episode:18 結月ドキドキ大追跡!
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
オープニングテーマ「your kind!」
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どこかの時空の秘密の場所に存在する、悪魔帝国デモンダイム。
その中心にそびえ立つのが“サタンパレス”。
更にその中心に位置する巨大な塔・サタンタワー。
幹部のみが立ち入ることを許されるその塔の上部にある一室。
薄暗い部屋の奥に、人間的な感覚で見れば禍々しい紋様が纏わりつくように刻まれた祭壇のような物が建てられており、その上に赤紫色の光を発する拳大の球体が浮かんでいる。
ベルゼブルは祭壇のような物の前に跪き、悪魔達から回収した色形様々なデビルギー容器を球体に向け掲げる。
すると容器からどす黒い煙状のデビルギーが立ち上り、みるみるうにちに球体に吸い込まれていった。
「サタン様、“七つの大益”はサタン様と俺様、それとベルフェゴールだけになっちまいました。マモンもレヴィアタンもアスモデウスも、それぞれサタン様のために、命の限り戦って死んでいきました。奴らへの、それにもちろんルシファー様へのリスペクトを忘れず、俺様もサタン様復活のため、全てを尽くしてバイブス上げてきますチェケラ!」
ベルゼブルは跪いたまま「チェケラ!」の指を球体に向けると、空になった容器を抱えて立ち上がり、薄暗い部屋を一礼して後にする。
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
episode:18 「結月ドキドキ大追跡!」
都内某駅前の牛丼屋。
食事を終えた拓実と勝が満足げな表情で出てくる。
「こっちの食べ物も、妖怪の里の食べ物に負けないくらい旨いな!」
「だろ? 完全マニュアル化されてるから、どの店舗の店員さんもやり方を覚えればみんなほぼ同じ味の料理が作れる。だから全国どこの店舗に入っても安心の美味しさと安さ。それがチェーン店の魅力!」
「そっかー。チェーン店最高!」
「チェーン店最高!」
叫んでいると、大通りを挟んで向こう側に、見覚えのある黒髪ツインテールの少女が、見覚えの無い紫のキラキラした生地のワンピースを着て、見覚えの無い少し歳上と思しき男と並んで歩いているのが見えた。
「結月?」
「一緒にいるの誰だ?」
大通りを行き交う車の音で何を話しているのかは聞き取れないが、結月と男は何やら楽しげに話しながら若者向けの店が並ぶ道を歩いている。
勝がムゲンライザーで千影のムゲンブレスに連絡する。
「千影、結月って彼氏いるの?」
≪いないよー≫
「でも今男と歩いて……」
≪どこ!?≫
「えっと……」
勝が拓実から聞いた場所の詳細を伝えると、結月と男を遠目に見ながら歩いていた拓実と勝の所に、5分もしないうちに千影が現れた。
普通の人間にはラフな服装のスタイルのいい美女が普通のヘルメットを被って普通のバイクに乗って安全に配慮しつつ急停止したように見える。
「ライジュウに乗ってきた」
「被ってるソレ、キュービルンだよな?」
「うん、普通にスーパー行ってたから。バイク家だったから。それより!」
辺りに人目が無いことを確認し、ライジュウはステルスモードになって妖怪の里に帰る。
ヘルメットに化けていたキュービルンはステルスモードのマスコットサイズで千影の肩に乗る。
「それより! 結月は!? あ、あれか!」
拓実が指差す0.5秒前に大通りの向こう側の結月を発見、隣を歩く小綺麗な格好の若い男も確認。
「キュービルンは帰らねえの?」
キュービルンは普通の人間には見えない文字を生成して答える。
〔なんか しんぱいだから いる〕
拓実はじっと視線を動かさない千影の後頭部に話しかける。
「アレじゃね? 『親戚のお兄ちゃんが婚約者にプレゼントを買うのを手伝ってあげてる』とか、そういうベタなやつじゃね?」
拓実の声が耳に入ったのか入っていないのか、千影は視線を動かさないまま歩きだす。
一方その頃、関東某所の工業地帯。
外からは他より少し大きめの普通の工場にしか見えないその建物の中では、年齢性別様々な人間達がジャミリアー達に監視されながら金属の束を運び、慣れない手つきで溶接作業を行い、倒れた者は鞭で打たれ、起き上がれない者は乱暴にどこかへ引きずられていた。
それらを見渡せる場所に設置されたゴンドラ型エレベーターに乗って下りてくる、ベルゼブルとグレモリー、そして、
漆器製のお椀のような頭部からうどん状の太く長い物が髪の毛のように生え、長方形の白木作りの箱のような胴体の右側にはハンドルのような物が付いており、首らしき箇所にはオリーブの実のような物が連なった首飾り、丸く薄い突起物が付いた肩から腕が伸びる様はうちわのように見え、捻じれて絡み合ったうどんのような足には桐下駄のような物を履いた悪魔・オリヴィエル。
3体の悪魔はどこかで聞いたような気もするがやっぱりどこでも聞いたことがない歌を歌いながら人間達の元に下りてきて、ふらつく足で金属を運ぶ列の間を通り過ぎ、倒れた人間を蹴り飛ばし、ジャミリアーの鞭を奪い取って自ら人間に鞭を振るうなどしながら工場の中心に向かう。
(グ・ベ・オ)スッチャカメッチャカ コッチャカメッチャカ ヤッチャカメッチャッチャ
(グ)ハァ~
(グ・ベ・オ)ヤッチャカメッチャカ コッチャカメッチャカ スッチャカメッチャチャ
(グ)おつむはキレてるよ
(ベ・オ)YO! YOYO~!
