのに!」


「その時によって武器が違うんだ!」


「避けなきゃ!」


「撃て」


「ジャミジャミ!」


一斉射撃。レッドは大ジャンプ、グリーンとピンクは左右に転がりながら避ける。


「すごい、あたし銃弾避けられるんだ!」


「避けたところでどうするつもり?」


ザエボスが手を挙げるとまたジャミリアーは銃を構える。


「ずりいな、また飛び道具かよ」


レッドがぼやいている横でグリーンがムゲンソードを抜き、銃に変形させた。


「え?」


「え?」


「ムゲンシューター、言ってなかったっけ?」


「聞いてねえよ!」


「説明書付いてたらいいのに!」


レッドとピンクもムゲンソードをムゲンシューターに変形させ、3人で構える。


「撃て」


「はーい!」


ピンクの元気な返事と同時にヨーカイジャー達が銃撃。


ザエボスはギリギリ避けたがジャミリアー達の銃は破壊されたり足に落ちたり。


「お前らに言ってない!」


ザエボスが床に手を当てると、廃工場内の至るところから高熱の蒸気が連続で噴き出す。


ヨーカイジャー達も、そしてジャミリアー達も、全ては避けられず高熱のダメージを受ける。


これにより2体のジャミリアーがもがき苦しみながら倒れ、動かなくなった。


「あー、もう!」


ピンクが叫びながら感情と手の平を自分の右腰にぶつけるとカードケースが開いた。


「あ、カード……。そうか、カード使えば何か……よし、これがかわいいからこれにする!」


ピンクはネコマタンの能力(スキル)カードをムゲンブレスに入れた。

するとピンクの周りにピンク色のオーラが発生。


「何やってんだあのピンクの可愛い奴。…………え? 俺今何て言った?」


ピンクは両膝を着いておねがいのポーズ。


「ねえ~ワニさんと愉快な仲間たちぃ~、このまま悪いことやめてぇ~、おうちに帰ってくれたら、結月嬉しいな~」


「……わかった。帰る。可愛い子のお願い聞けるの、俺達幸せ」


「ジャミジャミ!」


ザエボスとジャミリアー4体は工場の出口に向かって歩いていく。


レッドとグリーンは思った。


(こいつ味方で良かった……)



「可愛かった……ピンクの奴……帰ったら竹細工でピンクの奴作る……」


「ジャミジャミ!」


「あれ……なんか変だ……なんか……忘れてる……大事な……そうだ……サタン様……復活……!!! なんで帰らなきゃいけないんだ!!!!」


我に返ったザエボスとジャミリアー4体。

全員出口付近に集まっている。


「今だ結月、流れがお前に来てる!」


グリーンが叫ぶ。


「よっしそれじゃあ……あれ? あたし名前言ったっけ?」


「さっき言ってた」


「あーそっか」


ピンクはムゲンブレスにネコマタンの必殺(フィニッシュ)カードを入れる。

すると先程のオーラとは違う、無数の煌びやかなピンク色の光の粒がホタルのようにピンクの周りを飛び回る。


やがてそれらはピンクの周りから離れ、敵が集まっている場所の上空へ飛びながら粒ひとつひとつが大きくなり何かの形になっていく。


必殺妖技(ひっさつようぎ)肉球謝肉祭(にくきゅーかーにばる)!」


ピンクが叫ぶと、光の粒が変化した無数のネコの肉球型のエネルギー体が敵に降り注いだ。


ジャミリアー4体はあっけなく爆散、ザエボスはそれよりは粘ったが無数の愛らしい脅威に成す術もなく……


「天は人の上に人を作らず、悪魔の上に肉球を降らせる……」


爆散。


「やったー!!!」


「ふざけた技だが……」


「そこがいい!」


またしても初めて戦いに参加した戦士が悪魔を撃破。


それを喜び、レッドはピンクとハイタッチでもするくらいのつもりでいたが、ピンクは急に座り込んで震えだしていた。


「どうした!?」


「うん……なんか……急に今、怖いのが来ちゃって……」


グリーンは腰を曲げ、震えるピンクに目線を合わせる。


「結月、この戦いはいつも勝てるとは限らない。今日よりもっと、怖い思いをする時だってあるかもしれない。無理にとは言わない。今日を最初で最後にしたって、誰も君を笑ったりはしない」


「ああ。あんなやべー奴らと戦うの、怖くないほうがおかしいもんな」


「……ありがとう。でも、震えながら言うのも変だけど、あたしやりたい。あんな奴らに、誰かが怖い思いさせられたり……殺されたり……そんなの嫌! だから怖いけど、あたしが止めたい。だってそれが…………最強JK、二ノ宮結月だから!」


「そうか、それじゃ……」


「これからよろしくな!」


「うん!」


ハイタッチ。



そんなことをしている間に、廃工場の入り口付近、ヨーカイジャーと妖怪達が仕掛けたカメラの死角に立つ何者かが、黒と灰色に色分けされた手の平サイズの薬のカプセルのような物を手に、何やら呟いていた。