(グ)作戦カンペキよ
(ベ・オ)YO! YOYO~!
(グ・ベ・オ)必要だ 必要だ デビルギー 必ずもらうと決定だ~
(グ)グ~~~~レモリー
(ベ)ベ~~~~ルゼブル
(オ)オ~~~リヴィ~~~エ~~~ル~~~~ ……オリ(俺)だけ幹部じゃないけど
(グ・ベ・オ)倒れても 倒れても 問題ないな~い!
(グ・ベ・オ)俺たちゃ最強だ! YO! YOYO~! デンデンデモンダイム~~~~ううぅ~~~~~♪
(グ・ベ・オ)スッチャカメッチャカ コッチャカメッチャカ ヤッチャカメッチャッチャ
3体の悪魔は工場中心で製造中の巨大な物体の前に辿り着く。
「人間どもを働かせて造ってるのがこれか」
「へい。オリの設計はまさにパーフェクト。指示通りにやらせれば人間でも完成させられますぜ」
「素敵ね。でも人間はひ弱だから、すぐにへばっちゃうんじゃない?」
「そしたらまた新しい人間を補充すりゃあいいんですよ。奴ら、オリがネットに流した『高収入』『年齢性別不問』『無資格未経験大歓迎』などなどの言葉に釣られていっくらでも働きに来やがります」
「ネットで見つけた高収入ナンタラに飛び付くのが人間どもの間で流行ってるらしいからな」
「扱いやすい労働力が簡単に手に入りやす。それに……」
働かされる人間達の頭からどす黒い煙状のデビルギーが立ち上り、オリヴィエルの首飾りに吸収され、オリーブのような物が少しずつ膨らんでいく。
「ついでにデビルギーの回収までできちまいやす。コレなんかそろそろもぎ取り時ですぜ」
グレモリーはオリヴィエルが指さす1粒をもぎ取る。
するとすぐに同じ個所にまたオリーブ状の物が生えてくる。
「素晴らしいわ」
「それで造ってるのがこの……」
「へい! かつて合体能力を持たなかった頃の巨大妖怪どもを苦しめた巨大悪魔ベヒモスをモデルにした最強最大最新最優秀デザイン型戦闘ロボット・メカベヒモス君1号でやす!!」
3悪魔が見上げるその巨体――カバのような大口の開く顔、青みがかった巨大な山を思わせる身体、両肩にバイクのマフラーのような突起物を左右それぞれ3本ずつ生やし、大岩をも握り潰すその手に備わる黒と白に色分けされた指。
まさにかつて巨大妖怪達を苦しめ、初めて合体したムゲンオーがいなければ日本中を破壊し尽していたかもしれない巨大悪魔ベヒモスを思わせる姿、それが硬い金属によって形作られている。
「レヴィアタンもわざわざデビルギーを消費して大きいのを連れてこなくても、こっちでこんな風に造れば良かったんですわ」
「このやり方ならデビルギーを消費するどころか、増やしながらでっかいのを造れやすからねぇ」
「OKブラザー! この調子でデビルギーを集めながら、最強最大えーと、何だっけ? まあいいや、造れ!」
「へい! 最強ナンタラの部分はオリもよく覚えてないから何でもいいでやす!」
結月と男性は道路沿いの宝石店に入っていった。
街路樹の陰から千影が、続いて拓実、勝が顔を出し、ガラス張りの店内を覗き込む。
キュービルンは引き続き千影の肩の上。
「プレゼント……?」
「うん、だから、婚約者へのプレゼントを選ぶのを手伝うとかだろ?」
結月が笑顔で指差した指輪を、店員が結月の右手薬指に通す。
結月はそれを色々な角度から眺めて見ている。
「!!!!!!!!」
「婚約者と指のサイズが同じとかだろ?」
結月と男性は指輪を購入して宝石店を出る。
3人は慌てて街路樹に隠れ、また追跡を開始。
次に結月と男性が訪れたのは、フランス語で店名が書かれているレストラン。
「ここキャビア丼とかフォアグラ丼とか出る所じゃね?」
「なんでいちいちご飯に乗っける?」
「こんな高そうなレストラン……」
千影は陰に隠れていた自動販売機の角を握る。
「婚約者と来る時のための下見とかじゃね?」
約30分後、結月と男性が店から出てくる。
結月は笑顔で伸びをして、どこかを指差し歩きだす。
男性もそれに続いて歩いていく。
千影はその背中をフランス語の看板の陰から見つめる。
「結月、幸せそう……」
「そりゃ旨いモン食ったら幸せそうな顔になるだろ」
「うん、オイラもさっき牛丼食って幸せそうな顔になってたと思う」
千影がまた視線を動かさず追跡を開始。
拓実と勝もそれについていく。
結月と男性が次に訪れたのはオープンカフェ。
結月は色とりどりのケーキセットを今日一番の笑顔で食べ始める。
追跡組はそれを何らかの偉業を成し遂げたらしい人物の銅像の陰から覗き込む。
「さっきレストラン行ったばっかなのに」
「人間には甘い物食べる専用の別の腹があるって聞いたぞ?」
「誰がそんなこと言った?」
「ゲキリンダー」
「んなモン信じるな」
男子達のやり取りを余所に、千影は背筋を伸ばし、元気良く手を挙げてケーキのおかわりを注文する結月を見つめてふっと息を吐く。
「そっ、か。いいことだよね、結月が幸せだったら」
「いや、これも婚約者と来るための下見とかじゃ……」
「ここ、すごい結月が好きそうなとこ。それに…………私と出掛ける時、あんな大人っぽいの着てきたこと無い……」
〔コン……?〕
肩のキュービルンが千影の顔を見る。
「私、ちょっとトイレ。二人、見失わないように見てて」
そう言って千影は小走りで近くの大型スーパーに向かった。
拓実と勝はその様子に少し戸惑いながらも、イチゴのタルトにはしゃぐ結月に視線を戻す。
千影は大型スーパーのトイレの個室に入り、扉を閉める。
しばらく扉にもたれ掛かっていると、目から頬を伝って暖かい雫 が落ちてくるのに気付いた。
「何これ……」
手の平に当たる感覚に気付くと、暖かい雫は余計に目から溢れ落ちてくる。
顔を覆って震える千影の頭を、キュービルンの前足がそっと撫でる。
一方その頃、拓実のムゲンブレスに智和から着信。
素早く着信音を消す。
≪悪魔が人間を強制労働させている工場が発見された。場所を送るから向かってくれ。今日は勝と牛丼屋に行くって言ってたな?≫
「うん、オイラここにいる。あと、今トイレだけど千影もいる」
≪じゃあ、戻ってきたら3人で向かってくれ≫
「わかった……」
通信を切って結月を見る。
結月のムゲンブレスの着信音が鳴り、結月は男性に大袈裟なジェスチャーを交えた言い訳をして物陰に入り着信ボタンを押す。
そうこうするうちに千影が戻ってきた。
拓実は千影に事情を話し、3人で現場に向かって走り出す。
千影が振り返る。
結月はまた男性に大袈裟なジェスチャーを交えた言い訳をしていた。
千影はまた走り出す。
某所の工業地帯。
既に待機していた智和と武士の元に追跡組3人が到着。
少し遅れて結月も到着。
「やや! 結月はいつもと違った出立ち。なかなか新鮮でラグジュアリーでござるな」
「そうかな? こんな大人っぽいのはあたしより千影ちゃんのほうが似合うんじゃないかな」
「そんなことない!」
千影が結月の両肩を掴み真っ直ぐに目を見つめる。
「結月、似合ってるよ。綺麗だよ」
「あああ、ありがとう……熱量すごいけどありがとう……」
そんなやり取りを余所に智和は辺りを見渡す。
「例の工場にすぐわかる目印があるはずなんだが……」
周囲の建造物の中でもやや大きめの工場の側に、首を伸ばしたエージェント66βの頭部が見えた。
「お、あれだあれだ」
「クセ! 目印のクセ!」
ヨーカイジャーが駆け付けるとエージェント66βは伸ばしていた首を引っ込めた。
「中にいるのはベルゼブルとグレモリー、オリヴィエルと呼ばれる白髪の悪魔、それとジャミリアーが十数体、働かされている人間が約30人」
「ご苦労。さて……」
智和が一同に作戦を伝え、ヨーカイジャー全員で変身。
「妖怪変化!」
鍵の掛かったドアをブルーがブライブレードで切り裂く。
その音で中にいる者達の視線が出入口に集まる。
「YO! 来やがったなヨーカイジャー!」
「あらシルバーちゃん、妖怪ちゃんなんでしょ? 遊びに来てくださったの?」
「遊びじゃねえ! お前らをやっつけに来たんだ!」
「いくぞ!」
「オウ!」
グリーンの合図でレッドとシルバーは幹部達に、他メンバーは人間達を監視するジャミリアー達に向かう。
ベルゼブルが空中へ飛び上がり、レッドがカラステングの能力カードで翼を生やしてそれを追う。
更にクロノスマッシャーを装備、空中でベルゼブルのパンチをかわしながらダイヤルを回し、デジタル表示が「5」になったところでボタンを押す。