「デビル デビレバ デビルトキ カモンデーモン デビデビレ 最後のチャンスだ、全てを尽くせ……」


何者かはそのカプセルのような物をザエボスの残骸に投げ込み、素早く立ち去った。

すると残骸は一つに集まり、廃工場の壁と天井を突き破り巨大なザエボスの姿になってヨーカイジャー達を見下ろした。


「全員、抹殺……!」


「えええええええええ!?!?!? なんで!? あいつあたしが肉球の海に沈めたのに!」


「肉球の海に沈めたってパワーワード感えぐいけど、智和、また悪魔がデカくなったぞ!?」


「ああ……くっそ、」


「残骸から目を離した隙に」と口から出る直前に止めた。


「抹殺!」


巨大ザエボスの手を散り散りにかわす。


「……ちょっと待て、手が地面に付いたってことは……」


「グツグツ!?」


「ブッシュー!?」


「どっちでもない」


巨大ザエボスを中心に周りの地面に強酸性の青い液体が広がり始めた。

しかもザエボスが巨大な分、広がるのも速い。


「なんか今日朝から走ってばっかり~!!」


「とにかく走れ!!」


カードケースからカードを取り出す余裕すら与えされず、ヨーカイジャーは強酸性の液体から逃れるため走る。


周囲の建物を飲み込みながら、邪悪な死がヨーカイジャーを追い立てる。


やがてずっと走っていたピンクの足は疲れと焦りによりもつれ、転倒。


懸命に起き上がるも、それはすぐ側まで迫っている。


強烈な死の匂い。

強酸性の液体が17年の短い人生を飲み込もうとしたその時、ピンクの体が宙に浮いた……のではない!


口に咥えられた。

誰に!?


「ネコマタン!!」


ネコマタンはピンクを咥えたまま、この状況でもっとも安全な場所……すなわち、


「俺の背中から降りろおおおおおおおおお!!!!!! 爪を立てるなああああああああ!!!!」


巨大ザエボスの肩から背中にかけての部分に爪を立ててしがみついた。


「いててててててててて!!!!!! いい加減にし……」


巨大ザエボスはネコマタンを振り払おうとして転倒、自分が強酸性の液体の犠牲になる直前に液体を一瞬で消し去った。


「あああ危なかっ……だから降! り! ろ!」


当然降りない。


「フニャアアアアアア!!!!」


「爪を立てるなって!」


「そうだ、レッドとグリーン!?」


「カラステング救助隊、任務完了!」


空中に現れたカラステング。


「何あれかっこいい……ネコマタンの友達?」


「フニャ!」


ピンクを咥えたままなのでいつもと若干鳴き声が違う。


「おーーーーい、俺達は無事だぞーーーー!!」


レッドがコクピットの中から手を振るが当然ピンクからは見えない。


だがバカデカい声は聞こえた。


「あたしも無事だよー!!」


空中のカラステングに乗っている二人には疲労を隠せない今のピンクの声は聞こえないが手を振っているのは見えた。


「よっしゃネコマタン! 俺の中の拓実がカード入れるまで抑えてろ!」


「フニャフフ!」


「いっくぜえええ!!!」


レッドがムゲンブレスにカードを入れると、カラステングの体は赤く光り輝く。


「降ーりーろー!」


「フニャニャ!」


望み通り降りてやった。

だがもう、全てが遅い!


必殺妖技(ひっさつようぎ)飛翔回転拳(ジェットスクリュー)!!!!!!!!!!(パアアアアアアアンチ)


パンチ、なんて言葉では収まらないカラステングの体全体が巨大ザエボスの体を貫いた。


「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!! いたああああああああああああああああい!!!!!!!!!!」


巨大ザエボス爆散。

カラステングは地面に降り立ち、ネコマタンと並んでどこを見ているのかよくわからない、だけどそこはかとなくかっこいい気もするポーズを取った。


「やっっった、はぁ~」


項垂れるピンク。

しかし少し手を伸ばすと、ネコマタンの顔のふわふわを触ることができて癒された。


「ありがとう、ネコマタン!」


「フニャフニャニャ!」


戦いが終わり、巨大なネコマタンは結月に優しく顔を擦りつける。


「そっか、それが本当の大きさなんだね。そのほうが楽?」


「ニャ~~~?」


ネコマタンは首を傾げる。巨大な姿も小さな姿も、どちらのほうが楽ということは無いらしい。


「まあでも、基本的には妖怪の里にいたほうがいいだろう。ピンクのネコなんて、町で暮らすには目立ちすぎるし、ずっとステルスモードなんてのも、ネコマタンには窮屈だろ」


「ニャニャ……」


ネコマタンは智和の言葉にまた首を傾げる。


「ネコマタン、あたし達はパートナーだから、またいつでも会えるし、離れて暮らしてても、あたし達はもう、家族なんだから!」


「ニャニャニャ!」


ネコマタンはまた結月に顔を擦りつけ、結月はその顔を抱き締める。


「あったかーい!」


「ニャニャニャー!」


手を振る結月。

ステルスモードで帰路に就くカラステングとネコマタン。

結月には2体とも見えている。


拓実はカラステングに家の近くの降りられる場所まで送ってもらうことになり、結月は調べてみれば自宅からそれほど離れていない場所だとわかったので、徒歩で帰ることにした。


悪夢のような状況で必死に走ってきた道も、ゆっくり歩いてみればそんなに悪くない。


少しずつ、知っている道が見えてきて、優しい安心感。


赤信号も、今日はなぜだか楽しい。


信号待ちをしながらふと目をやると、近くのビルからフードデリバリースタッフの女性が出てくるのが見えた。


会社のロゴが入った無機質なはずの制服を、その下にある曲線の美しさで見事に着こなしている。


染めているのか、生まれたままなのかはわからない、淡く茶色がかった髪が日の光と遊びながら滑らかに指をすり抜けていく。


「綺麗な人……」


結月は思わず呟いた。


その女性はヘルメットを被り、バイクに跨がり走り出した。


次の仕事? 家に帰ってゆっくり? それともどこか、楽しい所?


想像を弾ませながら信号に目をやる。

青信号が点滅していた。


またすぐに赤になったけど、今日はそれも楽しい。


【to be continue……】


挿絵(By みてみん)

本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!


https://ncode.syosetu.com/n9246jz/


この作品に使われているイラストはxAIのGrokによって生成されました

挿絵(By みてみん)

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