レッドの体感5秒間で超高速の連続パンチを叩き込むが、ベルゼブルはスローモーションに見える動きで体を捻り、絶妙に急所を外させることでダメージを最小限に抑える。
そしてレッドの超高速活動が止まった直後に大きく振りかぶったパンチを叩き込む。
レッドは顔面直撃寸前にクロノスマッシャーで防御、急速落下の勢いを翼で殺して床への激突をギリギリ免れる。
シルバーはイッタンモメンの能力カードを発動。
空中に浮き上がりグレモリーに突進……の、つもりだったがシルバーの体は斜め上、斜め下、上下左右四方八方滅茶苦茶な方向に飛び回る。
「あああもう! これも練習しなきゃああああああ!!!!!」
グレモリーは銀色の起動をキラキラした目で追う。
こうしてレッドとシルバーが幹部達を引き付けている間、他のヨーカイジャーメンバーはジャミリアー達を襲撃、囚われていた人間達を引き離す。
支配から逃れた人間達を、出入り口近くにいるエージェント66βが誘導する。
「皆さん、焦らずキツネのおもちゃが飛び跳ねてるほうへ行ってくださーい!」
〔コンコンコーン!〕
工場の外でマスコットサイズのキュービルンが飛び跳ねる。
「はい、声が出るおもちゃでーす! 歩けない人には肩を貸してあげてくださーい!」
人々が導かれる先には、既に妖怪情報統括班が記憶操作を行うため待機している。
視認できる人間達を外へ逃がし終えたところで、グリーンが人間達の避難を優先するため敢えて口にしなかった疑問を呟く。
「オリヴィエルとかいう奴はどこだ……?」
その時、工場内の高い位置にある足場からヨーカイジャーには聞き馴染みのない声が響く。
「そこまででやすヨーカイジャー! こいつがどうなってもいいでやすか?」
見ると、オリヴィエルが頭から伸ばしたうどん状の物で20代半ばくらいの女性を縛り上げていた。
ピンクがジャミリアーを蹴り飛ばして一歩前に出る。
「あ…………その人を離して!!」
「離してほしけりゃ、ヨーカイジャー全員、変身を解くでやす!」
空中にいたレッドは着地、シルバーもグリーンとブルーに受け止められながらなんとか安全に着地。
ヨーカイジャー達は変身アイテムからカードを引き抜いて変身解除する。
「オリヴィエル、よくやった!」
「卑怯だぞ!」
「卑怯もラッキョウもございませんことよ。ジャミリアー、やっておしまい!」
「ジャミジャミ!」
ジャミリアー15体が変身前のヨーカイジャー達を取り囲み、棍棒を振り上げリズミカルに足を踏み鳴らす。
身構える6人に、輪になったジャミリアー達が振り上げた棍棒で襲い掛かろうとしたその時……
「うりゃ!」
「ぐひぇあ!!?」
オリヴィエルは突然後頭部に走った衝撃に思わずうどん状の物を緩めてしまう。
その隙にコンコンボーを持ったイエローが囚われていた女性を抱きかかえてジャンプ、軽い音を立てて床に着地。
駆け寄ってきたエージェント66βに女性を託す。
「いっでででででで、どういうことでやす!?」
「そこにいるヨーカイジャーは全員、私が作った幻!」
「な、なんだと!?」
悪魔達は慌てて周囲を見渡し、物陰を覗き込み、本物のヨーカイジャーを探し始める。
その隙にジャミリアーに囲まれていた千影以外の本物のヨーカイジャー達は再び変身。
「妖怪変化!!」
「あー!!」
「幻はイエローだけだったYO!!」
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「誰もオイラを止められねえ! 当たるも八卦の大予言! 爆走疾風ギンギラギン! 閃光の覇者、ヨーカイシルバー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
6人名乗りの後、イエローと幻の千影がハイタッチ。
ピンクのマスク越しの憧れの眼差しに見守られながら、幻の千影は笑顔で消滅。
「おい緑! 今のもテメェの作戦かYO?」
「いや。俺が言わなくてもアドリブかましてくれる仲間達で助かってる」
「ほぅ……。オリヴィエル、メカベヒモス君1号はもう完成してるんだったな?」
「問題なく動かせるようにはできてやすが、ちょっと塗装で納得できてない部分がありやして……」
「あー、それは……うーん、うん。ヨーカイジャーブッ殺してから修正することにして、やっちまえYO!」
「わっかりやしたー!」
オリヴィエルは頭のうどん状の物を伸ばしてメカベヒモス君1号の頭部に絡み付かせ、一気に縮めて頭部に飛び乗り、開いた搭乗口から内部のコクピットに乗り込む。
「起動!!」
「ブブォオオオオオオオオオ!!!!!」
オリヴィエルが操縦桿を引くと、メカベヒモス君1号は大口を開けて咆哮する。
「これはベヒモスをモデルにしたロボットでござるな?」
「初めてムゲンオーでやっつけた悪魔だよね。あたしが名前付けたらムゲンオーが動いてくれて!」
「うん。結月には素敵な才能があって、かわいくて、優しくて……」
「今日の千影ちゃん、褒め方がいつもより深い???」
そうこう言っている間にメカベヒモス君1号が一歩踏み出す。
振動が工場全体に伝わり天井から砂埃が落ちてくる。
「勝、デカい奴は頼んだ」
「よーし、オイラ達の出番だ! サモン、パートナーズ!!」
妖怪の里。
「さわやか草原」を走る予言妖怪ブルクダン、並走する爆走妖怪オボログルマ、上空に疾風妖怪イッタンモメン、3体同時に高く飛び上がり銀色とオレンジ色と紺色の光になって高速移動を開始。
3つの光が降り立つと巨大な妖怪の姿に戻り工場の周りを取り囲む。
足の裏からのジェット噴射で飛び上がったメカベヒモス君1号が天井を突き破り、バイクのマフラー状の突起物からのジェット噴射で横移動、ブルクダンを踏みつけようと急速落下。
ブルクダンがそれを角で受け止め、横からオボログルマのガトリング砲とイッタンモメンの体当たりによる攻撃が開始される。
メカベヒモス君1号が逃れようと動くタイミングでブルクダンが全身を後ろに反らし、その勢いでメカベヒモス君1号を後方に放り投げ頭から地面に叩きつけた。
衝撃に揺れる工場内へブルクダンが目からビームを発射。
ビームは壊れた天井を通り抜けシルバーをコクピット内に転送する。
シルバーが座る座席後方には、前回の戦いで現れたモニターがそのまま残っていた。
「これはずっとこのままなのか。じゃ、夢幻合体!」
シルバーがムゲンライザーにカードを入れ、ムゲンドライバーにセットすると、3体の妖怪達の体が宙に浮き、変形を始める。
ブルクダンの四肢と尻尾が折り畳まれながら体全体が直立、胴体下半分がスライドして2本に分かれて「足」になり、首から上の頭部が真っ直ぐに前を向く。
オボログルマの胴体前部が伸び、全体的にタイヤとガトリング砲の付いた腕といった形状になりブルクダンの左腕部分に合体。
イッタンモメンの尾が折りたたまれ、胴体前部が伸び、全体的に左右両側に鋭いカッターの付いた腕といった形状になりブルクダンの右腕部分に合体。
最後にブルクダンの首が回転扉のように回転、中から人型の顔が姿を表した。
「完成、合体巨人・ムゲンショーグン!!」
シルバーがその名を叫ぶ。
ムゲンショーグンは両腕の武器を交互に力強く前に突き出し、銀色の光を放ちながら腕を組んでポーズを決める。
工場内ではレッドが右拳にフェザーガントレット、左拳にクロノスマッシャーを装備。
迫りくるジャミリアーの棍棒を左拳で弾き、右拳でボディブローを叩き込み1体撃破。
更に後ろからの攻撃をかわしながらムゲンブレスに必殺カードを入れる。
「必殺妖技・天狗百烈拳!」
両拳に武器を装備したことで威力を増した連続パンチを放ち、5体のジャミリアーを吹っ飛ばすと同時に爆散させた。
そこへベルゼブルが羽音を立てながら余裕ありげな速度で降りてくる。
「なるほど今のはさっきのパンチより一撃一撃の威力はありそうだな」
「お前も食らってみるか? レントゲンで写らない所が折れちまうかもよ?」
「何だそりゃ?」
「時事ネタだけどわかんなかったらいい」
レッドが拳を構えて走り出し、ブルーがジャミリアー2体を纏めて斬り捨てた頃、グリーンの「激流上手投げ」で空中高く巻き上げられたジャミリアー3体が床に叩きつけられ爆散。
グリーンはラクダ型メカに乗ったグレモリーと対峙するピンクとイエローに合流する。
「どいてくださらない? ワタクシはムゲンショーグンちゃんの戦いを見に行きたいんですの」
「それはあたし達を倒してからにしなさい! ……これ一回言ってみたかったやつ!」
「そう? ならワタクシは、あなた達を倒すため、更に強く美しく変わる。グレモリー・バトルフォーメーション!!」
グレモリーはラクダ型メカの背中から真上にジャンプ、続いてラクダ型メカもジャンプ。
ラクダ型メカの頭、首、四肢、胴体全ての背部が開き、そこへグレモリーが飛び込んで閉じる。
そうしてグレモリーがラクダ型メカを着ぐるみのように装着して着地しファイティングポーズ。
視覚的にはいつも乗っているラクダ型メカが2本足で立ち上がっただけに見える。
「ゑ?」
「ゑ?」
「ゑーっとこれ、あたしだけでいけそうだから千影ちゃん達は拓実くんのとこ手伝いに行っ……」
ピンクが言い終わる前にグレモリー・バトルフォーメーションが距離を詰め右前足蹄パンチを繰り出す。
ピンクはスキャットクロウでギリギリ防御するが足元から火花を散らしながら後退。
背後からグリーンのガチコンハンマーとイエローのコンコンボーで同時に殴りかかるが瞬時に半回転してかわした直後にイエローを蹴り飛ばしグリーンに連続パンチを繰り出す。
ピンクがイエローに駆け寄り助け起こす。
スーツ越しに伝わる体温が、立ち上がるイエローの足の震えを止める。
グリーンは反撃の糸口を掴めないまま流星の如く襲い来る蹄をガチコンハンマーで受け続ける。
「こいつ……フザケてるが強いぞ!!」
工場の外では、ムゲンショーグンが起き上がったメカベヒモス君1号にガトリングを連射。
しかし硬い外装には効果が薄く、メカベヒモス君1号は弾丸をものともせず大口を開けて赤いマグマのような破壊光線を発射。
ムゲンショーグンは妖力を込めた左手の水平チョップで光線を切り裂く。
それにより胴体にダメージは無かった。
「イッタンモメン、大丈夫か!?」
〔ブオオオオオオオン!!〕
「ちょっと熱かったか。ごめんな。でもまだ頑張れるか?」
〔ブオン!〕
「いけるか! よし!」
ムゲンショーグンは歩き出し、メカベヒモス君1号の顔面にチョップを繰り出す。
が、やはりその頑丈さにあまり効果はない様子。
「さっきのお返しでやす!」
「ブブブォオオオオオオ!!!」
メカベヒモス君1号はバイクのマフラー状の突起物から黒煙を吹き出しながらムゲンショーグンを掴み、力任せに後方へ投げ飛ばした。
ムゲンショーグンは空中回転して足から着地。
投げによるダメージは抑えたが、このまま戦っていても有効な攻撃を加えることができない。
「だったらこれだ!」
シルバーは換装カードをムゲンライザーに入れてムゲンドライバーにセット。
「本日の運試し。ガシャット・ガジェット!」
シルバーの背後のモニターにカードのパックが輪になって並んでいる映像が映し出され、画面内のパックの輪が回転。
シルバーが天に手を翳すと回転が止まり、パックが開封され中からカシャの換装カードと同じデザインのカードが出てくる映像が映し出される。
妖怪の里。
「さわやか草原」を走る炎熱妖怪カシャが立ち止まり空を見上げ、紅色の光になって高速移動を開始。
戦場の空に到達した紅色の光がカシャの姿に戻る。
ブルーが壊れた天井の穴から空中のカシャを見上げる。
「おお、今度はカシャでござるか。しっかりやるのだぞ!」
手を振った直後、背後から迫っていたジャミリアー2体を振り向き様に斬り捨てる。
「油断などしておらぬわ、未熟者どもめ」
空中のカシャが変形を開始。
前後全ての足が折り畳まれ、下顎が大きく開いて首の下に付いた状態でロックされ、喉の奥から銃身のような物が伸びて出てくる。
ムゲンショーグンの右腕のイッタンモメンが外れ、銃の付いた腕の形になったカシャが代わりに右腕に合体する。
「完成、ムゲンショーグンマグナム!!」
シルバーの叫ぶ声と共に、銃を翳してポーズを決める。
「いっくぞー!」
ムゲンショーグンマグナムは突進してきたメカベヒモス君1号に火球を連射。
直撃した火球の熱により硬い外装が溶け始め、コクピット内のオリヴィエルにも衝撃が伝わり突進が止まる。
「なっ……!? オリジナルのベヒモスより硬く造ったメカベヒモス君1号が!?」
その時、コクピット内全体が光り輝き、その光はシルバーの目の前に凝縮し、レッドが所持している物とは違う絵柄の必殺カードになった。
「これは……使ってみよう!!」
シルバーがカードを発動させると、ムゲンショーグンマグナムの妖力が両腕の重火器に集中し、それぞれの色に光輝くエネルギーへと変換されていく。
「必殺大妖技・銀炎魔燃弾!!!!!」
右手から通常の5倍以上の大きさの火球、左手から高熱を纏った弾丸をメカベヒモス君1号に向かって超高速で連続発射。
オリヴィエルは避けきれないと判断し、大口からの破壊光線を発射させるが火球と弾丸がそれを打ち消しながらメカベヒモス君1号に到達。
頑強な機体が火球に溶かされると同時に無数の弾丸に貫かれていく。
メカベヒモス君1号のモニター越しに、必殺技を撃ち終わり悠然と構えるムゲンショーグンマグナムがオリヴィエルの目に映る。
「ウシか……土用だったら、ウナギだな…………」
爆散。
メカの破片に混じってオリヴィエルの残骸も地面に落ちる。
〔モォ~……〕
両腕からの必殺技を放った影響か、ムゲンショーグンマグナムの中心にいるブルクダンの声に疲れが混じる。
「あー、きつかったか。ちょっと休もうな」
「そうはいきませんわー!」
グリーンピンクイエローの包囲を脱出したグレモリーが工場を飛び出し、装着していたラクダ型メカから飛び出して呪文を唱える。
「デビル デビレバ デビルトキ カモンデーモン デビデビレ 最後の一花、咲かせてごらんなさい!」
投げキッスによって発射された唇型のエネルギー弾がオリヴィエルの残骸に到達。
残骸は一つに集まり、巨大なオリヴィエルの姿となりムゲンショーグンマグナムを威嚇する。
「弘法も筆の誤りってね!」
巨大オリヴィエルが自身の胴体の右側に付いているハンドルのような物を回すと、頭のうどん状の物が電流を纏いながらムゲンショーグンマグナムに向かって伸びていく。
消耗したムゲンショーグンマグナムはこれを避けきれず、絡みついたうどん状の物から流される電流にシルバーもろとも苦しめられる。
〔モォ~~~~~!!!〕
「うわあああああああああ!!!」
〔ブオオオオオオオン!!!!〕
イッタンモメンが空中から突進、うどん状の物の一部を切り裂くが、更に伸びてきたうどん状の物に絡め取られムゲンショーグンマグナムと共に電流に苦しめられる。
その頃工場内では、レッドがベルゼブルと拳で打ち合い、押されながらもクロノスマッシャーのダイヤルを少しずつ回転させ、デジタル表示が「6」になったところでボタンを押す。
ベルゼブルがレッドの超高速攻撃を予想し構えた次の瞬間、その複眼に映ったのは爆散する2体のジャミリアー。
「あ!? どこ行った!?」
他方ではブルーとエージェント66βがグレモリーに傷付けられた3人を助け起こしている。
「緑! 赤はどこ行った!?」
「俺に聞かれても、あいつのアドリブいちいち把握してねえよ」
グリーンが把握していないレッドのアドリブ。
超高速活動を開始して後方へ走り、残っていた2体のジャミリアーを連続パンチで撃破し、そして……
巨大オリヴィエルが後頭部に衝撃を受けてハンドルを動かす手を止め、うどん状の物を緩めてしまった。
それによりイッタンモメンは脱出し空中へ逃れ、ムゲンショーグンマグナムはうどん状の物を振りほどいて投げ返すことができた。
巨大オリヴィエルは投げ返されたうどん状の物を頭から被りながら振り返る。
そこに見えたのは空中で腕組みしながらほくそ笑むカラステング。
「てめえら後ろから不意打ち大好きか!!」
ハンドルを回しうどん状の物を空中へ伸ばす。
が、うどん状の物はカラステングの体をすり抜けて絡みつかない。
そんな巨大オリヴィエルの背後に立つカラステング。
実は空中に見えるのは、元の大きさに戻ったキュービルンが生成している幻。
後頭部への衝撃はキュービルンの体当たり。
「志村うしろー!」
「志村?」
気付いたグレモリーが叫んだ時にはもう、本物のカラステングのコクピット内でレッドが必殺カードを発動していた。
カラステングの体は赤く光り輝き、巨大オリヴィエルに向かって拳を突き出し体全体でドリル状に回転しながら超高速で突進する。
「必殺妖技・久しぶりの飛翔回転拳!!!!!!!!!!」
パンチ、というよりカラステングの体全体が巨大オリヴィエルを貫いた。
「もういい……もういいだろおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
爆散。
「うよっしゃあああああああああああ!!!!!!」
カラステングは地面に降り立ち、どこを見ているのかよくわからない、だけどそこはかとなくかっこいい気もするポーズを取る。
隣でキュービルンがお座りのポーズ、空中ではイッタンモメンが縦旋回、ムゲンショーグンマグナムも疲れを滲ませながらも両腕を挙げて喜びを表現する。
「久しぶりでしたの?あのパンチ……見られて良かった……」
グレモリーがラクダ型メカに乗って走り去る。
「ha~……アドリブか。お前らラップ向いてるかもしれないZE!」
ベルゼブルもそう言い残して飛び去った。
戦いと後処理のための連絡が終わり、ヨーカイジャーと妖怪達は日常へと帰っていく。
その前に、結月の希望により記憶操作を受けた人々の様子を見に行くことになった。
人気の無い高架下の公園から列を成して出ていく人々を少し離れた所から見守るヨーカイジャー。
人々の中に、先程オリヴィエルに人質にされた女性がいた。
「あ、梓さん! 良かった、元気そう」
「知り合いか?」
「うん、親戚のお兄ちゃんの婚約者!」
「ゑゑヱヱっ!?」
千影が今までに出したことのない声を出しながら結月の前に出る。
「もしかして、その婚約者にあげるプレゼントを一緒に選んであげてたり?」
「うん、今日それだった」
「もしかしてもしかして、結月とあの梓さんの指のサイズが同じだったり?」
「うんうん、だから一緒にジュエリーショップに行ってあげてた」
「もしかしてもしかしてもしかして、レストランの下見とか?」
「うんうんうん、高級レストランだったから緊張して、あんまり食べた気しなかったんだけど、でもねでもね、今日一日手伝ってあげる代わりに、気になってたオープンカフェ奢ってもらったの! 良かったら今度千影ちゃんと一緒に行こうと思って! そこは美味しかった!」
「そうだったの!?」
「そう! でも、なんでそんなにわかるの? ベタすぎるから?」
「それは…」
正直に言ってしまいそうだった勝を拓実が制する。
「でも、一個だけわかんない。その服、私と出かけるとき着てきたことない。何?その服……」
「ああ……これ、お父さんが進級祝いって言って買ってきてくれたやつなんだけど、あんまり気に入ってなくて。でも今うちの洗濯機が壊れてて、洗濯できないからこれしか着る物無くて……」
千影が結月の顔を胸いっぱいに抱きしめる。
「はわわわわわわわわわ!? え、何のご褒美!? あたし今日そんなに活躍したっけ!?!?」
後に判明したことだが、梓は結婚を控えた結月の親戚に負担を掛けないよう、アルバイトを探していたところオリヴィエルの広告に引っかかってしまった。
その後は怪しい求人に引っかかることなく、無事結婚。
千影は結月を抱きしめたまま動かない。
「は……は……は……千影ちゃん千影ちゃん! このままじゃあたし幸せすぎてデビルギーの逆の何かが出ちゃいそうだから……そうだ! オープンカフェ! 行こ! いっぱい動いたからいい感じにお腹空いてきてるし!」
「そう……だね! 行こ!」
「うんうんうんうん! そこチェーン店だから、安心の安さと美味しさだよ!」
「そっかー! チェーン店最高!」
「チェーン店最高!」
元気に腕を振り上げオープンカフェに向かう女子2人。
その背中から溢れる平和を噛みしめる男子4人と、ステルスモードの合体巨人と巨大妖怪達。
「チェーン店最高おおおおおおおおお!!!!!」
「チェーン店最高おおおおおおおおお!!!!!」
【to be continue……】
本編を読んだ後は「ヨーカイジャー悪魔データベース」で、登場した悪魔の情報をチェックしよう!
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「特捜戦隊デカレンジャー」のWヒロインエンディングみたいなことがやりたくて作った歌詞を掲載しています!
タイトル「最強究極ヒロインズ」
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